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Fate/magic girl-錬鉄の弓兵と魔法少女-

作者:セリカ
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A's編
  第七十一話 闇の書の秘密

 朝、学校に行く前に、昨夜戻ってきた使い魔の足に文を括りつけ、再び八神家に送る。

 用件はただ一つ、今夜会いたいという事だけ。

 プレシアも戻ってくれば闇の書の新しい情報も手に入る。
 その情報の連携も可能な限り早く行いたい。
 何かの情報が鍵となりシグナム達が忘れている事を思い出せる可能性もないわけではないのだから。

 そして、学校の途中でなのはとフェイトに合流する。

「おはよう。なのは、フェイト」
「「おはよう、士郎(君)」」
「もう体はいいのか?」
「うん。魔法が使えないのがちょっと不安だけど、身体の方はもうすっかり」
「リンカーコアの方は?」
「そっちもちゃんと治るって」

 フェイトの言葉を聞いて胸をなでおろす。

 そして、気になるのがフェイトの機嫌が何時にも増してよいのだ。
 なのはもそれに気になっているようで

「フェイトちゃん、何かあったの?」
「え? 何かって?」
「いつもより機嫌がいいけど、何かいい事があったのか?」

 シグナムとの戦いの際に不意打ちでリンカーコアを奪われたのだ。
 落ち込んでいると思ったのだが

「えっと、私が眼を覚ました時、母さんが手を握っていてくれて、アルフとリンディ母さんも傍にいてくれて、その、あの……うれしくて」

 頬を赤く染めながらうれしそうに語るフェイトがあまりにかわいらしいので、なのはと共に無意識のうちに頭を撫でていた。

「士郎、なのは、いきなりどうしたの?」

 俺となのはの行動にさらに顔を赤くするフェイト。

「だってなあ」
「だってねえ」

 なのはと顔を見合わせて頷き合いながら撫でるのをやめる。

「え、どういう意味?」
「秘密だ」
「秘密」

 俺となのはの言葉に不思議そうな顔をしている。

「ところで俺達の今後の動きはどうなるんだ?」

 話を誤魔化すついでに小声で真面目な話に切り替える。

「誤魔化されたような気もするけど、当面は呼び出しがあるまで、なのはと私はこっちで静かに暮らして、士郎は今まで通りこっちの世界での戦闘には協力してもらう形みたい」
「士郎君はやっぱり他の世界じゃダメなの?」
「うん、リンディ母さんもため息をついてた」

 やはり管理局の対等の協力者という形では他の世界の戦闘に参加するのは上が頷かないか。

「管理局側の方針は?」
「武装局員を増員して追跡調査の方をメインにするって言ってたよ」

 結局、シグナム達の動きを補足出来ていないのだから順当なところだろう。

 学校につき、鞄を降ろすとフェイトの席に集まる俺達。
 その中で、すずかの表情がいつもより少し暗い。
 そして、すずかが口にした事は

「入院?」
「はやてちゃんが?」

 はやての入院の事だった。

 すずかとはやては頻繁に会っているから連絡をしたのだろう。

「昨日の夕方に連絡があったの。
 そんなに具合は悪くないそうなんだけど、検査とか色々あってしばらくかかるって」
「そっか……じゃあ放課後に皆でお見舞いとか行く」
「いいの?」

 すずかがうれしそうな表情を浮かべる。
 いいアイデアだとアリサの事を褒めたいが、正直今はやめてほしかった。
 病院でシグナム達と遭遇してしまえば、はやてが闇の書の主という事がバレて大事になる。

「すずかの友達なんでしょ。
 紹介してくれるっていう話だったしさ。
 というか士郎の友達でもあるんでしょう?」
「ああ、だがお見舞いにあまり大人数というのもな」
「そう? どうせならにぎやかな方がいいんじゃない?」
「それはちょっとどうかと思うけど」

 なのはの意見に賛成だ。
 病人ににぎやかなお見舞いって駄目だろう。

 もっともはやての性格なら静かなよりも少し賑やかなぐらいがちょうどいいかもしれないが

「でも、いいと思うよ」
「ありがとう」

 とりあえず少し多いが五人でお見舞いに行くという事で決まり、お見舞いに行っても大丈夫かメールで連絡をとる事になった。
 その時

「もしお見舞いに行けなかったら、寂しいから写真も送りましょうよ」

 というアリサの提案で大きな紙を先生から貰い「早く良くなってね」というメッセージを書き、五人の集合写真を送った。

 その後、授業の合間の休み時間で屋上に行き、電話をかける。

「はい。シャマルです」
「士郎です。単刀直入に聞きます。
 すずかからのメールの写真で気がついてますか?」

 シャマルの息を呑むのが僅かに聞こえた。

「……はい。なのはちゃんとテスタロッサちゃんですよね」
「シャマル達はどうするつもりだ?」
「はやてちゃんと石田先生に私達の名前を出さないようにしてもらって、お見舞いの間は私達が外すつもりです」

 それならとりあえずは大丈夫か。
 あとは病院内で偶然出会う事がない事を願うばかりだな。

「わかった。
 ではまた夜に」
「はい」

 電話を切る。

 すずかにもシグナム達の名前を出さないように頼んでおかないとな。


 学校が終わり、翠屋でケーキと花屋で花を買って海鳴病院に向かう。

 はやての病室はすずかから聞いているので特に迷うことなく病院を進む。

「ここだね」

 八神はやてと書かれたネームを確認して、すずかがノックをする。

「はーい、どうぞ」

 はやての返事にドアを開け、病室に入る俺達。
 その時、視線を感じ横目で確認すると似合わないサングラスをつけたシャマルがいた。

 …………一体何をしているんだ?

 もしかしてあれで変装のつもりなのだろうか?
 サングラスをかけた金髪の女性が廊下の向こうから覗いているなど、逆に目立っているのだが……うん、見なかった事にしよう。

「「「「「こんにちは」」」」」
「こんにちは、いらっしゃい」
「お邪魔します。
 はやてちゃん、大丈夫」
「平気や、皆座って、座って」

 思いのほか元気そうなはやてに安心しながら他愛のない話をしながら、はやてを観察する。

 一旦は落ち着いているようだが、色々と手は打っておくか。

 あんまり遅くまでお邪魔するのもアレなので適当な時間で病室を後にする俺達。

 そんな時、病院の正面玄関からこちらに歩いて来るポニーテールにした女性。

 恐らく蒐集で無理をしているのだろう、俺達に気がつくのが遅れた。
 俺達に気がつき、眼を見開きレヴァンティンに手を伸ばそうとする。

 だが俺はそれを止めるように僅かに視線を強めて首を横に振る。

 俺ももはやここまでかと思ったが、今回は運が良かったらしい。

 なのは達は喋りながらシグナムに気がつくことなく正面玄関から出ていく。

 シグナム自身、気がつかれなかった事に驚きながらなのは達を見送り、俺は頷いて見せて海鳴病院を後にした。




side シグナム

 アレは一体何だったのだ?

 海鳴病院でのテスタロッサ達の遭遇。

 テスタロッサ達が話しながらとはいえ正面にいた私に気がつかないという事があるのだろうか?
 そんな事はないだろう。

 もしあるとすれば

「この腕輪か」

 主はやて達と共に行ったお風呂で衛宮から貰い受けたモノ。

 細かい事は今夜に衛宮に聞けばよいか。

 さて、緊張した顔をしていては主はやてに心配をかける。

 大きく息を吐き、緊張をほぐして主の部屋に入っていった。




side 士郎

 フェイトの看病で早めに帰ってきたプレシアと夕飯を摂り、食後の紅茶を飲みながら資料を確認する。

 ユーノおかげで予想以上の情報が転がり込んだな。

 要点をまとめると

 ・正式名称『夜天の魔導書』
 ・プログラムの改変により旅をする機能と破損データの自動修復機能が暴走し、転生機能と無限再生機能へと変化、それにあわせ破壊の力を振るうようになる。
 ・一定期間蒐集がないと持ち主の自身の魔力や資質を侵食し始めるし、完成したら持ち主の魔力を際限なく使わせる。
 ・闇の書が真の主だと認識した人間でないとシステムへの管理者権限を使用できず、プログラムの停止や改変が出来ないない。

 厄介機能ここに極まるだな。

 正直、俺が手が打てる方法としてはルールブレイカーにより、夜天の魔導書の契約破棄ぐらいだ。

 ルールブレイカーによりプログラムを改変前まで戻せる可能性がないわけではない。
 だが、科学的なこの世界の魔法にどこまで効果があるか微妙なところだ。

 それ以外の手というと夜天の魔導書を完成させ、はやてを真の主として暴走するより速く、暴走を止める事。

 これが対処法としては唯一だろう。
 もっともこれだけ厄介な魔導書だ。

 完成したからといってすんなりはやてが管理者権限を使用出来るか怪しいところでもある。

「どうかしら?」
「手はない事はない。
 だが絶対というには心もとないな」
「そうでしょうね」

 どちらにしろ

「今夜会う予定をしているから会って話し合うよ」
「私も行っていいかしら?」
「プレシアが?」
「ええ、私の眼で本当にフェイトを傷つけた者の仲間じゃないか確かめたいの」

 それなら大丈夫か、シグナム達に会えば不意打ちで狙うようなタイプじゃない事はわかるだろうし。

 それとは別に用意はいるか。

「プレシア、魔法はどれくらい使える?」
「デバイスもないし、魔力自体も大半を封じられているから、フォトンランサーぐらいが精一杯ね。
 デバイスがあればもう少し使えるのでしょうけど」

 フォトンランサー、フェイトが使っていた魔力弾か。
 さすがにデバイスは用意できないが、代わりのモノなら何とかなるか。

「―――投影、開始(トレース・オン)

 投影するのはアゾット剣。

「これで魔法の補助が出来るか試してくれ」
「これは?」
「アゾット剣。
 魔力を増幅し、魔術の補助・強化を目的とする礼装だ」

 興味深そうにアゾット剣を眺めた後、アゾット剣に魔力を流す。
 プレシアの周りに魔力弾が浮かぶ。

「デバイスほどではないけどいい感じね」
「ならそれを持っていてくれ。
 シグナム達が刃を向ける心配はないだろうが、仮面の奴らの件もあるからな」
「ええ」

 しかしアゾット剣でもそれなりに効果があるか。

 魔術回路とリンカーコア、魔力の源は違えど似ているところはあるという事か。
 この件がおわったら本格的に調べてみるか。

「そろそろ出るとしよう」
「わかったわ」

 紅茶を飲みほし、プレシアと共に待ち合せも場所に向かう。 
 

 
後書き
今週も無事に更新。

まだまだ暑さが続き、軽く夏バテモードです。

早く涼しくならないかな。

それではまた来週お会いしましょう。

ではでは 
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