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めだかボックス 〜From despair to hope 〜

作者:じーくw
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第22箱 「オレは絶対!!生徒会には入らない!って ぎゃあああっ!!」


























場所はかわり。


【1年1組】



“ザワ… ザワ…”


教室内はざわめいていた。

その内容は当然。


「ねぇ 聞いた? 新しい生徒会長…」
「私たちと同じ入学したての一年のくせにねー」
「あれ!冗談みたいな態度、それこそLみたいなんでしょ?デス○ートのっ。知ってる!」


教室内のあちこちで話題になってる。

そりゃ、めだかちゃんが、あんだけ言っちゃったら。

話題に上がらない方がおかしい程だ。


「……引くほど美人なんだけどやることなすこと滅茶苦茶に型破りでさ?」
「だろうな… それで先生もビビッててぇ出せないんだろ?」


その皆の会話に耳を傾ける。

その内容を聞くと凄く思うんだ。



≪本当に変わってないな≫……と。




「♪」



“ぽきゅっぽきゅっぽきゅっ………”


劉一が聞き耳をしていた時だ。

「ん?」

独特な効果音を出しながら傍に近づいてくる生徒が1人。

「あはは!よく啖呵きれるもんだね?あのお嬢様!」

そして話しかけてきたのは、不知火半袖。

名前からわかりにくいって思うかもしれないけれど。

≪彼女≫は女の子。

僕のクラスメイトの1人。

話しかけやすくて、直ぐに打ち解けたんだ。

「あはは……。すっごいよね…? あんなのまね出来ないよ僕には。」

劉一は苦笑いをしていた。

大勢の前で啖呵を切れる?って聞かれたら0.1秒後に言葉を返す。


≪絶対に無理だよ♪≫……と。


「あはっ♪ それが普通でしょ?って言うより、人前に立つの慣れてるんでしょー?あのお嬢様はさ!だから、アレだけできるんじゃん?」

「だね……。後生まれもったものなんじゃないのかな……?」


何気ない事を、2人で話してたのは問題なかったんだけど。


「カッ!」


傍で寝てた者が……【善吉】が目を覚ましたんだ。

彼の席は、劉一の直ぐ隣なんだ。

そして、その善吉の隣が不知火。

……不知火は積極的な性格な様で、劉一に話しかけていた。

でも、一番最初は善吉から不知火へ話しかけていたことから始まったんだ。

不知火が落とした消しゴムを訳のわからない言葉と一緒に返した。

その言葉につられて劉一も笑ってしまった。

そこから今に至る。

劉一は接触は避けていた筈なんだけどね……。 苦笑

でも善吉はめだかちゃん見たく鋭いわけじゃないから。

劉一にとっては幸運だった。


「あのな、お前らありゃあ 人の前じゃねー。≪人の上≫に立つのに慣れてんだ!」


………目を覚ました善吉はやれやれ、と面倒くさいといった表情になる。

「んー あー そりゃそーだね!そーでなきゃ1年で生徒会長なんかなれっこないか♪」

不知火がにやっと笑いながら同意していた。

人前には誰でも立つ事が出来る。

でも、【人の上】に簡単に立てるか?っと問われれば 劉一じゃなくても無理と言うだろう。

だって、それは異常だって思えるんだから。

「ははは… でも それはそれで異常だと思うよ。 それに彼女の支持率にしてもね?」

劉一は、今回の生徒会選挙での彼女の支持率を思い出しながらそう言う。

思い出そうとせずとも、脳裏に焼きついているんだ。

あの【結果】を。

「ははは!そうだね〜♪ なんたってぶっちぎりのNO.1だもんねー! まっ!かくゆう あたしもあのお嬢様に清き一票をささげたわけですが~~♪
あのお嬢様は、全国模試では常に上位をキープ!その偏差値は常識知らずの90を記録っ! 手にした賞状やトロフィーは数知れずっ! スポーツにおいてもあらゆる記録を総なめ状態!実家は世界経済を担う冗談みたいなお金持ちっ! んで、なんとっ!全長263メートル 高度6万フィートをマッハ2で飛行するっ!おっまっけにインテル入ってる♪」



“スパァァァン……”



……最後まで言い切ったと同時に劉一はとりあえず不知火を何処から出したのか、ハリセンで軽く叩いた!

「不知火?もうちょっと分かりやすい規格外を言ったほうがいいよ!確かに凄いのはよ~~く伝わるけど途中からすごーーく分かりにくいっ!」

劉一はつっこむ!!

でもこれじゃ、どっちがボケ役なのかわからない……。

「……いやいや、途中から人類じゃなくなってるじゃんかよ!そこを突っ込んだんじゃないのか?≪劉一≫」

だからこそ、善吉がツッコミ役を買って出てくれたようだ。

でも、劉一は……。


“ビクッ!”っと体を震わせた。


善吉に名前で呼ばれるのはまだ慣れてなかったから。

善吉は苗字をで呼ぶより、名前で言う方が好きみたいなんだ……。


でも、劉一は、とりあえずは平静を保ってるから、特に問題ないと思う。

善吉も不審に思ってはいないようだった。



前髪で大分印象が変わるんだ。

ある程度、実験してみたけど、分からないよ!って言ってくれた人!10人中9人だったっ!

勿論善吉も気付いてない。

自身はちょっとずつだけど、ついた。

でもめだかちゃん相手にその実験はしたくない。

ものすっごく不吉。

嫌な予感が猛烈にするからだ。






劉一は気を取り直し、≪高校の友達≫との話を続けていた。


「ははは… まあまあ 不知火の言う事、的を射ているじゃん? ちょっとはね。」

「マッハだとか高度とかがか?」


……馬鹿話ッぽいことだけど。

「んでさ!人吉はどーすんの? お嬢様が当選したって事は とーぜん人吉もはいるんでしょ?」

そう、彼は何度も何度もめだかちゃんに誘われているんだ。

流石にこの1組の教室までは来てない。

……でも、それ以上の事はしている。

その中でも、いきなり放送部をジャックして、校内放送で呼び出してた時はびっくりした。

でも、教室まで来ないから、劉一としたら今の状況は好都合なのだ。



「カッ!なわけねーだろ!これ以上アイツに振り回されてたまるかっての!」

そう言って善吉は立ち上がる!

今日こそは言ってやる!!と言う気合に満ちていた。

「あはははっ ……って!!!!!!ッ!!!!」

劉一は……気合を入れるどころ、じゃなかったそれどころではなかった。


一言で表すならば、予告無しの衝撃映像を見せられた気分。

それは、善吉がこっちを振り向いた時の事。



いつの間にか………。




「オレは絶対!生徒会には入らない!!」



ビシッ!!っと指を突きつける善吉。

でも、真に驚いたのはその後ろの存在。

……指差す善吉と全く同じポージングをするめだかちゃんが立っていたんだ。



“ガタッ!”



劉一は平常心でいられる筈も無く、オーバーアクションを取ってしまっていた。

でも、善吉はめだかちゃんに全く気付いてないみたい。



「まあ そう連れないことを言うものでないぞ?善吉よ!」



めだかちゃんはその言葉と共に、善吉の頭を鷲づかみにしていた。

握りつぶすが如く……。


善吉はその万力の様な力を受けて初めて気付く!!

後ろに誰が……いるのかを。




「ギャアアア!!!」



で、善吉はめだかちゃんに片手でそのまま持ち上げる、

凄い……。それは女の子のパワーじゃないって思う。


(って… 感心してる場合じゃないよね……)


劉一はちょっとでも、目立たないように、

1cmずつ……1mmずつ……。

足音を殺しながら……。

さらには気配をも殺そうとしながら……。

ゆっくりと、自然にその場を離れようとした。

でも……。




「む?待て!貴様。」




一発で気づかれる。

廊下では、成功した無音の移動術!!だったのだけれど、彼女には二度は通じないみたいだった。

その上、なぜかご指名を受ける劉一。


「へうっ! なっ 何です……?」

(平常心平常心… こんせんとれーしょん……)

必死に必死に、胸に手を当てながら……劉一は精神統一をしていた。



そんな事、露知らずのめだかちゃんは目を細めながら劉一を見る。

まるで、素顔を確認するかのようにだ。



「貴様…名はなんと言う?」



右手に持っていた善吉をポイッっと放っちゃって……。

これは、ひどい……!



「ええっと…僕……。 御神って言いますが……。 」



劉一の前髪ですっぽりと目元まで覆っていたから、素顔が見えなかったのは僥倖だった。

だけど……次の要求でその僥倖も危うくなってくる。


「うむ。そうか御神同級生。苗字は分かった。では名はなんと言う?」


(ううぅ…そこにくるのかな……、やっぱり……。)

劉一は……小さくなりながら……。


「その……一です…・」


ボソッと言う。

限りなく、自然に……。


「なんだっ!?聞こえないぞ!?」


そんな態度を取ってしまうから、めだかちゃんの圧力(プレッシャー)は強くなる一方だった。

「おいおい…オマエがそんだけ圧力(プレッシャー)かけりゃ… 誰だって萎縮しちまうだろ?」

善吉が助け舟をだしてくれた。

劉一は本当に嬉しかった

冗談抜きで命の恩人だと思えるほどに。

(善吉君……ありがとっ!僕、今度何か奢るからねっ!!)

善吉の方を目をうるわせていた……。



善吉は、そんな事当然だが全く考えていない。

考えていたのは……。

(コイツの名がアイツ(・・・)と同じ劉一って知ったらめだかちゃんのことだ… 暴走するかも知れねぇ〜からな…とりあえず、オレが頃合を見て話したほうがいいだろ。そもそも コイツすっげえ、びびってるし。)

って事だった。

表情……は、見られないが、劉一のその雰囲気からよくわかる。



善吉の機転で、この場は落ちつきそうだったんだけど……。




「名前くらい言ったっていーじゃん!劉一(・・)!だよね〜♪前髪がイカスさー!」




そう言い放つ空気を読めないお嬢さんがここにいるのだ。

今の今まで声を出してなかったと思えば、狙ってたかのように高らかにいっていた……。



「「(不知火!!!!!)」」

「何!!劉一!だと!!!」



めだかちゃんは大声をだし、こちらを見た。

見た……というより 睨まれた。



「おい… 御神同級生。」

「はっはいっ!!」



劉一は、まるで軍隊の敬礼のような声を出す。

さながら、めだかちゃんは軍曹だろうか……?


「……私や善吉に合ったことあるか?」



そして……めだかちゃんの尋問が始まった。


「いっ…いえっ!君達に合ったことは無いですっ…。この学園が初めてですよ。」

「フム……。では 御神同級生。貴様は何処出身なのだ?」


(うう…あの幼稚園の名前を出さそうとするつもりか… 誘導尋問?ふふ…だけど、もう名前はばれてるし、もう恐れるものはない!こともないけど… 心理戦で僕に勝てるかな?めだかちゃん…とぼけきってあげるよ! なんだか、凄くかっこ悪いけど…ね…。)

劉一は、もう恐れるものなど無い!と言った言葉に嘘偽りは無いようで……。

その姿はさっきまでの慌てていた劉一じゃない。

これまで以上に平常心で……自然に話せていた。


「あ……あの、僕… 孤児なんです。 ある施設に幼少期よりずっといて…出身と言われても良く覚えて無くって……。 あっ、ここの不知火理事長なら詳しくは知っていると思いますよ。」

劉一は、そう言った。

これは、真実だ。

嘘ではない。

だからこそ自然に話せていたのかもしれない。


「孤児…?そりゃオレも初耳だな。何か悪いな。オレのツレがそんな過去を言わせてな……。」


善吉が割って入ろうとした。

それどころか、謝罪をしてくれる。

善吉君は、今も昔も優しい男の子……。だった。

でも、めだかちゃんは……。



「ふむ。それはすまなかった御神同級生。では、その髪をちょっと捲ってもよいか?」



“ドキーーーン!!”





(ええ!そうくるの!!!)

劉一は、平常心で、 ポーカーフェイスを貫いた!と思っていた。

だから、まさかの要求に驚きを隠せない様だった。

そのせいで、一気に精神が崩れてしまっていた……。


「む?どうしたのだ?」


めだかがにじり寄る…。

その反応に何かを感じ取ったようだった。

だけど……最後まで詰め寄る事は出来なかった。



善吉がめだかちゃんの肩を掴んだからだ。


さっきまでの表情じゃなく……少し寂しそうな表情だった。

だからこそ、めだかちゃんを止められたんだろう……。








「…その辺にしとけよ。もう、アイツ(・・・)は いないんだからよ……。 」




肩を掴んで揺さぶる。

「………………。」

めだかは少し表情を暗くしていた。

だからか、ずっと見ていた劉一から顔をそむけていた。



「オレに用があるんだろ?さぁ、 さっさと行こうぜ。」



善吉はそう言うと、めだかちゃんは無言で善吉と共に教室から立ち去った。














「…なんだったのー?今のさ?」

「さっ…さあね。」




不知火がまいた種なのに、あっけらかんとしているのは不知火。

知ってても知らないをする。

そして誘導をする事に関しては不知火がNo.1だろう。


劉一がその事を身に染みるのは、まだ先のお話だった。



今は、善吉への感謝の気持ちでいっぱいだったから。




















【生徒会室】


生徒会室にて。


「…なぜ とめたのだ?善吉よ。」

めだかちゃんが善吉にそう聞いていた。

無理にでも、善吉が止めても継続する事は出来たはずだけどめだかちゃんは止まった。

彼女もきっとわかっていたんだろう。

善吉の気持ちも。


「…もし アイツがここにいたら… 直ぐにお前には話すだろ? ってことはアイツはいないんだ。同名の別人ってことだろーよ。」

「ふん!」


めだかちゃんはまだあきらめきれていない。

いかに、善吉が言う事が正しくとも……。

希望があれば、可能性があればとことんまで、行くのが黒神めだかだからだ。



だが、今日はとりあえず、その話は終わりにしていた。

この場所に【彼】はいないんだから。





「んで…それよか 普通に現れて普通に連れてくることはできねーのか?生徒会長さん」

「それについては貴様が私の誘いをすげなくし続ける貴様が悪い。それによそよそしい呼び方をするものではないぞ! めだかちゃんと呼ぶがよい!」 ッ凛


そして、めだかちゃんは生徒会室にある大きな鏡の前に立った。



「そりゃーよ!キツイのはわかる!でも だからって巻き込むなよ!お前って奴は昔からそうなんだ!子とあるごとに当然のように俺を道連れにする!オレの気持ちとかオレの迷惑とかちっとも考えてくれねぇ… 付き合いきれねーんだよ!実際!」



全くめだかちゃんは別事をしているというのに、様々な反応(リアクション)、顔面七変化をしながら善吉が語っている。

めだかちゃんは全く聞いていない。

……全く聞いてないどころか、めだかちゃん……服を脱いで鏡の前でポーズをしていた。



「大体お前なら1人で生徒会業務をやり続けることも出来るだろ―――って うおおおおおいっ!」



振り向いた善吉。

……やっと善吉も気付いたようだ。

……今、彼女がどんな姿なのか。



「あっ!当たり前みてぇに人の後ろで着替えてんじゃねぇよ!もっと恥じらいをよーー!!」


そう、善吉が言うとおり、めだかちゃんは下着姿だった。

だから、その美しい姿が露になっていた……。

善吉は…… 後ろに後ずさりながらつっこんで……。



…だが。


「?」


めだかちゃんは、 ≪何をいってんの?≫みたいな表情をとっていた。

それどころか、


「私と貴様の間に恥じらいなど何の意味がある?」


そう続いて…



「少なくとも小6まで私と一緒に風呂入っていた男の言うことではないな」「昔の話だ!!!」


善吉との過去話を暴露していた。

幼少のころの事実、思い出話って結構効く。

だからこそ、善吉は慌てて『昔の事だ!!』っといっていた。



「まあ、私は貴様とだけじゃなく……劉一とも共に入りたかったんだがな……。」



その表情は、一瞬だけ寂しそうな顔をした。

でも直ぐに顔を元に戻す。



「それに善吉 私は仕事を手伝ってもらうために貴様を引き込もうとしている訳ではないぞ?」

「ああ?」


善吉は暫く顔を背けていたため、一瞬のめだかの表情は見てなかったみたいだ。




「私は仕事がキツイと思ったことなど生まれてこのかた1度もない! 私には貴様が必要だから!傍にいてほしいだけなのだ!」

「!!!」



そのめだかちゃんの言葉に善吉は顔を赤らめていた、

彼女を…めだかちゃんを。

劉一がいなくなってからずっと彼女と一緒にい続けたのは善吉だ… その為だろう…

一瞬混乱した善吉だが、直ぐに分かったみたいだ。

でも、善吉にとってはお互い様だったんだ。

劉一がいなくなって……悲しい想いをしたのは何も、めだかちゃんだけじゃない。

初めての友達で、親友で……家族。

自分の一部が失ってしまった。

そんな絶望を感じていた。

でも……目の前で泣いている女の子がいたら……。

自分が慰めないと……と思ったのだ。


「へ……。」

善吉は、もう昔のことはあまり覚えていない。

でも、その悲しい記憶は覚えている。

だから、めだかちゃんのあの姿は見たくないと思っていたんだ。





だから…………。








めだかちゃんは、何やら取り出した。



「で さしあたってはこの目安箱なのだが…」



そう言う。


生徒会の業務に入っていったのだ。















 
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