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鞄の中

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第四章

「占い師をしておりますじゃ」
「この人魔術に詳しいですから」
「呪文とか書いてあったらすぐにわかりますから」
 お婆さんが魔術を見破るというのだ。
「絶対に見破りますよ」
「魔術なのかどうか」
「どうぞ」
 そう言われても笑って応えるだけのホンダだった、かくして。
 お婆さんを中心にして鞄の外も中も小さな袋の中も全て調べられた、それこそ隅から隅までだ。
 結構長い時間調べた、だがだった。
 お婆さんは確かな顔でこう言った。
「魔術の類はありませんですじゃ」
「えっ、ないんですか」
「魔術は」
「間違いありません」
 お婆さんは言い切った。
「文字も何も」
「じゃあ文字を使わない術ですか?」
「石とかそういうのを使って」
「鞄自体に術をかけているとか」
「違うんですか?」
「それもないですじゃ」
 お婆さんは魔力もチェックした、だがだった。
 それもなくそれで他のファン達にも言った。
「全く」
「では魔術雨は使っていないんですか」
「この人は」
 ファン達はお婆さんの話を聞いてからあらためてホンダを見た、彼は今も明るいにこやかな微笑のままである。
 その彼にだ、ファン達は言うのだった。
「本当に手品ですか?」
「ただの手品なんですか?」
「さて」
 ここでもこう言うだけだった。
「どうなのでしょうか」
「いや、そこで誤魔化すのはないでしょ」
「普通に」
「ちょっとそれはないんじゃ」
「そうされたら困ります」
 手品か魔術かわからないからだ、これでは困るのも当然だ。
 だがホンダは言わなかった、それでだった。
 彼のマジックが手品か魔術なのかという論争は続いた、流石に魔女狩りを言い出す人間はいなかったが。
 彼に関する謎は続いた、このことは事務所のスタッフ達も聞いていた。
「何かかえって評判になってるな」
「手品なのか魔術なのか」
「ネットでもテレビでも言ってるし」
「仕事の依頼もさらに増えたな」
「いいことなのか?」
 彼等はこのことについてこう考えだした。 
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