転生者拾いました。

作者自身この作品がわからなくなってきました。 

　立ちはだかるゴーレムを切り裂き敵ににじり寄る。

「どういうこと……。」
「……。」

　無言で剣を持つカズヤはいつもとは様子が違った。目の光は消え、全身から殺気を漲らせ空間が黒く澱んで見える。
　そのさまは見る者を恐れさせる死神のようであった。

「もう、だれも死なせない。死なせるものか！」
「くっ！」

　一瞬で敵との間合いを詰め切りかかるが、しかし敵がバックステップをとり短剣でオレの剣をパリィする。
　だが、オレの剣は弾かれても攻撃は終わらない。剣が体ごと弾かれたせいで足があがり鳩尾にクリティカルヒット。敵は打ち上げられ背後の岩に激突。止めを刺すべく無理やり体勢を立て直し、手に炎の矢を精製し、発射。
　しかし敵はそれを見切り土系魔法で迎撃する。爆煙に遮られるも突撃する。だが、そこに敵は居らず剣は岩を粉々にした。

「くっ！ゴーレム！」

　セリナとエリザを苦しめていたゴーレムが戒めを解き、ぐったりした彼女たちを放ってカズヤに向かった。
　しかし先と同じくゴーレムの一体はバターのように斬られたが、もう一体が自爆した。

「その力は危険。目を覚ましなさい。」
「うるさい。」
「その力はあなたを滅ぼしてしまいます。死ぬ気ですか。」
「うるさい！」

　いつの間にか敵は窪地の中の巨石の近くにいた。爆発に紛れて行ったのだろう。

「逃がさ、あがっ！？」

　追いかけようとしたら急に心臓が痛んだ。ついでひざも突いてしまう。

「か、カズヤ？」
「いかがなさいました！」

　近くで倒れていたセリナとエリザが寄ってきた。セリナがオレの顔に手を当て、エリザがオレの背をさする。

「大丈夫、だ。だから奴らを……うっ！」
「そんな！？カズヤを置いてなんて！」
「世界がかかっているんだ。オレの命に代えても守る必要がある……。」
「でも……。」
「……セリナさん、行きましょう。」
「エリザ？」
「早くすればカズヤ様を助けられる。ここから狙います。」
「私は……。」

　エリザが背から離れ淵に立ち、ヴェルデを構える。

「カズヤ様を愛するのは同じ。なら、手伝ってくれますね？」

　するとセリナも立ちエリザと同様に手を突き出す。

「待っていて、すぐ終わらせる。」

　詠唱が始まると彼女たちを中心に魔力の渦が起き始めた。この世界に生まれてからというもの、ここまで大きな魔力の渦は見たことがない。
　ヴェルテの先には眩い光源が、セリナの手には雷光がきらめき、発射準備の段階でオレの危機管理部門が警鐘を鳴らしまくっている。

「Ｄｏｎｎｅｒ・Ｍａｇｉｅｒ！Ｇｏｔｔ・Ｄｏｎｎｅｒ（神雷）！」
「Ｌｉｃｈｔ・Ｍａｇｉｅｒ！Ｌｉｇｈｔ－Ｂｅｗｅｉｓ（光爆）！」

　意識を手放す直前膨大な魔力波を受けて吹き飛ばされ、岩に頭をぶつけて完全に意識を失った。
　しかし魔法はしっかり敵に向かっていった。 

立ちはだかる門、閉じ込めるは愛
威信を持った者のいない城は儚く

次回　関所