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蒼天に掲げて

作者:ダウアー
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二話

 
前書き
 誤字脱字がありましたら、ご指摘よろしくお願いします。 

 
 ここはどこだ?

 少女を母親のほうに放り投げ、トラックに轢かれたとこまでは覚えているのだが、そこから先を覚えておらず、気づけばこの青空空間に倒れていた。

 ああ、あれか、今から俺を天国に連れていってくれるための待合室的な感じか。

「そんなわけないでしょうが!」

「うお!?」

 後ろから俺とは違う声に怒鳴られて、ビックリしながらも声の方を向くと、そこには巫女服を纏った白い髪の少女が仁王立ちしていた。

「貴方は確かに死んだわ。それに良い行いをしたから天国にもいけるでしょうね」

 いきなり語りだした少女に、困惑を隠せず、つい呆然と少女を見てしまう。

「なによ? にわかには信じられないっていうの?」

「いや、まずお前誰だ?」

「へ? 私?」

 俺の問いに少女は少し驚いたようで、目をぱちくりさせた後、一呼吸置いてコホンと咳払いをした。

「そうね、私は貴方達からいえば神という存在よ」

「お前みたいなちんちくりんが?」

「ちっ、ちんちくりんですって!?」

 俺の発言に、少女は顔を茹蛸のように真っ赤にした。

「私はこれでも貴方の数百倍は生きてんのよ!!」

「へー、ならババアってことか」

「バっ、ババアですって!?」

 再び俺の発言により、神がわなわなと肩を震わせる。

「いい加減にしなさいよ、この坊ちゃんが!」

「まあ落ち着けよ、ちんちくりんババア」

「――ッ!」

 少女の怒り具合が頂点に達した時、俺の体に変化が生じた。

「なんだこれ、おも……重い」


 正しくは、俺の上半身を地べたに擦りつけるようになにかの引力が襲い掛かってきた。

「私は神なのよ? それをちんちくりんババアって……土下座しなさい、土下座!」

 高圧的な態度になっているコイツが原因だろう。流石にからかいすぎたせいか堪忍袋の緒が切れたようだ。

「いてててて、おいやめろどれだけ短気なんだお前」

「お前じゃないわ! 照姫様っていいなさい!」

「やめろ照姫!」

「様はどこにいったのよ!?」

「俺はどんな奴だろうと様づけする気はねえんだよ!」

 俺が土下座を防ぐため必死に抵抗しながら食ってかかると、いきなり体がふっと軽くなった。

「はあ、もういいわよ」

(つう)、なんださっきの念力みたいなのは」

「念力よ」

「念力? お前本当に神なのか?」

「だから最初にそういったじゃないの!」

「俺はてっきり三途の川渡る前の案内係がいたずらしてるのかと」

「誰が案内係ですって!!」

「いや悪かったって」

 その後少し小言をぶつぶついわれ、仕方なく黙って説明を聞くことにした。





「てことはだ。お前は神で、俺の死ぬ前の行いが良かったから他の世界に転生させてくれるわけか」

「まあ概ねそれで合ってるわ」

 俺が要約した内容を照姫 (神っていったら怒られた)に確認すると、満足したように頷かれた。

「なるほどね」

「ちなみに拒否権はないし、世界も私が決めるわ」

「え? そうなのか?」

「ええ、今から貴方がいく世界は私の管理下なんだけど、そこで一つの問題が浮上したの」

 ふと、こんな奴でも管理できるんだなと一瞬考えた瞬間、寒気が襲ったので、深くは考えず話に意識を集中する。

「どういうことだ?」

「その世界、まあ外史なんだけど、一つの反乱分子が流れ着いたみたいなのよ。それが邪魔して困ってるってわけ」

「よく分からんが、外史ってことは史実の世界とは関係ないんじゃないか?」

「そういうわけにもいかないのよ、外史っていっても一応は史実と結びついているわけだし、放っておくとなにするか分からないわ。もしかしたら史実に影響が出るかもしれない」

「だから俺をその世界に送ってなんとかさせようってわけか」

 確かにただで他の世界に転生できるなんて虫の良い話はないよな。だがそれなら一つ気になったことがあるのだが。

「なんで俺なんだ?」

 これである。どう考えても俺以外にも良い行いをした奴はいるだろうし、もっと頭のいい奴や体の強い奴の方が照姫の期待に応えられるだろう。

「私の勘よ、なにか文句でもあるの?」

 自信満々な顔をした照姫が不敵な笑みを浮かべながらそう答えた。

「なんの根拠もねえのかよ」

 これじゃその外史ってとこにいった途端、死ぬことになるかもしれない。

「まあそのことに関しては貴方が適役だから心配ないわ」

 やけに自信を持っている照姫に首をひねったが、もうすでにどうにもならないので諦めることにした。

「さて、それじゃ今から転生してもらうわけだけど、なにか聞いておくことない?」

 結構急だと思ったが、こんなところでグダグダしていても仕方ないのは確かだ。
 俺は、一つだけ心残りになっていることを聞こうと照姫に目を向ける。

「なら一つだけ。俺が助けた少女は無事か?」

「ええ、あの子は貴方のおかげで無傷で助かり、貴方の代わりに皆を助けるって医者を目指してるわ」

「そっか。なら俺もお前を助けるために頑張ってやろうじゃないか!」

「ええ、これからよろしく頼むわね」

 こうして俺は、第二の人生を歩みに転生をすることになった。 
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