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機動6課副部隊長の憂鬱な日々

作者:hyuki
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番外編
番外編4:隊舎防衛戦
  第1話


地上本部へ向かうフォワード陣やギンガを見送ったシグナムとヴィータは,
スターズ分隊の待機室でモニターに映る公開意見陳述会の映像を見つめていた。
じっと椅子に座ってはいるが,2人とも険しい表情で緊張状態を保っている。
2人とも押し黙って映像を見ていたが,ヴィータがぼそっと声を上げる。

「このまま何も起こらなきゃいいのにな・・・」

ヴィータの言葉にシグナムは厳しい顔を向ける。

「それは考えが甘すぎだぞ」

「わーってるよ。けど,ここにはなのはもフェイトもフォワードの連中も
 いねーんだぞ。もし,スカリエッティが全戦力で襲ってきたら,あたし達と
 ゲオルグやシンクレアだけじゃ守りきれねーよ」

シグナムはヴィータが珍しく弱音を吐くのに内心で驚いていた。

(確かに,戦闘機人が10体も現れればここにいる戦力だけでは不安だが,
 シャマルやザフィーラもいるのだから・・・)

そこでシグナムは考えを転換する。

(だが,シャマルには索敵と管制を依存せざるを得んし,ザフィーラには
 ヴィヴィオを守るのに専念してもらう必要があるか・・・。
 確かにヴィータの言うように,守りきれないかもしれないな・・・)

シグナムは自分の中でそう結論付けると,ヴィータに声をかけようとする。
が,そのとき強烈な振動が2人を襲った。

「な・・・!なんだよ,これ!」

「決まっている,敵の襲撃だ。行くぞヴィータ!」

狼狽するヴィータにそう言い放つと,シグナムは待機室の窓を蹴破り,
隊舎の外へとおどり出た。
シグナムはそのまま上空へと上がり,隊舎に目をやる。

(ヘリポートが破壊されている・・・砲撃か!)

隊舎の南側に広がる海に目を凝らすと,上空には小さな点が大量に見えた。

(ガジェット・・・か?)

少し遅れて,ヴィータも上空に上がってきた。

「遅いぞ,ヴィータ」

「わりー。油断してた・・・」

その時,隊舎防衛の指揮をとるゲオルグから2人に念話が入る。

[シグナム,ヴィータ。今どこだ?]

[私もヴィータも隊舎の上空だ]

ゲオルグからの簡潔な問いに対して,シグナムも同じく簡潔な答えを返す。

[シャマルから敵の位置を聞いて対処してくれ]

[了解]

念話が切れたところで,シグナムは隊舎の屋上に目をやる。
ちょうど,階下へ通じる階段の入口の近くでシャマルが索敵に
集中しているのが見えた。

[シャマル]

[シグナム?ヴィータもいっしょね?]

[ああ。接近中の敵の位置を教えて欲しい]

[ええ。敵は飛行型ガジェットと地上のガジェット1型と3型の混成部隊よ。
ゲオルグくんからも聞いてるとは思うけど,すでにゲオルグくんは非戦闘員の
退避命令を出して,隊舎の放棄を決断してる。だから,地上のガジェット
については,その進行遅らせるだけでいいの。それは既にシンクレアくんと
交替部隊が配置についてるわ。シグナムとヴィータには空をお願い。
で,飛行型ガジェットの位置だけど,大まかに言ってほぼ同規模敵の編隊が
2つ。東西に分かれて進行中。規模はそれぞれ50程度よ]

[了解した。私は東側,ヴィータは西側だ。いいなヴィータ]

[おう。まかせとけ!]

ヴィータはそう言うと,西側の編隊に向かって飛んでいった。
シグナムも少し遅れて東側の編隊を迎撃すべく移動し始めた。

2人はほぼ同時にそれぞれの目標とするガジェットの編隊と接触した。
ヴィータは鉄球を生成すると,グラーフアイゼンを大きく振りかぶった。

「シュワルベフリーゲン!!」

ヴィータがグラーフアイゼンを鉄球に叩きつけると,鉄球はヴィータの魔力を
纏って,ガジェットに向かって飛行し,ガジェットを貫いて行く。
貫かれたガジェットが爆散するころには,ヴィータが別のガジェットに向かって
飛行し,グラーフアイゼンによって強烈な一撃を振り下ろしていた。

一方,シグナムはシュランゲフォルムのレヴァンテインを振り,
ガジェットを次々と撃破していく。
10機ほどのガジェットを破壊すると,レヴァンテインをシュベルトフォルムに
転換し,ガジェットに向かって突入していく。
レヴァンテインで何機ものガジェットを切り結びながら,シグナムは
ヴィータに向かって念話を飛ばす。

[ヴィータ!こちらのガジェットはすべてが実体ではないぞ!]

[こっちもだ。シャマル,区別できねーか?これじゃキリがねー]

[無理よ。実体と幻影の区別はこちらでもつかないわ]

ヴィータの要請にシャマルからは弱々しい声で返答が入る。

[ならば仕方がない。目視でも区別できん以上すべてが実体と考えて
対処するよりないだろう。いいな,ヴィータ!]

[わかった!・・・っと!]

ヴィータは,接近してくるガジェットにアイゼンを叩きつけながら返事を返す。
シグナムはヴィータが返答した後に上げた声に違和感を覚える。

[どうした!?ヴィータ。問題か?]

[いや,ガジェットをぶっ叩いたら幻影ですり抜けちまった。
あたしは大丈夫だから気にすんな!]

[了解した。無理はするなよ!]

[わーってる!]

ヴィータはシグナムに返事をすると,再び鉄球をガジェットに向けて飛ばす。
シグナムもヴィータからの返答を聞くと,レヴァンテインを構え,ガジェットの
編隊へと突っ込んでいった。



一方地上では,副部隊長室で隊舎を襲う振動を受けたシンクレアが,
隊舎の正面玄関前でガジェット迎え撃とうとしていた。

(AMFCが展開されてるとはいえ,大量のガジェットと戦うのは交替部隊の
 みんなにはちょっと荷が重いよな・・・)
 
シンクレアは自らのインテリジェントデバイスである,インビンシブルに
話しかける。

「インビンシブル。シャマル先生からの索敵データは入手してるね」

「はい。出しましょうか?」

「頼むよ」

インビンシブルによって映し出された索敵情報は,多くのガジェットが
複数の方向から迫っていることを示していた。
すべてにシンクレア自身が対応することはとても不可能な状況だった。

(3方向から侵攻か・・・中央が厚いな。コイツを叩くのが
 効果的だと思うけど・・・)

シンクレアはシャマルに念話を送る。

[シャマル先生]

[シンクレアくん?]

[地上型のガジェットを少しでも叩こうと思うんですが,正面玄関前で
迎え撃つのが効果的と考えていいですか?]

シンクレアが尋ねるとわずかな沈黙のあとに,シャマルの声が返ってくる。

[そうね。中央の部隊が一番手厚いし,正面玄関から侵入されると,
非戦闘員の退避ルートを分断されるかもしれないから]

[了解です。ではここで時間を稼ぎます]

[お願い。でも無理はダメよ]

[わかってます。それでは]

シンクレアはシャマルとの会話を終えると,インビンシブルをセットアップし
バリアジャケットを身にまとう。

(さてと・・・こんな形で戦うのは久しぶりだけど,うまくやれるかな?)

シンクレアは何度か首を振って内心の不安を振り払う。

「インビンシブル。シューティングモード!」

「はい」

シンクレアはインビンシブルを近づいてくるガジェットに向けて構えると,
ふうっと大きく息を吐く。

「行くよ,インビンシブル」

「了解です」

そして,シンクレアはガジェットの群れに向けて,砲撃を放った。
10機以上のガジェットが破壊され,シンクレアは次の砲撃を撃とうとする。
その時,シンクレアにとって戦場で何度も聞いた声が届く。

[シンクレア,今どこだ?]

ゲオルグからの念話にシンクレアはうっすらと笑みを浮かべる。

[玄関前です。ガジェットと交戦中]

シンクレアがそう答えると,ゲオルグは心配そうに念話を送ってくる。

[了解。一人でやれそうか?]

ゲオルグが自分を思いやって言っていることを感じ,シンクレアは
顔に浮かんだ笑みをさらに深くする。

(変わらないなあ,ゲオルグさん)

そんなことを考えながらも,魔導師としてのシンクレアはゲオルグへ冷静な
回答を伝える。

[問題無いです。キツくなったら後退します]

[それでいい。聞いての通り隊舎は放棄だ。無理はするんじゃないぞ]

(いつまでも心配かけてすいませんね,ゲオルグさん・・・)

そんなことを考えながら了解とゲオルグに返すと,シンクレアは
なおも前進してくるガジェットに目をやる。

「インビンシブル,近接モードに転換。突っ込むよ」

「はい」

水色の魔力の刃をはやしたインビンシブルをギュッと握り直し,
シンクレアはガジェットの群れを睨みつける。

(さあ!ここからが本番だっ!)

そして,シンクレアは地面を蹴り,ガジェットの群れへと突進していった。

 
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