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悪の騎士

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第六章

「イングリット家を滅ぼす」
「そうされますか」
「あの家は魔族達の中でも最も帝国に敵対している家だがだ」
 つまり魔族達の中でも強硬派だというのだ。
「その家を叩きだ」
「そしてですか」
「滅ぼす」
 ハイネルはまた言った。
「わかったな」
「はい、それでは」
 こうしてだった、ハイネルは人を選びそのうえで魔族達の国に潜入した、そして夜にイングリット家の館、庭には豊かに木があるそこを急襲したがそのやり方は。
 館の周りに油を撒き火を付けさせた、魔法により。
 四方八方から火を付けさせてだった。
 館を庭も何もかもを燃やせさせた、火は忽ちのうちに燃え上がり館全体を包み込んだ。夜の衛兵達は最初に殺していたので行動は速やかに成功した。
 館の中では炎と煙に責められて呻き声が聞こえてきた、それを見てだった。
 部下達は顔を強張らせてハイネルに言った、彼等は皆館から少し離れた場所で館が燃えるのを見ている。
「あの、宜しいでしょうか」
「一つ申し上げたいのですが」
「何だ」 
 ハイネルも燃える館を見ている、そのうえで彼等に応えた。
「この工作のことか」
「はい、そうです」
「あの、イングリット家を攻めるのはいいですが」
「それはいいのですが」
「館の中には」
 彼等が言うのはこのことだった。
「イングリット家の主だけではありません」
「はい、あの者だけではありません」
「その妻もいます」
「子供も」
「兵達もいますが」
 館を守る衛兵達は殺した、最初に裏から襲って首を刺して殺した。無論館の中には詰めている兵達がまだいるにしても。
 それでもだ、彼等は言うのだった。
「館の中には使用人達も多くいます」
「確かにその者達も魔族ですが」
 だがそれでもだというのだ。
「しかし彼等は剣を持っていません」
「戦う者達ではありません」
「年寄りや女もいるでしょう」
「子供も」
「それに馬や犬も」
 そうした者達がだというのだ、戦わない者達も多くいるというのだ。
「それでこれは」
「あの、あまりにも極端では」
「戦わない者達までまとめて殺すのは」
「それはどうかと思いますが」
「一人でも逃がすとだ」
 イングリット家の者、例えそれが使用人であろうともだというのだ。
「それでだ」
「危ういことになるというのですか」
「それで」
「女でもナイフを持てば人を刺せる」
 そして殺せるというのだ。
「魔法も使える」
「それがですか」
「出来るからですか」
「そうだ、だからだ」
 それでだというのだ。
「女であろうとこうしてだ」
「まとめてですか」
「焼き殺されるのですか」
 館は紅蓮の炎の中に包まれていた、そこからは小さな女の子の呻き声まで聞こえてくる、それはまさに地獄の中の声だった。 
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