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少年は魔人になるようです

作者:Hate・R
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第6話 吸血鬼は少年と出会うようです


Side 金髪幼女


十歳の誕生日。私はある城で魔法使いの男に真祖と言うのにされて、

不老不死・・・つまり、一切歳をとらなくて、あらゆる傷が再生し、

死ぬような病気にはそもそもかからない。瞳が血のように紅くなり、牙が生えて・・・。

その魔法使いにお父様もお母様も、メイドも爺やも、みんな殺された。


私はその男を許さなかった。許せなかった。

男が顔を近づけて何か言おうとした時に、男の頬を思い切り叩いてやった。

逆上して殺される覚悟もしていたんだけど・・・・・・・

私が頬を叩くと、まず男の顔が反対まで回った。

続いて体が錐揉みしながら、部屋の端まで飛んで行きました。


その時私は直感的に悟りました。『私は人間じゃなくなった』と。


それから三年くらい経ったんでしょうか。

幸いお父様がお金持ちでしたから、旅をするお金には困らなかったけど、

子供一人だと、宿屋に泊るのにも一苦労でした。

同じ町には一か月も居られなくて、

人ともなるべく関わらないように気を付けていました。


だけど、この町に来て、人にぶつかって転んでしまった。ただ、それだけ。

ぶつかった人は親切な人だった。だから、ダメだった。

その人は、私の怪我を見て「ごめんね」と謝ってくれたけど、

だんだん顔が青ざめていって、叫びました。


「化け物だぁぁぁぁぁ!!魔女だ!!吸血鬼だぁぁぁぁぁ!!!」


その声を聞くと、町の人たちが私を捕まえに来ます。

私は走りましたが、足がもつれて転んでしまいました。

そして、私の体よりも太い腕が私の髪の毛を掴んで、木でできた台の上まで

引きずって行きます。昼で力が出ないので、振りほどく事ができません。

私はたまらず叫びました。


「いやぁぁぁぁぁぁ!!離して!離してよぉぉぉ!!!」


なぜ、私がこんな目に遭わなければいけないんでしょうか。

私は、あの男のせいでこうなってしまっただけなのに。

私は何も悪い事をしていないのに!!

・・・私があの男を殺してしまったのがいけなかったのでしょうか?

私は、みんなの仇を少しでも、と思っただけなのに。


「皆様!!ご覧ください!!これが魔女です!!外法で傷を治し、

永遠を生きようとする吸血鬼です!!そのような事、神が許しはしません!!」


「神父様―――!!!」「その魔女に裁きを!!」「神の断罪を!!」「殺せぇぇぇ!!」


あなた達の神様はそれすらも許してくれないのでしょうか?

・・・なら、私はそんな神様なんて信じない!!そんな神なんていらない!!


「さあ!!今、この魔女を神の炎で焼いてしまいましょう!!!」


「「「「「「焼け!!殺せ!!!神の裁きを!!!」」」」」」


ああ、私はこのまま焼かれてしまうのでしょうか?

焼かれると言うのはただでさえ苦しそうなのに、私は傷が再生してしまいます。

そんな・・・そんなのは嫌です!!

誰か・・・誰でもいい!!悪魔でもかまいません!!だれか私を・・・・


「誰か!!誰か助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


―――トン


「その言葉は本当か?お嬢ちゃん。

その想いは、怒りは、憎悪は。祈りは本物か?」


軽い足音を立てて上から来たその人は、私に問いかけました。


Side out






side 愁磨


あーあ、こりゃもう駄目だな。こいつら皆殺し決定。

善は急げだ。早速眼の前の奴から・・・。


「って、待て待て!!それはダメだと言っただろうが!!」


「いやだって、もう救いようないだろうが。

あいつら『神の』とか言ってる時点でダメ。俺の敵決定。」


ちなみに、修業時代から認識阻害かけてるから、俺とノワールはそこらへんの

農民に見えてるし、今、この状況に合わせて叫んでるように

周りには見えてるから問題なし。


「いや、シュウの気持ちは分かるが……しかし、やはりいきなり殺すなんてダメだ!!」


こいつはやっぱり優しいな。何千年も迫害されてたってのに、こんなにも他人を思っている。

俺なんかとは違う。俗な俺とは違う。故に、今だけは眠っていて貰わなければならない。

多分、ノワールが起きていたら中途半端な殲滅になってしまう。

いくら了承しても、多分、ノワールには我慢できない。

こいつにお願いされたら俺は絶対に断れない。それが本当に願っている事ならなおさら。

―――だから、この優しい魔王には見せられない。



ギュッ
「分かった。だけど、エヴァを渡さない場合は、さっき言った通りにするぞ?」

「あっ、ああ。分かった。や、約束する。」


やっぱり駄目だな。こいつは覚悟が出来てない。

こんな優しいのが魔王だなんて笑っちまうよなぁ・・・。

・・・ごめんな、ノワール。ごめんな。


俺はもう一度ノワールを強く抱き寄せ、


「ごめんな(トン」


囁き、手刀を入れる。


「ぁ……。」


ノワールは短く息を吐くと、意識を落とした。

ノワールを『闇』の中のベッドに寝かせる。

・・・さぁ、行くか。吸血鬼と言ったら、赤い旦那だよな。

エヴァはもう吸血鬼になった後だけどさ。


「『形態変化:モード≪Alucard≫』!」


俺はある兵装を呼びだす。これは、『HELLSINGのアーカード』と同じ存在になるモノ。

赤い帽子とマントとスカーフ、黒いスーツなどが現れ、自動で俺に着せられる。

俺の白い髪と灰色の目、女顔は変わらないが、身長が190cm程まで伸び、両手には

白い拳銃『454カスール カスタムオートマチック』と、

黒い拳銃「ジャッカル』がそれぞれ握られる。そして、変化が終わると同時に声がした。


「誰か!!誰か助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」



―――認識した。



その瞬間、俺は認識阻害を破り、100m程を跳躍し、エヴァの前に立ち、問う。



「その言葉は本当か?お嬢ちゃん」



「え・・・・・?」

「本当に助けて欲しいか?本当に生きたいか?生きていても苦しいだけかもしれないぞ?」


エヴァは涙でくしゃくしゃになりながらも、しっかりと自分の意思を伝えてきた。


「生きたいです……神様が、許してくれなくヒック、ても、私は生きたい!

みんなの分まで、私は生きたいです!!」

「それが、本心だな?」

「ひゃいぃ……」

「よかろう。たった今、運命は貴様を駆り立てた!!」


「なっ、なんだ貴様は!?貴様も魔「五月蝿い!!」

「出来損ないのくだらない生きものめ!!能書きはいい。で、どうする?」

「な、なにがだ?!」

「この子を見逃し全員生きるか、あるいは私に全員殺されるか。

さぁ、決断できるのは一度だけだ。」

「何を言っている!?その化け物は神に仇成すモノだ!!

故に断罪されなければならない!!!」

「「「「「そうだ!!その通りだ!!」」」」」



ああ、そうか。そうなのか。ククククク・・・・・・


「な、なにがおかしい……」

「クククッ、ククククク。成程、成程。そうか、全く以ってどうしようもない連中だ。

ならばこの私が相手をしてやらねばいけないのは全く自然だ、ああ、とてもうれしい。

未だおまえ達の様な恐るべき、馬鹿共が存在していただなんてな。

我が名は『アーカード』。覚えておけ。地獄で怨むことになる名だ。

さあ!! 殺ろうぜ!!行くぞ、歌い踊れ。豚のような悲鳴を上げろ!!」


そう言うと俺はカスールとジャッカルの引き金を引く。

始まったのは殲滅、演目は恐怖劇(グランギニョル)


演じるのは俺と民衆。観客は少女一人。

しかしあまりにも短い劇だ。



青年の頭を撃ち抜き、老婆を引き裂き、

母の体を吹き飛ばし、赤子を踏み潰す。

少女を叩き殺し、老爺を弾き飛ばし、

少年を飛び散らせ、男を手刀で貫く。


そうすると、5分もしない内に立っている民衆は居なくなった。

残っているのは神父だけ。


「さぁ、残っているのはお前だけだ。だがしかし、狗では私は、殺せない。

化物を打ち倒すのは、いつだって人間だ。

さぁ、お前はどうだ?どうするんだ?

おまえは狗か? それとも人間か?!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!来るな化け物おおおおおおおおおおお!!!!」

「……そうか。全く持って下らん。命乞いすら出来んか。」


ダンッ!と最後に銃声が轟く。

神父の頭は吹き飛び、体が崩れ落ちる。

俺は踵を返し、エヴァの縄を解き、言う。


「さぁ、これで君は自由だ。しかしどこへ行っても同様の事が起こると思え。

さぁ、どこへなりとも行くがいい。」


そして兵装を解除しつつ歩きだす。と、後ろから声がかかる。


「ま……、待ってください!!」


俺は正直驚いた。正直、初戦闘だったからテンション上がってやりすぎたし、

こんな光景見て、声をかけられれば奇跡だろうと思っていたからだ。


「どうした?嬢ちゃん。」

「あれ?別人…?いや魔法?と、とにかく、えっと、あの、その」

「……何が言いたいんだ、嬢ちゃん。」

「そ、その嬢ちゃんってやめてください!!私にはエヴァンジェリンって名前があるんです!

!」


あー、今の今まで確信は無かったけど、エヴァだったか。良かった良かった。


「分かったよ、エヴァンジェリン。で、それだけか?」

「…あなたは魔法使いなんですか?」

「一応魔法使いだが、それがどうした?」


何となく読めるし、誘導してるようだが。

しかし、選ぶのはこの子だ。この子でないとダメだ。


「……私に…私に魔法を教えてください!!」


と、エヴァは頭を勢い良く下げる。


「なぜ魔法を知りたい?これを見ても魔法を使いたいと思うのか?

魔法使いになるとはこういう世界があるという事だぞ?」


俺は死体の山を指さすと、エヴァは吐きそうな顔をしたが、震えながら、それでも言った。


「はい。お父様達が死んだ時に、それは知っていました。それが本質であるとも。

私は、お父様達の分まで生きたいんです。しっかりと、意志を持って。

でも、今日みたいな事が起きたら、次はきっと助けてもらえません。

そしてそんな事が続けば、何も考えないようになってしまいます。

だから、力が欲しいんです!!自分で、自分を守れる力が!!

だから……だから、お願いします!!」


パーフェクト。合格だろう。普通なら既に気を失っているか、逃げだしている所を、

この子はしっかりと自分で立ち、自分の答えを出した。


「分かった。君を弟子として受け入れよう。」

「あ、ありがとうございます!!」


ただし、忘れてはいけない。壊すなら妥協は許されない。壊れないように、壊す。


「ただし、俺の弟子になると言うなら、地獄を見るぞ。覚悟していろ。」

「地獄なら2度見ています。」


ここでの地獄とは、自分のトラウマとなるであろう事象の事。正しく理解しているようだ。

しかし、2回な・・・間違いなく此処も一回に勘定されてるんだろうな・・・・・。ハァ。



「さぁ、行くぞ、キティ。」

「なっ!!///どっ、どうしてそれを知っているんですか!!」

「さて、なぜだろうね、エヴァンジェリン・アタナシア・キティ・マクダウェル。

言っておくが俺とお前は初対面だ。」

「ますますどうしてですか!?それに不公平ですよ、あなただけ私の名前知ってるなんて!!

なんて名前なんですか?!えっと、アーカードさん!!」

「ちなみにそれ偽名だからな。HAHAHAHAHA。」

「なっ?!」

「俺の名はお前が家賊になれたら教えてやる。」

「かっ、かかかかか家族なんてなれませんよ?!///ずるいです!!」

「完全に誤解しているな。『家』『賊』だ。」

「『家賊』?なんですか、それは?」

「お前が『何を犠牲にしてでも守りたい人』だと思っておけ。

だが、定義なんぞ自分で決めてしまえ。俺も名を借りているだけだ。」

「私の…守りたいモノ……。」

「言っておくが、簡単に増やすなよ?心の底から、本当にそう渇望した人だけにしろ。」

「分かりました。」

「あと、タメ口にしろ。ムカつくから。」

「タ…タメ口?」

「ん、ああ、そうか。つまり、砕けた、楽な口調にしろってことだ。」

「む、難しいですね…じゃなかった、難しい……な?」

「アハハハハ!まあ徐々に使えるようになればいいさ。

さって、そろそろ行くぞ。誰か来たら面倒だからな。」

「え!?あのこの人たちは……?」

「やれやれ、そうだな。腐って養分にでもなれば儲けもんだろう。

『形態変化:モード≪エドワード・エルリック≫』っと」(パンッ!バシィ!!)


俺は落とし穴を作り、肉を全て土の中に埋める。


「解除っと。さ、これでいいだろ。行くぞ。」

「すごい…これも魔法です…魔法…なの…か?」

「いや、これは錬金術だよ。歪んだ、だけどね。」

「歪んだ…って、どう言う意味ですか?」

「言葉のままだよ。ま、お前には使えないから気にするな。」


言いながら俺は町の外に歩き出した。


「あっ、待ってくださ……待て…ってば?」

「いや、その質問は聞かれても困るんだが?」


馬鹿な事を言いつつも俺はある懸念事項をすごく、すごーーく考えていた。

そう。

手刀で寝かしたノワールへの説明と、機嫌をどうやってとるか、だ。

鬱だなぁ。――まぁ、適当に行くか。

しかしまずは、


「待ってって言ってるじゃないですか!!

無視すんなやゴルアァァァァァァァァァ!!!」


宇宙意志によってネタに走ったエヴァを治そうか。


Side out
 
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