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機動6課副部隊長の憂鬱な日々

作者:hyuki
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番外編
番外編3:地上本部攻防戦
  第2話


フォワード陣が到着する予定の時刻が近くなり,ロビーで少し休憩していた
3人は,ヘリの着陸地点へと向かった。
3人が到着すると,ちょうどヘリが降下してきていた。
ヴァイスの操縦するヘリは柔らかに草地に着地すると,後部の扉を開いた。
3人が近づくと,中からフォワードの4人とギンガ・リインが降りてきた。

「みんな御苦労さん。向こうはどないやった?」

「私たちが出てくるまでは特におかしなことは起きてませんでしたよ。
 平穏そのものでしたね」
 
はやてからの問いに対してティアナが簡潔に答えると,
はやては満足そうに頷いた。

「そうか・・・そんなら今日の作戦について説明するからついて来てな」

はやてはそう言うと,先ほどまでいた地上本部に向かって歩きはじめた。



「っちゅうわけで,これが今回の公開意見陳述会の警備計画と機動6課の役割
 なんやけど,何か質問はあるか?」
 
はやては,合流したフォワード陣以下の6名に対して,地上本部の警備計画と
機動6課の配置について説明を終えると,そう言って6名の顔を見渡した。
しばらくして,ティアナの手が上がる。

「あの・・・こう言ってはなんですが,地上本部の警備体制は甘いの
 一言に尽きると思うのですが,なぜこうも無策なんです?」

「無策か・・・ティアナは辛口やね」

「あ・・・すいません」

ティアナが慌てて頭を下げるが,はやては苦笑しながら手を振る。

「ええねん,私も同感やから。で,地上本部の無策っぷりの理由はいろいろ
 あるとは思うねんけど,一番大きいのは慢心やろうね」
 
「慢心・・・ですか?」

ティアナは首を傾げて尋ねる。
はやてはティアナに向かって頷くと,更に言葉を繋げる。

「これまで何十年と地上本部が敵の攻撃にさらされたことなんかあらへんやろ?
 しかも,最近は要塞やらを建設して見た目の防衛力は上がっとる。
 これまでも十分やった防御能力が更に向上して,鉄壁の守りになった・・・
 って考えとるんやと思うよ。まあ,実際のところ市街地の治安維持なんかも
 手抜きにはできひんから,高ランクの魔導師を集中運用することなんか
 不可能や,っていう現実的な理由もあるやろうけどね」

「なるほど・・・」

はやての言葉にティアナは納得したように頷く。

「他にあるか?無かったら個々の役割についての話に移るけど・・・」

はやてがそう言って再び一同を見渡すと,全員が小さく頷いていた。

「よっしゃ。ほんなら個々の役割についてやけど,まずはリイン!」

「はいです!」

はやてに呼ばれたリインは甲高い声で返事をする。

「リインの第1の役割は索敵やね。いち早く敵の動きを掴んで少しでも
 有利に戦うための条件を整える重要な役割や。頼むで!」

「はいです!」

「あとは,私が前線に出る場合は私とユニゾンしてもらうかもしれんけど,
 基本的には前線指揮官のなのはちゃんと一緒に行動してや。
 絶対にはぐれたらあかんよ!」

「よろしくね。リイン」

はやてとなのはの言葉にリインは神妙な顔で頷く。

「わかってるです。絶対になのはさんのそばを離れません!」

リインがそう言うと,はやては満足げに笑い,次にフォワード陣の方に
向き直った。

「で,みんなはとりあえず6課の配置箇所で待機で,
 リインの指示に従って戦闘参加。
 空についてはなのはちゃんとフェイトちゃんにお任せになってまうから,
 地上戦ではみんなに頑張ってもらうからそのつもりでな!」

「「「「「はい!」」」」」

はやての言葉にフォワード陣とギンガの5人が大きな声で返事をする。

「あと,ギンガ。戦闘が始まったら私は中から外に出るつもりやから,
 私のデバイスを預かっといてくれるか。中には通信機を持って入るから,
 私からの通信を受信したら,この辺で合流。頼むで」

はやてが差しだしたデバイス類を受け取りながらギンガは神妙な顔で頷く。

「了解しました。必ずはやてさんのデバイスは守ります」

「うん。頼むな!ほんなら私は会場に入るから,あとはなのはちゃんと
 フェイトちゃんにお任せするわ。ほんならねー!」

はやてはそう言うと,ひらひらと手を振りながら地上本部に消えて行った。



公開意見陳述会が始まり,機動6課の面々は警備計画上の配置箇所で
他の部隊と同様にじっと待機を続けている。
しかし,どうせ襲撃なぞ起こるはずもないとタカを括っている他の部隊とは
異なり,ほぼ確実に,しかもかなり強力な戦力をもって襲撃が行われると
考えている機動6課の面々は,周囲で談笑したりしている地上本部の
警備要員を尻目に,デバイスの機能チェックなどに余念がなかった。

「ねえ,ティア。襲撃ってどれくらいの規模になるのかな?」

スバルはマッハキャリバーの手入れをしながら,ティアナに向かって尋ねる。

「そんなの私に判るわけないじゃない。なのはさんかフェイトさんに
 聞きなさいよ」

ティアナは分解したアンカーガンを再組みする手を止めずに言う。

「さっき聞いたけど,判んないって言われた」

スバルの言葉にティアナは嘆息する。

「あんたねえ。あの2人に判らないことが私にわかると思うの?
 いいからちょっと黙ってなさいよ」

「はいはい。まったくつれないなあ,ティアは」

「うっさい!」

ティアナはそう言うと,スバルの頭に拳骨を落としていた。



スターズの2人の近くでは,ライトニングの2人が芝生の上に座って
話し込んでいた。

「ねえ,エリオくん。戦闘機人って,どんな人たちなのかな?」

「うーん。僕も実際に戦った訳じゃないからよくわからないけど,
 フェイトさんの話だと,Sランク魔導師並みの力があって,
 特殊な能力も使えるんだよね?」

エリオがフェイトから聞かされたことや過去の戦闘記録を見た記憶を
呼び起こしながらそう言うと,キャロは不安そうな表情を浮かべる。

「Sランクって・・・しかも,特殊な能力って,地下水道で見た
 地面に潜れたりする能力だよね・・・大丈夫かな・・・」

エリオはキャロの不安そうな様子を見ると,キャロの両肩に手を置き
キャロの目を見つめる。

「絶対大丈夫!なんて言えないけど,これまでなのはさんたちに鍛えてもらって
 僕やキャロもずいぶん力をつけたと思うし,やれることをやろうよ。
 それに・・・」

エリオがそこで言葉を切ると,キャロは小首を傾げる。

「それに?」

「えっと・・・キャロは絶対に僕が守るよ」

エリオはそう言うと,自分の言葉が恥ずかしくなったのか,頬を赤く染める。
一方のキャロも,少し赤くなった顔で小さく頷いた。

「うん。ありがとう,エリオくん」



少し距離を置いて,なのはとフェイトはそんな4人の様子を眺めていた。

「みんないい感じだね。固くなっても,気が抜けてもない」

「うん。程良い緊張状態が維持できてるみたい。
 あれなら,普段の力がきちんと出せるよね」

フェイトの言葉を受け,なのははそう言うと微笑を浮かべた。

「普段の力って言えば,前にゲオルグくんが言ってったんだけどさ」

「うん?」

「本番の戦闘で出せる力はせいぜい訓練の時の80%だから,俺達は
 あいつらにとって戦場で必要な1.2倍以上の力を身につけさせるように
 鍛えてやる必要がある。って」

なのはがゲオルグの口調を真似てそう言うと,フェイトは小さな声で笑った。

「結構似てたよ,なのは」

「そうかな?」

「うん。それにしても,ゲオルグらしい言葉だね」

フェイトの言葉になのはは頷く。

「そうだね。いかにもゲオルグくんって感じがする」

その時,上空で警戒に当たっていたリインから通信が入る。

『こちらリインです。南方より接近するガジェットを探知しました!』

その通信をきっかけに,なのはとフェイトの表情は一気に引き締まる。

「来たよ!フェイトちゃん」

「うん!」

 
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