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ソードアートオンライン 弾かれ者たちの円舞曲

作者:斬鮫
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第伍話 《真っ黒》〜中編〜

 
前書き
前編から繋がっています。
そちらを見ていない方は、なにこの状況となるでしょう。
なので、先に前編を見ておいた方が宜しいかと思われます 

 
「ようこそ、この教会へ。何も無い場所ですが、ゆっくりしていってくださいね」
屈託のない笑顔で、シスターさんは言う。
「(どうしようどうしよう、マジでどうしよう。謝った方がいいのかな。いや、相手はNPC(のはず)だし、あの笑顔を見る限り怒ってなさそうだけど、笑顔の内心メチャクチャ怒ってる可能性があるし――)」
シキは内心物凄い量の汗を垂れ流しながら、脳がオーバーヒートする寸前までフル回転させ数々のことを思案しながら、ドアを蹴破った姿勢のまま固まっていた。
「おーい? シキー?」
チルノが至近距離で手をブンブン振っているが、そんなことは目に入らなかった。
シキの視線は、こちらへと向かってきているシスターへと固定されていた。
透き通った長い銀髪が真っ黒な修道服のてっぺんから流れ、瞳は赤を通り越して紅で彩られていた。
年齢は見た目や身長から判断して二十〜二十五歳ぐらいであろうか、もっともNPCに年齢などあってないものだろうが。
そして極めつけは出るとこはきちんと出て、引っ込むとこはきちんと引っ込んでいるという抜群のプロポーションだろう。
「…………はぁ。それで、貴女がこの教会の?」
「はい。私はこの教会で唯一の修道女(シスター)をしています」
シンの当然とも言える問いかけにも笑顔で答えるNPCシスターだった。
「それじゃあ、貴女が依頼を?」
シスターは「はい」と頷いて、語り出した。
「私は先日の夜、備品がきれていることに気付きまして、主街区まで買いに出かけたのです。買えたのは良かったのですが……街のどこかに、ネックレスを落としてしまいまして」
そこでシスターは笑顔に若干の苦笑を混ぜた。
「ネックレス?」
ようやく姿勢を戻して、シキが首を傾げた。
シスターは微苦笑しながら頷く。
「はい。その、聖職者としては、あまり良くはないと思うのですが……。友人からの貰い物なので、無下にもできず……」
この有り様です、とシスターは付け加えた。
そこでシスターの頭上に金色のクエスチョンマークが現れた。
「お引き受けしますよ、その依頼」
「ほ、本当ですか?」
間髪入れず答えると、赤い目をぱちくりさせてから、シスターは飛びつくようにシキの手を掴んできた。
「は、はい。それで、買い物に行った場所について詳しくお聞きしたいのですが……」
「あ、わかりました。まず――――」

      ○●◎

「――キ。シキ? 聞いてるか?」
「あ、ああ、いや、すまない。何の話だ?」
そこで回想を止め、シキは意識をNPCレストランの自身へと戻した。
シンは呆れたような声音で、おいおいと言う。
「ネックレスの場所の確認だろう。とりあえずあのシスターさんはまずロウソクなんかを買いに雑貨屋に行った」
「その後、路地の方の――――」
「お待たせしました」
チルノが言いかけて、NPCのウェイターが料理を持ってきたことに気付き、口を閉じた。
「……まぁ、食っちまおう。そっから話し合い終わらせて、探索といこうか」
言いながら、自分の目の前に運ばれてきたステーキに似た何かを口に運ぶシキ。
チルノは野菜と卵がサンドされたサンドイッチを頬張りながら、シキの食べているものを指さす。
「……シキ、貴方の頼んだものって………」
「ん? ああ。『ポークフロッグのステーキ』だな」
ナイフとフォークを巧みに操り、カエルだったものを口に入れる。
信じられないとでも言いたげな表情の女性二人に、「結構美味いぞ」と言うシキを横目で見て、シンは今日最大級の溜息を盛大に吐き出した。

      ○●◎

「んで、ここがあのシスターさんが最初に買い物に来た場所か」
食事を終えた一行は、あのシスターが最初にロウソクを求めてやってきたという店の前に来ていた。
「普通の雑貨店のようですね」
頷いて、シキは扉を開いた。
いらっしゃいませ、というごくありきたりな台詞を返して、店主らしき恰幅のよい男がカウンターからシキ達を笑顔で迎えた。
「いきなりですまないが、数日前に修道服の女性を見かけなかったか?」
単刀直入に、シンが尋ねる。
こういう捜し物系のクエストは関係のある者に聞くと、情報を教えてくれ、最終的にはその捜し物(又は捜し人)を見つけることができる、というものが殆どである。
「んー……。そうだねぇ……。ああいたね。そんな人」
ぽん、と手を打つ店主。
「それで、ネックレスか何か落とさなかったか?」
今にも掴みかかっていきそうなチルノの襟首を掴みながらシキが問うた。
「いやぁ……。見てないなぁ、残念だけど」
店主は首を振り、その回答にシキは予想通りと内心で呟く。
そのままあのシスターが回ったという店を二、三軒ほど行ってみたものの、手掛かりはなかった。

      ○●◎

「…………ねぇ」
「何だ? チルノ」
「本当に……あの人はネックレスなんて落としていたのかしら?」
シンとアティとは二組に別れて情報収集している最中、ぽつりと路地裏の冷えた石畳の上に転がったチルノが言った。
シキは今さっき話を聞き終えた店の扉を閉め、チルノへと振り返った。
「どういうことだ?」
「だって、あれから四軒は回ったわよ。ガセじゃないの?」
「クエスト自体存在するんだから、無いとおかしいだろ」
それに、とシキは続けて、
「あのシスターが来たと言うことは、どの店の店主も言っている。それに、あの人が教えてくれたかぎりじゃあ、シンとアティに行ってもらってる場所が最後だ。こういうゲームは、大概そういう場所にあるものだ――」
「おーい、シキー? ネックレス見つかったぞー?」
シキが言い切ったと同時、裏路地から街へと続く道からシンとアティが向かってきた。
「お疲れさん。どこにあった?」
「店の前ですよ。店主さんとお話して、それからお店を出たところに落ちていたんです」
アティが腰のポーチからネックレスを取り出し、シキに手渡す。
そのネックレスは銀で作られており、その鎖で出来たネックレスには逆十字が飾られていて、別段聖職者らしくないという印象は受けなかったが、シキの頭の隅には何かが引っかかった。
「(まぁ……気のせいだろうな)」
自分の中でそう決着をつけ、ネックレスを届けるべく教会へと足を進める。

      ○●◎

「君は、何の為に生まれたと思う?」
「……何を突然」
相も変わらない無表情の男、キシマと劇役者風の男が暗闇の中で会話していた。
「ふむ……。君はどうかね?」
「どうかしらね……。案外、死ぬ為に生まれてきたんじゃないかしら?」
そして、今日は珍しく青髪の少女がいた。
「そういう貴方はどうなの?」
「当然、世界を救う為だ」
恥ずかしげもなく、劇役者風の男はごくごく真面目な顔で笑いながら言う。
「ところで、何故君がここにいるのかね? 君の居城はあの部屋だろうに」
「だってあそこにはチェス盤があるだけだもの。貴方達とお話してた方が面白いわ」
くすくす、と少女は笑う。
「だが、それがバレた場合、私は……?」
「死ぬかしらね」
何ということだ……、と膝を付き愕然とする劇役者風の男。
「…………しかし、俺としては別に構わないのだが、お前は何故あの場所に留まっているのだ?」
「んー……。留まってるというか、そうね。あの人風に言うなら、『表舞台に上がれないだけ』かしらね」
今だうなだれ続ける劇役者風の男を指さす青髪の少女。
「表舞台に……?」
「そう。まぁ、彼は永遠に私を表舞台に上げる気はないだろうけど」
不貞腐れたように言って、深い溜息を吐き出す。
そこで、少女はぴくり、と耳を動かした。
「ん。んん? 誰か、動き出したようね」
「…………誰だ?」
「おそらく彼女だろうな。私の意思ではないが……まぁ、この舞台はまだ始まってからそう長い間経っていない。多少の誤差程度なら許されるだろう」
居住まいを正し、劇役者風の男は微笑みを絶やすことなく言った。
その微笑みには底知れぬ何かがあり、見る者に戦慄を与える奇妙な笑みだった。

      ○●◎

「よう、シスターさん。持ってきたぞ、ネックレス」
言って、シキは指にかけたネックレスを見せながら、教会の扉をくぐる。
今現在、この教会にはシキとシスターの女性しかいない。他三人は、シキの『届けるぐらいなら一人で充分だ』という発言で主街区の宿屋で待機している。
「………………」
「…………? おい、アン――――」
話かけているにも関わらず、背を向けてツタが絡まったパイプオルガンの前に立っているだけのシスターに訝しみ、扉の前で止まっていたシキが一歩、二歩、そして三歩目を踏み出したところで、教会の扉が勢い良く閉まった。
「なっ……!」
「…………とりあえず、お礼を言わなくてはなりませんね。有難う御座います。三人のバグプレイヤーを収めるギルド《傷物の剣》のギルドリーダー、シキさん」
そこでようやく、振り返って彼女はシキを見た。
その目はシキを捉えながらも、全く違うものを捉えているようだった。
「お前、何者だ?」
「貴方、初めて会った時から思っていたのですが、()()()『起源』を持ってますね。殺意、ですか」
くすくすと口元を押さえながら笑うシスター。
殺意。
自分の起源、心の最奥の自身が持つ、認めたくない自身の本心。
それを言い当てられ、シキは少なからず動揺した。
「ああ、そういえば、まだ答えていませんでしたね。私が何者か、ですか」
シスターは苦笑し、
「名前は、『ナイア』ですよ。N・A・I・Aでナイアです。あの男が言うには、起源は混沌、らしいですね。まぁ、NPCではありませんよ、勿論プレイヤーでもありません」
そこまで言って、唐突に口をつぐんだ。
「あぁ、ここから先はまだ言ってはいけないのでしたっけ。あの男の脚本(シナリオ)には微塵も興味無いですが、あの男に少しばかり義理を果たすくらいはしてやりましょうか。行動原理としては、こんなところでしょうか」
シスター、ナイアはつまらなさそうに言って、右手をぶん、と振った。
その動作の数瞬後、ナイアの頭上の空間が歪み始める。
歪みは次第に大きくなり、空間をガラスを壊すかのように破壊し、一つのモノが現れた。
ソレはナイアに付き従うかのように彼女の周囲を旋回した後、彼女の近くに浮かんでいる。
「ふふ……。可愛い子ね」
言いながら、ナイアは恍惚とした表情でソレの表面を撫でる。
ソレは、見たところ、黒塗りの金属で出来た大きな赤の逆十字が描かれている棺桶だった。
「恐ろしいですか?」
「…………さあな」
内心、シキは驚いていた。
ナイアと名乗るこのシスターは、シキの心中を見事に当てている。
「図星? まぁ、とにかく、私は貴方を殺します」
「……そうかよ。で、その棺桶で戦う気か? 確かに鈍器としては優秀そうだな」
「違うに決まっているじゃないですか」
ナイアはせせら笑う調子のシキの問いを即座に否定する。
その声は呆れた風な声音よりも、子供を諭すような声音に似ていた。
ナイアが指揮者(コンダクター)のように右腕を振ると、浮遊を続けていた棺桶の蓋が独りでに開き、中から巨大な剣が現れた。
にやり、とナイアは微笑みを頬が裂けんばかりの笑みへと変化させ、剣の取っ手を掴んで一気に引き出す。
剣には真っ黒い泥のようなものが付着しており、それをナイアはひと振りし、汚泥を落とす。
「ふふ、どうですか? この剣は」
「切れ味は良さそうだ。が、明らかに長すぎる」
そう。シキの指摘の通り、その剣は長い。長すぎると言ってもいい。
黒光りするその剣は、何しろ刀身が目算でも2メートル半程あるのだ。
鉄塊を引き伸ばして、無理矢理に剣の形にしたかのような形状の剣。
それを、ナイアは片腕で持ち上げていた。
「これが長すぎるなんて、私には丁度良いくらいです――――まぁ、これ以上時間を稼いでも助けは来ませんし、早く殺し合いません?」
シキは歯を軋ませ、ナイアを言葉に応じてダガーを後腰から抜き、構える。
「そんなこと、分かってたさ」
小さく呟いて、大剣を携えた修道女の格好をした女を、少年は迎え討った。 
 

 
後書き
斬鮫「ふふーん。いいところで後書きターイム!」
シキ「おい。何でだよ」
斬鮫「長かったからだね」
シキ「だろうがな。というか、お前次は後編っつったよな」
斬鮫「そうだねぇ。まぁ、長かったから仕方ないよね?」
シキ「はぁ……。ったく、まぁいいけどよ」
斬鮫「特に語ることもないので雑談をしようと思います」
シキ「終われよ」
斬鮫「語らせてよ。答えは聞いてないけどな!」
シキ「まさに外道」
斬鮫「外道は褒め言葉だ! ……さて、まぁ最近メタルギアソリッド3をプレイしましてね」
シキ「はぁ、それで?」
斬鮫「ヴォルギン大佐っていますよね?」
シキ「いるな」
斬鮫「御坂美琴と被った」
シキ「ねーよ」
斬鮫「いえ、性別とかそういうのじゃなくて、電気を使うところとか、電気使って弾丸飛ばすとことかが被ったんです」
シキ「まぁ、そこはな」
斬鮫「でも私は3のオセロットが好きですがね。あの、一丁のコルトに一発だけ弾込めて、三丁のコルトSAAをお手玉するシーンが特に好きです」
シキ「それでザ・ボスに殴られるんですね。わかります」
斬鮫「分からなくていいです。……あ、それと、アティの補足回忘れてましたね。伍話が終わったら上げる予定なので、許してつかあさい」
シキ「じゃあ皆さん、今度こそ後編でお会いしよう」 
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