| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

転生者が歩む新たな人生

作者:冬夏春秋
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第10話 空気読めよ

 
前書き
「闇の書」の後始末と新展開 

 
 突然ですが、遠坂 (アキラ)とサギ・スプリングフィールドが同一人物だと言うことがバレた。

 今は遠きイギリスはウェールズに向かい、機上の存在となっています。



 そもそもの原因は「闇の書」だった。

 はやてちゃんの魔力=リンカーコアの封印に成功し、熱田にある中部魔術協会本部の呪物の封印室に幾重もの結界を張った中で「闇の書」は安置された。「闇の書」自体はベルカ式魔法のデバイスであり、それを知らない協会では、理解不能なオーパーツ扱いなのだが、積もりに積もった怨念が酷く、呪物として扱われた。

 これなら大丈夫だろう、と思っていた。

 まぁ、唯一の懸念は原作に出て来た猫姉妹の暗躍だったが、中部魔術協会本部内にあるだけあって、封時結界を張って侵入することもできないはずなので、大丈夫のはずだった。
 管理局屈指の使い魔の猫姉妹2匹と言えど、中央突破による侵入が成功するようなら、中部魔術協会にはどうすることもできないし、さすがにそれはないだろうと思っていた。

 が、事態は想像の斜め上を行き、「闇の書」の契約者紛失による強制転移が(多分)行われ、封印室が破壊された。封印室は地下にあり、近くには他の呪具も封印されており、諸共に(転移に巻き込まれ)紛失した。

 協会内に激震が走った。

 不幸中の幸いとしては、次元震が観測されなかったことだろうか。次元震を巻き起こすほどの魔力が足りていなかったのか、それとも結界による恩恵なのか判断はできないが。

 当然封印室の地上部にあった建物も巻き込まれ倒壊し、局地的な地震か(カミナリ)が落ちたかのようだ。対外的にはそう説明した。

 個人的にはこれで「闇の書」による(地球の)被害は無くなったと思えたので、「ま、いっか」という感じだったんだが、その考えが悪かったのか、再建する封印室の結界を一部任せられるわ、どさくさまぎれに悪さを行おうとする怪異や違法術師の対応をやらされるわ、でなんやかんや忙しい日を送らされた。

 でそんな日々もようやく終わり、新しくなった封印室及びその上の建物の上棟記念も兼ねて、神鳴流の印可試験が行われた。

 何故か5人しかいない試験者の1人に選ばれた。
 8歳である。もちろんこの中では最年少受験者だ。

 まぁ、対外的には6歳の頃から2年しか修行していないが、魔法球内で神鳴流と気功の修行をそれぞれ1年4ヶ月、つまり延べ13年以上修行している。
 体格的にはどうにもならないが、技術的には充分と師匠が判断したらしい。ぶっちゃけ身体強化を「念」で行えば充分打ち合えるしね。なので最近師匠には小さい体格を活かした戦術を考えて戦うように示唆されている。

 で、型や技の披露や判定役との立ち会いなど滞りなく行われ、印可は受けれたのだけれども、検分役に青山宗家当代の青山鶴子さまと関西呪術協会の(おさ)である近衛詠春殿が参られていた。

 青山鶴子さまはどうもオレを見に来たらしい。8歳で印可を受けるのは鶴子さま以来らしく、別に来る必要はないのに詠春殿に便乗してきたらしい。
 あと、外国人が印可を受けるのを珍しがってということあるようだ。
 一応月村の分家の遠坂という姓を頂いているが、銀髪オッドアイという外見は噂になっているらしく日本人じゃないのはバレバレである。
 なお、外国人に印可を与えて良いのかと一部意見はあるらしいが、詠春殿の直弟子には魔法世界人もいるので、今更である。

 詠春殿は検分役よりも、新たになった封印室の監査とより詳細な経緯を求めてという感じだ。
 ちなみに中部魔術協会は東西融和には否定(経緯からすれば当たり前である)の立場なので、その辺の懐柔の意味もあるかもしれない。まぁ、強権的にこちらに介入してくれば、いい加減、鶏冠(とさか)に来ている首脳部は反旗を翻すんじゃないかと密かに思っているが。

 ぶっちゃけこの辺は他人事である。

 中部魔術協会首脳部(忍義姉さんもである)と詠春殿が会談中、何故か鶴子さまと別室で雑談である。師匠と先生も交えて。
 主に修行方法について話したのだが。

「それは面白いどすなぁ」

 師匠、鶴子さまの目が笑っていません。

「ただ………」

「「「ただ?」」」

「そんな面白そうなことウチに黙っとったのはいけませんぇ」

 り、理不尽な。師匠、なんとか言ってください。

 目をそらされた………。

「まぁまぁえぇから。一度使わせぇ」

 うん、別に断る気もなかったけど、それ以前に断るという選択肢が本能的にないよネ。



で、イン魔法球。

 鶴子さまに分身(わけみの)符を渡すと早速使われる。

 ここで、鶴子さまは思いもしなかったことを始められる。

「なるほど、なるほど。これが等分に分けられたということやね」

 分身の周りをぐるっと周り、違いがないのかを確認される。

 そして、いきなり分身に斬りかかる。

 分身は意表を突かれるが、それにしっかり反応し、斬撃を返し、反撃する。

 何が起こった? とか思う間もなく2人の青山鶴子さまはヒートアップしていき、凄まじい速さで打ち合っている。

「師匠………。止めなくて良いんですか?」
「いや、無理だろ」
「デスヨネー」

 なんか、奥義も出始めているんですが。

 待避、待避。

 巻き込まれないよう、流れ弾に当たらないよう、師匠共々離れることにする。

 さすが当代さま。師匠はともかく、オレでは「(ギョウ)」で集中しなければ追い切れない速さだ。

 延々と続く2人の鶴子さまの戦いは、その質の高さも相まって決して見飽きることはない。

 宗家秘伝の「【弐之太刀】」を何度も見れたのはラッキーである。記憶はできたのでいつかは使えるようになるかもしれない。

 ある意味、剣士としては至高の時間は経過し、遂に終わりを迎える。

 どうやら勝ったのは本体の方で、分身体は斬られた符に戻る。

「「お疲れ様でした」」

 戻ってきた鶴子さまを迎えるとイイ笑顔で満足されているようだ。

「自分の中に(自分に)勝った経験と負けた経験があるわ。これはえぇ修行になるわぁ」

 なんと。この発想はなかった。

 確かに分身体は均等に別れるので対等な自分との勝負になり、勝っても負けても自分を越えるという得難い経験を得るワケか。
 もう一度言おう。この発想はなかった。

「ところで、鶴子さま。本体が負ければシャレにならない大怪我を負うと思うのですが」

「怪我を気にする程度の修行じゃあかんぇ」

 なるほど。至言? なのか。

 ただ、印可をようやくもらえたレベルのオレがするような修行じゃないか。
 こう、剣の道を極めつつある熟練者が己を越えるために行うレベルの修行なワケですね。

 決して分身2体で対戦させれば怪我のリスクもなくやれる修行と考えてはならないワケですね。

「「それだ!」」

 師匠と鶴子さまの目が輝いてる………。





 とまあ、色々オマケもあったが、後は印可を記念しての宴会である。
 オレともう1人を除いた3人は既に成人しているので銘酒と名高いお酒も振る舞われての大宴会だ。

 出なければ良かったと後悔する羽目になるが………。



 お酒は勧められず、高級な料理に舌鼓を打ちながら食べることに専念していると詠春殿から声をかけられる。

 端から見てると幾人もに声をかけているが、礼儀正しく相手にされていないのがよくわかる。
 まさに慇懃無礼というやつだ。

 最年少に近い(最年少は鶴子さまらしい)印可を褒めてくれるが、バカ親父の仲間であり、組織を危うくしている無能なトップと思うとひたすらウザい。
 なるほど。みんながああいう態度を取るわけだ。
 なんで、こういう席で「東西融和が~」とか話せるんだろう? もう少し空気読もうゼ。

 後から考えるにこの時余程冷ややかな視線をしたらしい。まさに後悔先に立たず。

「君は………」

 ?

「君はサギ君か?!」

 何故バレタし。

「その目、その眼差し。は、いや、ご両親とそっくりだ」

 今、母親と言いかけましたか。
 後から母を知る幾人かに聞いてわかったのは、どうも怜悧な視線で、クールまたは無表情になると母親であるアリカ・アナルキア・エンテオフュシアの冷めた怒りの表情にそっくりらしい。

「はぁ? なんのことですか?」

 としらばっくれるが後の祭りで、詠春殿が懐から懐紙に包んだ符と布(オレの使ってたハンカチの一部だった)を使って呪を唱えるとオレに向かって一筋の光が届く。
 持ち主を特定する符の術だ。

「みんな探していたんだよ! サギ君」
 興奮しているのか、段々声が大きくなっている。

 マズイ!

「あぁ、突然済まない。私が誰だかわからないか。私は君の父親のナギ・スプリングフィールドの仲間だったんだ」

 オワタ。

 ご丁寧にフルネームでバカ親父の名前を出してくれたか。

 ほら、宴会場がシーンとなっている。

 ちなみにオレの素性は、先生や師匠を通じて上層部には告げてある。なので、パトロールなどの実戦に出始めた頃は子供であることも含めてギクシャクしたが、共に背中を預けて戦うようになり気にされなくなってきたのに………。

 しょうがないので「知りません!」と言って宴会場から逃げ出した。





 「念」で身体強化し、虚空瞬動まで使って逃げた甲斐あり、とりあえず、その日はどうにかなったが、詠春殿からイギリスに連絡が行ってしまい、祖父から連絡があった。

 中部魔術協会を通さず、関西呪術協会から月村家へと直接つなぎがあり、祖父と話し合うしかなかった。

 中部魔術協会は「帰りたくない。オレは遠坂暁だ」というオレの意思を確認した上で、この件についての関西呪術協会のつなぎをすべて絶ってくれたのだ。
 所属している一人前の符術師兼神鳴流剣士なのだから当たり前と言えば当たり前なのだが、その分関西呪術協会の対応の悪さが際立つ。詠春殿辺りは、善意で見つかって良かったと言っているんだろうが、個人的にも組織的対応としても最悪である。

 で、何度も無駄な協議を重ねて一旦イギリスに行くことになった。
 「帰る」ではなく、「行く」としているのは、向こうの考えはともかくこちらとしては、すべての片を付けようと「遺産放棄」「戸籍の移動」などの法的な書類を日英両方とも準備して「行く」からだ。

 絶対にこれで関係を絶とう、心に誓った。



 そうして、何故か一緒に行くという、タカミチ・T・高畑と言うこれまたバカ親父の仲間に連れられて、中部国際空港を後にした。 
 

 
後書き
修行年数に関しては、1年4ヶ月×2=2年8ヶ月 ×5=10年40ヶ月≒約13年という計算。
バトルジャンキーには自分と戦え、自分を越える戦いができるのは大変興味深いと思う。

「闇の書」が極東最大の魔力量の木乃香の元へ行くことも考えたが、その後の展開から、オチをどうつけるかを思いつかなかったので、行方不明にしました。一緒に無くなった呪物はどっかで出てくるかも。

あれだ、どっかの転生者が「最高のデバイス」などを望んだら手元に「闇の書」が行くかも。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧