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妖精の十字架

作者:雨の日
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~ララバイ~

「エルザ!戦闘は俺がやるからお前はもっと魔力込めろ」

屋根からエルザに速度上昇を促す。エルザからは返事の代わりに四輪車の速度が上がった

「なぜ、僕を連れていく?」

「病院に連れて行ってあげるんだから感謝しなさいよ」

「違う、敵、なんだぞ?」

下からカゲの意気消沈した声が聞こえてきた

「そうか、人質だな!無駄だ、あの人は冷血だ、そんなこと出来るはずはない・・・」

暗い考え方だなぁ
もっと前向いて生きろよ・・・

「死にてぇなら殺すぞ?」

「ちょっとグレイ!?」

「生きる死ぬがすべてじゃねぇだろ?もっと前向いて生きろよ。お前ら全員さ」

良いこと言うね。グレイ
しかし、その時四輪車が大きく揺れた。ルーシィが身を躍らせてカゲにぶつかる

「ちょ!クルスー!こいつ変態よ!ころしちゃってぇ!」

「・・・なぜ俺に振る。そしてグレイの名言ちゃらにするな」

エルザもそろそろ限界か・・・。運転が荒くなっている。しかしまだまだ距離がある
と、その時

「ん!?あれって火だよな!?クルス!」

グレイは前を指さして俺に訪ねる

「ん?あぁナツだな」

相変わらず加減を知らないな、あいつは

「ナツー!」

「お!おせぇなみんな」

なるほど。ぐったりしているハッピーを見る限り全力で飛んだんだろう
レールの上には気を失っているエリゴール。しかしナツもかなりのダメージが見られる。なんせ服が破け裸マフラーになっているからだ。・・・下のズボンが破けないのは補正だろう

「お前、苦戦したのか?」

「んなわけないだろ!俺はいつでも余裕だぜ、兄ちゃん!」

・・・苦しい言い訳だな。ナツ

「嘘だ!エリゴールさんが、負けた!?」

カゲは二三歩よろけて四輪車に座り込んだ
エルザはSEプラグを外しておぼつかない足取りで歩いた

「エルザ、座ってろって」

「大丈夫クルス。もう戦闘もないだろうしな」

「あい!ナツが全部終わらせてくれたんです!」

ルーシィがエルザに肩を貸しながら歩みよる

「なにはともあれ、これでマスターの命は守られた。ナツ、本当によくやった」

ララバイ。その笛をマスターの定例会で吹き、ギルドマスターの命を奪うこと。それが今回の一連の騒動だったが、それも案外あっさり終わった
ナツがエリゴールを倒したことで実質的に鉄の森は壊滅だな
刹那――・・・

「ッハッハー!油断したなハエども!ララバイはここだー!」

その声に振りかえるとカゲが俺たちの乗ってきた魔道四輪車を奪い、ララバイを持って走らせていた

「あぁぁああ!?」

「急げ!運転はグレイに任せる!」

「了解!ってなんで俺!?」

「クルスは衝撃吸収でやっとなんです」

ハッピー、説明ありがとう。てかナツ、いやそうにするな。俺だって若干酔んだから

「いくぞ!クルス、加速頼む」

「エルザ、とにかく休んで!顔色悪いよ?」

俺は全員が四輪車に乗りこんだことを確認し、後ろから四輪車を豪快にぶん殴る

「いけぇええ!」

魔力を放出し、四輪車を突き飛ばす。俺は急いで柱をしがみつき、強い風を受けながら急いでクローバーに向かった





「よぉく聞いてくださいね?」

カゲがララバイの吹き口に口を近づける

「一曲だけじゃぞ?」

妖精の尻尾のマスター。マカロフはそれを促す

「・・・・・・・」

しかしカゲはなかなか吹かない

「・・・・・」

マスターもなにも言わずただじっとたたずんでいる
ちょうどその時俺たちがたどり着いた
ララバイを持つカゲを止めに入ろうとしたが、青い天馬マスターにさえぎられた

「もうちょっと待ってねぇん。今いいところなの」

「けど!」

「落ち着けルーシィ。マスターがそう簡単にやられるか?」

ルーシィは小さく首を振っておとなしくした

「無意味じゃ。そんなもの」

「!?」

心の内を見透かされたのか、カゲの顔には焦りが見える

「人は弱いからギルドがある。不安じゃから仲間がおる。じゃろ?」

「あ・・・ッ」

カゲの手から笛が落ちる。そして膝をついた

「まいり、ました」

そのとたん、俺以外のメンバーは走り出した

「マスター!!」

「今の言葉、目頭が熱く・・・!」

「おぉおおぉ!?なぜおぬしらが!?」

これにて一見落着、だな。後は評議員に任せて、俺らはそろそろ帰るかな
しかし、ララバイがそれを許さなかった

『かかかー。どいつもこいつもよわっちぃなぁ』

ん?誰だ?

『私みずから食うてやろう!』

足元から紫の煙が上がる
どうやらララバイが話しかけているようだ
そして徐々に大きくなって、巨大な化け物となった

『貴様らの魂を!!』

 
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