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妖精の十字架

作者:雨の日
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~黒と白~

「・・・何だ・・・この魔力は?」

俺は右手に纏った陰陽柄の魔力を見て小さくつぶやく
今までの俺の魔法は純粋な黒。決して白など見当たらなかったのに、今の魔力には白い魔力が混じっている

「しかし、魔力の消費速度がやばいな・・・」

そう。この状態は一気に魔力を吸い取られる
まとめて素早く倒さなければ魔力切れが起こりそうだ

「何ぼさっとしてやがんだぁ!」

杖から雷の魔法を打ち出す魔道士。俺は視界の端でとらえつつ、右手を雷に向ける

「覇ァ!」

衝撃破が雷を打ち消して立て続けに魔道士も吹き飛ばす
その攻撃が合図となり、一斉に魔法が打ち出される
俺はその場にしゃがみ、魔力を貯める

「・・・ッ!!」

白と黒の衝撃が全ての魔法を消し去る
しかし、俺の魔力は減るどころか回復していた

「・・・魔力の吸収か」

地を蹴り、上に飛び上がる。遠距離魔法を使える魔道士を選定し、拳に魔力を貯め始める

「・・・爆覇!」

かざした先で爆発が起こる
その爆風は、周りの木々をなぎ倒した
地面に降り立つと、今度は近距離魔法を使う魔道士が襲い掛かってくる

「・・・纏い」

足に黒の魔力だけを纏い駆けだす
そして、魔道士の手前で急停止して回し蹴りを放ち、魔道士の腰を砕く
続けて、横に立つ魔導士の拳を避けて足を振り上げた

「ぐぎぃぃ!?」

「情けない声だな・・・」

「後ろが空いてんぞーー!!」

飛びかかってくる魔道士目掛け、右手に纏った陰陽の魔力で殴りつける
すると、魔道士は高速回転しながら大きく吹き飛び、岩を砕き、地面に刺さった

「・・・強すぎたか。調節が難しいから魔力、も・・・減る、な」

視界がかすみ始めた。本来の戦闘なら決してめまいなど起きないというのに・・・

「お、お前・・・化け物かぁ!?」

一人、完全に戦意を失っている
その男の悲痛な叫びは周りの魔道士の士気を一気にそいだ

「いつもなら容赦しないが、俺も体がおかしいんでな。逃げるか、俺にやられるか。好きな方を選べ」

せめてもの慈悲
魔道士はいちもくさんに逃げ出してしまった
俺は、粗ぶっている息を整えるためにその場に座り込んだ

「はぁ・・・はぁ・・・グゥ!?」

せき込んで手で口をふさぐと、手に生温かい液体が飛び散る

「・・・血?」

俺が覚えていたのはそこまでの記憶だった













「ここは・・・どこだ?」

目を覚ますと、そこは真っ白な世界だった

「体は・・・大丈夫そうだな」

気を失う前の気だるさはもう無い
しかし、俺が今どこに居るのかは全く見当もつかなかった

『ここは、あなたの意識』

どこからか声が聞こえる
否、俺の中から聞こえる

『そして、我らの意識』

今度はさっきと違う声が聞こえた

「誰だ・・・」

その問いに答えたのはまたもさっきとは違う人だった

『覇界に住まう者、と言えばよいかな?覇界神よ』

「ッ!?」

覇界。俺が生まれ、育った故郷
俺の親父、リールニッヒと過ごした場所

『覚えているか?あの日、お前が去った、あの日の事を』

あの日、俺がリールニッヒとの修行を終え、覇界から去ったあの日
忘れるはずもない。あの日が俺に新たな試練を与えたのだから

『あなたの力、封じられた力。三つの封印を解くことが試練』

「わかっている。親父に散々教えられた」

『ならば今ここにいる理由もわかるな?』

俺がここに居る理由。それは・・・

「・・・封印を解くため。だろう?」

『その通りよ。あなたは一つ、封印を解く資格を得た。それは、誰か他人を信じ、信じられ、魔力を共有する事』

「・・・ミラ、か」

『しかし、お前が手にした魔力を使いこなすには魔力そのものが足りていない』

つまり、封印を解いて、魔力の総量を増やすってことか

「前置きはいい。さっさと始めるぞ。覇界の三神」

『そう焦らずに。今姿を見せましょう』

そう言って目の前が光にくらんだ
光が落ち着くと、そこには女性が立っていた

『自己紹介は一応しましょう。わたしはルーサ』

「俺はいらないだろ?やるぞ・・・!」

足を開き、戦闘態勢をとる
そして、両手に陰陽の魔力を

『せっかちですね・・・その魔法、名づけるならば「双無の滅竜魔法」ですね』

「双無・・・二つの色、しかし無属性。良い名前だ」

双無。俺の魔法にこの戦いをささげよう――

「いくぞ!双無・覇王拳!!」 
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