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少女1人>リリカルマジカル

作者:アスカ
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第三十二話 少年期⑮



「いやぁ、絶好の登校日和ですなー。あ、アリシア。そこのジャムとって」
「はい、お兄ちゃん。うん、今日は天気がよくてよかったねー」

 俺とアリシアは優雅に朝食を食べながら会話をする。今俺たちが着ている服は私服ではなく、白を基調としたデザインと水色がアクセントの制服である。藤紫色のズボンとスカートは落ち着いた色合いで、爽やかな感じだから俺は結構気に入っていたりする。

 アリシアにお礼を言って、母さん手作りのリンゴジャムをパンに塗っていく。次にアリシアも俺からジャムを受け取り、パンに塗ろうとして、その手が止まった。

 どうかしたのか、とパンを食べながら思っていると、妹は真剣な表情でジャムのスプーンを構える。すると突然ジャムアートを始めだした。ジャムの量をスプーンで調節しながら、ものすごく集中している。

「アリシアって器用だよな。何描くんだ?」
「今ならお兄ちゃん直伝の『かっこいいポーズ』が描ける気がするの」
「……そうか。確かに朝日には脳を活性化させる力があるって言われているしな。何かが降りてきてもおかしくないか」
「そこで納得するあたりがあなたらしいわ」

 着替え終わった母さんがリビングに顔を出し、俺とアリシアの様子に肩をすくめる。この家では、唐突に何か行動を起こすことぐらい、もはやおなじみの光景なのだ。今俺がいきなり踊り出しても、家族の誰一人としてそこまで気にしないだろう。積み重ねてきた歴史がこの家にはある。うん、なんか深い。

 リビングに飾ってある鏡を見ながら、髪と服装を整える母さん。淡い藤色のスーツを着込み、その上に白衣を羽織っている。その姿はまさに研究者って感じだった。

「開発チーム復活、かな」
「ふふ、そうね。今日は話し合いだけだから早く帰って来れると思うわ。2人は学校から帰ってきたらどうするの?」
「あ、今日はねメェーちゃんたちと遊ぶの!」

 声を弾ませながら話す妹に、俺もつられて笑みを浮かべる。少し前に入学式が終わり、本日3日目の学校登校日である。さすがに俺も最初は緊張してしまっていたが、それなりに要領がわかってくるものだ。環境が変わっても根本はなかなか変わらないものだろう。

「あら、いいわね。お友達がいっぱいできたみたいで安心したわ」
「いっぱいというか、……まぁ、もともと知り合いだったしな」

 近所で遊んでいるんだから、そりゃ住んでいる地域だって同じところだよな。学校では初対面の相手は確かに多かったが、公園で遊びまくっていた俺にとっては、見知った顔も多かったわけだ。

『……あの、お二人とも。ものすごくゆっくりしていますけど、始業時刻までそんなにないですよ』
「あ、本当だ」

 コーラルの声に時計を見ると、始業ベルが鳴る15分前。ここから学校まで約20分ぐらいはかかるので、普通に遅刻確定である。いけねー、おしゃべりに夢中だった。未だに子どもニートだった時の癖が抜けていないらしい。

「……というわけでアリシアよ。準備OKでありまするか」
「うん、ありまする!」
「いってらっしゃい。気を付けてね」

 コーラルの忠告後も、俺たちは綺麗に朝食を完食した。それから『ごちそうさま』をして、すぐに学校指定の茶鞄を手に持つ。母さんの言葉に返事を返し、俺たちは手を握った。それでは、いってきまーす。


 転移。

「お、おはよー。少年A、B。みんなはまだ学校に来てないのか。遅刻か?」
「おはよう、アー君、ティオ君」
「あ、おはよう、アルヴィン、アリシア」
「おはよう、2人とも。あと、遅刻云々だけは君には言われたくないと思う」

 学校に転移した俺たちはすぐに教室に顔を出し、顔なじみの2人に挨拶をする。明るい茶色の髪のほわぁーとしたのが少年Aで、半眼で俺にツッコんでいるのが少年B。普通に公園でいつも遊んでいるメンバーである。あと一応だが、転移登校は余裕がない時以外は使わない。歩くのは普通に好きなので。

 ちなみに俺が転移を使えることはみんな知っていたりする。学校初日に配られた大量の教科書や荷物(2人分)を保護者説明会に来ていた母さん1人に持たせるのは大変ということで、転移でスパスパ捌いていたら先生に呼び出されたからだ。気持ちはわかるけど…、と何とも困った顔が印象の担任の先生だった。

「しかし、相変わらず新鮮味がねぇな。学校っていう新しい環境に来たのに、メンバーはほぼ一緒じゃんか」
「そうだねー。昨日も公園で遊んだばっかりだし」

 少年Aは俺の言葉にうんうんとうなずく。周りを見渡すとちらほらと遊んだことがある子どもが何人もいる。そいつらと目があったので、手を振ったら振りかえしてくれた。自分で言うのもなんだが、俺はそれなりに顔が広かったらしい。

「……それじゃあ、新しい環境になったということで、『少年B』っていう呼び方をそろそろ変えてほしいんだけど」
「えー、俺の中で定着しちゃっているし」
「そのあだ名をつける癖なんとかならないかな。まぁ、まさかと思うけど、僕たちの名前を忘れてはいないだろうけどさ。……何で目を逸らすんだ」

 少年Bの話に一瞬目が泳いでしまったが、とりあえず笑顔でごまかした。いや、忘れてはいないよ。気づくとど忘れしていることはあるけど、所要時間30秒ぐらいあればたぶん思い出せるよ。


「ごきげんよう、みんな。ティオール、アルヴィンがまた何か変なことでもしたの?」
「あ、メェーちゃん。おはよう」
「ん、メリニスか。おはよう。珍しいね、いつもはもっと朝早いのに……あ、リトスも一緒だったのか」
「……おはよう」

 少年B――ティオールに声をかけた柔らかい金髪を肩口で揃えた女の子。アリシアの髪はキラキラした感じだが、彼女の色は大人しく優しい色合いという感じだろう。俺もアリシアと同じように「メェーちゃん」と呼ばせてもらっている少女だ。なんか羊みたいな感じだし。

 そんな彼女の隣を一緒に歩いているのが少年E。相変わらず眠そうというかぼぉーとしている。ちなみにメェーちゃんはデパートで顔面強打しても復活する女の子で、少年Eはプチプチ王決定戦の王者である。地味に濃いな。

「というか、メェーちゃん。また俺が変なことしているってひどくない?」
「え、違うの?」
「いや、そんな純粋な目で見られると、そうだけどとしか答えられないけどさ」
「答えるのか」

 メェーちゃんと少年Bにジトッとした目で見られた。アリシアと少年Aの方を向くと、不思議そうに首を傾げられる。君たちはそのままでいてください。

 ちなみに少年Eはそのまま荷物を机の上に置き、教室の端の方に張ってある用紙を見に行ったのを横目で確認。『給食の献立表』。おい、来て早々やることが飯の確認か。

「別にちょっとぐらい色々したっていいだろ。だってさ、基本このメンバーの中での俺の役割って、騒ぎのきっかけを作るか、騒いでいる途中でさらに燃料投下をするかぐらいの感じじゃんか」
「あー、確かに」
「アレックス、そこ納得しちゃだめだ。普通に性質が悪いだけだから」


 とまぁ、こんな感じで朝はおしゃべりをして過ごすのが学校での俺たちの日課だったりする。お互いに気心が知れているので、結構みんな遠慮容赦がない。学校ではだいたいこのメンバーと一緒にいることが多いので、本当に退屈しない。

 少しして先生が教室に入ってきたため、俺たちはまた後で、と声を掛け合って自分の席に座った。入学して間もないため、名前順で席が決められている。俺の席は教室の真ん中ぐらいで、アリシアの後ろになる。アリシアがそっと俺の方に振り向き、小さく手を振ってきた。俺もそれに振り返し、先生に見つからないうちにお互いに前へ視線を向ける。

 まだ学校では、本格的に授業には入っていない。今日は学校の施設を見学するオリエンテーションの時間になると、昨日先生が連絡してくれたし。その詳しい説明を始めようとする先生を見ながら、口元に笑みが浮かぶ。

 なんだかんだいって環境が変わることに不安はあったが、正直楽しみな気持ちの方が強い。2回目の学校だけど、つまらないと思わないのはここが異世界なのも大きいだろう。魔法という新しい教科に、新たな学問。そして新たな人間関係から始まる新しい日々。

 俺とアリシア、それに空気が読める少年Aとツッコミの少年B、意外に厳しいメェーちゃんに不思議君の少年E。みんながみんなものすごく個性的だから、そんな彼らと作る学校生活に期待を持ってしまうのはおかしいなことではないだろう。…………ん?

 あれ、ちょっと待てよ。ひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ……うん、1人足りなくないか。俺は目だけで辺りを見渡すと、右側の席が1つ空いていることに気づいた。やべっ、あいつのこと忘れてた。


「はい、それではみなさん。さっそく今日の出席と健康観察を――」
「よっしゃぁーー! たどり着いたッ!! あ、先生おはようございます! あと俺、超元気です」
「……おはよう、ランディ君。うん、間違いなく元気ね」

 先生が出席確認をする直前に滑り込みで入ってきた少年C。友人の中で一番騒がしく、ある意味俺以上にどこかぶっ飛んでいたりする少年であった。

「うーん、始業時間は過ぎているから遅刻は遅刻なんだけど、もしかして通学中になにかあったの?」

 先生は健康観察表に「ランディ君超元気」と呟きながら書いている。出席簿にチェックをつけながら、少年Cを心配そうにじっと見つめる。その視線を受け、少年Cは頬を少し赤く染めながら頭を掻いた。

「実はコッペパンを口にくわえながら、曲がり角を曲がり続けることに夢中になりすぎて遅刻しました」
「あれ、おかしいな。理由聞いたのに全然理解できない」
「学校が始まったら絶対やりたいと思っていたんです。これは自然に運命の出会いフラグをたてられる王道シチュエーションだって友人から聞いたんで」

 おい、俺の方を見ながらしゃべるな。俺はまだまだあきらめないぜ、みたいな顔でサムズアップすんじゃねぇ。それは女の子がやるから王道なんだよ。なんでお前がやっているんだよ。

「9回目ぐらいでパンを全部食っちゃったので、慌てて走ってきました」
「『自然』と『運命』って言葉を先生と一緒に習おうか」
「次はもうちょっと家を早く出てからやります。すいませんでした!」
「失敗から学ぶことは立派ですね。素直にほめられないけど」

 やめる気が一切ない宣言を清々しい表情で告げた少年Cに、先生は後で放課後お話しようね、と哀愁漂う笑顔で伝えていた。


「……ここで俺が『そこはトーストくわえなきゃダメだろ!』って乱入したらダメかな」
「絶対やめろ」

 左隣に座っていた少年Bに頭をはたかれた。



******



「とりあえず始まりました、オリエンテーション!」
「始まったー!」

 ドンドンパフパフというノリで告げる俺とアリシア。先生からもらったプリントを眺めていたみんなから仕方ないなぁという感じに拍手をもらえた。優しいね、お前ら。

「えっと、今日は校舎をまわってどんな施設があるのかを知ることと、場所を覚えることがめあてだよね」
「うん。印の付いているところに行くと、上級生の先輩がスタンプを押してくれるらしいよ」

 メェーちゃんと少年Aの話の通り、手元のプリントにはオリエンテーションの説明が書かれている。そこに校舎の案内図とスタンプが押せるスペースもついていた。校舎は全部で5号棟あり、4階建て。めちゃくちゃ広いけど、中等部の校舎とつながっているところにはバッテンがついているので、実際に見て回る範囲は狭くなるだろう。

 立ち入り禁止の場所には他の上級生の人が止めてくれるし、サーチャーで新入生の行動を先生方が随時確認してくれているらしい。迷子になったら誘導してくれるので、安全だしなんとも頼りになる。

「しかしクラ校って広いよな。マンモス校っていうの?」
「また変なあだ名というか略し方して…」

 正式名所が長い俺たちの学校。なので、クラナガンにある学校ということでクラ校と俺は命名した。まずはクラスに流行らせようと密かに計画を練っていたりする。

 そんなクラ校の地図を眺めながら、ミッドの学校について俺は思い出してみる。基本的にミッドの学校は義務教育ではない。一応10年制ではあるが、必ず入学する必要も、10年絶対にいる必要もないらしい。確かにエリオさんとキャロさんは学校に入学せず、管理局で働いていた。9歳のユーノさんは学校を卒業していたはずだ。たぶん飛び級したんだろうな、そういう制度あるし。

 初等部で5年。中等部で3年。あとは2年単位で自分の好きな上級クラス(高等部ともいう)に上がれるエスカレータ式がミッドでは主流だ。俺が今6歳だから、順調にいけば16歳ぐらいには卒業することになる。中等部で卒業すれば14歳だ。学生でいられる時間が短いんだよなー、ミッドって。

 もっと勉強したい人はさらに2年単位で積み重ねていけるから、20代で卒業する人もいるらしいけれど。日本でいうところの院に入っているようなもんだろう。大学はないけど、初等部から大学のようなカリキュラム設定なので、そんなものなのかと俺の中では思っている。


「よしっ、魔法練習室のスタンプゲットだぜッ!」
「ぴー、ぴかちゅー」
「超棒読み!?」

 少年Cとネタで遊びながら、着々とスタンプは集まってきている。こういうバカなことを率先してやってくれるのは基本少年C――ランディぐらいなもんだな。あといじる回数は学校で一番多いと思う。

 4つ目のスタンプが押されたプリントを折りたたみ、次の目的地を目指す。あと残っているのは図書室かな。無限書庫ほどではないが、なかなかの数があると聞いている。みんなで足を進めながら、俺は隣を歩いていたアリシアに話しかけた。

「アリシア、疲れていないか。お手洗いとかは大丈夫?」
「全然大丈夫だよ。ありがとう、お兄ちゃん」
「そっか。しかしなかなか広さがあるから、もはや探検って感じだな」
「本当だねー。……エーちゃんとクーちゃんとも探検したかったなぁ」

 アリシアのこぼした呟きに、俺もそうだな、と同意する。学校に入学してから気づいたことだが、エイカと少女Dは一緒にいない。少女Dはこことはちがうベルカ関連の学校に入学したと昨日の集まりの時に教えてもらった。公園で遊べることにはかわりないが、やはりちょっと寂しくはあった。

 そしてエイカは、学校自体に通っていないらしい。いつも通りちきゅうやで店番をしていたと店主さんから教えてもらった。学校は義務教育ではないのだから、通っていないことがおかしいわけではない。だけど、大抵の子どもは行っている場所なのだ。依然の態度から、学校のことについてあまり触れてほしくなさそうなのはわかる。でも、何もアクションを起こさないというのも不審がられるだろうか。……こっちはどうしたもんか。

「お兄ちゃん?」
「ん、あぁ大丈夫だよ。少女Dの学校とは時々交流会があるらしいし、イベントでいっぱい遊べるさ。それに、なんだったら今日はみんなで探検ごっこして遊ぶのもいいんじゃないか。きっと楽しいぞ」
「わぁ、面白そう! あ、でも今日もエーちゃん来てくれるかな」
「一応声はかけているから来るんじゃね。いなかったら、デバイスの拡声機能で迷子のお知らせを流せばとんでくるさ」


 そんな風におしゃべりをしながら、俺たちは階段を上っていった。そして、渡り廊下を通った先に『図書室』と書かれているプレートを見つける。こうして迷わず来れたのも、メェーちゃんと少年Eの案内のおかげである。今日2人が朝遅かったのが、図書室を覗きに来ていたことが理由らしい。

「2人とも本が好きなんだね。俺は文字ばっかりだと眠くなっちゃうよ」
「あらそんなのもったいないわ、アレックス。本は素晴らしいんだから! 過去から続く培われてきた歴史や英知を感じ取れる瞬間。自分とは違う価値観や思想を知ることで、自分というものを見つめ直すことができる喜びだって―――」
「リトスもメリニスみたいに本の虫なのか?」

 メェーちゃんの本の虫スイッチを踏んでしまった少年Aが、涙目で助けを求めてきたが全員でスルーして少年Cの会話にのる。少年Eは無言でメェーちゃんを一瞥し、静かに首を横に振った。さすがにここまでではない、と無表情ながら誰もが彼の心の声を感じ取った。

「こら、君たち。図書室の入り口で固まっていたら他の人の迷惑になるよ」
「え、あっ、すいません」

 図書室の扉が開き、そこから出てきたのは上級生の女生徒だった。俺たちはその注意を聞いて慌てて謝り、口を閉ざす。そんな俺たちの様子に「いい子だ」と女生徒は口元に笑みを浮かべた。

「ここは様々な学年の者が、調べ物や勉強をするために集中する場所だ。次からは気を付けるようにな」
「はい。すいません、先輩」
「素直でよろしい。それと、いきなり叱って悪かったな。ようこそ、新入生諸君。―――歓迎するよ」

 先ほどまでの厳しい表情から、ふわりとあたたかい笑顔がこぼれる。キリッとした佇まいで、まだ幼さがあるものの、かなり綺麗な人だ。フレームのついたメガネをかけており、腰まで伸びた紫の髪を一つ括りにしている。なんだか委員長とかそういうのが似合いそうな先輩だ。

 そんな先輩の後に続いて、俺たちは図書室に入る。そこからカウンターの方に目立つようにチェックポイントと書かれている看板を見つけた。どうやらメガネの先輩が最後のスタンプラリーの担当だったらしい。


「お、もう1人美人系のお姉さんがいる」
「本当だ。あの人もスタンプラリーの担当の先輩みたいだね」
「へぇ、どれどれ」

 小声で話す少年CとBの会話に興味がわいたので、俺も覗き込むようにカウンターを見つめる。ただの野次馬根性だが、確かに遠目から見てもわかるぐらい目立つ髪色の人がいた。その人は俺たちとメガネの先輩を見つけるとニコッと笑顔を浮かべて、小さく手を振ってくれた。

「お疲れ様、レティ。その子たちで最後かしら」
「あぁ、図書室に来るのはこれで最後だろう。ハンコを押してやってくれ」
「もちろんよ。それじゃあ、用紙をお姉さんに渡してくれる?」
「は、はい!」

 どうやらメガネの先輩とこの先輩は友人同士らしい。雰囲気から親しいのがわかる。緊張した様子でプリントを渡すメェーちゃんがおかしくて、くすりと笑ってしまった。それにしても、なんだろう? なーんか、どこか既視感があるんだが……。

「ねぇねぇ、お兄ちゃん」
「え、どうしたんだ。アリシア」
「あのメガネの先輩さん……なんとなく同僚さんみたいな感じがする」
「……えぇー」

 同僚さんってあの同僚さんだよな。いつでも全力全壊(誤字あらず)で高笑いしている同僚さんのことですか。改めて見ても、きびきびしていて、すごく真面目そうな先輩なんだけど。……いや、同僚さんも傍から見たら優秀で知的美人っぽい感じなんだよな。傍から見たら。

 ……もしかして、俺の感じた既視感もそれなんだろうか?

「みんな、気を付けて教室に帰ってね。それじゃあ、私たちも片付けに入りましょうか」
「そうだな。ふぅ、しかし少し喉が渇いたな。教室に戻る前に私は何か飲み物をもらってくるよ」
「あら、それなら私の持ってきた飲み物がここに―――」
「いらない。私は君のそれを飲み物という分類には認めていない」

 全力で友人さんからの飲み物を拒否するメガネの先輩を見ながら、俺は首をかしげる。うーん、やっぱりわからん。まぁ、またどこかで会える機会があったらでいいか。そうしよう。俺たちは先輩方に頭を下げ、そのまま教室にむけて歩いていった。

 さて、あとは給食を食べたら今日は終わりだ。それじゃあ、今日も思いっきり遊ぶぞ!



******



 ―――そして放課後。

 えーと、コーラル。とりあえず音声機能ONにしてくれ。あと拡声器の音量は最大でお願いな。え、デバイスはマイクではないって? 今更何言ってんの。あ、ちょっと頭突きはやめてくれね!? お前防御魔法展開しながら攻撃するって卑怯だろうがッ!!


『あー、ごほん。テステス、マイクのテストちゅー。えー、それでは本番開始です。ただいまから迷子のお知らせをさせていただきまーす。迷子のお知らせでーす。クラナガンにお住まいの6歳ぐらいのお子さまを探していま―す。特徴はとにかくツッコミばっかりしています。あとお菓子が好きなので、あげると悪態付きながらもおいしそうに食べます。知らない人にお菓子をもらわないか微妙に心配してしまいます。……あ、どうしよ。なんか本当に心配になってきた。知らない人からもらっちゃだめだって後で言っておこう。とまぁ、そんな感じの子どもを現在探しております。お心当たりのある方は公園の広場まで、どうか誘導をお願い致しま―――』


 数刻後。


「てめぇ、本気で待ちやがれェェエエェェーー!!」
「エイカさーん。今日は追いかけっこじゃなくて、探検ごっこなんだけどー」
「知るかァッ! とりあえず一発どつかせろやァーーー!!」


「……学校行っても、全然変わらないわね。アルって」
「クーちゃん頭痛いの?」
「ううん、大丈夫よ。アリシアはアリシアのままでいてね」

 いつもと変わらないそんな光景。なんか学校卒業しても、アルヴィンのあの性格は変わらなさそうと思ってしまう友人一同だった。
 
 
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