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恐怖政治

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第五章

「もう沢山だ!」
「食物をよこせ!」
「腹一杯食わせろ!」
「餓死してたまるか!」
 その痩せた身体から大声で叫ぶ、そしてキムのいる宮殿を取り囲んでいた。
 最早キムは完全に孤立していた、しかし彼はまだ諦めていなかった。
 山海の珍味が何十皿も並ぶ夕食の場でそれ等の珍味を貪りながら言うのだった。
「毒ガスだ!」
「えっ、首都に毒ガスを撒くのですか」
「そうだ、反乱を起こす奴等の上から毒ガスを撒布しろ!」
 それによってだというのだ。
「奴等を殺せ!いいな!」
「ではそれで」
「そうだ、反乱軍共もだ」
 今や国土の殆どを解放した彼等もだというのだ。
「殺せ、いいな」
「しかし今や我々は宮殿の中だけです」
 僅かに残ったと言えば聞こえがいいが逃げ遅れていた側近が応える。宮殿の中の側近も美女も衛兵も殆どが逃げ反乱軍に合流していた。
「それでもですか」
「ヘリがあるな」
 本来は脱出用のそれがだというのだ、何機かある。
「そしてサリンが地下室に」
「ありますが」
「なら撒布しろ」
 躊躇しない言葉だった。
「そして奴らを皆殺しにするのだ」
「ですが将軍様」
 側近は戸惑いながら彼に言った。
「最早この宮殿も」
「どうだというのだ」
「囲まれています、脱出すべきでは」
「奴等を皆殺しにする」
 脱出なぞよりも怒りの対象への殺戮だった、彼が選ぶのだ。
「わかったな」
「そうですか」
「サリンで首都と周りにいる連中を黙らせてからだ」
 それからどうするかというと。
「後は核だ」
「核も使われるのですか」
「あれで反乱を起こした町を全て焼き払う」
 国際社会からどれだけ批判されようとも開発したものだ、それを自国民に対して使うというのだ。 
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