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真剣で武神の姉に恋しなさい!

作者:炎狼
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千李の決意

 
前書き
はい
今回は一気に行きます
多少長くてもご容赦を

ではどうぞ 

 
空が茜色に染まる頃、千李と大そして瑠奈と三大は極楽院の門の前にいた。

「じゃあ俺は帰るよ。千姉ちゃんは明日の何時ごろ帰るの?」

「そうね。たぶん明日のお昼ぐらいかしらね」

 千李が言うと大は軽くうなずき。

「そっか。じゃあ見送りにくるよ」

 大はそのまま門を開けたところで千李の手を握っていた瑠奈が大に手を振りながら言った。

「バイバーイ!ヒロおにいちゃん」

 手を振られた大も瑠奈に答えながら門を閉め大は極楽院を後にした。

 すると三大が千李に声をかけた。

「センちゃん。夕飯までは時間があるから先に瑠奈とお風呂に入ってくれんかの」

「ええ。わかったわ。行きましょう瑠奈ちゃん」

「うん!」

 千李が誘うと瑠奈は大きく返事をし千李の手を引っ張りながら中に入った。

 その二人に続き三大も極楽院の中に入っていった。



 極楽院の風呂はそれなりに広かった。

 千李はそこで体をほぐしながら湯船につかっていた。

 瑠奈も千李を真似しながら体をほぐしていた。その姿が可愛かったのか千李は瑠奈を自分の隣に引き寄せた。

 その行動に瑠奈が不思議そうに千李を見上げた。

「どーしたの?センリおねえちゃん?」

「ん?瑠奈ちゃんが可愛かったからついね」

 可愛いと言われたことが嬉しかったのか瑠奈ははにかんだ。

 その姿を見ながら千李は思い切って瑠奈に聞くことにした。

「ねぇ瑠奈ちゃん。お母さんができるって言われたら嬉しい?」

 千李が聞くと瑠奈は一瞬迷ったように見えたがすぐにニッと笑った。

「うん。嬉しいよ!」

 瑠奈の返答に千李は「そう」とだけ言うともう一度瑠奈を腕の中に抱いた。

 先ほどのように不思議そうな視線は向けず瑠奈は千李に身を任せているように見えた。

 その後二人は互いに体を洗いっこしたり、千李は瑠奈の髪を綺麗に洗ってやった。

 風呂から上がった二人を待っていたのは三大が用意した暖かい食事だった。

 千李と瑠奈はそれをまるで親子のように仲良くたいらげた。

 夕食を終えると遊んだ疲れが出たのか瑠奈は眠そうに目をこすっていた。

 その様子に気づいた千李は瑠奈を寝室に連れて行った。

 そして千李が瑠奈を布団に入れたところで瑠奈が千李の服の袖を掴んだ。

「どうしたの?瑠奈ちゃん」

「センリおねえちゃん。わたしねおねがいがあるの。えっと……その……」

 瑠奈の様子を見て千李は思い出したことがあった。

 ……これって。

 千李はそのまま何も言わず瑠奈の横に寝転がった。

「大丈夫。瑠奈ちゃん眠るまでずっと一緒に居てあげるから」

 千李が言うと瑠奈は小さく頷き目を閉じた。

 5分ほどするとスー、スーという寝息が聞こえたので見てみると瑠奈は熟睡していた。

 千李は立ち上がり廊下へと続く障子に手をかけた。

 そして目だけを瑠奈に向けると千李は小さく「おやすみ」とだけ言い千李は部屋を後にした。

 茶の間に行くと三大が茶を啜っていた。

「瑠奈は寝たかい?」

「ええ。もうぐっすりとね」

 答えに対し三大は「そうかい」というと千李の分の湯飲みにお茶を注いだ。

 千李は三大の正面に腰をおろすと出されたお茶をゆっくりと飲んだ。

「瑠奈はずいぶんとセンちゃんになついとるようだねぇ」

「そうね。あの子とてもいい子ね」

「センちゃん。顔が母親の顔しとるよ?」

 三大が微笑を浮かべながら言うと千李は恥ずかしくなったのか顔を少し赤らめた。

 すると千李はそれをごまかすように三大に聞いた。

「コホン……。ところで髪紐のほうは完成したの?」

 千李が聞くと三大は思い出したかのように懐から髪紐を取り出し千李に渡した。

 すでに結んである髪紐を解きそれを渡しながら千李は三大から新たに封印式が埋め込まれた髪紐を受け取り髪を縛った。

「どうだい。瑠奈の親になる覚悟は出来たかい?」

 唐突に聞かれたことだったが千李はそれに静かに頷き言った。

「ええ。私はあの子の……瑠奈の親になる。そして立派に育ててみせるわ」

 そういった千李の瞳には覚悟とそして決意の光が煌々としていた。

「……そうかい。ありがとうねセンちゃん。あのこの子とよろしく頼むよ」

 千李の決意が本物であることを悟ったのか三大は深々と頭を下げた。

「うん」

 言葉は少なかったが千李はしっかりとした口調で言った。

 だが「でも」と千李はいいそれに三大は頭を上げた。

「でもなんだい?」

「……瑠奈になんて言って私が親になるって言えばいいかわからないからちょっと海風にあたって考えてくるわ」

 千李はそう言うと普段着に着替えなおしふらふらと外に出て行った。

 それを見送った三大はずっこけてしまった。

 ……そんなことそのまま言えばいいだろうに。

「まぁでも。こんなところもあの子のいいところかねぇ」

 三大は湯飲みを片手に縁側に出て月を見上げた。



 極楽院を出た千李はまっすぐに海岸へ向かっていた。

 途中大の家が見え、声をかけていこうかと思ったがやめた。

 ……大にも大の生活があるだろうし邪魔しちゃ悪いわよね。

 そんなことを思いながら千李は住宅地を抜け湘南海岸の遊歩道まで来てしまった。

「ありゃ。結構考え込んでたわね。全然気がつかなかった」

 そういいながらも千李は近くにあった落下防止用のチェーンが下がっているポールに手を置きながら再度考え込んだ。

 ……やっぱりここはストレートに?いやいやもしストレートにって瑠奈が嫌がったらかわいそうだし、それよりも嫌がられたら私が立ち直れないし。

「だー!!もうっ!どうすりゃいいのよ!?」

 考え込みすぎたのか千李は声を荒げ叫んだ。

 だがその声は海岸に打ち付ける波の音にかき消されすぐになくなった。

「はぁ。やっぱりストレートよりちょっと遠まわしに言ったほうが……。まてまてそれで瑠奈が分からなかったら余計恥ずかしいし……。ここはやっぱりストレートが……いやいやいや……」
 
 千李がそのまま悶々と考え込んでいると突如千李の横からまばゆい光が差し込んだ。

「まぶしっ。ったく何だってのよ」

 考え事をしていたときに横水を差されたので千李は若干苛立ちながら光のするほうを見るとそこには大量のバイクに乗った不良たちがひしめき合っていた。

 その前には四人の女が立っていた。

 ……でかいのが一人。胸がでかいのが一人。オチビが一人。胸が残念なボサボサツインテが一人ね。そのほか100人に満たないぐらいか。

 千李が相手の頭数を把握していると前に居た四人のうちの一人、ボサボサツインテが口を開いた。

「アンタね!私の部下をこけにしてくれたのは!!」

 女の子ながらもしっかりと通るいい声だった。

 その声に千李はポールから手を離し声の主に向き直った。

「まったく覚えがないんだけど?」

 千李が返すと少女は先ほどと同じ声音でいった。

「とぼけんじゃないわよ!!私の部下が確かにあんたにやられたって言ってんの今日の11時ぐらいに!!」

 ……ああ。あいつらのことね。

 思い出した千李はうんと頷きいった。

「思い出したわ確かにやったわね。それであんたらはその落とし前でも付けに来たわけ?」

「そうよ!あんたは私の江乃死魔に泥を塗った!!だから許しとくわけにはいかないのよ!」

 千李は聞きながら疑問に思っていた。

 ……江ノ島?江ノ島ってあの江ノ島?

 考えていると少女が声を荒げた。

「ちょっと!?いっとくけどあんたが今想像した江ノ島じゃないからね!?チームの名前よ私たちの!!」

 ……なーるほど。じゃあ漢字にすれば「江乃死魔」こんなとこかしらね。というかよくあの子私が考えてること分かったわねエスパー?

 千李が脳内で納得していると先ほどの少女とは違った声が聞こえてきた。

「なぁ恋奈様?そろそろやっちまおうぜ?」

「そうだシ!あいつ完全にあたしらのことなめきってるシ!!」

「自分はどっちでもいいっすけどね~」

 おそらく前にいる四人の会話だろう。

 三人の意見を真ん中の先ほど恋奈と呼ばれていた少女は聞き入れながら三人を黙らせる。
 
「まぁ待ちなさっての。私らを目の前にして物怖じしないあいつの態度からしてあいつたぶん結構の使い手かもしれないわ」

 風に乗りながらそんな会話が聞こえていた千李は感心した。

 ……ふ~ん。やっぱりあの子が頭取ね。それにいい分析能力ね。

 感心しながらも千李は恋奈に声をかけた。

「ねぇ!恋奈って言ったっけ?ちゃんと自己紹介して欲しいんだけど!!」

 千李の言葉に恋奈は「はぁ!?」といったが少し考えた後に言葉をつむいだ。

「いいわ!!教えてあげる。私の名前は片瀬恋奈!三大天の一人で江乃死魔のリーダー片瀬恋奈よ!!」

 高らかに宣言した恋奈はふふんと言った顔をしていたがそこで千李が言った。

「ああごめんね。かっこよく決めてるところ悪いんだけど後ろのバイクのライトのせいで全然顔見えないわ。消してくんない?」

「仕方ないわね……」

 恋奈はぶつぶつといいながらも後ろのバイク隊にライトを消させた。

「これでどう!!」

「ああー今度は暗すぎて見えないわ。もっかいつけて」

 千李がそう言うと恋奈は再度ライトをつけさせ、千李を見た。

「やっぱり。見えないわごめんもっかい消して?」

「あんた見えてんでしょーーーー!?」

 ……ちっ。ばれたか。

 内心毒づいていると恋奈も痺れを切らしたのか周りにいた三人そしてバイク隊に命じた。

「もうあったまきた!!宝冠!ハナ!梓!あいつをメッタメタにしなさい!」

「おうよ!」 「分かったシ!」 「了解っす」

 恋奈の横にいた三人がいっせいに千李めがけて駆けて来た。

 そしてそれに呼応するかのように後ろにいたバイク隊も攻めてきた。

 ……血の気がおおいわねぇ。

 感心してると先ほど恋奈に宝冠と呼ばれた少女?が千李めがけて猛烈なタックルを仕掛けてきた。

「おっと」

 千李はそれを軽やかにかわす。

「俺っちのタックルをかわすたぁやるじゃねーの!だけど二度目はないぜ」

 そういうとすばやく体を反転させ千李めがけ再度タックルをけしかけてきた。

 その様子から周りのバイク連中は勝利を確信したような表情をしていたがそれはすぐに絶望の色に変わった。

 宝冠は止められていたのだそれも腕ではなく指一本で。

「ぐっ!?」

 宝冠自身何が起きているのか分からないのだろうただただ驚きの声を上げるだけだった。

「確かにいい体当たりだけどそれじゃあ私には届かないわね」

 そういうと千李は宝冠から指を離し前につんのめる宝冠の首筋に軽く手刀をあびせた。

 宝冠はその一発で沈んだ。

「な!?」

 恋奈の目が見開かれた。

「そんな宝冠が!?でもあんな軽い一撃で!」

 動揺が隠せないでいるようだがすぐに冷静さを取り戻しほかの仲間に命じた。

「全員一時距離を置け!迂闊に近づくな!!」

 その命令にほかの仲間は静かに頷くと千李から距離をとった。

 ……やっぱりあの子いい観察眼してるわね。いい司令塔ね。

 内心で感心していると恋奈たちとはまったく違う気が恋奈たちの後ろから猛スピードでやってきた。

「邪魔だどけええええええ!!」

「え!?腰越!?」

 と恋奈がリアクションをとった直後恋奈は猛スピードでやってきたそれに豪快に轢かれた。

 ……うわぁ痛そう。ってそれよりも。

 轢かれた恋奈を心配する千李であったがすぐに目の前にいる人物に視線を戻した。

「久しぶりだな千李!!」

「ええ。元気そうでなによりよマキ」

「ぬかせぇ!!!」

 マキと呼ばれた少女は千李に殴りかかってきた。

 そう子の少女こそ千李が言っていた湘南で会いたがっていた人物である。

 名を腰越マキ湘南の三大天の一人である。

「相変わらず私にあったら殴りかかるのやめてくれないかしら?」

「うるせぇ!テメェ見てるとイライラすんだよ!辻堂以上にな!!」

 怒鳴りながら繰り出される拳を千李は軽くいなしながら千李は反論する。

「辻堂って誰!?つーか私お前になにもしてなくない!?」

「ああ!そうだよだけどなぁ!なんかむかつくんだよ!!!!」

「理不尽すぎるんだけど……」

 そういいながらもマキの拳は激しさをます。

 そしてそれを千李は軽くいなしていく。

 さっきからこれの連続である。

 二人の姿を見ていた梓が恋奈を起こす。

「恋奈様!恋奈様!大変なことになってるっす!はやく戻って」

「うぅ……。いた……痛くない!!」

 それなりのダメージを追ったはずの恋奈だがすぐに回復した。

 このようにどんな傷をしてもすぐに回復するため周囲からは「血まみれの恋奈」と呼ばれている。

「どうしたの!?腰越とあいつは?」

「あっちっす」

 梓が指差すほうを向いた恋奈は驚愕した。

 何せ湘南の三大天の一人でありおそらく力だけであれば辻堂愛にも負けはしないであろう腰越マキの攻撃が簡単にいなされているのだ。驚くのは当然である。

「何なのよあいつは」

 恋奈は二人を見ながらそうつぶやくしかなかった。

「おらぁ!!」

「よっと」

 繰り出される拳の嵐を華麗によける千李。

 先ほどからよけ続けられているためマキの顔が苛立ちに染まってきた。

 ……いい加減潮時かしらね。

 千李は拳の嵐がやんだ一瞬の隙を突きマキに接近し拳を放った。

「しまっ!?」

「はい終了」

 千李が言うと同時にマキは大きく後ろに吹き飛ばされた。

 その光景に恋奈含めその場にいた全員は開いた口がふさがらなかった。

 何せあの腰越マキが吹っ飛ばされたのだこれに驚かないものはここ湘南にはいないだろう。

「いい加減その殴りかかるクセ直して欲しいんだけど?」

 千李はマキに近づきながら毒づくとマキはせき混じりにいった。

「ゲホッ。仕方ねぇだろ……ゴホっ……クセなんだからなおんねえんだよ」

「いやいや。直す努力をしなさいよ」

 冷静に突っ込む千李だがその顔はどこか嬉しそうでもあり楽しそうだった。

 するとマキはおもむろに立ち上がりきびすを返した。

「もういくの?」

「ああ。これ以上いても仕方ねぇしな。次は絶対私が勝つからな千李」

「はいはい。たまには家に顔出しなさいよ」

 千李が言うがマキはそれに「うっせ」とだけ言うとすぐにどこかへ消えてしまった。

 残された千李も極楽院に戻ろうと帰ろうとするがそれを恋奈がとめた。

「待ちなさい!!あんたと腰越はどういう関係なの!?」

「ん~?ただの幼馴染だよ。じゃあね片瀬恋奈ちゃん。覚えとくよ」

 そういうと千李は跳び立った。

「なんなのよあいつはーーーーー!!!?」

 恋奈の叫びが夜の湘南に響くがそれも波の音にかき消されすぐに消えた。



翌日

 千李と瑠奈そして三大の三人は茶の間に集まっていた。

 ……さてどうしたものかやっぱりストレートに。

 千李がいまだに悩んでいると三大がそれをせかした。

「ほれ、センちゃん瑠奈がまっとるじゃろう」

「ああもう!わかったわよ」

 千李は言うと軽く咳払いをし先ほどからじっとこちらを見つめている瑠奈に向き直った。

 その様子に瑠奈も触発されたのか目から子供らしさが消え真剣な面持ちになった。

 軽く深呼吸し千李は瑠奈に告げた。

「瑠奈ちゃ……いえ、瑠奈?昨日私がお風呂で言ったこと覚えてる?」

「うん。お母さんが出来たらうれしいっていうこと?」

 瑠奈の言葉に千李は「そう」といって頷いた。

 そして千李は核心を言った。

「そのお母さんが出来るってことなんだけどね。……私が貴女のお母さんになるのよ」

「え?」

 千李の発言に瑠奈は目を丸くした。

 確かに昨日まで一緒に遊んでくれていた人がいきなりお母さんだなどといわれれば誰でも驚く。

「瑠奈はそれでもいい?」

 千李の問いに瑠奈の瞳に見る見るうちに涙が溜まっていった。

 それはもう今にも零れてしまいそうなほどに。

 そして瑠奈は小さくだがしっかりとした声音で言った。

「……うん!わたしはそれでいい。センリおねえちゃんがお母さんになってくれるならわたしはすっごく嬉しいよ!」

 言い終えると瑠奈の瞳からは大粒の涙が零れ落ちた。

 それは眼帯をしている右眼もそうだった。

 千李はおもむろに立ち上がると瑠奈の隣まで行き瑠奈を抱き寄せた。

 言葉はなかった。

 だが今の瑠奈にはこれで十分だったのだろう。

 抱き寄せられた瞬間千李の胸に顔をうずめ瑠奈は泣きじゃくった。

 それはもう体中の水分がなくなるのではないかというほどに泣いて泣いて泣きまくった。

 千李はそれを静かに抱きしめ頭を撫でるだけだった。

 そして瑠奈の泣き声はそのうち「お母さん」という言葉をはらんだ物に変わった。

 呼応するように千李はその言葉に答え続けた。

 二人の姿はまるで本物の母娘のようだった。



 瑠奈が泣き止んだのは30分後だった。

 千李の胸元は瑠奈の涙と鼻水でぐちゃぐちゃだったが千李はそれを気にした様子もなかった。

 そして瑠奈はずっと千李の腕にしがみついている。

 瑠奈の顔は泣き続けたおかげで軽く腫れてしまっているが、その顔はとても嬉しそうだった。

 それだけ千李が母親になったことが嬉しいのだろう。

「ねぇセンリおねえちゃ……じゃなかった。お母さん」

「ん?なに瑠奈?」

「わたしたちどこに行ってるの?」

 そう千李と瑠奈、そして三大を含めた三人はある場所へ向かっていた。

 そこは。

「お墓よ。瑠奈の本当のお母さんとお父さんの」

「……お墓」

 千李は決めていたのだ。

 もし瑠奈が自分を母として認めてくれたときには瑠奈の両親のお墓に行って挨拶をして来ようと。

 すると三大が止まった。

「ほら。着いたぞい」

「うん。ほら瑠奈横に来て」

「うん」

 お墓に到着し千李と瑠奈は互いに手を合わせ頭を下げた。

 千李は頭を上げ告げた。

「瑠奈のお父さんとお母さん。瑠奈はこれから私の娘として育てさせて頂きます。ですが安心してください。きっと立派な娘にして見せます」

 千李が言うとそれに続くように瑠奈が言った。

「お父さん。私は大丈夫だよ。センリお母さんもとっても優しいし面白い人だから。それからお母さん。お母さんのことは全然分からないけど心配しないでちゃんとセンリお母さんのいうこときくしどんなことだってがんばるよ」

 そういうと瑠奈は千李の腕にしがみついた。

 千李は瑠奈の頭を軽く撫でる。

「ご心配も残るかもしれませんが。瑠奈のこと私に任せてください。そして出来れば瑠奈のこといつまでも見守ってあげてください」

 言うと千李は腰を上げた。

「もういいかい?」

「ええ。瑠奈も大丈夫?」

「うん。大丈夫だよお母さん」

 そういった瑠奈の瞳はとても強い光を持っていた。

「では行くかの」

 三人は極楽院に戻っていった。 

 残された瑠奈の両親の墓石はまるでこれからの二人を応援するかのように光って見えた。



 極楽院に着くと千李と瑠奈は身支度を整えていた。

「忘れ物はないかい?」

「ええ。私はね、瑠奈は平気?」

「うん!」

 そういった瑠奈は背中にリュックを背負って準備万端といった感じだ。

「よし」

 千李は瑠奈の手を掴み歩いていく。

 瑠奈もそれに嬉しそうに付いていった。

「じゃあ。帰るわね三大ばあちゃん」

「うむ。ではのたまには遊びに来るんじゃぞ?ではな瑠奈」

「うん!またね~おばあちゃん」

 二人はそういうと門を開け外に出た。

 外に出たところで大とばったり会った。

「あら大」

「一晩ぶり千姉ちゃん」

「ヒロおにいちゃんだー!」

 大は瑠奈がいることに疑問を持ったようで千李に聞いてきた。

 千李がことのいきさつを話すと千李は納得したように頷いた。

「すごいね千姉ちゃん。その年で母親になるなんて」

「そうね。だけどもう後には引けないからね瑠奈の両親とも約束してきたから。っとそろそろ電車の時間ね」

 千李が携帯を開くと電車の発射時刻が迫っていた。

 特に急いでいるというわけではないのだが今日の夜千李にはちょっとした用があるので少し早めに出たいとのことだった。

「じゃあ大またね。そのうち来ると思うわ」

「うん。千姉ちゃんも元気で。姉ちゃんにも言っとくよ」

「ええ。よろしくじゃあ行きましょうか瑠奈」

「おー!!」
 
 瑠奈が返事をすると同時に千李は瑠奈を抱き上げ駅へ急いだ。

 その後姿はまさに子を守る親の姿そのものであった。


 ちなみにちゃんと電車には間に合いました。 
 

 
後書き
今回は以上です。

最後の方結構会話ばっかりになってるなぁ……(最初からか)

千李姉さんはちゃんと母親をやります。

もちろん瑠奈もこれからのお話にガンガン食い込んでいきます。
お楽しみに。

感想、ダメだし、アドバイスお待ちしております。 
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