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悪の騎士

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第三章

 しかしこれからはだと、彼は今毒見役に言ったのだ。
「それもする」
「わかりました、では」
 こうして今度は侯爵の領地全体が調べられた、密かにではあるが。
 そのうえで調べてだ、一人のメイドが捜査線上にあがった。
「新たに王宮に入ってか」
「はい、そうです」
 しかもだというのだ、部下達が密かに彼に言う。
「その出自も怪しいです」
「ロクサーヌ出身とあるが」
 ハイネルはそのメイドに関する調査書を見た、そこにはそう書いてあった。
「違うか」
「言葉の訛りが妙に」
「ロクサーヌのものではないか」
「はい、それに」
「しかもか」
「時折侯爵領の青の森に行っています」
「森、か」
「あの森には前から不穏な噂がありますね」
 ここでこう話されるのだった。
「その、件の」
「魔族だな」
「あの森の魔族達は大人しいですが」
「しかしだな」
「中に潜り込んでいるかも知れませんね」
「そうだな」
 ハイネルは部下の話に対して頷いた。
「ではそのメイドを追いだ」
「そしてですね」
「そのうえで」
「そうだ、青の森に入りだ」
 そしてだというのだ。
「掴むぞ、尻尾を」
「わかりました」
「では」
「ただ、だ。あの森の魔族は元々我々とも仲がいい」
 友好関係にあるというのだ。
「話で済めばそれでいい」
「では話で済まなければ」
「その時は」
「軍を連れていく」
 つまり話をするにあたって無言の圧力をかけるというのだ、事前に恫喝をしてそのうえで話をするというのだ。
「そうするぞ」
「それはまた強硬では」
「やり過ぎでは」
「構わない」
 ハイネルは言い切った。
「やり過ぎでもな」
「構いませんか」
「軍を連れて行っても」
「それで無言の圧力をかけても」
「それでも」
「無論彼等が下手にメイドや北の魔族を庇うとだ」
 その時はというのだ。
「剣を抜け、魔法も使え」
「そうしてですか」
「戦うのですか」
「それも辞さない、いいな」
 こう冷徹な顔で言うのだった、そして実際に。
 彼は兵を率いてその青の森に向かった、森を軍の一部で囲みその森の中の魔族の町にまで軍を率いて中に入った、そうしてだった。
 ハイネルは魔族の長の前に出た、そのうえで彼が率いてきたことに戸惑う魔族達、ダークエルフの彼等を見つつこう長に言った。
「この町に我が侯爵の宮殿にいるメイドが一人出入りしているな」
「はい、そうですが」
「そのメイドは今ここにいるか」
「それが何か」
「すぐに出してもらいたい」
 長も戸惑っている、その彼に言った。 
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