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ラグビー

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第一章

                   ラグビー
 オーストラリアやニュージーランドだけではない。
 トンガでもラグビーは盛んだ、それで今彼等もそれをしている。
「いや、ラグビーいいよな」
「面白いよな」
「凄くいい運動にもなるしな」
「怪我が怖いけれどな」
 彼等は試合前の準備体操の中で話をしていた。
「それでもこんないいスポーツはないよ」
「だから今日もやるか」
「楽しくな」
 こう話して実際にラグビーを楽しむ彼等だった、そしてその試合の前に。
 彼等はまず舞った、戦いの舞を舞うのだ。
 だがそれを見てだ、日本人達はこう言うのだった。
「何か物真似しやすいよな」
「何かな」
「妙に楽しい感じでな」
「戦いの舞ってのはわかるけれどな」
「それでも妙にな」
「明るい感じでな」
 こう言うのだった、それはトンガのチームだけではない。
 オーストラリアのチームのそれを見てもだ、特にニュージーランドのオールブラックスの舞が有名である。
 その舞を彼等もしてみる、そして言い合うのだった。
「いい感じだよな」
「そうだよね」
「やっぱり物真似に最適だよ」
「本当に」 
 それで彼等はラグビーの前には舞わず物真似として舞うのだった、だが。
 彼等にしてみれば真剣だ、それでだ。
 ラグビーについてもだ、こう言うのぱった。
「ラグビーは只のスポーツじゃないからな」
「ああ、戦いだ」
「これは戦いだからな」
「舞うのも当然だ」
「戦いの舞をな」
 こう言って実際に舞う、そうして舞ってからラグビーをするのだ。
 そのことを当のトンガ人でありラグビーをしているニウア=バランガがその日本人の物真似をしている大学生達に話した。彼は丁度日本に語学留学をしていて八条大学に来ていたのだ。
 ラグビーをしているだけはありかなりの巨漢だ、身長は二メートルを超え筋骨は隆々としている。肌は南洋独特の日焼けした黒い肌であり目は大きくきらきらとしている。
 その彼がだ、彼等に実際のトンガの舞を見せてから言うのだ。
「こうしてね」
「それからですよね」
「ラグビーをするんですよね」
「そうだよ、君達は物真似でやってるよね」
「はい、そうです」
「実は」
 彼等もそのことを認める、丁度駅前の居酒屋で酔った弾みでそれをしてからの話だ。
「ちょっとまあ」
「遊んでみまして」
「そうだね、物真似についてはね」
 それはというと。
「僕は別にいいと思うよ」
「あっ、怒ってないですか」
「物真似でも」
「うん、そうだよ」
 こう笑顔で語る。
「だから特に気にしないでね」
「だといいですけれど」
「ご立腹でないのなら」
「そうしたことでは怒らないよ」 
 戦いの舞を真似された位ではというのだ。
「絶対にね、ただね」
「ただ?」
「ただっていいますと」
「君達は今一つ戦いってイメージじゃないんだね」
「はい、ちょっと」
「そうした感じじゃないです」
 実際にこう答える彼等だった。 
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