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機動6課副部隊長の憂鬱な日々

作者:hyuki
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番外編
番外編2
  7月18日の裏話


新暦75年 7月18日 午前10時。

機動6課所属の高町なのは1等空尉は悩んでいた。

(いきなり休暇って言われても・・・ねえ)

先ほど,上司の八神はやて2等陸佐から,翌日の休暇を宣告されたのが
その理由である。
彼女は右に左に首を傾け,しきりに悩みながら隊舎の通路をオフィススペースに
向かって歩いて行く。

「なのは!」

突然名前を呼ばれた彼女は狼狽する。
周囲を見回すと,親友であるフェイト・T・ハラオウン執務官が
後ろの方から走ってきた。

「あ,フェイトちゃん」

「どうしたの,なのは。なにか悩んでるみたいだけど」

「うん,実はね・・・」

彼女はフェイトに事情説明を開始する。
事情を聞いたフェイトは開口一番に言った。

「チャンスだよ!なのは!」

「・・・フェイトちゃん?」

彼女はフェイトの言うことが理解できなかったらしく,首を傾げる。
フェイトはそんな彼女に苛立ったのか両手の拳を強く握りしめ力説する。

「だって,明日,ゲオルグと同じタイミングで休暇なんでしょ!
 デートに誘うチャンスだよ!」

「デ,デート!?だって,私とゲオルグくんは付き合ってる訳じゃないし」

「何言ってるの,なのは。このチャンスを逃したら,もうダメかもしれないよ」

「ダメって何が?」

「もうゲオルグとは付合えないってこと」

「べ,別にゲオルグくんとはそんなんじゃないもん・・・」

そんな彼女の様子にフェイトはますますボルテージが上がっていく。

「なのは!」

フェイトはそう言って,彼女の両肩を強く握りしめる。

「正直に言ってね。ゲオルグのこと,好きでしょ?」

「それは・・・うん・・・」

そう言いながら彼女は小さく頷いた。

「明日がゲオルグの誕生日だからってプレゼントも用意してるんでしょ?」

彼女はこくんと頷く。

「だったら,積極的に動かなくちゃ!あれでゲオルグは結構モテるんだよ。
 いつ誰と付き合い始めるか判んないよ!」

「それは・・・困る・・・けど・・・」

「じゃあ,今すぐゲオルグのところに行って,明日デートしようって
 誘ってきなさい!」

フェイトはそう言って,副部隊長室の方に彼女を押しやった。



副部隊長室の前に来た彼女は,ブザーを鳴らすボタンを押そうか押すまいか
逡巡していた。

(ゲオルグくんと,デート・・・///)

やがて意を決したのか,彼女はボタンに指を伸ばす。

「何やってんの?」

彼女の目の前で開いたドアから,端末を小脇に抱えた
ゲオルグ・シュミット3等陸佐その人が現れた。

(ゲオルグくん!?なんで?)

「え?あ,うん。ちょっとね・・・」

「俺に用事?」

「えっと・・・うん」

「今から会議なんだけど,歩きながらでもできる話?」

(あ,これから会議なんだ・・・。じゃあ邪魔したら悪いかな・・・)

「あ,そうなんだ。じゃあ後でいいや。引きとめちゃってごめんね」

「別にかまわないけど,いいのか?」

「うん。またあとで来るから・・・」

(別に,急ぎの用じゃないんだしいいよね・・・)

そして彼女は会議に向かうゲオルグを見送った。

(あーあ。誘えなかったなあ・・・)

彼女は肩を落としてオフィススペースに向かうのだった。



「え?誘えなかった!?」

「うん。なんかゲオルグくん会議に行くとこだったみたいで・・・」

フェイトはあまりのタイミングの悪さに頭を抱えた。

「・・・フェイトちゃん?」

「ちょっと待って,今ゲオルグの予定を確認するから」

そう言って,フェイトは端末をものすごい勢いで操作し,
ゲオルグの予定表を表示させる。

「予算関係の会議だね。1時間くらいで終わるみたいだから,
 そのタイミングで行けば?」

「え!?あ,うん。ありがと。フェイトちゃん」



・・・1時間後。

彼女の姿は再び副部隊長室の前にあった。

ブザーを鳴らそうとボタンに手を伸ばす。

(そういえば,自宅の掃除とかするって言ってたよね・・・。
 誘ったら迷惑かな・・・)
 
彼女の指がボタンから離れて行く。

(ううん。誘ってみてダメだったらしょうがないんだから!)

再び彼女の指がボタンに近づく。

「なのは」

(へっ!?)

驚いた彼女は勢いでボタンを押してしまう。

(あ,押しちゃった。服装,ちゃんとしなきゃ)

しかし,しばらく待ってみても声が聞こえてこない。
彼女は首を傾げる。

(あれ?いないのかな?もう一回押してみよ)

そして,彼女はもう一度ボタンへ指を伸ばそうとした。

「俺はこっちなんですけど」

(あれ?ゲオルグくんの声が後ろから?)

彼女が声の方を向くと,訝しげな表情のゲオルグが立っていた。

「・・・ゲオルグくん?」

「何やってんの?」

(言えない!ゲオルグくんをデートに誘おうとして迷ってたなんて!)

「えーっと・・・にゃはは・・・」

「とりあえず,部屋に入るか?」

彼女は頷いて,ゲオルグに勧められるまま部屋に入った。



・・・夜。

寮の自室に戻った彼女はパジャマに着替えていた。
ベッドの上では,ヴィヴィオがすでに寝息を立てている。

「なのは。ゲオルグは無事誘えた?」

「うん。なんとかね」

彼女の答えに,フェイトはほっと胸をなでおろす。

「で?どこいくの?」

「うん。私も特になにも考えてないから,とりあえずゲオルグくんが車を
 だしてくれて,街をぶらぶらすることになったよ」

「そっか・・・なのはは行きたいところとかないの?」

「うーん,特には・・・あ!」

「なに?」

「私ね,ゲオルグくんの子供時代のことって聞いたことないから,
 ゲオルグくんの育った街とか見てみたいかな」

(え?それってご両親にご挨拶・・・行ける!)

「うん。いいよ!それ。明日ゲオルグに頼んでみれば?」

「え?そうかな?じゃあそうしてみるね」

「うん。じゃあもう寝ようか」

「うん。おやすみ」

暗くなった部屋でフェイトは一人ほくそ笑む。

(ちょっと強引だったけど,あの2人はこうでもしないと進展しないよね。
 それに,ゲオルグに貰ってもらわないと,なのはって嫁き遅れそうだし。
 覚悟するんだね,ゲオルグ。きっと幸せにはなれるから・・・)
 
こうして彼女は7月19日を迎えることになる。

 
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