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神々の黄昏

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第三幕その一


第三幕その一

                  第三幕  終焉
 河に彼女達がいた。あの乙女達がである。
「かつては暗い河の底も明るかった」
「そう、あの黄金によって」
「けれど今は」
「暗いまま」
 こう嘆いているのだった。
「深みにあるあの星はもう」
「私達の元にはない」
 そうして。
「ヴァイアラーーラーーーー」
「ヴァイアラーーラーーーー」
「ライアーーーーー」
 彼女達の叫び声も出す。
「どうか私達に再びあの指輪を」
「あの黄金を」
「どうか私達に」
「ジークフリート」
 この名前も出て来た。
「彼をここに」
「そして指輪を戻してくれるのなら」
「私たちはそれで望みはありません」
「他には」
「あれは」
 ここでヴォークリンデが言ってきた。
「角笛の音が」
「そうね、あれは」
「間違いなく」
「ジークフリートの」
 それだと言うヴォークリンデだった。
「あれこそは」
「そうね」
 ヴェルグンデも言う。
「あの勇士の」
「間違いないわ」
「あれは」
「彼と話がしたいわ」
 フロースヒルデも言った。
「どうすればいいのか」
「まずいな」
 ここでそのジークフリートが述べるのだった。
「アルプに惑わされ獲物の行方を見失ったぞ」
「来たわね、ここに」
「そうね」
「好都合だわ」
「何処にいるのか」
 彼はラインの乙女達に気付かないまま河のところに来た。乙女達はその彼に対してすぐに声をかけたのである。
「ジークフリート」
「どうかここに」
「ここに来て」
「んっ!?」
 ジークフリートもその声を受けて顔を河に向ける。するとだった。
 そこに乙女達がいた。河から顔を出して彼を見てきているのだった。手さえ振って愛想をよくしている感じである。
「何を探しているの?」
「見たところ弓を持っているけれど」
「狩りで獲物をかしら」
「ああ、そうだ」
 その光り輝く弓を手にして述べるジークフリートだった。
「それでなんだが」
「それで獣なのね」
「彼を探してなのね」
「そういうことなの」
「君達は知らないかい?」
 こう乙女達に問うのだった。
「一匹の熊を。君達の友人ならその獣は追わないが」
「一つ聞いていいかしら」
 ヴォークリンデがその彼に言ってきた。
「そのことを」
「そのこととは?」
「その獣を貴方にあげたら御礼はあるかしら」
「御礼か」
「ええ、それは?」
「私は今はまだ獣を一匹も獲っていない」
 こう返すジークフリートだった。
「それで何も持っていないのだが」
「その手の指輪は」
 ヴェルグンデはそれを指し示してきた。
「どうかしら」
「指輪を?」
「そう、それは」
「どうかしら」
「これはだ」
 しかしだった。ジークフリートは乙女達の言葉にまずは眉をしかめさせた。そうしてそのうえで答えるのだった。
 
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