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駄目親父としっかり娘の珍道中

作者:sibugaki
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第10話 人は守るものがあってこそ強くなるもの

 激しく震える空気が頬に当たり、かすかに頬がひりひりと痛んだ。
 新八は肌でそれを感じ取っていた。今、自分の目の前では二人の猛者が激しくぶつかりあおうとしているのだ。
 一人は普段から見慣れた坂田銀時。だが、もう一人はなんとまだ年端もいかない幼い少女であった。
 されど、この少女は見た目からは想像がつかないがとてつもなく強い。ユーノ曰く、これらは魔法の力を用いていると言うそうだ。
 つくづく恐ろしい話だと思えた。
 自分達の世界にはない力。魔法の力。
 今までお話の世界や二次元の世界での産物だとばかり思っていた。それがまさか現実にあったなんて。
 しかも、その力がまさか自分達に牙をむくのだから素直に喜べない現状が此処にある。

「心配すんなよてめぇら。こうして俺が木刀を握った以上、こんな盗んだバイクで走り出してる真っ最中の様なケツの青いガキに負ける筈ぁねぇんだよ」

 木刀を肩に置きながら二人を安心させようと言う心の現われでもあろう。銀時がそう告げて来た。
 今まででもそうだ。まだ銀時と知り合って1年弱と言う付き合いだが、それでも新八には分かる。銀時はどんな苦難も乗り越えてきたのだ。
 例えどんな強い奴が相手でも、どんな状況に立たされたとしても、銀時は勝ち続けてきたのだ。
 だが、今回は分が悪い。何せ相手は魔法とか言う不可思議な力を使うのに対し、こちらは著しく弱体化している。
 無論銀時もその例に漏れてない。

「ぎ、銀さん……ムチャだ。今の銀さんじゃその子には絶対に勝てませんよ!」
「バーロィ! 古今東西のジャンプ漫画を思い出してみろ。こう言う無理難題の時にこそ主人公フラグが発生してなんやかんやで結局主人公が勝っちまうシチュエーションが出来上がってるんだよ。つまり、この小説の主人公は俺だから、この戦いで俺が負ける確立はほぼゼロにも等しいと言う事になるんだよぉぉぉ!」
「どんな根拠でそんな事が言えるんだあんたはぁぁぁ!」

 明らかに根拠のない発言にツッコミを入れる新八であった。されど、そんな新八の言い分など無視しつつ、銀時とフェイトは互いに睨み合った。時として数刻経った後、銀時とフェイトは激しくぶつかりあった。フェイトの杖と銀時の木刀が互いに激しくぶつかりあい、凄まじいまでの火花を舞い散らしていく。何故木刀と杖がぶつかった際に火花が舞い散るかは疑問だが、とにかく激しい戦いが新八の目の前で勃発したのだ。
 互いに前へと進みあう力と力。それらが前へ進もうと激しく自己を主張し続けている。
 だが、どちらも激しいまでに主張をするが為に一向に前に進まない。魔法とは恐ろしいものだと思えた。銀時の目の前に居るのは恐らくなのはと同じ年であろう9歳位の華奢な女の子だ。その女の子が大人である銀時と互角に張り合っているのだ。
 幾ら銀時が弱体化したからと言ってもこれは驚きである。

(くそっ、力でも駄目か……かと言って離れて戦おうにもこいつのスピードは常人離れしてやがる。とても追い付ける自信なんかねぇ! どうする、どうやってこの化け物に勝つ?)

 銀時の脳裏には幾つもの戦法が編み出されては却下され、くずかごへと捨てられて行った。瞬時に別案が提案されるが、その案も目の前のフェイトを倒すには至らず、却下されて捨てられていく。どの案も同じだ。幾つもの案が作り出されては同様の速度で捨てられていく。その繰り返しだった。

「手がお留守だよ!」
「ちっ!」

 咄嗟に距離を開ける。だが、そんな銀時に向かい弾丸の速度で再び距離を詰めて切り掛かってくる。木刀でそれを捌こうにも振り下ろされたその一撃はまるで巨大な丸太棒を食らってる感覚だった。
 一撃一撃が異常なまでに重い。
 下手すると腕がもげるかも知れないと思われた。
 それは、単に彼女の力だけでも魔法の力だけでもない。やはり弱体化が大きく響いているようだ。

「くっそぉ! 何でこの俺を狙うんだ? まさか俺の金○が狙いなのか?」
「私の狙いは貴方の(たま)だけ。他には何も興味はないよ!」
だぁかぁらぁ、何で俺の命を狙う訳! 俺自慢じゃないけど子供に恨み買うような事ぁしたことないんだけど!」
「この大嘘つき!」

 突如、フェイトが怒号を張り上げた。かと思うといきなり横薙ぎに杖が振るわれてきたのだ。それには溜まらず避けようとしたが間に合わず杖の腹に殴られて後方へと吹き飛ばされる。思い切り腹部に命中し咽返る銀時。
 そんな銀時に向かい杖を突きつけながらフェイトは睨んだ。

「貴方が……貴方があの子にどんな仕打ちをしたか、それを忘れたと言うの?」
「あの子? それってまさか! お前、なのはを知ってるのか?」

 銀時は驚愕した。まさかフェイトの元になのはがいるとは。となれば考え方を変えればなのはこのフェイトに隔離されていると言う事になる。

「てめぇ、家の娘をさらって何するつもりだ? 言っとくが俺から身代金をせしめようとしても無駄だぞ!」
「そんなつもりは毛頭ないわ! 只、私はあの子を、なのはを救いたいだけ!」
「救うだと?」

 何が言いたいのか分からなかった。一体何を言いたいのだろうか? 
 自分からなのはをさらっておいてその目的が救いたい。
 理解に苦しむ銀時を他所に、フェイトは更に話しを続けた。

「なのはの話を聞いて私は悟ったの! お前は、お前はなのはを毎日毎日牛馬の如く働かせて、自分は何もしない自堕落な生活を送っている駄目人間だと言う事実を!」
「な、何を馬鹿な事言ってやがんだ! 俺がそんな酷い事する筈ねぇだろうが!」
「嫌、思いっきりしてますよね。その子の言ってるとおりですよねぇあんた」

 何時の間にか起き上がった新八に鋭いツッコミをされてしまった。
 確かに、フェイトの言う通りでもある。
 なのはは万事屋の家事炊事から、仕事の請負や金銭管理、客の応対まで何でもこなしているのに対し、銀時は普段からグータラな生活を送る毎日。
 たまに仕事が入っても面倒くさがりなのでたまに嫌がる始末。遂にはなのは自身お登勢の所でバイトする事になる始末である。

「ほらね、やっぱり私の予想通りだよ!」
「るせぇ! たまたま当たった位で良い気になってるんじゃねぇよ! それにそれがどうした! そんなの他所の家でも普通にやってる事だろうが!」
「してねぇよ! 何でもかんでも自分と一緒だと思ってるんじゃねぇよこの駄目人間!」

 ツッコミを入れる新八。更に更にフェイトの話はまだまだ続いた。そう、フェイトが以前なのはの話を聞いて歪に想像してしまった妄想の産物を此処で皆にぶちまけたのだ。

「それで、なのはが稼げなくなった暁には、何処かの質屋になのはを売り払って、あの子は一生みじめな思いをして生活しなきゃならない不幸なレッテルを貼られる事になるのよ!」
「おいぃぃぃぃぃぃ! どんな頭の発想したらそんな答えが浮かんでくるんだよぉ! そんな事絶対にする訳ないだろうがぁぁぁ!」

 全くの言いがかりであった。確かに最初の言い分はあながち間違ってはいない。
 だが、後半は完全な捏造だ。
 銀時は別になのはを売り渡す気はない。もしそんな事をしようものならお登勢に殺される。
 それはなかったとしても破格の請求が待っている筈だ。結果として損をする羽目になる。
 そんな事実が分かってるのにわざわざなのはを質に入れるなどと言う馬鹿な真似はしない。

「てめぇぇぇ、そんな恐ろしい事企ててたのかこの野郎!」
「マジで鬼畜ネ! 人間の風上にも置けないクズ野郎ネ!」

 が、フェイトのその捏造を信じ込んだ新八と神楽が物凄い形相で銀時に迫ってきていた。どうやら二人共フェイトの言い分を完全に信じてしまったようだ。
 二人にとっても既になのはは切っても切れない関係となっていたのだ。新八にしてもなのははと年の離れた妹の様な感じで見ていたし、神楽にいたっては本当の姉妹の様に接してきたつもりだ。そのなのはをよりによって質屋に入れようとは外道の極みとも言える。

「ちょっ、待てよお前等! あれはこいつの与太話であって本気じゃないんだよ。それくらい分かるだろ? お前等だって馬鹿じゃないんだしさぁ。な、なぁ?」
「黙れよ人間のクズ。てめぇみたいな最低野郎は即刻ギタギタにしてその腐った根性叩き直してやるよぉ!」
「覚悟するヨロシ! この腐れ天パー!」

 その言葉と共に激しいまでのリンチが繰り広げられた。すっかり誤解してしまった新八と神楽が無抵抗な銀時に向かい殴る蹴る、木刀でひっぱたくなどの暴虐の限りを尽くしていたのだ。
 その間、ひっきりなしに銀時が泣き叫んでいたのだが、今の二人には正しく何処吹く風の如く聞き流していたのであった。

「て、てめぇら……人の話をだなぁ……」
「見損ないましたよ銀さん。あんた自分の娘を質に入れようなんてあんた人間じゃない。只の外道だよ!」
「その通りアル! もう二度と私やなのはに近づかないで! もし半径20メートル以内に近づいたらその場で八つ裂きにするアルよ!」

 完全に誤解してしまっていた。すると、其処へ杖を携えたフェイトが歩み寄って来る。目の前の新八と神楽と同じ位に殺気だっているのが見て取れる。

「畜生、こりゃマジでやばいんじゃねぇの?」
「覚悟して。なのはを救う為に私はお前を倒す!」

 そう言って杖を振り上げるフェイト。トドメを刺すつもりのようだ。

「ちょ、ちょっとフェイトちゃん? 幾ら何でももう良いんじゃないかなぁ? 流石に銀さんも反省しただろうし」
「そうネ。それに銀ちゃんが死んじゃったらなのはもちょっぴり悲しむ筈ネ」

 流石に銀時が死なれては困ると判断したのか新八と神楽が止めに入る。だが、そんな事ガン無視でフェイトが迫ってきた。

「その必要はないよ。こいつが死んでも、なのはは私が守るから。私がずっとなのはを守り通すから!」
「おいぃぃぃぃ! こいつさりげなく百合宣言しちまったよ! 何、お前なのはが欲しいの? 悪いけどあげないよ! 第一お前等同姓同士で結婚なんて出来ないだろうが!」
「そんなの、公式設定とかをあれ(・・)してこれ(・・)すればどうにかなる物だよ」
「ならねぇよ! ってか一体何するつもりだ! 恐ろしい、こんな可愛い顔した子からそんな恐ろしい言葉が飛び出すこのご時世が怖すぎるぅぅぅ!」

 頭を抑えて叫ぶ銀時。
 が、そんな銀時などお構いなしにフェイトは杖を高々と振り上げる。今度こそ銀時の脳天から真っ二つにしようとしたのだ。
 だが、いざそれを振り下ろそうとした時、フェイトは気付かなかった。背後に近づく巨大な影に。

『ガブッ!』

 フェイトは何が起こったのか全く分からなかった。いきなり自分の体が何者かに持ち上げられ、そして何故か頭部に激痛が走る事実に。

「え? 一体何が起こってるの? ってか、痛い! 痛い痛いいたたたたた!」

 痛みを認識しだしたフェイトが激しく暴れまわった。両足をバタバタ動かして必死に逃れようとする。が、フェイトを両手で掴んで、更に噛み付いていた定春の腕の力は凄まじく、そうそう引き剥がせる力じゃない。悪戯に体力を消耗するだけである。以下に魔法の力を得ていたとしても定春には敵わないようだ。
 しかし、其処でまたしても疑問が芽生えた。新八の時もそうだったが、何故か定春にも弱体化の傾向が見られないのだ。
 元の世界のままの力で定春はフェイトに噛み付いている。見れば、フェイトの額からは血が流れ出していた。定春の顎がフェイトの額の皮を抉ったのだろう。
 痛みが更に増し、それに伴ってフェイトの暴れっぷりも更にやばくなりだしていた。

「良いぞ定春! そのまま噛み砕くアル!」
「ちょっ、それって不味くない? この子そんな事したら色んなとこから苦情とか来ない?」
「心配ないアル! あの女きっと原作とかでも人気のないサブキャラネ。私の勘がそう告げてる筈アルよ」
「ほ、本当かなぁ?」

 分かる人なら分かると思うが思いっきり外れである。とにもかくにも、このままだとあのフェイトとか言う少女は出血多量か最悪は定春に頭蓋を砕かれてしまうだろう。このまま傍観すべきだろう。そう思えた。

「其処までだ定春。そいつを放せ!」

 だが、それを銀時が止める。それに新八も神楽も驚いていた。今まで自分を苦しめていた相手を助けようとしているのだから。
 普段は言う事を聞かない定春も今回ばかりは銀時の言う通りにし、さっきまで咥えていたフェイトを吐き出す。
 未だに頭に痛みを感じるのか、フェイトは頭を抑えながら立ち上がれず、そのまま銀時を睨んだ。
 ぐっと、銀時がフェイトの胸倉を掴み上げる。その目は正に真剣そのものだった。

「答えろ、お前は何でなのはを誘拐した? そして、なのはは今何処に居るんだ?」
「……」

 銀時の問いかけにフェイトは黙り込んだ。何が何でも答えない腹積もりだったのだ。だが、元々ドSな銀さんにそんな戦法が通用する筈がない。返って銀さんのS心に火を点けるだけであった。

「お~い、定春~。こいつ噛み砕いて良いぞ~」
「!!!」

 間延びした声で銀時が定春を呼んだ。それに対しフェイトの肩が大きく震える。今度また噛まれたら確実に頭蓋を噛み砕かれてしまうのは目の見えている。
 が、その定春と言えばフェイトの事などガン無視して、あろう事か銀時に飛びかかってきたのだ。

「んごわぁ! 何やってんだてめぇ! 俺じゃねぇ。そいつを噛めって言ってるだろう……」

 言い終わる前に定春の大きな口が銀時の頭を丸々と飲み込んでしまった。と、言うか銀時の肩辺りまで既に飲み込まれており、更にその口内では物凄く聞きたくない音が響いてくる。
 どうやら、先ほど定春が銀時の言う事を聞いたみたいな感じがしたが、別にそうではなかったようだ。恐らく単にフェイトが不味かったのだろうと思われる。定春も案外甘党のようだ。

「い、今の内に……」

 今ならば問題なく逃げられる。肝心の銀時は定春に飲み込まれているし、新八と神楽もそれの対応に手一杯なようだ。皆フェイトの事に構っていられない様子だ。その隙をつき、フェイトは未だに痛む頭を抑えながら横になっている猫の元へと急いだ。
 目の前に行くと横になった猫は微動だにしない。どうやら体が大きいが故に太陽光線を浴びる面積が増えた為か日向ぼっこに洒落込んだようだ。つまり、フェイトの魔力弾は蚊が刺した程度にも効いてないご様子だ。

「待っててね、すぐに戻してあげるから」

 フェイトがそう言い、杖こと、バルディッシュを振り上げる。




     ***




 既に定春の口には銀時の体が半分近く飲み込まれていた。外には定春の口から銀時の下半身が姿を現しており、とんでもない勢いで両足が動きまくっている。
 そんな銀時を引き抜こうと新八が銀時の足を引っ掴んで抜こうと頑張っており、神楽は神楽で定春が自分の意思で銀時を吐き出すよう促している。しかし、やはり神楽自身かなり弱体化している為、現状では定春の相手をするのもかなり厳しい。
 その為今では新八と同様に必死に銀時を助けようと頑張っている。弱体化した銀時では最悪の場合、本当に食い殺されかねないからだ。

「定春、お願いだから吐き出して! 今の銀さんじゃ最悪本当に食べられちゃうから。江戸の時と違って柔らかくなっちゃってるから!」
「吐き出すアル! 銀ちゃんなんか食べたって美味しくないヨ! 食べたらお腹壊しちゃうアルよぉ! 吐き出すアル! ペッて吐き出すアルよぉ!」

 たいして弱体化してない新八とかなり弱体化した神楽が必死に弱体化した銀時を引き抜こうと頑張っている。しかし、余ほど弱体化して柔らかくなった銀時の食感が気に入ったのか全く吐き出そうとしない。寧ろ先ほど以上に強く噛みまくる定春が其処に居た。
 もう既に銀時の上半身はかなりやばい事になってる気がする。早く引き抜かないとこの小説がR-18小説にくら替えしなければならない事態にいなりそうな気がしてきた。

「お願い定春! お願いだから吐き出して! でないとこの小説が本当にR-18小説に行かないといけない事になっちゃうから! 只でさえこの小説ってかなりやばいコラボレーションなんだから! 其処へ来て主人公が下半身だけ出てきた! 何てシーンを出したらそれこそ打ち切りになっちゃうから! デ○ドスペ○スになっちゃうから!」
「そうアル! 銀ちゃんはエンジニアじゃないアルよぉ! 只の駄目人間アルよぉ! ネ○ロモ○フを工具でやっつけられるスペシャルなエンジニアじゃないアルよぉ!」

 と、二人して某宇宙ホラーグロゲーを題材にしながらも必死に銀時を引き抜こうとしている。されど、今の所この中では一番定春が力がある為中々引き抜けない。と、言うより定春自身が今度こそ本格的に銀時を食べようとしている感が強く見られる。

「もうヤバイ! このままだと銀さんが本当に下半身だけになっちゃうよぉ!」
「諦めるな新八ぃ! 諦めたら試合終了アル! 最期の最期までしぶとく頑張るアルよぉ!」

 尚も諦めずに慣行を続ける。すると、その甲斐あってか、定春が大きく口を開く。その口の中から唾液と血液にまみれた瀕死の銀時が上半身ズタボロの状態で姿を現したのであった。

「ぎ、銀さん! 大丈夫ですか? 生きてますかぁ? 銀さんのRIGはちゃんと機能してますかぁ?」
「駄目ネ新八! 銀ちゃんの背中のRIG真っ黒ネ! さっきから耳元でピー音が止まないネ! 銀ちゃんもう手遅れになってるアルよぉ!」

 何時の間にか銀時の背中には奇妙なメーターがとりつけられており、それが真っ黒になって更に変なピー音を奏でている。
 ってか、これ何時までデ○ドスペ○スネタで行く気なのか。甚だ疑問である。

「う、うぅ……い、生きてる! 俺、生きてるのか?」
「銀さん!」

 瀕死の状態からようやく蘇生した銀時が目を覚ます。それを見た新八が安堵する。どうやら主人公が死んでしまうと言う最悪の結末だけは避けれたようだ。

「あ、危なかった。さっきまで俺の目の前に血塗れの女がいたんだ。そして仕切りに【一つになりましょう】って語りかけてきたんだよぉ。マジでビビったって。本当にマジで殺されるかと思ったぜ」
「あんた本当にマジでやばかったんじゃないの? マジで三途の川渡りそうになってたんじゃないのぉ!」

 どうやら後一歩遅かったら確実に銀時の上半身がなくなっていたかも知れない。
 何はともあれ間に合って良かった次第である。ところで、銀時が無事だったと言う時点ですっかり忘れていたのだが、最初に出てきたあの大きな子猫はどうなったのだろうか?

「そ、そう言えば、あの子猫は一体……」
「それなら大丈夫だよ」

 声がした。それも、頭上からだ!
 新八は振り返る。其処にはフェイトが小さくなった子猫を抱き抱えてこちらに降りて来たのだ。
 思わず新八は身構えた。それもそうだ。何せ相手はあの銀時すらも苦戦した相手だ。しかもさっき自分はこの少女にボコボコにされたのだから尚の事印象が悪い。
 しかし、どうやら今のフェイトには戦う気はないようだ。先ほどの定春が余ほど効いたのだろう。未だに顔色が悪そうだ。と、言うより傷口が塞がってないのか止め処なく血が流れ出ている。

「と、とりあえず、子猫は返すね。それと……坂田銀時に伝えて……次にあったら、確実に倒す……って……あ、頭痛い……目眩がしてきた」
「あんたこそ大丈夫ぅぅ! 寧ろ次に会う前にあんたが先に昇天しちゃいそうなんだけど! あんたが先に天に召されそうなんだけど!」

 確かに、新八の目の前ではヒットポイントが一桁並にまで弱ったフェイトがいた。定春に噛まれた頭を抑えながらも足取りが悪い。と、言うか足元がかなりふらついている。余ほど思い切り噛まれたのだろう。心底同情したくなってしまう。

「わ、私は此処では死なないわ! 私が死んだら、誰がなのはを守るの? 私は此処で死ぬ訳にはいかないのよ!」
「おいぃぃぃぃぃ! 何か話の趣旨がずれまくってる気がするんですけどぉぉ! 君って本来なのはちゃん目当てで戦ってないよねぇ? 確実にジュエルシード目当てだったよねぇ? 何時からそんな百合百合全開になっちゃったの? ってか、確実に君も僕達の仲間入りだよねぇ。確実に君も変態の道に片足踏み込んじゃってるよねぇ?」

 間違いない。この子もまた銀魂クオリティに組み込まれようとし始めている。
 恐らく、別の作品であればきっと真面目で控えめで可愛げのある感じで描かれていたかも知れない。しかし、こんなドSな人の元で描かれたが為に今はまだ出てきてない凄腕の女剣士並の百合百合っぽい感じの変態に成り下がってしまったのだから泣けてしまう。

「か、勘違いしないで! 私は変態じゃないわ! 仮に変態だったとしても、変態と言う名の紳士よ!」
「おめぇは何処のくま吉だぁぁ! 止めろぉ! これ以上醜態を晒すなぁぁ! これ以上醜態を晒したら、今度こそこの作品が終わるぅぅぅ! 絶対リリカルファンとかに苦情が来るよぉぉぉ!」

 頭を抑えて青ざめる新八。恐らく新八の中ではフェイトは実際かなりの高人気キャラだと思われてるのだろう。そんな重要なキャラを惜しげもなく壊すこの小説に心底恐怖を感じだしているのは言う間でもない事でもある。

「とにかく、伝言は伝えたからね! 次に会ったらトドメを刺すから! せいぜい金玉を洗って待ってなさい!」
「首を洗ってだぁぁ! あんた何卑猥な事恥ずかしげもなく口走ってんだ! もっと日本語勉強しろぉ! ってか、常識を勉強しろぉ! 最悪だよぉ、まさかこの小説でまともな人ってユーノ君くらいなのぉ!」

 当たらずも遠からずであった。恐らく、今の所ユーノ意外のリリカルキャラはてきめんぶっ壊れてる率が高い事が立証された。
 このままだと、これから先更にぶっ壊れたキャラクターが出そうで怖い。果たして、そんな破天荒で強烈なキャラクター達のボケを自分一人で捌いていけるだろうか?
 不安になってきた。

「そうだ、さっきからユーノ君が会話に参加しないのは一体何で?」

 すっかり忘れていた。前回の最後辺りから全くユーノが会話に出てきてないのだ。
 不審に思い足元を調べてみた。それは案外すぐに見つかった。
 大きく出来た銀時の足跡と思わしき場所。其処に丁度入り込む感じでユーノがペシャンコになっていた。どうやら戦闘の際に避けきれず踏み潰されたのだろう。
 銀時と同じくユーノまでもが虫の息であった。

「あああああぁぁぁぁぁぁ! ユーノくぅぅぅぅぅぅん!」

 瀕死のユーノを抱えて絶叫する新八。最悪の場面であった。真面目なキャラであるユーノが死んだら、もうこの作品で今の所まともなキャラが自分しか居なくなってしまう。そんなのは嫌だ! そう思える新八であった。

「新八、どうしたアルかぁ? ユーノのRIGも真っ黒アルかぁ? ピーって音鳴ってるアルかぁ?」
「いい加減デ○ドスペ○スネタから離れろぉぉぉ! 本当は背中にRIGなんかついてないから! ピーなんて音も鳴ってないからぁ!」
「何を今更言ってるアルかぁ! もう此処まできたらいっその事私達全員宇宙デビューするべきアル! 石村に行ってエイリアン狩りするべきアルよぉ!」
「止めろぉぉぉ! あれだって本当は余りにグロ過ぎて一部の国じゃ発売禁止になってるから! ネタとか使ってるけどプレイした事一度もないからね? だからお願いだからそんな詳しいネタとかしないでよね。答えられないから! 僕怖くて答えられないから!」

 青ざめた新八が言う。しかし、何時までもこのネタを引っ張ると流石に不味そうなのでそろそろ本筋に戻って欲しいところだったりする。

「今日はここら辺で引き上げるけど、覚えておきなさいよ坂田銀時! 私は絶対に、ずぇぇぇったいに貴方を許さないから! 必ず貴方を倒す! それじゃ」

 後味を爽やかにしようと懸命に努力した結果だろう。フェイトは定春に食らった大ダメージと慣れない捨て台詞を重ねた結果かなり疲弊してしまったらしくフラフラしながら飛び去ってしまった。未だに定春に噛まれた箇所を痛そうに抑えながらである。

「逃げた……と、言うより見逃してくれた……のかなぁ? 何かあの子もかなりやられてた感じだったけど」
「どうでも良いんだよ。それよりさっさとこの子猫をあの金髪嬢ちゃんの所に届けに行くぞ。少しでも良く顔を覚えて貰わにゃ此処まで苦労した意味がねぇってんだよ」
「やっぱあんた人間腐ってますよ。下心丸出しじゃないですか」

 何時の間にか回復したのか? 子猫を脇に抱えて銀時は歩き出す。その後ろを定春に跨った神楽が、最後尾には瀕死の状態のユーノを抱えた新八が歩き出す。羽陽曲折はあったがどうにか無事に(?)子猫を見つけられたのは不幸中の幸いである。
 が……

「あり? そう言えば……俺達何処から来たんだっけ?」
「か、完全に迷子になってるううぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

 どうやら、先の驚きの連続や激戦のせいですっかり来た道を忘れてしまったようだ。辺りは視界の悪い樹海になってる。帰るにも帰れない状況となってしまった。
 結局、その後すずかが要請したレスキュー部隊により子猫共々無事に保護され、銀時達はこれまた別の意味でアリサ、すずか達に顔を覚えられたのであった。
 念の為に言うが、決して良い意味で覚えられたのではないと言う事を此処に付け足しておく。




     つづく 
 

 
後書き
次回【家庭のゴミってどんな分別にすべきだろうか。燃えるゴミ?それとも燃えないゴミ?】 
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