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鋼殻のレギオス IFの物語

作者:七織
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第零章
  二話

 
前書き
 戦闘シーンが下手なのとカリアンの滞在時期がやや異なるのは仕様です
 描写上手くなりたいなあ 

 
「ふむ、次のバスまで暫く時間が有るか」

 放浪バスから下りたばかりの青年はバスの時刻表を見ながらそう呟いた
 肩にかかる程度の銀髪で整った容姿を持ち、鋭い眼差しと眼鏡が知性的な雰囲気を生み出している彼の名はカリアン・ロス
 学園都市ツェルニに向かう途中、たまたまグレンダンによったのだがバスが出るまで暫く時間が有るのだ

(この都市は武芸が盛んと聞くし、少し休憩する意味合いにでも街の方へ行ってみるか)

 そう思い荷物はバスの中に残し、財布などだけを持ち街の中心部の方へと向かって行った




(構造自体はレギオスどうし、余り変わらないのだろうがやはり街並は違う。何より、知らない場所だというのが楽しいものだな)

 そう思いながらカリアンは街中を歩いていた

(しかし、人の姿が少ないようだが何か有るのだろうか?)

 そう、カリアンが歩いていた間、見かけた人影が少ないのだ
 飲食店などは人がいて営業していたが、一歩道へと出ると途端に人を見かけなくなる
 ここに滞在してから三日目だが、今までこんなことはなかった
 それを不思議に思いながら、更に街の中へと歩いて行くと人だかりを見つけた
 近づいてみてみると、どうやら何か大きな建物を取り囲むように人並みが出来ている

「失礼、そこのお嬢さん。少し良いだろうか?」
「え!あ、はい。どちら様ですか?」

 事情を聞くならやはりその都市の住民に聞くのが筋だ
 そう思い、カリアンは近くにいた栗色の髪の少女に話しかけた

「ああ、ここの住民でなくてね。一体何が行われているのか良ければ教えてもらえないだろうか?」
「ああ、旅の方でしたか。今は天剣授受者決定戦をやっているんです」
「天剣……とは?」
「天剣授受者というのは、ここ、グレンダンにおける武芸者の頂点十二人に与えられる称号のことです。残り一枠であるヴォルフシュテインを決める大会の、今は決勝戦で、私の幼馴染みが出てるんですよ」

 それを聞き、カリアンは内心驚愕に襲われた
 目の前の少女はどうみても十かそこらだ。その幼馴染みといえば同年代だろう
 そんな子供が、武芸が盛んなことで知られるグレンダンの頂点を掴みかけているというのだ

 カリアンは建物──恐らく闘技場だろう──の周りに映し出されている映像へと眼を移した
 そこには、筋骨隆々で剣を持った大柄な男性と、違う形の身の丈に合わぬ剣を持つ十歳程の少年が映し出されていた
 彼の名は、レイフォン・アルセイフというらしい
 恐らく、彼が少女の幼馴染みなのだろう

(これは、随分と珍しいものが見れるかもしれないな)

 そう思い、カリアンはこれから始まる試合へと意識を集中させた



 リーリン・マーフェスは昨夜のことを思い出していた
 大会の前日、レイフォンと自分の養父は道場にいた。そこに夕飯が出来たことを事を知らせに行ったのだが、そこにあった張り詰めた空気があった

「ごめんなさい」

 そうレイフォンが言い、二人の間にあった錬金鋼を掴んだのを見て驚いた
 サイハーデンは刀を使う流派、しかしレイフォンの手にあった錬金鋼の形状は剣だったのだ
それは自らの流派に対する決別
 何があったのか分からない。自分に幼馴染みのことが分からないことなど初めてだった
 漠然とした思いを抱きながら、リーリンは映像に映るレイフォンの姿を見守っていた

(頑張って、レイフォン)



 控室でレイフォンは時間を待っていた
 次は決勝戦、なんとかここまで来ることが出来た
 しかし、次の試合は一段と気をつけなければならない
 決勝ともなれば話しは違い、今まで以上の技量を持った相手と戦うのだ
 それに、遠目だが天剣の姿もいくつか確認できている。女王がいるかは分からなかったが、彼等の眼を欺くのはより一層の注意が必要となるだろう
 自分が使う錬金鋼もそうだ。本来刀を使うサイハーデンでありながら剣を使い、技までも封じた
 昨日のことを思い出すと、今まで自分を支えてくれたサイハーデンと養父への裏切りに、後ろめたい気持ちが沸き上がり胸を刔る
 しかし、今後自分がしていくことを考え、自分が使うことこそが裏切りなのだと断じる

「時間です」

 そう言われて意識を切り替え、復元した錬金鋼を握ると思考が研ぎ澄まされていく
 迷いが、後ろめたさが、ありとあらゆる感情が削ぎ落とされただ目の前に有る敵を打倒する事のみを意識する
 そして、舞台へと上がった





──外力系衝剄変化 ・閃断

 まず先に仕掛けてきたのは相手の男の方だった
 剄の流れを鮮明に見ることが出来るレイフォンは相手の動きを予測し、避けると同時に旋剄で距離を詰める

 本来、莫大な剄量を持つレイフォンは真っ向から攻めても勝てる
 しかし、剄量のことがばれたくないレイフォンはその手段を選べない
 そこでレイフォンが選んだ手段とは自分の特技を活かすことであった
 レイフォンは剄の流れが鮮明に見える為、相手が出す技がどういったものか、どの位の威力か、いつ頃来るのかが大体分かる
 その流れを再現することで見た技を再現することまで出来る
 それで相手の技を全て避け、少量の剄で打倒する。それがレイフォンが選んだ手だった

 近付くと同時に剣が袈裟に振り下ろされる
 体を屈め、剣を斜めに構えて受け流しレイフォンは一歩踏み込む
 剣を流された相手は敢えて逆らわず、そのまま軸足に力を入れ、流されるままに体を回し強化した足でレイフォンの側頭部を刈りにくる
 膝の力を抜き、受け流したままの力で体を回転して相手の足刀を避けると同時に切り掛かる
 それを相手が受け止めたのを見て、相手が振り払おうとする動きにあわせて体を捻り懐に潜り込む
 マズイと思ったのか咄嗟に相手は旋剄を逆方向に放ち、下がろうとするが剄の流れからそれを察知したレイフォンが同時に旋剄を放ち距離を詰める

──外力系衝剄変化 ・轟剣

 振り下ろされた剣を、なんとか相手は受け止めるが受けると同時にそれは閃断となり、切り刻まれレイフォンから一瞬意識が逸れる
 それを理解するとレイフォンは疾影を放ち、自身は殺剄によって気配を隠し背後に回る
 見失ったレイフォンの気配が幾つも有ることに気付いた相手が全身の活剄を強化したのを見、剄の流れが薄いところに向かって攻撃を放つ

──外力系衝剄変化 ・徹し剄

 名前の通り、対象の体に剄を通すことによって内臓破壊を行う技であり、広く知られているが故に防御策も知られている。だが、剄の流れが見えるレイフォンはその浸透する剄を操り、防御の薄い所にピンポイントで剄を通して衝撃を通すことで、余程の相手でない限りダメージを生むことができる
 それでもなんとか威力を殺そうと前方に飛んだのは流石というべきか
 しかし、そのせいで致命的な隙が出来ていた

(──これで決める!)

──外力系衝剄変化 ・餓蛇

 かつて見た天剣の技を使い、自らを巻き込むように剣を回転させ、相手に向かって突っ込んだ


 それを見る相手の顔は驚愕に包まれていた
 それもそうだろう。剄量は自分と同じか少し上ぐらいの年下の少年に、まるで自身の行動を全て読まれたかのように圧倒され、手も足も出せずに止めの一撃を放たれているのだから
 なんとか剣を体の前に回すも、触れた瞬間に弾き飛ばされ無防備な体に技を喰らい、自身の体が吹き飛ぶ感覚とともに意識がなくなっていき、負けたのだと理解した



「────」

 言葉にならないとはこの事なのだろう
 カリアンの家は情報貿易に特化した流易都市サントブルクの中で莫大な利益を上げる情報交易会社の経営者だ
 その立場上、自都市の様々な武芸者を見てきた
 相手の武芸者は間違いなく強かったのだろう
 武芸が盛んなことでしられるグレンダンの中でも選ばれた一人。自都市の武芸者と比べても間違いなくトップクラスと言っても過言ではないだろう
 しかし、そんな相手にレイフォンは一撃も喰らわないどころか只の一度の反撃も許さずに圧倒して見せた

(……天才というのは、いるものなのだな)

 余り天才という言葉を信じないカリアンにさえ、そう思わせるだけの試合だった
 理解できない程のものを見た事で背筋は冷たくなっているというのに、反対に心は熱く煮えたぎっている。こんな感覚を味わうなど滅多にないだろう
 ふと気づき、時計を見ればもう出発の時間までもう間もないではないか

(出来るならば話し等をしてみたかったが、この時間ではどのみち無理か。最後に良いものが見れたものだ)
「ではそろそろ時間なのでな、これにて失礼するよ。良いものを見れた」
「あ、はい。お元気で」

 簡単に少女に別れを告げると歩き出す。あの少年が天剣とやらに選ばれる所まで見たかったがしょうがないだろう
 カリアンはバスの停留所へと向かっていった



「技は十分。ですが剄量に不安ありといった所でしょうか」
 
 そう、一人の女性が先ほど行われた試合に関して批評を述べた
 ここは本来女王が観戦するはずの場。しかし、ここにいるのは批評を述べたばかりの女性ともう一人男性がいるのみ
 彼等の名は、カナリスとカルヴァーン
 グレンダンが誇る天剣授受者の二人である

「ふむ、まあふんなところであろう。ただ、何かを隠しているような違和感があったのが気にかかる」
『恐らく、それは彼が慣れない剣を使っているからだと思いますよ』

 いや、正確には二人ではない。今この場にはいないが、念威端子が浮かび、天剣唯一の念威操者であるデルボネの声を伝えている

『少し調べてみたのですが、どうやら彼の流派は独特の形状を持った剣を使うらしく、その差によるものではないかと。ただ、陛下は「力を隠しているような奴をを選んでもなー」と』
「力を隠し、自らの技を封じる、か。まあ、深く詮索するものでも無いであろう。
それにしても惜しいものだな。戦いの運びといい、最後の技はカウンティアのものであろう。若すぎるが、いずれは同僚になりうるかもしれん」
「ええ、恐らくですが、剄の流れを読むことに長けているのではないかと」
「その様だな。器用なものだ。……ところで、今更ながらに聞きたいのだが、なぜ陛下はここにおられないのだ?」

 ふと、気になっていたことを聞くと、カナリスは顔を伏せて口を開いた

「……陛下は『めんどい。それに、それらしいのがいたらデルボネが教えてくれるからいーじゃない』と。せめて影武者としてでも私を頼っていただきたかった」
『ええ、一応ですが、陛下は結果を既に知っています』
「確かに、定期的に行われる試合で授受者が決まることが稀だとは言え、そんなことでは困ったものだな」

 余りといえばあんまりな内容に息が漏れる

「この後はどうするのだ?」
「ティグリス様が代理で出るそうです。天剣の任命が無い以上問題は無いのでは」
「そうか、ならば私はこれで失礼するとしよう」

 そういい、カルヴァーンは部屋から出ていった



「『早く帰ってきてね』、か」

 受け取った賞金をリーリンに渡し、道を歩きながらレイフォンは言われたことを思い返す
 天剣に選ばれずに済んだということは、自分に才能が無かったのか、それともバレ無かったのか、はたまた別の理由か
 どちらでも関係はないだろう
 人並みが少ない道を通り、裏通りを抜け、その先にある建物の中に入る
 渡された仮面を付け、多くの観客のいる中舞台に上がる

「さあ、今日は新しいファイターの登場だ!なんと歳は十歳!だが実力は大の大人を打ち倒すほどの確かなもの!」

 感の良い観客は気付いただろう、その少年が今日の戦いの優勝者だと。それほどの人物がこの場に現れたことに、げびた歓声が沸き上がる
 レイフォンはそんな声を聞き、やはり自分は刀を使う資格など無く、離別してよかったと思う
 たとえ、どんな理由であろうと養父を裏切り────

「オッズは新人の少年が二倍、相手のベテランファイターが一・三倍だぁ!さあ、張った張ったぁ!」

────金のために、賭け試合に出た自分など

 
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