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武で語るがよい!

作者:Mr,M
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高町さんとの下校



今は放課後……生徒達が家に帰ったり、部活動をする時間帯だ。
クラス内では荷物をまとめ、教室を離れていく生徒達が多く見受けられる……。

「(俺もさっさと荷物まとめるか…高町さんとの約束もあるし……)」

そう思い、俺も荷物をまとめる……。
今日の放課後は高町さんとスクライアを交えて、昨日の事を説明する事になっている
まぁ、当の本人は今現在、バニングスさん達に一緒に帰れない事を告げている最中なのだが……。

「ごめんね。アリサちゃんにすずかちゃん、今日は用事が有るから一緒に帰れないの……」

「あら? そうなの? ……じゃあ今日は校門までね」

「そうだね……それじゃあ、校門まで一緒に行こ? なのはちゃん」

聞こえてくる高町さん達の会話……。
月村さんの誘いを聞き終えると同時に、高町さんは俺をちらりと見てくる
その行動に対し、何となく高町さんが言いいたい事が解ったので、こくりと頷く。
多分『校門で待ってる』、『先に行ってる』とかだろうなぁ……。

「…うん!」

高町さんは俺が頷くのを確認し、直に月村さんの誘いに乗る……。
その後、彼女達は仲良く歩きながら、クラスを離れていった……。

「(俺もぼちぼち移動するか……)」

高町さんがクラスから離れていくのを見て、『俺も移動するか…』と椅子から立ち上がった時である。不意に後ろから手が伸び、肩に手を置かれた。

「野球しようぜ! 誠!」

「…………」

振り返ればそこには藤田が居た……いい笑顔で…。
ちなみに、周りには伊月や長野は居ない……というのも『今日は用事が有るから遊べない』と休み時間に藤田を含めた3人に言っておいたので、今頃は部活しに行ってるはずだ。
……なのに何で此処に居るんだ、藤田? お前人の話聞いてたのか?

「……ハァ~、藤田…。今日は用事が有るから無理だ…てか、休み時間に言っておいたろ?」

「えー!? マジかよ!!」

藤田は仰天したかのように驚く……やっぱり聞いてなかったのか。

「マジもマジだ……という訳で今日は部活動に専念しろ」

―――ベシッ!
そう言って俺は藤田の背中を叩く……割と強めに

「ぬぉぉ!? い、痛いぜ、誠……」

「ん? そうか? まいいや……。
兎に角、今日は部活動に行って来い。基礎トレや部活の人達との親睦も重要だろ?」

そう言いながら俺は、自分の鞄を持ち教室のドアへと進んでいく

「まぁ、頑張れよ、藤田……。
俺はお前や伊月達との約束楽しみにしるからさ……」

「ッ!? ……ハハハ! そうだったな! 誠!」

藤田は俺の言葉に面喰った様な表情を見せるが、それも直にいつもテンションに戻る
約束……まぁ、はっきり言ってしまえば藤田達が立てた誓いみたいなもだが……

―――誠に勝つか、誠が認めるほどのスポーツ・プレイをする―――
―――そして……それが出来たら……俺達の事を名前で呼んでくれ!―――

もう、2年近く前に立てられた約束だ……。
これは俺と藤田達が友達になる際に立てられたのだが……まぁ、今はその経緯はおいて置こう。……話すと長くなるしな。

「じゃあな! 誠! また明日会おうぜ!」

「あぁ! じゃあな、藤田」

俺は藤田に別れを告げ、高町さんが待っているであろう校門を目指すのだった。


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校門に近づくに連れ、下校する生徒達の数は増えていく……
それに伴い友達と会話する声の数が比例して増える中、聞き覚えの有る声が聞こえてくる

校門に着くとそこには高町さん達3人組が居た…。
高町さんは歩道に立っている状態
バニングスさんと月村さんは白いベンツに乗車している状態である。

「じゃあね、なのは」

「またね、なのはちゃん」

「うん! アリサちゃん、すずかちゃん、バイバイ」

俺が来て直に、バニングスさん達が乗るベンツは発進して居なくなり
残された高町さんは、去っていくベンツに手を振っていた……。

「えっと……高町さん」

「ほぇ? あ! 神田君!」

車に手を振るのをやめた辺りで高町さんに声を掛ける。
高町さんは俺の声に反応して振り返る……。
振り返った先に居るのが俺と分かると、高町さんは笑顔で微笑み、こちらに近づく。
だが、高町さんはある程度近づいた辺りで、何かを思い出したのか急に笑顔から顔を曇らせた……どうしたのだ?

「えっと、ごめんね? 先に行っちゃって……」

「ん? いや、いいよいいよ。
こっちから今日の放課後空けるように頼んだ事だし……」

何事かと思えばさっきの事か……
さっきの事は俺も気にしてないし、高町さんの行動に問題はなかった。
逆に高町さんがバニングスさん達と、一緒に帰れなくなった原因を作った俺が悪いのではないか?

「それに……俺の方こそごめんな?
俺が放課後に約束入れたから、バニングスさん達と一緒に帰れなくしちゃって…」

「ふぇ? だ、大丈夫だよ!
私も今日神田君に……その…昨日の事について、お話を聞きに行く予定だったの」

両手を合わせて謝る俺を、高町さんは慌てて止める
そして、自分も聞きに行くつもりだったと話す高町さん……。
まぁ、昨日の出来事を考慮すれば、聞きに行きたくなるのが当たり前か…。

「そうなんだ……」

「うん」

高町さんは俺の言葉に頷く…
その顔はいつのまにか真剣な表情をしていた。

「……じゃあ…どうしようか?
話す内容がアレだし……スクライアも居ないとだし…どこで話す?」

「あっ、うん!
それは私の部屋で話すの、ユーノ君も居るから丁度良いと思うんだけど…どうかな?」

ん~高町さん家か……。
正直女の子の部屋に行くのは気が引けるが…まぁ、スクライアも居るし妥当か。

「OK、問題ないよ……じゃあ行こっか?」

「うん!」

方向性が決まり、俺と高町さんは高町家を目指す事になった。


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校門を出てもう20分ぐらい経っただろうか?
高町さん家と学校の距離を考えれば……恐らく後10分もあれば着く、という距離に今俺と高町さんは居る。

ここまでの道のりは……よく高町さんが俺に質問をしてきた
それは別に昨日の事とかではなく、俺個人に対する在り来りな質問が多かった
『神田君って好きな食べ物は何? 私はね―――』という感じだ。

まぁ、会話の話題が無くなるよりは良いのだが……
あまり日常会話をした事ない子…しかも女の子で、この原作の主人公……。
どうにも遠慮気味になってしまい、会話の流れはほとんど俺が受身の状態で会話している

「―――私はだと思うんだけど……神田君はどう思う?」

「え?」

頭の中で回想してたら突如、高町さんから意見を求められる……。
高町さんは笑顔で顔をこちらに向けてくるのだが…すまない…話を聞いてなかった。

「あぁ……ごm…ん?」

高町さんに謝ろうとした、まさにその時である
ズボンのポケットに入れてある携帯がブゥー、ブゥーと振動する……。

「ん? どうしたの?」

「ごめん高町さん、電話が掛かってきたからちょっと出るね?」

ポケットに入れておいたガラ携を取り出し、パカリと開く
するとディスプレイ画面には、見知らぬ電話番号が表示されていた……。
内心『誰だ?』と思いつつも、受話器ボタンをピィッと押し電話に出る。

『はい、神田です……』

『あ、もしもし? 神田君かい?』

あれ? この声って……

『士郎さんですよね? 昨日振りです』

『あはは、声で分かっちゃたのかい?』

やはり士郎さんだった…
士郎さんからの電話という事は勝負の件だろうか?

「ふぇ!? お、お父さん!? 何で!?」

士郎さんからの電話の内容が勝負の件なのか? そうなのか? と期待していると
隣に居る高町さんから驚きの声が上がる……。どうやら多少は音が拾えているらしい……。

あれか? 士郎さんが俺の携帯番号を知ってるのに驚いているのだろうか?

『ん? 今なのはと一緒にいるのかい?』

『えぇ、今一緒に高町さんの家に向かってるんですよ。
その…昨日のフェレットが元気にしているか、気になったので様子を見たくなりまして…』

『あはは、なるほどね』

あぁ、そうだ……スクライアの件で思い出した。
俺…昨日の件で美由希さんと恭也さんには謝ったが、肝心の親である士郎さんに謝っていない……。……まさか…この電話は説教の為の電話なのか?

もし、そうだとしたら…先に謝らなければ……。

『はい…。
それで…その…昨日の夜の件は本当にすいません……娘さんを勝手に呼び出したりして』

俺が喋り終えたと同時に、誰かが俺の右腕の制服を”ギュ”と握る
『ん?』と右を向く……犯人は高町さんだった。
高町さんの表情は……なんというか…悲しいというよりは申し訳ないって顔をしている。

昨日の事に責任を感じているのだろか? いや、そうなのだろう……
高町さんは優しい子だ、そんな子なら昨日の事について責任を感じても不思議じゃない

正直、昨日の件は俺の独断で勝手にやった事だし、気にしてないのだが……

『あぁ、昨日の事かい? もう終った事だし、気にしてないよ』

『……はい、その…ありがとうございます』

ふと気が付けば俺の右腕にあった圧迫感は消えていた
再度高町さんの方を見ると、彼女は安堵の吐息を漏らしていた。

どうやら、高町さんは俺が士郎さんに怒られる事を懸念していたようだ。

『えっと…それで…今日僕に電話してきたのって……?』

『ん、あぁ、そうだったね、本題を忘れるところだったよ。
昨日約束した勝負の件について日時が決まったからね、伝えようと思って電話したんだ』

『あ、決まったんですか! 何時ですか!』

士郎さんの言葉を聞き、俺は先ほどまでの雰囲気と一変し、活気に満ち溢れる
そんな俺を見て、高町さんは困惑気味になっているが、今は気にしている場合ではない。

『あはは、急に元気になったね』

『当たり前ですよ! 昨日からずっと楽しみにしてるんですから』

『あはは、じゃあその期待に沿えるように頑張らせてもらうよ。
日時は今週の土曜日で、時間は翠屋JFCの試合が終った後になるけどいいかい?』

ふむふむ……今週の土曜日か…。
問題はないのだが……試合後って反省会やら、祝勝会やら色々やる事があるのでは?
という疑問が浮かぶのだが……どうなのだろうか?

『はい、僕はそれでも構わないのですが……
でも、試合後って色々と忙しいのではないですか? 反省会や祝勝会とか…』

『ん? あぁ、心配しなくても大丈夫だよ。
試合は朝の9時にやる予定だから、試合後に反省会や祝勝会をやっても午後は空くんだよ』

『なるほど……士郎さん的にはどうですか? 勝てそうですか?』

翠屋JFCは確かに強いが昨日負けている……主に俺のせいで。
負けがあれば基本的に、メンタルメンが落ちて試合に響きそうだが……。

『実は、昨日の試合後から選手達のやる気が上がってね
”年下に負けれるか!”と言って、皆の結束力や向上心が良い方向に傾いるんだ
だから、今回の桜台JFC戦は勝てると思うよ』

『えっと…その”年下に負けるか!”って……なんか俺が原因ぽいですね』

『あはは、いやいや、主に君の御かげだよ。ありがとう神田君』

『い、いえいえ……どういたしまして…』

今更ながらに思うが、翠屋JFCの人達はよく向上心が持てたと思う。
大概の人は俺のプレーに対して嫉妬や善くない感情を抱くのだが……
という事は選手自身もそうだが、監督である士郎さんの教えが善いからなのだろうか?

『それで…君も土曜日の試合に来くるかい?
なのはやすずかちゃん達も応援しに来るし……どうかな?』

どうかな? と言われてもなぁ……。
良い人達なのは分かるが……それでも試合には出たくないからなぁ…。
でも……士郎さんと行動してないと、士郎さんに時間調整などの負担が掛かるわけで……
そう考えると結果的に行った方が…良いのも事実だ……。 

なら……

『……まぁ、応援なら行きますよ』

『応援にかい? 別にそれでも構わないが……試合に出ても良いんだよ?』

『いや、いいんですよ。
元々翠屋JFCの人達が活躍する場ですし、俺が出たら悪いでしょ?
いくらプレイングが上手くても所詮は練習をしていない、俺はただの帰宅部です……
そんなヤツが試合に出ればチームの士気に関わるので、止めた方がいいですよ?』

『君が入ったら皆が喜ぶと思うが……いや、無理強いは善くないな。
分かったよ、じゃあ今度の土曜日にまた会おう、神田君』

『はい、また会いましょう、士郎さん』

携帯電話から”ツゥー、ツゥー”という音が鳴るのを確認した後、俺は携帯を閉じた。
今週の土曜日か……まぁ、試合の観戦は見ていて面白いから問題ないし、勝負だってある。
その為、知らず知らずの内に気分が、かなり高揚しているのが分かる
さながら遠足日前の前夜に、わくわくして眠れない小学生の如くだ。

「えっと……神田君って武道とかって好きなの?」

「ん?」

気分が高揚し、空を見上げてその思いに馳せていた時、高町さんから声が掛けられる
恐らく……俺と士郎さんの会話を聞いて、約束の事を聞いた途端に俺のテンションが上がっていたから気になったのだろうな。

「まぁ……好きだよ。俺が一番努力してきた事って、武道だからね」

正直、六式は武道というより……ワンピースの世界状、殺人拳に近いような気がするが…
まぁ、今は武道という事にするか……道徳的に…。

「そうなんだ…。でも…どうして武道をしようと思ったの?」

高町さんからの問いに、俺は腕組みをして考える
一番の理由は……そうだなぁ…特典を貰えたというのが大きい……。
実際問題、特典が無かった場合…俺は普通の小学3年生になってたと思う。

「……まぁ、あれだね…才能が有るから…かな?」

「ほぇ~武道に……でも、神田君ってスポーツ全般にも才能有るよね?
サッカーや野球、バスケとかの練習を私が見ても解る位に上手だもん……
だからちょっと羨ましいよぉ……私は神田君と違って運動の才能無いもん……」

そういって高町さんは苦笑いをしだす……本当の事(自虐ネタ)だから反応に困る…。
後……俺がスポーツ全般が得意なのは修行してるからだ……修行をする事で、基礎体力の向上や反射神経の強化などを六式の修行を通じて身に付けて来た。

はっきり言って、スポーツなどに関する技量や技術は皆とそう対して変らない……
前世では部活動とかはやってなかったから、そういった知識は一般人レベルだ。
なので大概いつも、運動神経や反射神経などで技量の不足分を補ってきた…

まぁ、それだけでも十二分に驚異的なのだが……。

「スポーツ全般が得意なのは武道を通して身に付けた、体の御かげだよ
簡単にいえば、おまけってやつかな? ほら、高町さんのお兄さん達も運動得意でしょ?」

俺自身、恭也さん達がスポーツをしたところを観た事はないが……
一般人よりも遥かに強い人達だ……そんな人達が運動が下手糞なわけがない。

「そう言われてみれば……お兄ちゃん達も運動が上手なの」

高町さんは自分の顎に人差し指を置き、何かを思い出しながら答える。

「でしょ?だから俺がスポーツ得意なのは、あくまでおまけって事だよ才能じゃないんだ」

「そうだったんだ……ごめんね神田君? 神田君が頑張った成果を才能で片付けて……」

「いや、いいよ高町さん、別に気にしてないし。
それに……俺が真面目に努力したのは武道だ、スポーツの方に努力のベクトルを向けてない…だから、否定されても俺にその事をどうこう言う資格は無いんだよ」

「でも…」

高町さんは自分の胸の辺りで、右手を軽く握り締めている
その表情は何処となく悲しげだ。

「あはは! 気にしない、気にしない!
それに、スポーツなんてのは皆で楽しくできれば、俺はそれで良いしね」

空気……というより雰囲気が暗いので、俺は少しテンションを上げながら言葉を発する。
というのも、こんな雰囲気で残りの高町家までの道のりを2人で行くのは……俺が持たん。

「え、えっと……私あんまりスポーツしないから分らないけど……そういうものなの?」

「うん、そういうものなんだよ」

「そうなんだ……あッ!」

幾分か場の空気が改善され、高町さんの表情がいつもどうりになったと思った矢先……
突如高町さんから、何かを思い出したかの様な声が聞こえてきた。

「どうしたの高町さん? 急に声出して?」

「あ、うん……えっとね…、昨日から聞きたかったんだけど…
その…神田君ってお父さんと約束してるよね? 勝負するっていう約束…」

「うん、そうだけど……それがどうしたの?」

「えっと…その……何で神田君は、お父さんと勝負したがるのかな? て思って……」

俺が士郎さんと勝負したがる理由……?
理由は戦いたい事と、自分の力量を知りたいと思ったからだ。

人間なら誰しも、自分の努力してきた事の結果を知りたがるもの……無論俺も一緒だ
例を出せば……毎日勉強した人がテストをすれば、その結果を誰よりも知りたがるだろ?
という訳だ。

「理由は…士郎さんが強いから、俺と張り合えるかもしれない実力があるからだね
そして……お互い勝負して…語り合って、自分を高めて行きたいと思ってるからだよ!」

俺は右手の拳を自分の顔の前に持ってきて”グッ!”と握り締めながら、力説する
その際、高町さんは俺を見て唖然とした表情をしているが……まぁ気にしないでおこう。

「そ、そうなんだ……(な、何というか……こんなに活き活きした神田君、初めて見たの)」

「そういうこと……お! 高町さんの家だ」

「え? あ、本当なの」

高町さんと話している内に目的地である、高町家が見えてきた
その距離は、もう後1分もしない内に着くだろうという距離だ。
最近、高町家の人と関わる回数が飛躍的に上がった気がするが……まぁ、いいか

と、そんな事を考えている内に高町家へ到着
高町さんに導かれながら、門を潜り、今は2人とも玄関前に居る状況だ

―――ガラガラ……

「お母さ~ん、ただいまぁ~」

高町さんに続く様に、俺も高町家の玄関に入って行く……。
これから高町さん達に色々と説明する事になるのだが……さて、どうなることやら…
俺はそんな事を考えながら、家にあがって行く高町さんの後姿を見るのだった―――


 
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