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管理局の問題児

作者:くま吉
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第11話 模擬戦


「ドラッグ?」

 あの事件の後、隊舎に戻ったリクは、その他の隊長陣、そしてアキ、レイと一緒に隊長室に来ていた。
 椅子に座るはやての前には空中に映し出されたディスプレイ。そこにある薬品の情報が記されていた。

「そうや。あの後あの犯人の血液をシャマルに調べてもろうたら、そこからドラッグ…つまりは違法な薬物反応が出たんや」

 ―――エクスエデン。

 ディスプレイにはそう書いてある。
 そしてそれが今回の事件の元凶となった薬物の名前だ。

「あ、それ私も見た事あるよ?最近執務官達の間でも結構話に出て来るし」

 フェイトがそう言った。

「ここにも書いてある通り、ドラッグの名前はエクスエデン。最近若者の間で流行っとるもんらしい。それでや、このドラッグには服用者を攻撃的な性格に変える作用があるらしい」

「攻撃的な性格に変えるとはどういう事でしょうか主はやて」

 シグナムが尋ねる。

「所構わず物を破壊したり、人を傷付けたりと、まあ、様々やな」

「そのクスリを捌いている奴、もしくは組織って分からないんですか?」

 リクの質問に、はやては悔しそうに首を横に振った。

「残念やけどな。全く足取りが掴めてない。不甲斐ないばかりや」

「そんな!はやてちゃんは悪くないよ。悪いのはドラッグを売ってる人達じゃない」

「そうだよはやて」

 なのはとフェイトの言葉で、その場にいるヴィータやシグナムを同じことを言った。
 はやてはそう言って貰えた事が嬉しいいのか、先程の表情とは一変して、嬉しそうな、それでいてやる気に満ちた顔をしていた。

「ありがとな皆」

 はやては笑いながらそう言ったのだった。







 結局、解決策はおろか、明確な対応策すら出ずに、解散となった。
 エクスエデンを売っている売人の足取りが一切掴めていない事に加え、麻薬捜査は機動六課の完全なる担当外である。それらの事情も加わり、しばらくは何も出来ないのである。
 その結果、執務官であるフェイトが仕事の合間に調べるという事で話は落ち着いた。

「…………………」

 リクは廊下を歩きながら、少しだけ表情を固くしていた。
 頭を巡るのは今日の事件。結果として犯人は逮捕したが、現状としては何も好転していない。いや、フェイトに更なる負担を掛けたという点でマイナスにしかなっていない。
 リクはそう思っていた。

(何か力になれればいいが…)

 が、リクの階級は下も下だ。
 新人であるスバルやティアナとほぼ同じ権限しか有していない。勿論長年管理局にいたおかげで、交友関係等は多少はマシだ。あくまで多少は、だが。
 とまあ、結果的にどういうことかというと、リクにはフェイトに力になれるだけの力がない、という事だ。

(戦闘なら力になれる所じゃないんだけどな)

 それは傲慢でも驕りでもなく、純粋な事実として、リクは内心で呟いた。
 単純な戦闘能力ならば、リクは間違いなくフェイトより高い。勿論フェイトだけでなく、なのはや、はやて、シグナム、ヴィータといった管理局を代表する強者よりも。
 強い事。それ自体は良い。弱ければ結局何も守れない事をリクは「経験で」知っている。だから強い事は良い事だ。

 が、それだけはダメなのだ。

 少なくとも今は。

(戦闘能力が高い奴なんて探せば幾らでもいる。今必要なのはそんな力じゃない)

 リクにとって仲間は何よりも大切な存在だった。それは、リク自身も、僅かに混乱するほどだ。
 今でも、昔在籍していた部隊の仲間とは連絡を取ってバカ話をしているし、レイやアキと一緒にボロい居酒屋で酒を呑んだりしている。
 以前、リクは考えた。
 何故自分はここまで仲間を大切にしているのだろうか、と。
 実際この問題を考える事に意味など存在しない。ただ大切。小難しい事等考えずに、思った事を、感じた事に従えばいいだけの話なのだから。
 でもまあ、リクが考えた末に出した結論が、「家族」がいないからだろう。というものだった。
 リクには家族がいなかった。血の繋がりを無視して、心から、家族と呼べる存在が居なかったのだ。
 だからリクは仲間をある種の家族のように感じているのでは。そう考えた。

(今思えばなんて無駄な事を考えてたんだよ俺は)

 昔の自分を思い出し、恥ずかしさとバカらしさで思わず苦笑する。
 今のリクは、どう考えたにせよ、大切なら全力で護るだけだ。そう考えている。

 ―――護られるより、護る存在になりたい。
 ―――支えられるより、支える存在になりたい。

 それは愛する女性であるなのはにも、先程までリクの思考を埋めていたフェイトにも、部隊長であるはやても、長年の仲間であり悪友でもあるレイやアキ、そしてその他の仲間にもあてはまる事だった。

「まあ、出来る事から始めるか」

 リクはそう呟くのだった。







「だからってなんであたしの訓練になるんですか?」

 リクの前にはティアナの姿があった。その隣にはスバルが立っている。

「いやだって、お前が一番俺を嫌ってるだろ?だから親睦を深めようと思ってな」

「必要ありません」

 ティアナはぴしゃりとそう言い切り、踵を返す。
 そんなティアナに、リクは気にせず声を掛ける。

「まあ待て。俺は強いぞ?それはもう強い。そんな俺が訓練してやるって言ってるんだ。ありがたく受けた方がいいんじゃないか?」

 あえての上から目線からの物言い。
 そう言えば、スバルはともかく、負けず嫌いのティアナは必ず噛み付く。まあ、スバルの方も負けず嫌いといえばそうなのだが、彼女はティアナとはまた別種の負けず嫌いだ。
 そして、ティアナは案の定目を鋭くして、リクを睨みつけた。

「そんなに言うならあたし達に無剣さんの実力を見せて下さいよ」

「ちょ、ちょっとティア!いきなりは失礼だよ」

 スバルが慌てたようにそう言う。
 まあ、いきなり年上でもあり、一応の先輩でもリクに噛み付くのは非常識といえば非常識だ。とはいえリクはそういった事は気にしないし、今回はリクがワザとけしかけたようなものだ。

「気にしないでいいぞスバル。じゃあいつもの場所で模擬戦でもするか」

 いつもの場所。
 それは新人四人がいつも訓練しているあの場所のことだ。

「わかりました」

 ティアナは毅然とした表情でそう呟いた。







 訓練場に三つの影があった。
 それは二つに分かれており、一つはスバル=ナカジマとティアナ=ランスター。そしてもう一つが無剣リクだ。
 スバルとティアナは、それぞれデバイスを起動させ、バリアジャケットを展開している。
 片や、リクは管理局の制服のままだ。
 そして三人は荒野の上に立っていた。これは「折角戦うなら今まで使ってないフィールドでやろうぜ」というリクの案である。あとは、空戦スキルのないスバルとティアナの為でもあるのだが。

「じゃあルールを説明する。まあ、ルールって言っても俺が負けを認めたらお前らの勝ち。お前らが負けを認めたら俺の勝ち。でいいだろ?」

 二人は同時に頷く。

「よし、じゃあ始めるか」

 リクはポケットからアヒル口の入れ物を取り出す。この中に義魂丸が入っている。
 義魂丸を一つ取り出し、それを口に放り込み、そして噛み砕いた。
 その瞬間、リクの体が魔力に包まれる。が、それも一瞬で、魔力はすぐに吹き飛ばされ、中から漆黒の着物に身を包み、背中に巨大な刀を背負ったリクがいた。

「あ、あれが…」

 それは見たティアナが茫然と呟く。
 スバルは声を出す事も出来ないらしい。
 一応リクやレイやアキの戦闘映像は見せて貰った二人だが、やはり直接見ると驚いてしまうらしい。

「ああ。これが俺の、お前らでいう所のバリアジャケットだ。俺達は〈死覇装〉って呼んでる。そしてこの刀を〈斬魄刀〉って言うんだ」

 言いながら、リクは背中にある刀…斬月の切っ先を二人に向ける。

「準備はいいか?二人とも」

「い、いつでもどうぞ」
「だ、大丈夫です」

 二人は本能的にリクの強さを感じ取り、声が上擦る。

「そうか。なら―――」

 リクの姿が消える。
 二人は余りにも唐突な出来事に一瞬思考が止まる。そして。

「―――死ぬ気で来い」

 背後からリクの声が聞こえた。

「「え?」」

 余りにも予想外の事に、二人は揃ってマヌケな声を出す。
 そんな二人だが、一番最初に気付き、対応したのはスバルだった。

「―――この…ッ」

 背後に向けて蹴りを放つ。
 しかしそれは難なく回避される。だが、スバルが動き出した事により、ティアナの意識も動き出す。
 ティアナは背後に跳び、それと同時に魔力弾を形成する。

「喰らえッ!!」

 放つのは単発の魔力弾―――シュートバレット。
 ティアナはこれを弾速を上げて発動している。
 ティアナは確信していた。いかに強かろうとも、この距離からではこの攻撃は躱せない、と。そうなればリクは攻撃を防がざるを得なくなる。そして後は至近距離にいるスバルの猛攻。そして自分の攻撃で主導権を握れる。
 そうティアナは考えていた。が。

「甘いな」

 リクは迫りくる魔力弾を、左手で掴んだ。
 そして、ティアナとほぼ同じ思考に行き着いていており、既にリクに拳を放っていたスバルに投げつけた。

「ぐあぁっ!!」

「スバル!!」

 魔力弾が直撃したスバルは、その威力で後方に吹き飛ぶ。
 リクはそんなスバルに更なる攻撃を仕掛ける。それを見たティアナは急いで魔力弾を作るが、ティアナの発動速度では到底間に合わない事を先程の攻撃から見抜いたリクは、気にせず斬月をスバルに叩きつける。
 スバルは咄嗟に腕を交差し、障壁を張る。

 ドオオォオオン!!

 しかし防ぎきれず、そのまま吹き飛ばされる。
 そして、同タイミングで、ティアナの魔法が完成した。魔力弾の数は全部で四つ。

「クロスファイア―――シュート!!」

 同時に発射された四つの魔力弾。
 それをリクは斬月を一振りする事で諸共吹き飛ばした。

「そ、そんな…」

 ティアナはそう呟くが、戦意は未だ折れていない。
 そもそも、ティアナはリク相手に勝てるとは思っていなかった。その程度の戦力差分析くらい出来るのだ。
 だからティアナにとってこれは経験を積むためのものだった。勿論リクの上から目線にイラッときたのは確かだが、それも今思えばリクの策に乗せられたと思えなくもない。

「ホント、ムカつく…」

 ボソリと呟いたティアナはカートリッジを二発消費して、再び魔力弾を造りだす。

「おいおい。同じ手はもう―――」

「うるさい!喰らいなさいよっ!!―――クロスファイアシュート!!」

 先程同じ四発の魔力弾がリク目掛けて襲い掛かる。が、今回はカートリッジを二発消費している為、威力は格段に上昇している。
 しかし、それでもリクにとってはたいした脅威ではない。
 先程と同じように斬月を振り、魔力弾を吹き飛ばそうと考えた瞬間、背後からいきなりスバルが現れた。

(幻術かっ!!)

 ティアナの幻術により、スバルの姿を消していたのだろう。クロスファイアシュートと並行して幻術を発動出来るティアナの器用さにリクは賞賛を通り越して驚嘆する。
 リクは即座にからくりに気付くが、既にタイミング的にどうしようもない所まで来ていた。

「ディバイン―――バスタァァー!!!」

 スバルの拳から放たれる魔力砲撃。
 そしてティアナが放った四つの魔力弾。
 その両方がリクに襲い掛かる。

 ドオオン!!!

 大きな爆発音と共に、辺りの大地が吹き飛ぶ。
 土煙が立ち上り、今の一撃がどれ程のものか、物語っている。

「流石にこれは防ぎきれな―――」

 ティアナの言葉はそこで途切れた。
 土煙が晴れたそこには、左手でスバルの拳を掴んでいる、一切の傷を負っていないリクが立っていた。

 ―――まさか、止めた?
 ―――スバルのディバインバスターを?
 ―――素手で?

 混乱していた。が、混乱していたから、ティアナは本来ならありえないと思わざるを得ない解答をすんなりと受け入れる事が出来た。

「今の攻撃は良かったな。特にティアナ、幻術と魔力弾の同時使用は驚いた」

 リクはスバルをティアナの方に放り投げ、そう言った。
 その表情は少しだけ喜びが浮かんでおり、そこには二人をバカにするのではなく、二人の実力をある程度認めていると語っていた。
 それを見抜いたティアナだが、彼女が思ったのは、「けど、所詮はある程度なんだ」という悔しさだった。

「いつか絶対あんたを認めさせてあげるわ」

 負け惜しみがふんだんに盛り込まれた言葉だったが、リクは小さく笑った。

「楽しみにしといてやるよ」

 そしてリクは斬月を振り下ろした。
 放たれる剣圧に、二人は呑み込まれた。

 こうして、三人の模擬戦は、スバルとティアナの敗北で決着がついたのだった。
 そしてこの日から、ティアナとスバルはリクと毎日訓練するようになった。

 
 

 
後書き
ちなみに、ティアナですが、原作より多少強くなっております。

まあ、ティアナ好きなんで。 
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