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レンズ越しのセイレーン

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Mission
Mission9 アリアドネ
  (5) マクスバード/エレン港 ②

 
前書き
 ああ――やっと、言えた 

 
「『オリジンの審判』の時歪の因子(タイムファクター)の上限は覚えてる?」
「100万、だっけ」
「そう。この100万はすなわち100万個の分史世界を意味する。分史対策室では分史世界を16進法でナンバリングしてるでしょ。このゲームは100万を超えれば人間の負け。そのルールの上で、ルール違反の100万個目を超えたナンバーの分史。とーさまはワタシたちの分史――世界を便宜的に『番外』と位置付けたわ」

 番外分史、と数人が確かめるように反芻した。

「分史であっても『審判』の概念はある。トール遺跡でそれは知ったわね? 若い頃のとーさまも叔父貴も、挑んだ。とーさまも叔父貴もすごく強かったし、仲間もいたし、『鍵』もいた。今度こそ『審判』に勝てるって、悲しいことはその代で全部終わりにできるって、みんなが信じてた。でもね………………だめ、だった」
「だめ、って……『オリジンの審判』に負けたってこと?」

 レイアが問うたが、ユティは俯いて答えなかった。そうだけど答えたくない、とでも言うように。

「お前の分史では具体的に何が起きたのだ」

 ガイアスが皆を代表して核心へと切り込んだ。

「オリジンは魂の“負”から生じる瘴気を浄化する精霊。そのオリジンに魂を浄化する限界が来てた。分史世界が増えすぎたの。『カナンの地』は全時空で唯一、魂を循環させてる場所。増殖した分史世界の魂も、オリジンが引き受ける。カナンの地には浄化しきれない瘴気が溜まっていった。それが、破裂した」
「破裂して……どうなったんだ?」
「地上は瘴気に冒された。人の住める土地は減った。とーさまとワタシが山奥に住んでたのも、そこが数少ない非汚染区だったからよ」
「普通の人たちはどうやって生活してたんですか?」
「同じよ。非汚染区域を探してそこに住む。もっとも完全な非汚染区域に住めるのは一握りの特権階級。大抵の人間は、瘴気はあるけど何とか生息できるって土地で暮らしてた」
「でもそれじゃあ体によくないんじゃ」『大丈夫なのー?』
「よくない。いずれは瘴気に冒されて、マナを吐くだけの“物体”になる」
『イヤーーっ!』「人間が、そんなものになるなんてっ」

 エリーゼはもちろん、ジュードもレイアも青くなった。

「人間だけじゃない。ユティは青空も夜空も見たことない。造花しか知らない。動物は黒匣(ジン)製の人形。薬が入ってない食べ物、食べたことがない」

 ふいに悟った。16歳にしては小柄な体格。動物に対する偏った知識。それらは『番外分史』の環境によるものだったのだ。

「ユティさんの世界の我々は、そのような事態になるのを指を咥えて見ていたのですか?」
「まさか。もちろん止めようとしたわ。でも、いくつもの不幸が重なって、カナンの地に辿り着いた時には、手の施しようがなかったのよ」
「不幸?」
「一番は、時間をかけすぎた。『道標』探しや分史破壊に」
「純然たるタイムオーバーかよ……」
「だからユースティアは来たの。手遅れにさせないために。とーさまと、アルおじさまと、バランおじさまに託されて。未来を創り直すために」
「俺?」

 ルドガーたち全員に注目され、アルヴィンは困り果てている。

「おかしくないでしょう? アルフレドとユリウスは、エレンピオスでの(・・・・・・・・)幼なじみだもの」
「……初耳だが?」
「僕も」
「あー……一部に言ってなかったのは謝る。すまん」
「どうして言ってくれなかったんですかっ」『水くさいぞバホー!』
「いやいやいや、話題の内容的に言いふらすようなもんじゃないでしょ? 隠してたんじゃねえって。言いそびれてただけ!」

 一部告げ忘れていた仲間に詰め寄られ、アルヴィンはてんやわんやだ。

「バランおじさまは元々とーさまの友達で、精霊研究所の所長。アルおじさまはDr.マティスや大精霊マクスウェルと縁があって、この世の裏事情に通じてる。対『審判』用兵器の教育者としては適任でしょう?」
「兵器?」

 ユティは自らの胸の上に手を置いた。

「ワタシ。ユースティアが、とーさまたちにとっての秘密兵器。とーさまは最初から正史に送り込むためだけに、ユースティアを『造った』の」

 本人にとって、とても哀しく、痛く、辛いことを言っているはずなのに。
 ユティは今までで一番血の通った笑顔を浮かべていた。 
 

 
後書き
 オリ主本領発揮の回がついに来ました。オリジナルの世界観をキャラに語らせるのってなんだかワクワクしませんか?
 嘘は言ってない。でも本当のことも全部言ってない。クルスニクの常套手段ですね。「………………」の中に隠した重大な秘密は何だったのでしょうか。
 瘴気が地上に溢れた場合の世界はどうなるかを全力で妄想してできた世界観が「番外分史」です。安全地帯に住める人間はそれだけで特権階級で、でもその安全地帯もじりじりと減っていきます。特権階級はさらに細分化されて、最後の最後にごくわずかな頂点が残る、ジェンガみたいな国の仕組みの完成です。
 時間切れは作者自身の初期のゲーム感想でもあります。「カナンの地出現直後に次々キャラEP発生!? しかも温泉edにエクストラEP? やってる暇あるなら早くエルたんとこ行けやー!!」とね。いやまあそのタイミングでやるしかなかったんでしょうが……なんだかなー。
 アルがユリウスとの関係を言い忘れた人たちはガイアス、ジュード、エリーゼ、ミュゼ、ローエンです。全員入りきりませんでした。つまりM6(原作C7)からアルヴィン黙りっぱ。
 そしてようやく書けた安定のブラコンktkr。こんなんと結婚したオリ主の「かーさま」は大変だったでしょうな(遠い目) 憧れの人がブラコンとか作者は一気に萎えますよ。 
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