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丸坊主

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第一章

                    丸坊主
 馬尾鹿三はとある中学校で剣道部の顧問をしている、その評判はというと。
「早く辞めてくれないかね、あいつ」
「いつも威張り散らしてな」
「ヤクザみたいな歩き方してな」
「偉そうだしな」
「というか生徒何だと思ってるんだよ」
 これが生徒からの評判だった。
「怒鳴るし殴ってくるしな」
「体罰なんてものじゃないからな、あいつは」
「それも一旦殴りだしたらしつこいしな」
「何発も何発も殴ってな」
「いてえんだよ、力だけはあってな」
 こうした教師がいても誰も学校の外に訴えないと何も処罰されない、これが日本の学校というものである。
 そしてだ、部活でもだった。
 部活の生徒達は暗い顔で他の部活の生徒達に漏らしていた。
「中学校で生徒に突きするんだよ、あいつ」
「それってまずいだろ」
 その話を聞いた一人が顔を顰めさせて言った。
「中学校で突きってな」
「そう思うよな、やっぱり」
「中学校で突き駄目なのは中学生はまだ身体が出来ていないからなんだよ」
 それで突きの様な技は禁止されているのだ、柔道でもそれは同じで絞め技も危険ということで禁止されている。
「それあいつがやってるのかよ」
「ああ、馬尾がな」
「顧問がそれ知らないのか?」
 話を聞いた生徒は驚いた顔で言った相手に問い返した。
「まさかな」
「言われても俺は突きが得意だって言うんだよ」
「それ理由になってないぞ」
 身体が出来ていない中学生に突きをする行為のだ。
「全然な」
「やっぱりそう思うか?」
「当たり前だろ、おかしいだろ」
「やっぱりそうか」
「そうだよ、どう考えてもな」
 おかしいというのだ。
「しかもあいつ背は一八〇あって体重も百キロあるだろ」
「その体格でな、しかもな」
 話す剣道部員達はここでシャベルを下から上に思いきり突き出す仕草をしてみせた、相手の喉を狙う感じで。
「こうした突きもするんだよ」
「何だよ、それ」
「いや、シャベル突きっていうな」
 そうした名前の技だというのだ。
「これ出して来るんだよ」
「それ普通の技か?」
「違うみたいだな、試合でやったら即刻退場になるってな」
 剣道部員はこう彼に話す。
「練習試合で相手の中学の三年の人がびっくりしてたよ」
「だろうな、それでその技をか」
「俺達にかけてくるんだよ」
「そんな技喰らったらまずいだろ」
 話を聞く彼の顔はいよいよ強張った、そのうえでの言葉だった。
「それこそ喰らったら痛いなんてものじゃないだろ」
「すげえよ、痛いなんてものじゃなくてな」
「そんな試合で使ったら退場になる様な技を自分の部活の生徒にかけるのか!?」
 話を聞く彼はいよいよ唖然となっていた、それで言うのだった。
「あいつそんなことまでしてるのか」
「普通試合で使ったら退場になる技生徒しないか」
「しないだろ」
 彼は即刻答えた。
「というか中学の試合で突き使ったらどうなるんだよ」
「まあ怒られるか?審判の先生に」
 剣道部員も自分なりに考えて答えた。
「そうなるか」
「あのな、反則技生徒に使う先公なんて普通いないんだよ」
 彼は常識から言い切った。 
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