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蒼天に掲げて

作者:ダウアー
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十話

 さて、皆も予想がつくだろうがあれから五年。
 俺とジジイはこの村に住み、ジジイは村長の仕事を、俺は力仕事の手伝いや狩り、修行をしたきた。
 たまにジジイと勝負をして生死の狭間を彷徨ったり、賊の強襲を一人で討伐したりとするうちに、ジジイと互角以上に戦えるようになっていた。

 ま、ジジイが年老いたのも一つの原因ではあるだろうがな。

『まあいいじゃない、今ならあの呂布にだって勝てるかもしれないわよ』

(恐れ多いことを、確かに俺も人間離れしてきたがまだ無理だろう)

『一対一なら勝てるわよ、私が保証してあげるわ』

(神が保証するなら心強そうだな)

『ええ、大船に乗ったつもりでいればいいわよ』

(ま、呂布がどうのこうのより、今は先に次の行動を考えるべきだな)

 店屋の前に置いてある長椅子に座り、団子を齧りながら照姫にそう伝える。

『それもそうね。そろそろ黄巾の乱が起きる頃だしね』

(ああ、そうだった。ならまずはどっかの国の一兵卒にでもなるか)

『ええ、それがいいわね』

「ならさっさとジジイにそういって旅に出るか」

『そうね、でも』

(ん?)

『貴方の弟子は着いていきたがってるみたいよ?』

「柏也が旅に出るなら私もいくー!」

 俺は今日一人で団子を食べていたはずなんだが……まさか!?
 俺の隣からの声に、ぎょっとして振り向くと、文が俺の団子を食べていた。

「お前、今日は門番の日じゃなかったか?」

「お父さんに代わったもらったの、柏也のとこにいくっていって」

 そうだった、あのロリコン親父は娘にデレデレなんだった。

 文の親父は鍛冶職人で、そのゴツい体を駆使して毎日鉄を打っている。が、一度娘のことになると全ての仕事を放棄し、娘のために全力で行動する馬鹿親である。

「それで、どこにいくの柏也?」

「あーダメだ、お前は連れていかない」

「絶対いくもん!」

『あーあ、どうするのよこの子。テコでも動きそうにないわよ?』

(そんなもんお前、決まってるだろう)

 俺は最後の一本になった団子を口にくわえようと手を伸ばす。もちろん罠だ。文は昔から子供のように食い意地が張っているのを逆手に利用しようってわけ。

「私のー!」

 そこへすかさず奪いに来るわけだ。だから俺はその団子を上に放り投げる。

「あー! 団子ー!」

 団子を追いかける文を見てから、店の娘さんにお金を渡し、ジジイのところに向かう。

『行動パターンを把握しているとわね……』

(そりゃ毎日修行しに森へいく時着いてくるからな。いつも町に出る前にああしてるわけだ)

『なるほどね』

 照姫と他愛もない話をしていると、ジジイの仕事場に着いた。

「さて、またなにいわれるか分かったもんじゃねえが、いくか……」

 どうせ拒否ってくるだろうから無理矢理になるだろうが、そこは仕方ない、諦めてジジイと喧嘩でもするか。

「おいジジイ、俺は旅に出ることにしたぞ」

 俺が扉を蹴破って部屋に入る。
 と、そこにはジジイだけではなく、三人の旅人が驚いた顔でこちらをみていた。





「ふむ、風、いつ頃村に着くのだ?」

「ねえ稟ちゃん、いつになったらその村に着くんですかー?」

「そんなこと私に聞かないでください!」

 私達は今、とある村を目指しておる。なんでも一度は飢餓でなくなりかけた村を、とある二人組が村に住み着き、村を豊かにしたのだとか。
 さらにそれからというもの、その村は次第に発達し、商人達の話題にもよくあがる村になり、さらにさらに二人組が住み始めた時期、この近くにいた賊共が一斉に姿を消したのだとか。

「早く見たいものだな、その二人組とやら」

「そうですねー、風も早く見たいです」

「あ、二人共、あれじゃないですか?」

 そういって稟が指差す方向を見てみれば、確かに村のようなものが小さく見えた。

「おお、でかしたな稟」

「本当に良かったです。でもなんで眼鏡をかけている稟ちゃんが一番最初に発見したんですかー? 普通私たちの方が目はいいと思うんですけどー」

「私だって知りませんよ!」

 二人のやりとりを微笑ましく見守り、私達は少し足取り早く、村に向かって歩き出した。






 私達が村の入口に着くと、門番が二人私達に近づいて来た。

「旅人か、この村になんのようだ?」

「はいー、風達はここの噂を聞いて立ち寄った者ですー」

 風が柔らかな口調で門番に告げる。それを聞いた門番一人の顔が少し赤くなっており、なるほど、この門番はそういう趣味かと納得した。

「ああ、そうですか。ではどうぞ」

 もう一人の門番もにこやかな笑顔で通行を許可し、大通りらしい道を歩き出す。

「意外と簡単に通してもらえるのだな、貴族の者達の町ならこうはなるまい」

「ええ、そうですね。やはりこの村の領主はすごい人なのでしょう」

 稟がどこで買ったのか本を読みながら私の独り言に参加してきた。

「そうなのか? どちらかといえば簡単に通すとまずいのではないか?」

「そうともいいますけど、あの門番の二人を見れば話は別ですよー」

 私の問いに今度はどこの店で買ったのか棒付の飴を舐めながら風が答える。

「私は普通の門番にしか見えなかったが」

「ええ、見た目は普通の門番でしたよ」

「ですが星ちゃん、あの人達の目をしっかり見ましたかー?」

 風にそういわれて先程の門番達を思い出す、ああ、そういうことか。

「ふむ、つまり我らをこの村に入れて弄ぶつもりというわけか」

「は!? まさかあのような大男が風の幼い身体を弄び――ッぶーーーーーーーーーーー」

「はーい稟ちゃん、トントンしましょうねー」

「フガフゴフガ……」

 私の発言により稟が大通りで鼻血を吹く。その光景に野次馬が集まり中々恥ずかしい状況なのだが、風はいつものように稟の鼻血を止めにはいった。

「あと星ちゃんも違いますよー、実はあの人達の目には余裕の表れが見えたんです」

「ほう……」

「なのでたぶん、私達ごときをいれても大丈夫だと判断したのでしょう」

「なるほど、舐められたものだな」

 風にそういわれ、ますますその二人組に会いたくなった。

 この趙子龍に対し、ごときだと? 是非戦ってみたいではないか!

「あーあ、星ちゃんがやる気出しちゃったじゃないですかー、稟ちゃん」

「私のせいじゃないでしょ風!」

 そうして私達は団子屋の店主に領主の居場所を聞き、団子を食べながら領主仕事場にたどり着く。

「失礼、貴公がこの村の領主かな?」

 私が最初に入ると、そこには屈強な爺殿が筆で書物を書いていた。そして、こちらを振り向くと、私達の格好を見てからにこやかな笑顔で礼をとった。

「おお、なんじゃ先程村に来なさった旅の者達ですか。ささ、汚いですがこちらへどうぞ」

 そういわれ三人共椅子に座り、爺殿の言葉を待った。

「まあくつろいでくだされ、それで、なにをしにここに来たのですかな?」

「はい、私はこの村の発展について聞こうと思いまして」

「私はお爺様の外交の武勇伝をー」

「私はこの村の武人について」

「はっはっは、なるほどのう。ならお主等二人は儂が話そう。もう一人の青い髪の武人の方はしばし待たれい」

 爺殿にそう告げられ、私は自分だけ突っぱねられた思いになり、立ち上がろうとすると――

 黒髪の、見たこともない大きな武器を二本背負っている男に出会った。




「おいジジイ、俺は旅に出ることにしたぞ」

 俺が部屋に入ると、三人の旅人がこちらを見ていた。

『あ、やっちまったわね貴方』

「……こほん、失礼しました――うぐ!?」

「待て柏也、ちょうどお主が来るのを待っておったところじゃ」

 ジジイにそういわれ、俺は渋々適当な場所に移動する。

「そこの武人の方がお主と戦いたいと申していてな」

 ジジイが見やった武人を見ると、その青髪の武人は目をキラキラと輝かせながらこちらを見ていた。

「…………なんかやだ」

「そういうでない、その者に勝てばお主が旅に出るのを許可してやろう」

 俺が渋ると、ジジイがナイスな条件をつけてきた。

「なんだ、簡単じゃねえか」

「なんだと貴様?」

 先程とは打って変わって不機嫌になる武人に、俺はさっきより大きな声で挑発する。

「簡単だっていったんだよ、ほら、さっさとやろうぜ」

 俺がニヤリと笑うと、武人も苛立ったような苦笑いをする。

「いいだろう、私が勝てば先程までの侮辱、撤回してもらおうか」

 どうでもいいけどこの人、目が全然笑ってねえぞ。

『はあ、全く柏也は相手の力量も把握せずよくいうわね。まあ大丈夫だと思うけど』

 そして、俺の初の武人との決闘が始まるのだった。


 
 

 
後書き
 少し言い訳になってしまいますが、星がすごく短気なのは作者の文章力の少なさゆえです。
 星が好きな人は本当に申し訳ありません。作者も星は好きなキャラなので、もっと良いキャラにできるよう心がけます。 
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