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恋姫~如水伝~

作者:ツカ
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十五話

曹操が新たに拝領した領地、以前の領地に善政を尽くし、領民らも曹操の良政に安堵した。
曹操は配下に命じ、各自に仕事を与えた
如水も自身の仕事をしながら、凪、真桜、沙和の三人を将として教育した。

演習場

如水は兵の演習が終わった後、三人を集め指導した。
「凪、君は時折、損害を恐れず攻勢に出る時がある。戦況にもよるが、出来るだけ損害を出さない様に兵を動かす事を頭に入れてくれ。その為にはまず、常に自分の部隊の状態を把握しておく事だな。その事を考えてくれ」
「はい、わかりました、隊長」
「真桜は、今のところ問題はないが、言いにくいのだが。二人に比べ将としての長所が無い。華琳とも相談しているが、君の長所を生かすのに今後、工兵を指揮してもらうだろう、その事も考えて、これからの兵の指揮の参考にしてくれ」
「了解したで、先生。うちも自分の好きな事を担当させてもらうと嬉しいわ」
「沙和、君はようやく兵との信頼関係が築けてきた様だな。だか、君は凪と反対に必要以上に慎重になる時がある。慎重になるのは悪くないが、兵が君の指揮に不審を持つ時があるようだ。そうならない様に、兵に自分の意図を知らせておく必要がある。わかったか」
「はい!、難しいけど二人に遅れない様にがんばるの」
「今は、言えるのはその事ぐらいかな、今言った事を次の演習までに自分で解決方を考えてくれ。いいかな」
「「「はい!」」」

武官としては三人の指導だけでなく、曹操の筆頭軍師兼、曹操の将の一人として、全軍の鍛錬、部隊の編成に当たっていた。
華琳は拡大した自軍の演習を見て春蘭らを集め議論させた
「新兵と今までの居た兵に比べると大きく錬度に差がありますね、これは時間をかけてやるしかないでしょう」
「そうだな、今、華琳様の軍は四万を超えている、しかし、その内の半分以上は新規の兵だ、いま、全体の錬度が下がっているのは必然かもしれません」
「でも、その事は克服しなければならないわ、いきなり精兵を作るのは無理でも、兵の錬度を上げる事は今後の為にも、早急さが必要ね」
「それには、地道に演習の回数を増やすしか無いと思います」
「そうですね、ここばかりは急いでも仕方がありません、無理に上げる事は危険と思います」
「そうよね、それしか思いつかないわね。では、四日に一度だった演習をこれからは、演習を二日に一度に増やしましょう。その事をしっかり伝えないさい」

一方で、文官としても務めている秋蘭と如水は桂花らと共に、曹操の官僚として仕事を怠らなかった。
秋蘭は広大となった曹操の領内の治安維持を担当し、新領地の住民が安堵できる生活を守る様にした。
如水と桂花は領内の活性化に力をいれた、まずは、領内を豊かにし、税収を安定させ、人心を鎮め、その財政を確たるものにしようとした。
そして、曹操の考えた政策によって、交通路の整備拡大、領内の開発、資源の確保、又、商人を誘致し商業の活性化を行い、財源の拡大、軍備の充実を成功させ、府庫は満たされていった。

更に、如水は、軍事や政事に役立つ新技術を開発するため、私財を投じ、研究に力を入れていたり、各地の諜者からの情報を纏めていた。

その為、如水の働きはおそらく、華琳に並ぶ多忙さだった。その働きぶりを見ていた周囲は、二人体調を心配し無理やり休暇をとらせた。

その日一日休みとなった、華琳と如水は庭園にある東屋に入り、どうやってすごすか話し合った。

「どうしようかしら、いきなり休まされたけど、特にしたい事が無いのよね、何をしようかしら」
「難しく考える事も無いのでは無いか、それに君は詩を考えるのが好きだと聞いたが」
「私は、自分の人生を題材に詩に書きたいの、こんな状況じゃ、詩作が出来そうにないわ。貴方こそ何かしないの」
「そうだな、私は好きな事は、子供と遊ぶ事や、歌を詠むことくらいか。しかし、君の言う様に今は、歌を考える様な気が起きないな」
「そうなのよね…、そういえば、私って貴方が以前何をしていたのか詳しく聞いた事が無かったわ、いい機会だから教えてくれない」
「そういえば、話して無かったな。いいだろう、答えられる事は教えよう」
そう言って、如水は自分の故郷の話を華琳に聞かせた

「確か、生まれは倭の国の播磨だったかしら」
「ああ、ここより、遥か東の島国だ」
「そこでは、一体何をしていたの」
「その国は、私が生まれる前から、戦乱が続いていた。そして、私はある男に魅力を感じ、その男に会い、その下で働くようになった」
「今の、この大陸と余り変わらないのね、で、その男が天下を取ったの?」
「いいや、その男は志半ばで部下に殺された、余りにも苛烈すぎたのだろう。事実、何度も親類や部下に裏切られ、その度に敵を虐殺をした」
「よほど人徳が無かったのね、その男」
「そうだな、だが、私がその男を見込んだのは、その彼の強さだけでなく、彼が、戦乱を終わらせ新しい時代を創ると思ったからだ」
「新しい時代ね」
「ああ、彼は旧弊な社会を壊し、自分の力で世を変えようと思っていた気がする」
「それで、その男が死んだ後、貴方は如何したの」
「彼が死んだ時、その男の部下の下で働いていた。私は、男の主人が死んだとき、その男こそ、天下を取れると思った」
「それは何故?」
「よくはわからない、だが、その男には天運が憑いている様に思えた、それに死んだ主人には無い人に慕われる徳があった。だから私はその男に天下を盗らせる様にさまざまな策を授けた、そして彼の下に天下は平定された」
そこまで言った後、如水は恥ずかしそうに話を続けた。
「以前、君が言ったな。私が天下を取る気は無いのかと」
「ええ、覚えているわ。貴方、自分に天下は似合わないって、言っていたわね、それとどんな関係があるの?」
「天下を取った男が死んだ後、その男の子供はまだ幼かった。結果、その遺児の天下を守ろうとした者と、それを奪う者の二つに別れた」
「あなたは、どっちについたの」
「…私は何処にもつかなかった、二つの勢力が争っている間に第三の勢力として、天下を奪ってみようと考えた」
その言葉に、少し驚いた華琳だっだが、続きを急かした
「私の計算は完璧だった、少なくとも、成功すれば、そのどちらの勢力をも上回る兵力を持つ事が可能だっただろう。だが、私は失敗した、私には天運が無いのだろうとその時ようやくわかった」
「それで、その罪で国を追われたか、殺されたの?」
「いいや、特に咎めは受けなかったよ。奪った領地を全て勝者に渡し、それに息子が勝者の側について功を挙げていた。その事もあって、命は無事だったし、家も守れた」
「そう…、それであの時、そう答えたのね」
「結局、私は誰の下でしか役に立たないのだ、そして、それが私の生甲斐なのだろう。その為なら、私はどんな事でもしよう」
「それが、貴方の決めた生き方ね。ありがとう、いい話が聞けたわ。お茶を持ってこさせるから、今日はもう少しここでゆっくりしましょう」
「そうだな、少し喋りすぎた、お茶でも飲んで休もう。また、明日から忙しくなる」

そうして、華琳と如水の二人はゆったりと過ごしていった、未来を予想する事も、過去を懐かしむ事も忘れるように東屋に時は流れた


 
 

 
後書き
最後の如水の話は私の個人的主観です 
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