| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ソードアートオンライン VIRUS

作者:暗黒少年
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

シード

 
前書き
ストック切れました 

 
 ゲツガは再びシードに接近して、殴りかかる。しかし、シードは再びノイズの中に姿を消した。だが、ゲツガはそのノイズが消える前にその中に腕を突っ込んだ。だが、その瞬間に腕から体にかけてびりびりとしびれたような痛みに襲われる。

「ッ!!」

「無駄だぜ!お前はもう感染者でもないただのプレイヤー!この中に入れるのは感染者やウィルスだけだ!」

 シードの声だけが聞こえる。ゲツガはすぐにノイズから腕を引き出して押さえる。

「クソ野郎が……」

 そしてあたりを見渡す。次からはダメージを食らい続けるわけにもいかないためノイズの出る瞬間のパターンを把握するためだ。例え、どんな物にも必ず何かがあるはずだ。あたりを警戒しながらそのほんの僅かかもしれない変わったことを探す。

 しかし、その間にもシードの攻撃を攻撃は止まることがない。死角からの攻撃。普通に避けれる奴もいるのだがそれはそこに気配、敵意があるためできる芸当であり、ほぼ同時にこられては避けることも出来ない。

「ほらほら!どうしたどうした!?このままじゃやられちまうぞ!」

「がっ!!」

 背中から来る攻撃。それは避けることも受け流すことも出来ない。今の自分じゃまったくと言っていいほどたちうちできない。

「いい加減姿を現せ!」

 ゲツガは攻撃を受けた瞬間に素早くそのほうに拳を振るう。しかし、そこにはすでに何もない。ノイズができたと思われる空間の歪みもすぐに消えてしまう。

 この歪みが出てくる所に先回りしようとしても結局は背後にほとんど出てくるため、認識することは出来ない。

「おら!」

 更に背後からの攻撃で転倒せられる。幸いなことはシードの攻撃のダメージが少ないことだ。これがもし大ダメージとなるとたまったものじゃない。

「クソ野郎!!」

 ゲツガはすぐに受身を取ってそちらを向くがやはりそこには何も残っていない。再び、背後からの攻撃によって転倒する。こんなんじゃ埒が明かない。何か策さえあればいいのだが、そんな考える時間も与えられない。

 立ち上がるとフィールドを走り始める。止まっているだけではそこで狙われるだけだろう。それなら少しでも時間を稼ぐためにフィールドを駆け巡る。

「それで!」

 しかし、それも無駄だった。走り回っても背後からの攻撃、避けることも出来ず再び転倒する。しかし先ほどの感触よりも若干違うことに気付いた。

 完全にはゲツガの体を捉えることは出来ていない。それどころか先ほどの攻撃は殴る蹴ると言ったものではなく、どちらかというと掴むような感覚だった。それならと思い再び立ち上がり、走り回る。

 またしても掴むような感覚で体が引っ張られる感覚に襲われる。しかし、ゲツガはそのまま腕を背中まで回し掴むことに成功した。

「出て来い!!」

「うおぉ!?」

 ゲツガはそのまま体を反転させるとノイズから出ている腕を引っ張る。そこからは先ほどと同じくシードが出てくる。

 ゲツガはそのまま首の後ろにエルボーを落とす。そして更にそのままのど元を潰すような攻撃をした後、そのまま踵落としを決めて地面に叩きつける。だが、これほどの攻撃を食らわせてもまるでダメージを食らっていない。

 ゲツガはそのまま足を脇に挟むと体をエビ反りにさせるとそのまま首も持ち上げ体を完全間接とは真逆の方に曲げた。エビ反り固めとキャメルクラッチをあわせたような感じだ。

しかし、シードはそれでもまったく表情を変えない。苦しいとも思わないのか。しかし、突然シードの体にノイズが走りだした。

「ちッ!またか!この体はまったく安定しない!!」

 急に体からノイズが発生すると急にウィルスの気配が弱くなる感じがする。すると、急に先ほどの感じではない声が聞こえる。

「た……すけ……て……くだ……さい……だれ……か……」

「お前……シュートって言うプレイヤーか!?」

 急に雰囲気が変わったので話しかける。

「あ……な……た……は…?」

「俺はゲツガっていう!お前はシュートって言うプレイヤーであってるのか!?」

「は……い……そう……です……」

「意識をはっきりさせていろ!また乗っ取られるぞ!!」

 ゲツガは呼びかけてシュートの意識をなるべくはっきりさせようとするが、シュートは抗っているがそこまで長く持たないことはすぐ分かった。

「ボクを……たおし……て……。こいつを……お……いだ……して……ください、……はや……く……」

「わかってる、それが出来たら苦労しない!とにかく、何か倒せる方法を知ってるなら教えてくれ!?」

 ゲツガはそう聞くが、シュート自身もわからないらしい。これでは絶対に勝てない。

「と……にかく……ボク……の……なかから……出せば……何とか……」

「だから、そのやり方がわかれば苦労しないって!!」

 そして、再びシュートの体にノイズが走る。すると体からまたウィルスの感覚が漏れ出しているというような感じがシュートの体からしてくる。

「はあ、はあ。やっぱり体が安定しない……いい加減、あっちのほうの開花して入れ替わるか……ゲツガ自体に取り付きたい……」

 開花や入れ替わり、その意味は自分には理解できない。それに自分に取り付く。それは、自分は再び感染者になることだろう。それだけは絶対にならない。そのためにはこいつはここで倒しておかなければならない。ゲツガは五秒の時間制限により固定していた足と首が解かれる。ゲツガは素早く離れて立ち上がろうとするシードに向けて膝蹴りを入れる。

 だが、それを片腕一本で止められる。

「いい加減諦めろ。諦めも肝心って言うだろ?」

 そしてシードはゲツガの膝を掴んで持ち上げると地面へと叩きつけた。

「がはっ!!」

 そのまま意識が飛びそうな痛みが頭から体全体に走る。まさかこれは、

「どうだ?久しぶりの感覚は?」

「まさか……ペインアブソーバーを切ったのか……」

「切ったっていうよりも一瞬だけなくしたって言ったほうが正しいな。これ以上使うとさすがに俺がばてるから使えないけどな。でも、さっきの攻撃だけでも十分効くだろ?」

 そう言って叩きつけたゲツガの頭を持ち上げる。

「ぐあ……」

「どうだ?久しぶりだろ?負けるって感覚。いや、そうでもないのか?SAOで何回も死に掛けてたし、ALOでも何回かあったし。だが、リアルではそんなことなかったお前にとっては最悪の気分じゃないのか?」

 確かに負けるのは嬉しい感覚じゃない。だが、負けるよりも今は不快だ。こいつのような奴に完全に押し負けているほうが自分にとっては、最悪の気分だ。

「暴れられても困るし、極限の状態まで減らさせてもらうぜ!!」

 そして、ゲツガをそのまま地面へと叩きつける。

「ごはぁ!!」

 先ほどシードが言ったとおり、先ほどだけしかペインアブソーバーは切れないらしい。そのため痛みはないが頭に不快な感覚が頭にかかる。それも何度もされたおかげでHPも完全にレッドゾーンの残り1ドットというところまで減らされた。しかも、感覚までもがおかしくなった。

「さてと、これぐらいやれば大丈夫だろ。あいつの体よりもまずはお前の体を使わせてもらうか」

 そう言うと地面にゲツガを投げ捨てる。そして近づいて、そのまま馬乗りになる。そして首元を持ち上げてゲツガの顔を自分の顔に近づける。こいつは何をする気なんだ。その瞬間、シードは口を大きく開けた。

「あー」

 そこにはまるで何かのうごめく卵のようなものがある。そしてその中には、ノイズの走った物体がはいっている。

 ゲツガはその瞬間、その口に向かって手を伸ばしそのまま突っ込んだ。

「おぼぉ!」

「気持ち悪いんだよ……顔近づけてくるな!!」

 そう叫んでそのまま口の中に入っていた卵のような物体を掴んでそのまま無理やり引き抜いた。

 すると、急にシュートの体からウィルスの感覚が消えた。その代わりに手の中にうごめく感触がある。シュートの体はまるで糸が切れたように崩れ落ちる。

 ゲツガもそのまま地面に頭をぶつけそうになるが何とかそれを防いだ。そして、口に突っ込んだほうの手を恐る恐る開いてみる。そこには先ほどシュートの口にあった半透明の紫色の水晶のようなものがあった。そしてその中にはノイズが発生していた。

「おい、テメェ!なんてことしやがった!!」

 その中から変な声が聞こえた。声は全然違うが喋りからしてこの中にいるのはシードだろう。

「種(シード)ね……そういう意味で名づけられているんだな」

 その形からゲツガはその名前の意味を理解する。種(シード)。しかも、こいつは自分から相手に埋め込むというまるで一昔前のエイリアンの映画を思い出してしまった。

「案外あっけないもんだな。お前から自分の正体を現してくるなんてな」

「離せ!!」

「嫌だね。お前を離すとまた変なことをしかねないからな。それに、お前のせいで体のあちこちが不快なんだよ。だからこのまま破壊する……って言いたいとこだけど、俺の力じゃお前を倒すことが出来るかわからないし、破壊することも出来るかすら不明だからな。だけど、お前が送られて来たってんなら、あいつらがまた動き出したってことになる。だから、そのためにお前は利用しなきゃなんないからな」

 そう言ってそのままコートのポケットに突っ込んだ。そして倒れているシュートを見る。まだ意識は戻っていないようで寝転んだままだ。しかし、このままにしておくのは駄目だろう。

「悪いけど倒させてもらうぜ」

 ゲツガはシュートに近づいてから軽い攻撃をしてみる。やはり、ウィルスが抜けたおかげで普通に攻撃も食らうようになっている。それを見て安堵するとゲツガは拳を握り、そのままシュートの鳩尾に向けて勢いよく振り下ろした。

 なるべく、一撃で終わらせるように加減をせずに拳を振り下ろした。シュートの体は反射的に相当な勢いで跳ね上がろうとしたがゲツガの拳でそれを抑えられる。そして、そのままシュートのHPは留まることがなく空になった。

 それと同時に観客席のほうで僅かながらノイズが発生した。たぶん、映像が切れるんだろう。しかし、自分の押されている映像とシードは言っていた。普通に観客はおかしいと思うんではないだろうか。

 観客はゲツガの名前を何度も叫んでいた。やはり、映像がいきなり消えてからその後の自分とシュートが行っていたことと違うのだろうか。しかし、どちらかというと観客の声音からして怒りがないとは読み取れる。

 ウィナー表示とともにゲツガの名前が出た。そして先ほどの試合の映像がリプレイで放送される。そこに映った映像は最初は違うものの後はどことなく先ほどの戦いの最後に似てきているものであった。

「もう、何がなんだか俺にはさっぱりだな……」

 ゲツガはそう呟くと、目の前にウィンドウが現れる。ウィンドウにはアイテムと新規流派を設立とあった。ゲツガは何の迷いもなく新規流派を選択して、たくさんの選択肢を選んで作り終えると息を吐いた。

 会場の熱気はまだ収まっていないせいか観客の声がこちらまで届く。そしてゲツガはすぐにフィールドから降りて控え室へと戻る。

 静かな場所でゲツガは義父さんや義祖父さんに報告のためにログアウトボタンを押した。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧