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駄目親父としっかり娘の珍道中

作者:sibugaki
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第6話 何時になっても思い出は良いもんだ

 なのはが別の場所で謎の少女と接触していたそんな今日この頃。全く別の場所にて銀時達万事屋ご一行とユーノはスタート地点から全く微動だにしていないのであった。

「いたた……何も殴る事ないじゃないですか銀さん。只でさえ僕の頬パンパンに腫れてるのにその上銀さんの張り手食らったら僕でも流石にやばいですよ。只でさえ今までのツッコミの無さに読者から文句が来てるってのに唯一のツッコミである僕が倒れたら誰がツッコミするんですか?」

 とか言いつつもさり気に新八君もちゃっかりボケをしている今日この頃だったりする。確かに新八は前回神楽に滅茶苦茶殴られた為に両頬が饅頭並に膨れ上がっているのだ。其処へ更に銀時の八つ当たりが加わり新八の肉体的ダメージは増大していく一方なのであった。

「うっせぇよ。こっちは只でさえ糖分取って無くてイライラしてんだ。其処へ更にこうも立て続けにトラブルが起こりまくってんだ。俺のイライラメーターはもうすぐメルトダウンに達する寸前なんだよボケがぁ」
「知りませんよ。あんたのイライラメーターなんて」

 確かに、新八の言い分が正しい。幾らイライラしているからと言って最寄の人に当り散らすのは止めましょう。下手したら青い服の人達に連れて行かれてしまいますよ。
 そんな事はさておき、今は状況の確認が最優先なのである。

「それで、此処って一体何処なんですか? 例の時空管理局の管理する世界なんですか?」
「知らねぇよ。何でもかんでも俺に聞くんじゃねぇ。そう言うのはその手の専門の奴にでも聞けよ」

 結局他人に丸投げする情けない銀時なのであった。まぁ、それこそ何時もの銀時なのだが、今そうされるとハッキリ言ってかなりイラッと来てしまう。
 が、其処は耐える新八。彼ももう十六歳。江戸の常識で言ったら立派な大人なのだ。
 立派な大人が一々怒りまくっていたら何時まで経っても立派な大人になれないので新八はぐっと耐え、銀時から離れて一路その近くで座っているユーノの元へと行くのであった。

「そんな訳でユーノ君。此処は何処なの? 例の時空管理局の管理する世界なの?」
「それが……此処も実は管理してない世界なんです」

 つまりは全くの外れのようだ。これでは覚悟を決めて転移してきた意味がない。全くの無駄骨である。

「どうするアルかぁ! 私折角ヒロインらしく覚悟決めて来たってのに全くの無駄骨って酷すぎるアルよ! どうにかしろよこの淫獣!」
「すみません。後僕の事淫獣って言うのやめてくれません? 一応これフェレットって言う小動物なんですけど」
「御託は良いアル! お前今から責任取って一人で時空管理局の所へ行くヨロシ! ついでに酢昆布一年分買って来いやぁ!」

 神楽に怒られた上に使いッパシリと言う無茶振りを強要されてしまったユーノ。実際言うとユーノが全部悪い訳ではないのだが今の神楽には全部ユーノが悪いように思えてしまうようだ。

「ちょっ、止めなよ神楽ちゃん。幾ら何でも酷いよそれ。ユーノ君だけが悪いんじゃないんだしさぁ」
「じゃぁお前も同罪で行って来るアル! ついでにお前も酢昆布1年分買ってくるヨロシ! 合計で酢昆布2年分買って来いよボケがぁ!」
「こっちにまで飛び火してきたああぁぁぁ!」

 完全にやぶ蛇であった。折角良い所見せようと思って仲裁に入ったは良いが神楽からして見ればなのはを逸れさせた新八もまた同罪だったようだ。しかし酢昆布2年分と言うが、そもそも神楽が一日に摂取する酢昆布の量が分からないと買えないのでは?

「何? お前等買出しに行くのか? そんじゃ俺のも頼まぁ。俺は何かパフェ的な物なら何でも良いからよぉ」
「てめぇらいい加減にしろ! 揃いも揃って人の事使いっぱしりにしやがって! ちったぁ他のジャンプ漫画の主人公見習って自分で動き出せやボケがぁ!」
「うっせぇ! 俺ぁなぁ。そんな面倒くさい事したかぁねぇんだよ。只でさえ此処に来てから妙に体がダルいんだしよぉ」
「あんたがダルいのは今に始まった事じゃねぇだろうが!」

 早速銀時と新八の口論が勃発してしまった。最早見慣れた光景かも知れないがこう言う場面でやられると返って迷惑に他ならないのであるが。
 
「み、皆さん落ち着いて下さい! 此処は落ち着いて情報集めをしましょうよ」
「うっせぇなぁ。そう言うのしたかったらおめぇが率先してやりゃぁ良いだろうが! 因みに私も何か体がダルいアルよ。どうなってるアルかこれぇ」

 最早事態の収集は絶望的であった。何故か銀時と神楽はその場から動こうとしないし。それに、今にして気づいた事なのだが、何故か二人共何時もより覇気も元気も感じられないのだ。
 一体どう言う事なのだろうか?

「駄目だ。このままこうしていても疑問が片付く訳ないや。とりあえずユーノ君。君はすぐに時空管理局を呼びに行って来てよ。君元々異世界の人間なんだから転移魔法とか使えるんでしょ?」
「すみません。実は、あの転移魔法は僕じゃなくて、僕が追いかけてたロストロギアの異相体が行った事だったんです」

 え?

 ユーノのその発言にその場に居た皆が揃って声をあげた。今まで三人ともユーノ自身が転移魔法を使いやってきたと思っていたのだ。だが、実際にはロストロギアが逃げようとして転移魔法を行った際にそれに便乗して来てしまったようだ。
 つまり、ユーノは転移魔法の類が現状で使えないと言うようだ。

「そ、それじゃ……時空管理局に向う方法って……」
「はい、今の所、ほぼ有りません……向こうが僕達の存在に気づいて来てくれるのを待つばかりなんです」

 とんでもない事態になってしまった。転移も出来ない、連絡も出来ない。ないない付くしとはこの事を言うのであろう。
 しかも、その時空管理局がこちらに気づいて来てくれる可能性は極めて低い。殆ど運任せと言えた。

「おいおい、どうすんだよ。それじゃこのまま家の屋台骨が化け物になっちまうのを黙って見てろって言うのか?」
「いえ、時空管理局はあらゆる世界を管理する組織です。なので、この世界でロストロギア達と戦闘を繰り返せば、向こうも気づいて来てくれるかも知れません」
「なる程な。要するに派手に暴れて向こうに気づかせろって話か。簡単じゃねぇか」

 ニヤリとする銀時。それなら簡単な話だ。要は自分達は好き勝手に暴れまわっていれば良いのだから。そうすれば向こうの方が自ずと気付いてこちらに来てくれるかも知れない。
 連絡手段も取れない以上その方法が一番妥当とも言える。
 ふと、銀時の腰辺りからメロディーが鳴り響いた。内容は某配管工親父のテーマソングにそっくりな音であり。

「ん? こんな時に誰だ」

 懐を弄り取り出したのは源外お手製の携帯であった。二つ折り式の型の古い携帯を開くと、其処に映っていたのは平賀源外と言う名前であった。

「じじぃから?」

 意外であった。まさかこの携帯は異世界との通話も可能であったとは。驚きながらも銀時は通話ボタンを押し耳元に押し当てる。

「あぁ、もしもしぃ。昇龍件ですか? ラーメン一つ注文したいんですけどぉ……」
【あからさまなボケかましてんじゃねぇよ銀の字】

 相変わらずなやりとりであった。とりあえずそう言うのは置いておくとして、まずは状況の把握から取り掛かるべきである。

「しかしこの携帯凄ぇなぁ。まさか異世界でも通話出来ちまうなんてよぉ」
【当たり前だ。何せこの俺が作ったんだぞ。異世界だろうと何処だろうと通話は可能だ。しかしどうやら運が良いな】
「運が良い? 何だ、尻の拭きが足んなかったのか? 耄碌(もうろく)したかぁ?」
【ほっとけ! そっちの「うん」じゃねぇよ】

 毎度のボケとツッコミを織り交ぜながらも会話は続いていた。

【とりあえずお前等が今居るのは俺達の住んでる江戸とかなり似ている世界だ。無論、文化やその他諸々とか多少違いはあるみたいだが、幸いこっちとの時差はそれほどないみたいだ。これなら帰れなくなるって言う危険性はないな】
「そうかい、そりゃ何よりだぜ」

 どうやら最初に懸念していた時差の問題はないようだ。その点は聞けてホッとする。だが、問題は此処からであった。

【だがなぁ、悪い情報もあるんだよ】
「何だよ藪から棒に。まさか転移装置がぶっ壊れちまったのか?」
【嫌、装置の修理は順調だ。お前等をこっちに戻す処置は後せいぜい1週間もすりゃ出来る。だが、問題は其処じゃねぇ。銀の字、お前体の方は大丈夫か?】
「体? 妙にダルいがそれだけだぜ」
【やっぱりそうか……】

 電話の向こうで源外が深い溜息を吐いているのに気付く。体がダルいと言うだけで一体何が不味いのだろうか?

【実はなぁ銀の字。金髪のガキから得た情報を調べてたらとんでもねぇ事を見つけちまったんだよ】
「とんでもねぇこと?」
【お前等がぶちのめしたって言う毛むくじゃらが居るだろ? 実はなぁ、あいつは江戸に来た影響でかなり弱ってたみてぇなんだ。本来の実力の30%も出せてねぇ状態だったらしいぜ】
「おいおい、何だよそのお決まり展開はよぉ。そんで、それとこの体のだるさと何か関係があるのか?」

 尋ねる銀時に対し、電話の向こうで源外が軽く咳払いを決め込んでいた。説明をする前に少し落ち着こうとしたのだろう。落ち着いた所で源外が説明に入った。

【良いか。まず何でその毛むくじゃらが実力を発揮出来なかったかと言うとだなぁ。それは一重に奴がこの江戸に来ちまったのが原因なんだ】
「江戸に?」
【奴等は俺達にはない特殊な力を用いてるみたいだ。だが、その力はこの江戸じゃ無駄に浪費しちまうみてぇなんだ。つまりだ、そいつらはこっちじゃ弱体化しちまうって事なんだよ】
「いきなり難しい話にスイッチしてきたなぁ」
【それでだ、実はそのメカニズムはお前等にも適応されるって話だよ。お前等の体にあるそのだるさがそもそもの影響の現れだ】
「え? マジで! それじゃ俺も神楽もこの世界に来た途端弱体化しちまったって事なのか?」

 途端に青ざめる銀時。道理でこの世界に来てからと言うものの体の調子が悪かった訳である。

【恐らく体質の問題だろう。お前等は江戸で実力を発揮出来るが、代わりにそっちの世界じゃ本来の力が出せず著しく弱体化しちまうって事になる。銀の字の馬鹿力もチャイナ娘の怪力もそっちじゃ全く出せないって事になっちまうんだ】
「マジかよ。それじゃこれから俺達はどうすりゃ良いんだ?」
【とにかく、お前等は一刻も早くその時空なんとかって所と接触しろ。今のお前等ははっきり言って雑魚並の戦闘力しかねぇ。下手にその世界の奴等と戦おうなんて考えるんじゃねぇぞ。返り討ちにされるのが落ちだ】

 最悪の事態であった。時空管理局を呼ぶには出来るだけ派手に暴れて向こうに気付かせるしかない。だが、その要でもある銀時と神楽はこの世界に来た影響で著しく能力が低下し、弱体化してしまっている。
 これではとてもロストロギアに対抗出来るとは思えない。更に、この世界ではロストロギア達の能力は江戸の時以上に上がっている事になる。以前の毛むくじゃらとて本来の実力のおよそ30%も出せていない状況だったのだ。しかも、あのクラスはロストロギアの中でも弱い部類に入る。もし、もっと強いロストロギアに出くわした場合、銀時達にそれを倒す手立てはほぼ絶望的とも言えた。

「どうすりゃ良いんだよ。何か手はねぇのか? こう言う展開だとさぁ。何かこうパワーを回復する手立てとかある筈だろ?」
【残念だが現状じゃ無理だ。俺も何とか対策を講じてみるがさっきも言ったように、転移装置の改修と併用しなきゃなんねぇからかなり遅くなる。だからお前等は極力そっちでの戦闘は避けろ。前にも言ったが下手に戦いを挑んだって今のお前等にゃ勝ち目なんか無いに等しいんだ。分かったな】

 その言葉を最後に源外との通信が途切れた。後に聞こえて来るのは通話が切れた際に聞こえて来る空しい空白音だけである。
 
「どうしたんですか? 銀さん。顔色が悪いですよ」
「どうせまた何か下らない事アルよ。気にする事ないアル」

 相変わらず神楽の毒舌が火を噴く。だが、今はそんな神楽の毒舌にツッコミを入れる気にもならない。何故なら、今現状で自分達が置かれている状況はかなり不味い状況だからだ。

「おぉい、万事屋メンバー全員集合!」

 突然、銀時が召集を掛ける。それを聞き、万事屋メンバーは即座に集まった。

「一体何事アルか? あんまり動かすんじゃねぇよ天パーがぁ」
「おい神楽。お前その辺に転がってる石ころ握り潰してみろ」
「あぁ? 何言ってるアルかぁ。そんなの朝飯前アルよ」

 さも当たり前の如く神楽はその辺に落ちていた手頃な大きさの石を掴んで握り締める。
 普段ならばそうすれば軽々と石は砕け散る筈だった。
 だが、神楽が持たれている手にある石は、何故か一向に砕ける気配がない。神楽が必死に顔を赤くして更に強く握り締めるも、石はびくともしない。

「ど、どうなってるアルかぁ? 全然砕けないアルよぉ」
「本当だ。でも、一体どうして?」

 流石の新八も疑問に思い始める。そんな中、銀時は確信した。源外の言う通り、自分と神楽はこの世界に来た影響で弱体化してしまっている。しかも、予想していた以上の弱さになってしまっていたのだ。
 恐らく、銀時もこれと同じか、それ以上に弱くなってしまっているだろう。これでは源外の言う通りロストロギアとの戦闘になれば勝負にならないのは目に見えている。下手すると確実に返り討ちにあう。だが、だからと言って源外の言う通り戦闘を回避していてはどうにもならない。それでは時空管理局がこちらに来る事はまずなくなってしまうからだ。
 何とも悪循環であった。
 戦闘を行わなければ時空管理局は来ない。しかし、肝心の銀時達は弱体化してしまい戦闘が行える状態ではない。しかし戦闘はしなければならない。
 矛盾であった。

「参ったぜ、こりゃぁ――」

 事情を知らない一同を他所に、銀時は激しく溜息を吐いた。気のせいかどんどん話がややこしくなっていく気がしてならない。気のせいだと思いたいが恐らく絶対気のせいじゃない。
 これ以上ややこしくなる前に手を打たないと更にややこしくなっていくだろう。個人的にそれは嫌であった。
 因みに、すっかり忘れ去られていたのだが、定春は近くで一人呑気に昼寝を楽しんでいるのであったりした。




     ***




「うわぁ……」

 目を覚まして第一声がこれであった。ついさっきまで草原の上だったのが今では一変して、一面フローリングの壁に固められた部屋に来ていた。そして、その部屋にある弾力性の高いベットの上でなのはは目を覚ましたのだ。
 部屋の装飾や家具類等を見るに結構高そうな部屋だと言うのが分かる。
 しかし、何故自分はこんな所で寝ているのだろうか?
 確か、あの時草原で謎の化け物に襲われて気を失ったのは覚えているのだがそれ以降は全く記憶にない。
 そして、気がつくとこれである。もう訳が分からなかった。

「う~ん、こう言う時ってどうしたら良いんだろう? とりあえず頬抓ってみようっと」

 自分でそう言いながら主室に自分の頬を抓りだす。当然の事ながら痛かった。抓った頬は赤く色づいたし妙に痛さが残った。どうやらこれは夢ではないようだ。
 部屋の中にある一枚だけの扉が音を立てて開く。開いた扉と共に現れたのは知らない少女であった。
 金髪の長い髪を両方に束ねた感じの髪型をしており特徴的な赤い瞳をしているもの静かそうな少女だった。

「あ、起きたんだね?」

 起き上がってるなのはを見て少女は安堵の言葉を言いながらなのはの元に近づいてきた。
 が、その少女が間近に来たと言うのになのはは全く反応をしてなかった。と、言うよりも微動だにしてない。
 ちょっと心配になってきた。

「えと、大丈夫? 何処か痛むの?」

 心配になったのか少女はなのはの様子を伺う為に声を掛ける。すると、突然なのはは目の前の少女の両頬を抓りだした。少女の両頬は意外な程に伸び、それをされた少女は突然の事態に驚きだす。

「いふぁいいふぁい! ふぁにするのぉぉぉ!」

 いきなりの事態に対応が出来ず、両手をバタバタさせて涙目になりながら訳の分からない言葉を発していた。
 パッとなのはが両手を離す。少女の両頬はなのはの抓った頬と同じ位に赤く変色し、その両頬を痛そうに押えていた。

「う~ん、痛いって事は此処は君の夢でもないんだね。それじゃ間違いなくこれは現実なんだ。納得納得」
「い、意味が分からないよ。って言うか、夢と現実を判断する方法が凄く古臭いよそれ」

 抓られた頬が未だに痛いのかちょっぴり涙ぐみながら少女は言う。が、そんな事を全く気にしてないかの様になのはは一人で頷く始末であった。

「とりあえず、此処が現実だって事は分かったとして……君誰?」
「本当に君って今更だよね。何か、私と考え方が違うって言うか……」

 色々とツッコミたい気持ちもあったが、それをすると時間が掛かりそうなので置いておく事にした。それに、自分は余りツッコミの類をやった事がないのもあるし。

「えっと、私はフェイト。フェイト・テスタロッサって言うんだ。君は?」
「私はなのは。苗字は分からないけどお父さんの苗字は坂田だから多分私の苗字は坂田で良いと思うよ」
「今一良く分からないよ。そもそもお父さんの苗字って、君のお父さんなんでしょ?」
「まぁね。でも、私元々拾われた子だから」

 途端にフェイトは自分の言った事に対し後悔した。もしかしたらなのはの古傷を抉ってしまったのでは?
 そう疑問に思いなのはを見たが、当の本人は全く気にしてない様子でもあった。
 それを見て安堵する。
 
「それじゃ、お互いの自己紹介も済んだんだけど、此処何処? 確か私さっきまで草原に居た筈だと思ったんだけど」
「此処は私の住んでるマンションだよ。あのままあそこに居たら君風邪引いちゃうと思ったから連れてきたの」
「え? まさかその年で誘拐? 言っとくけど私の家そんなにお金ないよ。だから身代金要求したって無駄だと思うよ」
「ち、違う違う! 誘拐じゃないよ。って言うか誘拐の動機が何でも身代金要求じゃないと思うんだけど……」
「フェイトちゃん、話の趣旨がずれてるよ」
(えええぇぇぇぇぇ! 話の趣旨をずらしたのは君の方なのに何で私があぁぁぁぁ!)

 思いっきり心外だと思えてしまうフェイトだったりする。まぁ、そんな事はこの際どうでも良いとしておく事にする。

「つまり、此処は君の家なんだね? それじゃ、あの時私を食べようとした化け物はどうなったのかなぁ?」
「えっと……私が倒したから大丈夫だよ」
「ゑ? 倒した!? 君が? でも、どうやって?」

 疑問に感じ出すなのは。目の前に居るフェイトはどう見ても自分と同じ位の華奢な少女にしか見えない。そんな少女があの恐ろしい化け物を倒したとは考え難い。
 一体どうやって倒したのだろうか?

「えっとね。上手く説明出来ないんだけど、私は魔法が使えるの。だからそれを使って倒したんだよ」

 単刀直入にそう述べるフェイト。すると、なのははいきなり自分の右手をフェイトの額に押し当て、左手を自分の額に押し当てだした。しかもかなり真剣な面持ちである。

「あの……何してるの?」
「う~ん、熱は無いよねぇ。フェイトちゃん、夢を見る年頃なのは分かるけど今時魔法なんて流行らないよ。もうちょっと現実的嘘をつかなきゃ嘘ってばれちゃうよぉ」
(予想はしてたけどそれ以上の反応をされたああぁぁぁぁ!)

 色んな意味でショックを受けるフェイト。このままだとなのはは魔法の類を全く信じなさそうだ。止むを得ないと悟ったフェイトは仕方なく懐から例の三角形の物体を取り出してそれを掌の上に乗せる。

「ちょっと見ててね」
「ん?」

 疑問に感じるなのはの前で、フェイトはバルディッシュを起動させてみせた。彼女の体を金色の閃光が包み込み、やがてフェイトの体を黒いバリアジャケットが覆っていく。やがて、その姿は以前ロストロギアを倒した黒い魔導師の姿へと変身したのであった。

「っと、こんな感じなんだ」
「……」

 証拠を見せたフェイトの前で、なのはは放心状態になっていた。まぁ、無理もない話しである。いきなり目の前で変身したら誰だってそうなるだろう。
 そうフェイトは思っていた。
 だが……

「凄ぉい! 本物のとと子ちゃんが出てきたぁ!」
「と、とと子ちゃん? 誰それ?」
「えぇ、知らないの? 毎日朝7時にやってる【おはようモーニング】で放映してる【不思議魔女っ娘とと子ちゃん】だよ」

 いきなりの内容についていけてないフェイト。
 因みに、なのはが言っていたその番組は江戸で毎朝7時から8時までの間放送されているお子様向けの長寿番組である。
 視聴率はかなりの高水準をキープしており毎回魑魅魍魎なゲストを呼び込んで楽しくトークしたりしている。
 そして、その番組枠の中で放映されているアニメがこの【不思議魔女っ娘とと子ちゃん】なのである。
 どうやら、そのとと子ちゃんとフェイトがある意味で似ているらしく、それを誤解してしまったようだ。
 因みに、なのははこの不思議魔女っ娘とと子ちゃんが大好きで放映開始時から毎日欠かさずに見ている程の嵌りっぷりである。
 そのとと子ちゃんも既に放送回数100回以上を迎える長寿番組となっている。
 因みにこちらの視聴率もかなり高く、小さな子供から大きな子供にまで幅広く人気が高い作品となっている。
 まぁ、その手の話はまた後程にするって事で。

「ち、違うよ! これはバリアジャケットって言って魔力で象られた鎧みたいな物なんだよ」
「魔力?」
「え~っと、何て説明したら良いのかなぁ? とにかく、私はこの力を使ってあの化け物を倒したの。そう言えば分かる?」
「何となく」

 どうやらある程度は理解して貰えたようだ。しかし、説明するだけでこれだけ疲れたのは恐らく今回が初めてだろう。そう思えるフェイトであった。
 すると、何処からともなく腹の鳴る音が響いた。
 鳴ったのはフェイトじゃない。となるとこの部屋に居るのは自分となのはだけであり。即ち……

「一杯お話したらお腹空いちゃった」
「本当、なのはってフリーダムだね……でも、時間的にはもう8時回ってるし……そろそろご飯の時間だね」
「うん、って8時いいぃぃぃぃぃ!」

 突然盛大な叫び声を挙げだすなのは。そんななのはにフェイトは思わずビックリする。

「ど、どうしたの?」
「うわあああぁぁぁ! 今日のおはようモーニング見逃したああぁぁぁぁ! 不思議魔女っ娘とと子ちゃん第104話【とと子ちゃん危機一髪】楽しみにしてたのにぃぃぃぃ!」

 盛大に叫んだかと思われると今度は激しく落ち込みガクンと項垂れだしてしまった。
 ハイテンションになったかと思ったら今度はローテンションになったりと、本当になのははフリーダムな感じに見えた。

「と、とにかく……ご飯にしよう。私ご飯の用意するから、なのはも食べに来てね」
「うん、有難うね……」

 お礼の返事を言うがやはり元気がなくなっている。其処まで楽しみにしていたのだろうか。その不思議魔女っ娘とと子ちゃんを。

「そ、それじゃぁ……私行くね」
「うん、私も後から行くよ」

 そそくさと、その場を後にするフェイト。その一方で、ある程度落ち込み切った後、なのはは立ち直り立ち上がる。悔やんでもしょうがない。見逃したのならば再放送を期待すれば良いだけの事だ。
 そう自身に言い聞かせながらなのはは立ち上がる。
 そして、カーテンで閉じられている窓に向かい、主室にそれを開いて外の景色を眺める。
 こう言う時は見慣れた江戸の景色を見るに限る。そう自身に言い聞かせての行為であった。
 だが、外の景色を見た途端それは驚愕に変わった。
 普段から見慣れた景色と全く違うのだ。建物の作りも微妙に違うし、何より江戸の目玉とも言える雄雄しく聳え立つターミナルが其処にはなかったのだ。
 それに、下に映る町行く人達を見ても明らかに異様だと思える。
 その人達の服装は今まで見た事ない服装ばかりだし、男は誰も髪をちょんまげにしてないし、女は髪を結ってないのだ。
 何もかもが全く違う風景だったのである。それになのはは滅茶苦茶驚く次第であった。

「此処……江戸じゃないのかなぁ?」

 疑問を胸に秘めながらも迫り来る空腹の波に逆らえずなのははフェイトの待つ居間へと向う。其処には長テーブルと数点の椅子が添えられており、その上にはレンジでチンしただけと言うのが明らかに見える料理が置かれていた。
 そして、更にそのテーブルには見慣れない女性が座っていた。
 オレンジ色の長い髪をした大人の女性だった。

「お、やっと起きたんだ」
「わっ! 猫耳!」
「いきなりだねぇあんた。因みに私は猫じゃないよ」
「じゃ、犬?」
「あんた、本当にフリーダムだねぇ。因みに私は狼だよ狼」

 いきなり発言の嵐に流石の女性も少し呆れた表情を浮かべる。なのは自身別に猫耳を見ても驚きはしない。既に見慣れているからだ。
 江戸の町には猫耳どころか犬が二本足で立って喋っているのすら当たり前な場所である。今更猫耳や犬耳を生やしている人間を見たって別に驚きはしない。

「つまり、貴方は狼なんだ。それじゃ満月の夜になると狼女に変身しちゃうの?」
「しないよ。ってか、何で満月限定?」

 本当にこいつはフリーダムだなぁとその時女性は思った。恐らくこの子と会話をしてたら永遠に話のネタが尽き無さそうだと思われた。

「そ、そう言えばまだ私の事知らなかったよね。私はアルフってんだ。宜しく」
「私はなのはって言います。こちらこそ宜しくお願いします。フェイトちゃんのお母さん」
「嫌、そう言う関係じゃないんだけど。私とフェイトは言っちゃえば主従関係って奴だよ」
「え? それじゃつまり、フェイトちゃんはアルフさんを鎖で縛ってそれで……」
「待て待て待てぇぇぇい! 何処から仕入れたそのネタ! ってかそんな卑猥な関係じゃないから! フェイトの手助けとか手伝いをするって意味だよ」

 めいっぱい焦りながら訂正するアルフ。とても9歳のお子様の言う話ではなかったからだ。まさか9歳のお子様があんな卑猥なネタを口にするとは思ってもいなかったので流石にびびったようだ。

「ふぅん、つまりアルフさんはフェイトちゃんのパシリみたいな物なんだね。家で言う眼鏡君と同じポジションなんだ」
「そう言う言い方やめてくんない? 何だか悲しくなってきちゃうから。あれ? 何だろう。目の前が潤んで良く見えないや。何でだろうねぇ」

 どうやら結構心にクリティカルだったようだ。なのはの目の前でアルフと呼ばれた女性が滝の様に涙を流していた。しかし、そんな事など一切お構いなしと言う感じでなのはは席につく。そして、用意された料理を見て眉を顰めた。

「お待たせ。さ、食べよう」

 それからすぐにフェイトが台所からやってきた。そして残った席に座り料理を食べ始める。
 が……

「ねぇ、これって……レトルト料理だよねぇ?」
「そうだよ。最近の冷凍食品って便利なのが多くて助かるんだ」
「待てぇぇぇぇい!」

 突然なのはが声を挙げる。まるで何処かの拳法家みたいな感じで声を発する。
 それにフェイトとアルフが驚く。

「な、何?」
「フェイトちゃんは何時もこんな食事なの?」
「そ、そうだけど……」
「そんなの駄目だよ! 今の私達は体を作る大事な時期なんだよ! そんな時期にこんなジャンクフードばっかり食べてたら大変な事になっちゃうよ! 10年後のフェイトちゃんはマ○コデ○○○スみたいになっちゃうよぉ!」

 まるで某黒服のセールスマン宜しくフェイトに指差してなのはが断言する。が、フェイト自身そのマ○コなんちゃらが誰なのか分からない為今一話についていけてないのではあるが。

「で、でも……私料理苦手だし……それに、こっちの方が手っ取りはやいから良いかなぁって……」
「尚更駄目だよ! 女の子はねぇ、家事、炊事、育児。この三つの仁義が出来ないとやっていけないんだよ! それが出来ないと一人前のレディーになれないってこの間おはようモーニングでやってたもん!」

 どうやら情報源はそれからであったようだ。因みに先ほど言った事が現実的に本当かどうかは定かではないので本気にしないように。

「って言うけどさぁ。それじゃどうするつもりなんだい?」
「私が教えてあげるよ! こう見えて私は万事屋の家事、炊事を全部こなしてるからその点については自信あるもん!」

 自分の胸に手を当てつつ、自慢げにそう言うなのは。確かになのはは万事屋の家事、炊事を一手に引き受ける年の割りに出来る娘なのだ。
 しかし、金銭管理も出来る為銀時からは疫病神と呼ばれてるのだが。

「ねぇ、ところでその万事屋って何?」

 フェイトはなのはの言っていたその万事屋と言う類に疑問を感じていた。聞きなれていない言葉だったからだ。
 それに対し、なのはが咳払いをしつつ説明に入る。

「万事屋って言うのはね。飼い猫の捜索から要人の護衛まで何でも引き受ける何でも屋だよ。因みに私は其処の客受けや仕事の請負を担当してるんだ。江戸の町じゃそれなりに有名なんだよぉ」

 自慢そうに言うなのは。だが、その時フェイトはある疑問を抱いた。
 江戸?

「なのは、江戸って言ったの?」
「うん、私江戸出身だもん」
「えっと、江戸って……今から500年近くも前だよ。私そんなに歴史に詳しくないけど確かそうだった筈だよ」
「……え?」

 フェイトのその言葉を聞いた途端、なのはは頭の中が真っ白になるのを感じた。
 自分は確かに江戸出身だ。だが、今居る此処はその江戸から実に500年も先の世界だと言うそうだ。
 つまり、自分は遥か未来に来てしまったと言うのであろうか。

「そ、それじゃ……一年が365日だとして、不思議魔女っ娘とと子ちゃんが毎週月曜日に放送されてるから……私、実に19000回も見逃してる事になってるんだ! ショック……」
(ショックを受ける場所が違うと思うんだけど……)

 どうやらなのはからして見れば未来に来てしまった事よりも好きなアニメを見逃しまくった事が悔やまれるらしい。図太い神経をしているのか、はたまたお気楽な性格なのか理解に苦しむフェイトであった。

「えと、話を戻すね。それで、なのはは其処で一人で万事屋を営んでるの?」
「ううん、私は請負担当で実際に仕事をこなすのはお父さんだよ」
「なのはのお父さんってどんな人なの?」
「え~っとねぇ、駄目人間」

 娘にそう言われる父親とは一体どんな父親なのだろうか?
 そう思いつつもフェイト達はなのはの話を聞く事にした。

「お父さんって金銭管理が全然駄目だから、私がしっかりしてないと駄目なんだよねぇ。だって稼いだお金もすぐにギャンブルや甘い物につぎ込んじゃうんだし、そのお陰で何度家賃の支払いに苦労した事か分からない位だよ」
(な、なのはのお父さんって其処まで酷い親だったんだぁ)

 話を聞いていく内、フェイトの脳内でなのはの父親の図式が出来上がって言った。
 まず、なのはの父親は基本的に駄目人間であり、金銭管理がまるで駄目であり、ギャンブル狂の甘党だと言うのが分かった。

(あ、アルフ……なのはのお父さんってもしかして)
(うん、前に見たドラマみたいな奴だったりして……)

 なのはが語り続ける横でアルフとフェイトがひそひそと耳打ちしあっていた。
 二人の脳内ではかなり酷い内容が映し出されていたようだ。




『おらぁ! 酒が切れたぞぉぉ! 後糖分も切れたから何か持って来いやゴラァ!』

 一人、居間で暴れ回るなのはの父親。万事屋と言う仕事をしているが仕事がない日は一日中呑んだぐれている。
 そして、一人で家事、炊事を担当するなのははそんな父親に大層苦労を掛けられていたと言うそうであり。

『お父さん、もう家にはお酒も甘い物も買うお金なんかないよぉ』
『んだとぉゴラァ! 人が苦労して稼いでるんだ。ない筈ねぇだろうが!』
『お父さんが仕事したの半年も前だよ! それにあの時の仕事代だってお父さんがパチンコで全部擦っちゃったじゃない!』
『バッキャロウ! あれはパチンコが悪いんでぃ! 俺は悪くねぇ!』

 無茶苦茶な言い分であった。父が仕事をしたのは実に半年も前の事。それ以降は娘のなのはが必死に切り盛りをしながら出来る限りのアルバイトをして生計を立てていたのだ。
 しかし、それももう限界に差し掛かっていた。幼い子供に出来る仕事は限られている。それに対し父の要求する額は日増しに増大していく一方である。
 遂にはなのはの一日の稼ぎを余裕で振り切る額にいなってしまったのは言うまでもない事であり。

『大体てめぇの稼ぎが悪いから俺が苦労するんだろうが! もっとジャンジャン稼ぎやがれ! でねぇとてめぇを質に入れちまうぞぉ!』
『うぅ……何時まで続くの? こんな苦しい暮らし』

 暴れ狂う父の影で一人さめざめと涙を流しながらもなのはは懸命に働き続けるのであった。




 そんな感じの勝手な妄想をしていたフェイトとアルフ。すると、二人の脳裏に沸々と怒りが込み上げてきていた。

(アルフ、私なのはのお父さんって人許せないよ。確かになのはは何処かフリーダムだし掴み所がない子かも知れないけど良い子だよ。そんな子を自分の道楽の為に犠牲にするなんて、私許せない)
(私も同感だね。今度その親父を見つけたらギャフンと言わせなくちゃね)

 二人がガッチリと手を握り合って誓い合う。しかし、その考え事態がそもそも間違いであると言う事に気付くのは何時になる事か。

「二人共、話聞いてた?」
「うん、バッチリ聞いてたよ! 酷いお父さんだよね。なのはのお父さんって」
「??? そうかなぁ。お父さん確かに金銭感覚は駄目駄目だけど」

 何故か怒り心頭なフェイトに疑問を感じるなのはなのであった。

(ま、良いか。それより、此処が500年後の未来だなんて驚いたなぁ)

 ふと、なのはは窓辺から見た世界を思い出す。どれも見慣れない風景や建物、人達だった。
 だが、不思議な事にそのどれにも何故か見覚えがあった。妙に懐かしく感じられた。
 何故だろうか。初めて見る筈なのに初めてじゃない気がする。
 まるで、凄く小さい頃に見ていた様な気がするのだが、今一分からない。

(ま、良いか。それよりお父さん達何処行ったんだろう? まさか、例の懸賞金を使って遊び歩いてるんじゃ……困ったなぁ、今月の家賃の支払いどうしよう)

 相変わらずフリーダムな発想を持っているようで一先ず安心なのであったりした。




     つづく 
 

 
後書き
次回【甘い菓子には渋いお茶が一番】お楽しみに 
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