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恋姫~如水伝~

作者:ツカ
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二十四話

袁紹が曹操の領地から引き上げて二ヶ月が経ち。その間袁術と劉備の戦端が切られた。
劉備軍は小勢ながら善戦していたが、袁術にばかり目立たせまいと、袁紹も劉備に挑んできた。
その報を伝えられた華琳は配下の将と軍師を集め、軍議を行った。

「以上がことの全てよ、何か意見がある」
その意見に軍師四人の意見ははっきりと分かれた。
この機に袁紹を討つ事を主張する桂花
劉備を討ち後の為に後顧の憂いを絶つ事を主張する稟
劉備と同盟し恩を売り義侠を得る事を主張する詠
今は何もしないで軍備の拡大をすべきだと主張する風

軍師から四つの意見を提示され、諸将の意見も分かれた。華琳は一言も喋らない首席軍師に話しかけた。
「まるで意見が合わなわね。如水、貴方さっきから一言も喋って無いけど意見は無いの?」
「私の意見は全員のを一度にやる事だな」
「は?」
その意見に全員が沈黙した。
「劉備の軍は何故か解らないがこちらに向かっているそうだ。かと言って劉備がこちらに従属する気も無いだろう。おそらく、この領内を通って南方あたりに逃げる気だろう」
「正気なの劉備は?」
如水の発言に華琳は呆れ。他も賛同した
「大いに正気だろう。彼女は情に流されやすい所がある、そして相手の心情もその様に考える様だ。その証拠に君に食糧をねだったり、連合の時にも公孫賛の情に縋って陣を分けて貰ってた。それに窮した者は考え方が常人の考えとは違う。それを考えたら、比較的中立の曹操に領内を通して貰う事を願うだろう」

そこまで聞き、華琳は劉備を軽蔑した。
「少しは見込みがあると思ったけど、残念だわ。そんな考えだったとわ」
「同意見だな。だか、これで四人の意見が全部通るな」
如水の言葉に桂花、詠、稟、風が賛同した
「そうですね、これで袁紹を倒す大義ができます」
「そうなれば、劉備の武威は信を失います。殺すより酷でしょう」
「それに、こちらに義が付くわね」
「ついでに敵を想定して軍備を整えられますね。お兄さん考えましたね」

四人の軍師の賛同を得れた如水の意見は華琳に改めて奏上した
「華琳、私達の意見は劉備を逃がしてやることだ。君の決定を聞かせてくれ」

そして華琳は決断した。
「貴方達の意見を取るわ。劉備を逃がし、恩を売る。その上で袁紹、袁術を討ち袁術に従属している孫策の力を殺ぐ。この方針で決めたわ。肝心なのは劉備に代償に何を払わすかだけど」
「その件だが私に決定権をくれないか」
自分に任せて欲しいと頼んだ如水に華琳は許した。
「外部勢力との交渉権は貴方に預けているわ、好きにしなさい」

その会議から二週間後

陳留に劉備の使いで関羽がやって来た。
「曹操殿、この夜分に御面会を許された事に感謝します」
「よけいな挨拶はいいわ、早く用件を言いなさい」
「はい、我が主の意見を伝えます」

関羽の伝えた劉備の言葉は如水の事前に考えていた事と同じだった。その言葉を聞き、予想したとはいえ如水以下、他の者は劉備の言葉に呆れた。

華琳は関羽の話を聞き、劉備に逢って決定すると決めた。
「関羽。私を劉備に逢わせなさい。自ら伝えるわ」
「はい。ご案内します」

曹操領はずれ、劉備軍陣地

「上手い場所を取った所だな。要害は悪くない上、丁度中間に位置している」
「ええ、これ以上進んだら、攻め滅ぼしてやるところだったわ」
如水の感想に華琳は物騒に返した。
「春蘭、季衣、稟、如水の四人だけ付いて来なさい。残りは万一に備えなさい」

華琳は念の為に春蘭らに劉備に対して警戒させた。

「曹操さん、それに黒田さん久しぶりです」
「ええ、久しぶり。今は旧交を温めている場合ではないわ。要件を言いなさい」
「あ、はい!」
劉備の言った事は関羽の伝えた事と同じだった。
「いいわ。通行しなさい」
「本当ですか、ありがとうございます」
「対価はそうね、関羽一人で良いわ」
「…え!?」
華琳の言葉に喜色を浮かべた劉備の顔が凍った。
「何を驚いているの、通行税ぐらいだれだっって払うわ。当たり前の事じゃない」
春蘭は同意する様に頷いた
如水はその事に驚いた劉備に呆れた。
(一体、何処まで甘い考えなのだ。このような見苦しい行為を行って、その対価を払うのを渋るとは)
無論、顔に出さなかったがこれが伝え聞く、仁君劉備かと思った。

劉備は結局、その申し出を断った。
その言葉に関羽が反対し自分が曹操の下に行くと言ったが劉備は譲らなかった。

その態度に華琳は激怒した
「いい加減にしなさい、劉備。貴女それでも上に立つ者なの。いつまで甘えている気。貴女はもう義勇軍ではなく仮にも配下を率いる者でしょう、関羽一人で全軍が救えるのよ」
「でも…なら、私が曹操さんに仕えます」

その言葉で華琳の怒りは頂点に達した。
「劉備、貴女一体何を…」

華琳の言葉を遮る様に、如水が発言した
「そのあたりにしておいてあげよう。華琳、外部交渉の責任は私だ。此処は私の意見を聞き入れて劉備達を通過させよう。第一、関羽に来られても軍師として私は迷惑だ。関羽の将としての心構えは私の考えと違いすぎる、そんな者居たところで曹操軍にとって邪魔にしかならん」

劉備は旧知の如水が庇ってくれた事に喜んだが、後の言葉に反論した。
「黒田さん、どういう意味です。愛紗ちゃんが邪魔って。私の仲間を侮辱しないで下さい」
「言葉通りだ。それに侮辱と言うなら、今の君の醜態の方が余程仲間を侮辱しているが」

その言葉に劉備は黙った。そして如水は華琳に決定を伝えた
「劉備の軍の旗全てを此処に置いていく事。それが条件だ、断るなら勝手に死んでくれ」
「そんな…」
「君がこちらに仕えた証として置こう。なに、雨に濡れた以上、川に落ちても同じだろう。生憎、敵軍を通す程私達は寛容ではない。断るなら話はここまでです」

如水の言葉に従い、劉備は旗を置いて通過する事を決定した。
「曹操殿、黒田、この屈辱決して忘れんぞ」
「なら、今ここで晴らして貰って結構ですよ」
「ぐっ…」

関羽の恨みに皮肉で返した如水を今度は華琳が咎めた」
「やめなさい、これ以上敗軍に関わりたく無いわ。劉備!又餓えたら頭を下げに来なさい。略奪されるよりましだから」

こうして劉備の軍勢は去って行った。何人かの将兵は惨めさに泣き、劉備の無様な行動に失望し去って行ったと後に報告を受けた。

「かなりの悪役だったな、華琳」
「貴方程じゃないわ。貴方、善人役より悪役の方があっているのじゃない」
「そうかもな。まあ、これで劉備が再起を図るなら蜀地方を統一するしかない。手間が省けたな」
「そうね、その後。劉備を討てば良いわ」

その会話を聞いていた春蘭と季衣だったが、如水の豹変に凪は驚いていた。
「如水さんがあんな風に喋るとは驚きでした」
「失望したか?」
季衣の疑問に如水は答えながら同僚に軽蔑される事を恐れた
「いえ、逆です。その様な芝居も打てる事に改めて感心しました」

季衣の素直に尊敬する態度に如水は照れ。その事を華琳らにからかわれた。

そして袁紹、袁術との戦いに華琳らは備えた。
 
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