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少年は魔人になるようです

作者:Hate・R
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第17話 物語は大きく変わるようです


Side 愁磨


俺達は今、アルギュレーの辺境に居る。

初めの内は伝説になっていた俺が連合側に加わった事と俺達の活躍に大喜びしていた

ジジイ共だったが、戦場に出ては一撃で敵艦を薙ぎ払う俺。

鬼神兵をぶった切る詠春、重力で押し潰すアル。中級呪文を無詠唱で嵐の様に使うゼクト。

馬鹿げた魔力で『千の雷』を使うナギを見て、危険分子であると判断し、

小競合い程度すらないこの辺境に俺達を飛ばし、支持者を増やさせない腹積もりなのだろう。


俺に至っては凍結中賞金首であるため、懸賞金だけが上がって行くと言う変な事になっている。

尤も、大々的には公表されていないが。


で、今俺達が何をしているのかと言うと―――――。



ぐつ ぐつ ぐつ


「んっふっふ~~。こいつが旧世界は日本の鍋料理って奴かぁ~。」

「ああ。俺達と詠春の故郷だな。」

「俺達といっても、私とアリアは違うじゃない。」

「ま、第二の故郷って事で。」


あ、ノワールとアリアはもう紹介したぞ?

こいつ等とは四六時中一緒に居る事になるからな。


「んじゃ、早速肉を~~~♪」

「トカゲの肉でも旨いのかのう?」

「だから俺が創造で何か肉を、と言ってるのに。」

「あっ!ナギ、おまっ…何、肉を先に入れてるんだよ!?」

「まぁまぁ、いいじゃねえか詠春。」

「バッ、バカ!!知ってるだろ?!火の通る時間差というものがあってだな――」

「そうだぜ。旨いもんから先でよ。ホラホラ!」


ヒョイ ヒョイ


「まずは野菜からって言うんだろ?分かってる、って、あっ!?

ナギ、馬鹿野郎!!肉を白滝の横に入れるんじゃねえよ、硬くなっちまうだろうが!!」

「何ィ?!そうなのか!!?」

「フフ・・詠春、愁磨。知っていますよ。

日本では貴方達の様な者を、『鍋将軍』・・と呼び習わすそうですね。」

「ナベ・ショーグン!?」

「つ…強そうじゃな。」

「分かったよ詠春、愁磨。俺の負けだ。今日からお前等が鍋将軍だ。」

「全て任す。好きにするが良い。」


「(『鍋将軍』だってよ?!恥ずかしいな~、アル。弄るネタになりそうだぜ)」

「クイクイ)・・・パパ、鍋将軍じゃなくて鍋b―――」

「そっとしといてやれ、アリア。」

「ん。わかった・・・・。」

「(今アリアちゃんが折角・・・)それ、寧ろ日本じゃ忌避される称号なんだが…。」


「おお、このソースうまいぞ?」

「ホントだ、うめぇ!?」

「これが日本の誇るしょうゆだよ。」

「それに大根おろしですね。」

「詠春。味噌を忘れるとは俺に対する挑戦か!?」

「違う?!それにナギ、お前は日本に来た時寿司食ったろ。」

「という事は、ナギは醤油無しで寿司を食ったのか。通だな!」

「バカだから忘れてるだけだ。」

「バカって言うんじゃねえ!それにしてもこの旨さ、姫子ちゃんにも食わしてやりたいくらいだな。」

「姫子ちゃんて誰の事かしら?」

「姫子ちゃ…?ああ、オスティアの姫御子の事じゃな。」


「・・・ハイ、リル。あ~ん。」

「クピ!」(モギュモギュ

「・・・おいしい?」

「キュルィ~」(コックリ

「・・・そう。」


アリアは自分の膝に乗っているリルに肉をあげ、僅かに笑う。

あぁぁあ、かわええなぁ、どっちも。


「シュウも少しは参加しなさい。子煩悩なんだから。」

「…何だノワール。子供に嫉妬してんのか?相変わらず可愛いな~。」

「べ、別に嫉妬なんてしてないわよ!?」

「そこ。無駄にイチャつかないでください。

・・・まぁ・・戦が終われば、彼女を自由にする機会も掴めるやも・・です。」

「その戦だが…やはりどうも不自然に思えてならん。」

「何がだ?」

「「「「(この鳥頭が・・・。)」」」」

「何もかもだよ、お前が言いだしたんだろうが。それと肉ばっか食うな、鳥頭が。」


と、俺達が喋ってる所に、

ヒュン!!

ドカッ!!!


いきなり大剣が飛んで来て、鍋を弾き飛ばし―――

パシパシパシ  ヒョイヒョイヒョイ  パシパシパシッ

それを詠春以外が反応し、三人が肉だけを掻っ攫う。



「ノワール、キノコ頼む。俺野菜と豆腐な。」

パパパパパパパパパパパパパパパパパ!!

「相変わらずキノコ嫌いなのね……。」

シャシャシャシャシャシャ!!


と、二人で汁以外を全部取り切る。あーあ、おじや食いたかったのに、勿体無い。


「お食事中失礼~~~~~~ッ!!

俺は放浪の傭兵剣士、ジャック・ラカン!!いっちょやろうぜッ」


崖の上に居るバカマッチョが叫ぶ。


「なんじゃ?あのバカは。」

「帝国のって訳じゃなさそーだな。おい、えいしゅ、むお!!?」


肉を食いながらナギが向くと、そこには鍋を被った詠春。


「フ…フフフフ…フ………食べ物を粗末にする奴は…」


あ。キレたな。


「どぉーしたーーー来ねーのかぁーーーー!!?

来ねーならこっちから


――――――キンッ


いッ…………。」

「斬る。」

「オホッ!?」


ギキン!!!  バカァッ!!!


何時の間にか詠春がエプロンを脱ぎ、

一瞬で間合いを詰めジャックの剣を斬り、そのまま戦闘になる。


「うお?!あんたマジつえぇな!チョイまたね?!」

「ふざけるな!!本気で戦え!!!」

「そースか。だが、あんたらの事は調査済みだぜ?」(ポイポイ!


ボウン!とダッチワイフが四体(一体ロリ)が出て来る。


「情報その一、生真面目剣士はお色気に弱い。」


詠春が一瞬怯むが―――


「舐めるな傭兵!!!!!」
ドガァァァ!!!

「うお?!な、何で効かねえんだ!!?」


詠春は構わず攻撃する。だって―――――


「俺が好きなのは、黒髪の大和撫子だけだあああああああああああ!!!!!」

「え、詠春?どうしたの・・・・貴方ですか、愁磨。」

「調教済みでっす☆」


元々黒髪好きだった詠春と一晩語り明かした結果、

それにしか反応しなくなったのだ!!後悔はしていない。自重もしなかった。


「心残りなのは、お姉様好きに出来なかった事だ……。」

「詠春・・・・。あの頃の貴方はもう居ないのですね。」


ただし――――


「ハッ!!あらゆるジャンル揃えといて良かったぜ!!」(ポイ!


出て来たのは―――
    
黒髪のちょっとだけ着物がはだけた日本美人ダッチワイフ。

分かってやがる……!!!ナイスだラカン!!!!


「ブハァッァァァァァァァアアッァァァァァッァ!!」


見た瞬間、吐血して倒れる詠春。

そう。これだけには、異常に反応するようになってしまったのだ。


「ああ、詠春。貴方は貴方のままなのですね・・・・・・。」


納得した様で何よりだ。


――クイ・・・・クイ・・・・・・


と、遠慮がちに俺の裾が引かれる。

これをやるのはアリアだけなのだが(偶にノワールも)。


「どうした、アリ―――――――――――――――」

「・・・パパ。お洋服よごれちゃった・・・・・。」


アリアの胸に、先程の鍋汁が数滴飛んでいた。


「な、ナギ!!ゼクト!!逃げますよ!!!!!」

「ノワール。今すぐアリアを風呂に入れ、着替えさせるんだ……。

服はお湯につけておくだけでいい……。」

「え、ええ。分かったわ。あ、アリア、行きましょう!!」

「・・・パパ、ごめんなさい・・・・。」

ナデナデ
「アリアは悪くないから大丈夫。パパは怒ってないよ。

さ、ノワールと一緒に行きなさい。」

「うん、わかった・・・・・。」


音も無く、二人は俺の『闇』に入って行く。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

「「うわわわわわーーーーーーーーーーー!!!!」」

「……え?じょ、情報その5アーカード……

特徴……『伝説』『嫁と子をこの上なく愛している』………。」


トン―――――――――――――


「そう、その通りだ傭兵。あとはリルも愛していると足しておけ。

ああ、だが安心していいぞ。

今回の被害は、俺の可愛い可愛いアリアの服が汚れただけだ………。」

「あ、アハハハ……。じゃ、じゃあ俺はこのh「ガシィィ!!!」」


「よって、『炎焼き2万回』で許してやる。」


「――――――――え?」

「『形態変化:モード≪炎の大佐≫形態付加:≪Alucard≫』!」


大佐の軍服の青が黒くなり、それ以外が紅くなる。


「さぁ、お前の罪を数えろ――――!!!!!」(パパパパパパパパパチン!!!!

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


ドガンドガンチュドムッ!ボッゴォォォォン!!!ドゴンドゴン!!



―――この後20時間に渡り続いた爆発で、辺りがクレーターだらけになったのは余談だ。



この後も幾度となく俺達に戦いを挑んで来たラカンだが、

俺が追っかけると全速力で逃げる様になってしまった。

これラカン『紅き翼』入らねえんじゃ――と思った時期もありましたが、男は拳で語り合う生き物。

ナギとの戦闘を重ね、何時の間にか『紅き翼』に入っていた。


俺達がアホな事をやっている内に、帝国が実戦では初となる大規模転移魔法を使い、

グレート=ブリッジを落した。

それによりジジイ共が無駄に重い腰を上げ、遂に俺達が出された。


「と、言う訳で、此処がグレート=ブリッジです。」

「何言ってんだ愁磨。」

「事後報告。まぁ、気にすんじゃねえよ。」

「そうかよ。んじゃ、行くぜ!!」

「味方に当てるなよ~~!!」


ドン!!とナギが突入して行ったのを確認し、


「……アル。」


隣に居たアルに話しかける。


「・・何でしょう?」

「ナギに伝えるのは、お前の仕事だぞ。」

「・・・ええ、分かっていますよ・・・・。」

「そうか。なら、今は行くぞ!!」

「ええ、そうですね!!」


それだけ確認し合うと、俺とアルも飛び出す。


「『ノワール。暫くは外界視聴遮断するぞ?』」

「『了解。時間差設定するの忘れないでね。頑張って。』」

「『・・・パパ、がんばってね。』」

「『いよっしゃ!!任せろ!!』」

「『じゃあね。晩御飯には帰って来るのよ。)」

「『楽勝。行ってきます。二人とも愛してる!!』」


―――プツンと回線を切る。

もう既に、味方は退避し終わっている。


「よっしゃ!来い!『飛天凰舞』『金剛夜叉』!!

―――お前等に恨みは無いが、ここは戦場だからな……。」


俺は二刀を呼び出し、真の力を出す。


「目覚めろ、飛天凰舞……そして―――歓喜せよ!!』」


ギチィッと音がし、剣の形が変わって行き―――

キィィィィィィィ――ンンン―――――


『飛天凰舞』は名の通り、鳳凰の翼の形を模した、2m以上ある

重さなど感じさせない美しい大剣になる。


「『吼えろ金剛夜叉・・・そして―――悟りを!!!』」

バギャァァァァァァァァァァァ!!


そして『金剛夜叉』は柄から刀身までが非物体で形成される。

真名解放時のエクスカリバーの様な形だが、刀身に鎖が巻かれている。


「行くぞ!飛天凰舞秘奥義『夜鬼破時雨』!!!!」
ゴッバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!


振り下ろすと、剣から黒い光を放ち、

空間ごと戦艦や鬼神兵を細切れにしていく。


「次ぃ!!金剛夜叉奥義『【絶】・色即是空』!!!!」
ドッボァアァァァァアァァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!


剣から出た白い光はその周りに炎を纏い、その余波ですら敵を蒸発させ、

焼き切りながら戦場を蹂躙する。


「ハッ!相変わらずすげえ威力だな、愁磨!!俺も負けてらんねえ!!

百重千重と重なりて走れよ稲妻!『千の雷』ッ!オッラァァァ!!」

ドガガガガガガガガガガガガガガァァァン!!


敵陣に雷が無数に落ちる。・・・・が、些か殲滅率が上手くない。


「どうした?!俺の10分の一も殺してねえぞ!!こえぇのかァァ?!」

「な、なめんな!!まだまだこれからだよ!!」

「そうかよ!≪『救世ノススメ』稼働≫。頼む、『剣聖(アルデヒャルト)』」


(≪・・・・私、いるのかしら?・・まぁいいわ。雷帝(イシュテルテ)が認めたから、力を貸してあげる。≫)

「(『サンキュ-!』)

……なら、しっかり目に焼き付けろ!!そして考えろ!!テメェが何をやっているのかを!!」

「ぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあああああああああ!!!」


―――戦闘開始から5時間。

帝国の勝利に終わるかと思われた奪還戦は、『紅き翼』の参加により、

連合側の勝利で終わった。


・・・この戦争が終わってからのナギは、自身を『正義の魔法使い』と言わなくなった。

俺とアルの言葉に考える所がある様でよかった。

そして、幾度か戦闘を繰り返した後、俺達『紅き翼』はガトウの呼び出しでメガロの首都に来ていた。


「俺達の故郷がある旧世界じゃ、強力な科学爆弾……核って言うんだが、

それが開発されてて、こんな大戦はもう起こらねえ。」

「始めたが最後、核爆弾で全滅だからな。」

「ああ。だが、この戦はいつ終わる?帝国を滅ぼすまでか?!

この世界にゃ核以上の破壊力を持つ大魔法もある。

こんな戦やってても意味はねぇのに!!これじゃ―――」


「――これじゃまるで、誰かがこの世界を滅ぼそうとしているかのようだ―――ですか?」

「……その可能性は、考えてても良いかもしれないぞ。

俺と少年探偵団の成果が出た。」

「ガトウ。やっと来たか。」

「やはり奴等は、帝国・連合双方の中枢にまで入り込んでいる。

奴らの名は……秘密結社『完全なる世界(コズモエンケレテイア)』だ。」


「で?それを言う為に態々俺達を首都まで呼んだ訳じゃないだろ?」

「察しが良いな、愁磨。会って欲しい協力者が居るんだ。」


あー、そうか。此処でアリカ姫が出て来るんだったな。


「協力者?」

「そうだ、ナギ・スプリングフィールド。」

「マクギル元老議員!あんたが?!」

「いや、ワシちゃう。主賓はあちらの方々。」


そう。この時の俺は油断していた。

俺の少ない知識の中の、原作通りに進んでいた事で。


「ウェスペルタティア王国第二王女、

アリカ・アナルキア・エンテオフュシア王女と――――」


『この世界で俺が起こした行動の結果は、未来へ行くにつれ大きくなる。』


数百年前に歴史に介入していたのだ。今まで大きな変化が無い方がおかしかったのだ。


「第一王女、エルザ・ファミリア・エル・プレミロディオル王女。」 


そして、大きな変化はいずれ、さらに大きな変化を呼ぶ。


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