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神々の黄昏

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第一幕その十三


第一幕その十三

「またこうして会えるとは思わなかったわ」
「ええ、本当に」
 その天を駆る馬の上から姉に対して言ってきた。
「元気そうで何よりだわ」
「まずは馬を休ませなさい」
 そうしろというのである。
「ここでね」
「ええ、じゃあ」
 まずは降り立ち馬を置いてだ。暗雲漂う空から炎の中の岩屋にだ。降り立ってからまた話すのだった。
「私がここに来たのはね」
「どういう訳なの?」
「用があって」
「その為にお父様のお言葉に背いてそれで来てくれたの」
「ええ」
 その武装した姿での言葉である。ワルキューレの姿だ。
「そうよ」
「お父様のお考えが変わった。それは違うわね」
 ブリュンヒルテはその考えはすぐに打ち消した。
「あの時あの二人を護ったことは」
「そのことは」
「間違っていた。けれどそれこそが」
「それはもう過ぎた話だけれど」
「そう、もうね」
 そのことは彼女もわかっていることだった。ワルトラウテもだ。
「それは。けれど」
「それはお父様の願いでもあった」 
 ワルトラウテが姉に対して告げた。
「かつては」
「そして私はここに封じられた。この岩屋に」
「今まで眠っていたのに」
「一人の勇士が私を起こしてくれたから」
 ジークフリートのことである。
「だから。今の私にはもう他に何もいらないわ」
「いらないというと」
 その言葉を聞いたワルトラウテの顔が曇った。
「姉さん、まさか」
「私は今は」
 はっきりと告げたブリュンヒルテだった。
「満足しているわ」
「そうなの」
「それで貴女はどうなの?」
「私は?」
「そう、貴女は」
 今度は自分からワルトラウテに問うのだった。
「どうしてここにいるの?お父様は恐れていないの?」
「それ以上のことがあったからよ」
 だからだというのである。
「私がここに来たのは」
「その理由はどうしたの?」
「ヴァルハラが終わろうとしているの」
 切羽詰った顔での言葉だった。
「今はもう」
「ヴァルハラが終わろうとしている?」
「貴女がいなくなってからお父様は変わったわ」
 言葉が暗いものになった。
「私達を戦場に送ることもなく」
「貴女達を」
「私たちはただ馬に乗り天を彷徨うだけになり。そうして」
「そうして」
「お父様はただ一人地上に彷徨われて」
 あの森に行っていたことは知らない。
「そして帰って来られた時は」
「その時は」
「槍は粉々になっていたの」
「そうね。そしてそれを砕いたのは」
「それはわかるの?」
「一人しかいないわ」
 こう妹に返した。
「ジークフリート。彼によってよ」
「まさか。その名前は」
「ええ。あの時にあの二人から生まれた子よ」
 彼だというのである。
「あのヴェルズングの兄妹から」
「そう。あの二人の子供だったのね」
「彼しかいないわ。絶対に」
「そうなの。そして」
「そして。お父様はそれで今どうされているの?」
「世界樹の木の欠片を薪にして」 
 そうしたというのだ。
 
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