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DQ1長編小説―ハルカ・クロニクル

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Chapter-3 第10話

 
前書き
勇者ハルカとローラ姫がイチャイチャしてます(笑)。 

 
Dragon Quest 1 ハルカ・クロニクル

Chapter-3
ローラ姫
第10話

あの伝説の勇者ロトでさえ、仲間がいた。勇者ロトは仲間の女僧侶と結ばれ、子孫を残した。
それなのに、ハルカは、ずっと独りで旅を続けていた。
ハルカは、その点でも、勇者ロトが羨ましかった。本当のところ、ハルカは、僕はあまり孤独は好きではなかったのだ、と気付く。
しかし、そんなハルカをわかってくれる人はあまりいない。勇者ロトに仲間がいたことを信じているものは指で数えるほどしかいないし、信じているイアン一家も、むしろ一人で旅に出るハルカを尊敬している感情である。
イアン一家のことは心のよりどころだし、安心するところではある。しかし、ハルカは仲間が欲しかった、など言えなかった。
(僕は弱い人間だろうか?)
そう思っていた。

「ハルカ様?どうしました?」
ローラ姫の声に我に帰る。そうだ、今は独り旅ではない。二人旅だ。
「ああ、考え事ですよ。僕は今まで独りで旅しましたからね。あ、暑いでしょう?今はサファイアの月なんですが、今年はやけに残暑がきついんですよ」
「大丈夫です。……ハルカ様が水をくれるおかげですわ。でも、あなたが熱中症で倒れそう」
ローラ姫も、ハルカも汗が流れていた。
「そうならないよう気をつけなければね。休憩も入れましょう」
「そうですね」
ハルカはガーゼハンカチでローラ姫の汗を拭く。自分のは自前のデミ・グラブ(指の開いているグローブ)で汗を拭いていた。おかげで少し黄ばんでいる。
時々、塩飴を二人で食べる。ローラ姫は、しょっぱいけど美味しい、と言ってくれた。
途中で戦闘も行った。ローラ姫は魔力が衰えている為、戦闘能力が皆無に等しい。
「もし魔力が戻れば、ホイミとバギは扱えますが……」
「では、こうしましょう」
戦闘中はローラ姫をおんぶしている。0コンマ秒で出来る早業だ。
話せる知能の高い魔物は、
「息ピッタリだな!許せん!」
と言っていた。
しかしハルカにあっけなく倒されるのだ。

そんなこんなで数時間後。
「リムルダールまでもう少しです。ルーラの術はまだ未完成ですが、進むスピードは速くなった。これが無ければ野宿だったんです。夜になる前に着きそうですよ」
「まあ、嬉しい」
ハルカは、ローラ姫の笑顔に、誰かと旅をしている、と言う喜びを感じていた。
「ハルカ様って、凄いですわ。私が小さい頃から聞く、伝説の勇者ロト様のお話に出てくる、あの勇者ロト様に、ハルカ様は似ていますわ。ハルカ様は、勇者ロト様のように素敵な勇者様ですわ」
「そうですか。それは嬉しいです」
ローラ姫の言葉に、自分は勇者ロトの子孫だ、と言おうかと思った。しかし、簡単に言えなかった。信じてもらえなかった経験もあるのだ。
ただ、いずれかその事をローラ姫には話そうとは考えていた。
そうこうしているうちに、リムルダールの入り口が見えた。
「あ、ローラ姫、着きましたよ」
「はい、ハルカ様」
二人が町に入る頃には、夕日の赤で染まっていた。

入ると、街中がざわめきだつ。
「あれは……ローラ姫!?」
「あの髪、少し見えるドレス、……ローラ姫だ!生きていたんだ!」
「あの人が、助けてくださったんだ!」
「勇者だ!勇者だ!」
段々と人々が集まってきた。そして、
「勇者万歳!勇者万歳!」
と叫びだしたのだ。
「ハルカ様……」
「すみませんね、こういうことになってしまって」
「いえ。でも、恥ずかしいですわ」
「僕もですよ」
戸惑いと恥ずかしさはあったが、嫌な気持ちは無かった。こうなる事は予想できたからである。ハルカとローラ姫は、照れ笑いしながら、街の人たちに頭を下げた。

そして仕立て屋でも、男はハルカ達を歓迎した。
「おお!ハルカじゃないか!一緒にいるのはあのローラ姫か!流石だ!おお、用件はもしかして!?」
「ええ。ローラ姫のドレスのことなんです。このドレスは春物でボロボロなんです」
ハルカはローラ姫を降ろし、くるんでいたマントを外し、元の、自分の鎧につけた。
「ありゃ、本当だ。半年もの間、苦労なさったんだな」
「はい……」
「よし、任せておけ。夏物のドレスにして、綺麗にしてやる。さて、代わりのドレスが無いな……うーん」
仕立て屋は奥のタンスを調べたが、あったのは、他の人の依頼の、質素なドレスだけであった。
「あの、私、布の服でも良いので!」
「それは困る。お姫様だから良い代わりのものを用意したいのだが……。仕方が無い、これで行こう」
「え……?」
ハルカが仕立て屋の男の言葉に少し不安を覚えた。ローラ姫は布の服でいいと言っても、仕立て屋の言うとおり、姫君にはあまり不釣合いな格好をさせるわけにもいかないのだ。
「ほらこれだ。今じゃ珍しくなってきたが、とても綺麗な衣装だぞ。ローラ姫にも合うと思うぜ」
そういって仕立て屋が取り出したのは、水の羽衣。
雨露の糸で作られた、高性能で美しい防具だ。しかし、最近はそれを作る職人も減っており、入手は困難を極める。
「まあ……!素敵!」ローラ姫は目を輝かせた。ハルカも、
「僕も綺麗な状態では初めて見ました」
と肯いた。
「よし、では着替えておくれ」
「はい」
ローラ姫が試着室に入っていくとハルカは、
「御代はいくらです?足りなければゴールドマン倒しまくってでも稼ぎますが」
と聞いた。すると、
「これくらいだな」
と紙にスラスラと書いていってハルカに見せた。
「……ちょっと!それだけで良いんですか!安すぎでは……悪いですよ」
書かれていたのは500G。店に行けばこれより高い武具はたくさんある。500Gと言うのはハルカにとって今では安い金額となっている(ゴールドマンでも650Gは落とす)。
「良いんだよ。サービスだ!」
仕立て屋は豪快に笑った。ハルカはそろそろと500Gを渡す。
「まいど!」
「僕の鎧兜といい、ローラ姫のドレスといい、ありがとうございます!」
「いいんだ。ハルカ…………お前さんは勇者なんだろう?恐らく、伝説の勇者ロトの末裔だな。そんな気がするぜ」
「……そうです。でも、信じてくれるんですか……?」
「ああ。オレはお前さんを信じる。お前の顔を見て、そう思ったぜ」
仕立て屋の言葉に、ハルカは言葉に表せない喜びを感じていた。
(僕がなんだか認められている感じがして……嬉しいな)
そして、着替えが終わったローラ姫が出てきた。
「あの、悪いですが、聞いてしまいました。ハルカ様はやはり、ロト様の子孫だったのですね。私も信じますわ。ハルカ様」
そういってハルカに微笑む姿は、美しく見えた。
「おお、似合ってますぞ」
「ローラ姫、とても綺麗です。それと、嬉しいです。僕をそう言って信じてもらえるなんて」
「ありがとうございます……。だって、ハルカ様は強くて、優しくて。あの勇敢なお姿は、本に出てくる勇者ロト様のようでしたわ」
「あなたには感謝します、ローラ姫」
ハルカは片ひざをついて、ローラ姫に深々と頭を下げた。ローラ姫は少し慌てた様子、しかし笑顔で、
「そこまでしなくてもいいですわ。……でも、私はハルカ様を信じて生きたいのです」
とひざを突きながら、ハルカより下の目線でハルカの顔を覗き込む。
「ローラ姫…」
「さあ、暗くなってきたぜ。早いところ、宿に向かいな。夜は危ないからな」
「解ってますよ。では行きましょう、ローラ姫」
「はい!」
ハルカはローラ姫を抱えようとした。すると、いつも抱えてもらってばかりでは悪いから歩くことにした、と首を振った。
「あの……でもその代わり、手を……」
「解りました。手をつなぐんですよね。もちろん、はぐれてしまわない様に、僕がしっかりと握ってますから」
「……はい」ローラ姫は顔を真っ赤に染め、俯いた。しかしちらりと見えるその顔はとても嬉しそうだった。
「お二人さん、お似合いのカップルだねえ!」仕立て屋の男はニヤニヤしながら言った。
「で、では、また翌朝、来ます!」
「おう!」
ハルカとローラ姫は赤くなりながら、仕立て屋の男に会釈をして、後にした。

二人は夜の街をゆっくりと歩く。
人々がこちらを見る。「おめでとう!」と言う声が聞こえてきたり、「お熱いねえ!」とからかう声も聞こえる。
しかし二人は気にせず、歩いていく。
ハルカは何度もローラ姫を見つめる。水の羽衣姿のローラ姫は、涼しげで、美しくて、愛らしい……そうハルカは思った。
(あれ、僕、今までこんな気持ちになったことってあったっけ?)
ローラ姫を見ると胸が高まる。幸せな気持ちになる。今まで、ローラ姫は、城で働いていた時代に何度か見たことはある。しかし、そのときは高嶺の花、自分には一生関係ないだろうと思っていたのだ。
そんな彼女がいま、自分の横で手を繋いでいるのだ。
今までに無かった感触、喜びを感じながら、少し戸惑っていた。

ローラ姫も同様であった。
アレフガルド王国、ラダトーム王女の自分は、何不自由ない生活を送ってきた。
ただ、異性には興味を抱くことはほとんど無かった。父、ラルス16世がお見合いにと、外の大陸の王子の肖像画を持ってきても、ローラ姫はときめかなかった。
しかし、竜王軍にさらわれた自分を助けてくれた勇者ハルカ。彼を見たときから、心が動いたのだ。そう、ときめいたのだ。
(私……こんなの初めてですわ。男の人にドキドキしたのは……)
ローラ姫もまた、幸せと戸惑いを感じていたのだ。

そして宿屋に着き、それぞれシャワーを浴び、二人は同じベッドで眠ることにした。
また、何者かにローラ姫が襲われるかもしれない、そう思って、いつでも守れるようにと同じベッドで眠ることにしたのだ。
「ハルカ様、こんなふかふかのベッド、本当に久しぶりですわ。幸せです」
「そうでしたね。宿屋のベッドもいいものでしょう?ローラ姫……」
「はい、ハルカ様……」
ハルカとローラ姫はお互い向かい合い、手を握り合い、眠りについた。

「おはようございます。昨夜はお楽しみでしたね」
「……はいっ!?」
宿屋の主人がにやけながらハルカとローラ姫に声をかけた。
その言葉にハルカとローラ姫は顔を真っ赤にしたのは言うまでもなかった。
(ま、まさか、僕達、覗かれてたのか!?)
(私……変な寝言言ったのでしょうか!?)
真実はわからない。鍵の閉め忘れかもしれないが……。 
 

 
後書き
すいません、やたらとラブラブですね。
そして、「ゆうべはおたのしみでしたね」、出してみました(笑)。
たぶん、また出てきます(え)。 
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