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恋姫~如水伝~

作者:ツカ
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十三話

曹操軍本陣

眼前には黄巾党の砦がある。十日前の報告とは違い、この乱を象徴するかの様な威容を見せている。

華琳は一同を集め軍議を開いた。
「報告では黄巾党の数は十五万程の事です、対するこちらは官軍と諸侯の軍、義勇軍を合わせて十二万程。しかも官軍は互いに反目しあい動く事を恐れています。諸侯の軍も似たようなものです、正直言って頼もしい味方とは思えません」
「つまり、頼れるのは自分達だけと言う事か」
「そうですね。ですが、言い換えれば、この戦いで私達だけが活躍する事が出来る。曹操の名を大陸中に広める機会かと」
「そうね、そうなれば、我が軍の強さをここに居る一同が知る事になるわ。何か意見は」
「この状況では、策を施すより、余計な事を考えず、一塊にになって突撃を仕掛けるのがいいと思う。黄巾党側は多勢に驕っている、今仕掛ければ浮き足立つだろう。そうなれば他の味方も黙って見ている事も無いと思う」
「そうね、功を取られまいと私達に続くでしょうね。そうなればこの戦いに勝てるわ。その案でいきましょう。問題は軍の編成だけど」
「私は春蘭を先鋒の将に推したい。それだけの任に応ええるのは、春蘭しかいないでしょう」
「わたしも如水の意見に同意です。この役、姉者にしか務まりません」
「そう、わかったわ。春蘭、先鋒の将としてわが軍の強さを知らしめなさい、それから秋蘭、春蘭と共に先鋒を務めなさい」
「了解しました、必ずや華琳様の期待に答えて見せます」
「我ら姉妹が華琳様の名を世に広めて見せましょう」
「頼んだわよ二人共。如水は後方にて二人を援護しなさい。では解散」

軍議が終わり急ぎ軍を整える春蘭、秋蘭、如水の三人。それを見ながら華琳はいよいよ自身の名を天下に披露する時が来た事を思った。
「黄巾党を残らず殲滅する、私に続け!!」
「「「「「おーっ!!」」」」」
春蘭の号令の下曹操軍二万七千が黄巾党に一斉に突撃した。
如水の予想どうり、黄巾党は浮き足立ち、押し切られていった。それでも、突き進む曹操軍を包囲するように黄巾の軍は背後に回り込もうとしたが、後続の如水の軍がそれを許さなかった。
「敵に後ろをとらせるな、先陣の者達が突き進めるよう、私達が後ろを守れ」
「「「おーっ!!」」」
「前に進め、お前達の後ろは仲間が守ってくれる、仲間を信じ、敵を打ち崩せ」
「「「「おーっ!!」」」」」
黄巾党の陣を次々と打ち崩して行く曹操軍を見て、傍観していた官軍と諸侯の軍が功を盗られまいと次々に動き始めた。
「このままでは、曹操に手柄を独り占めされる、そうなれば、我々は叱責をうけるぞ」
「これ以上、曹操軍ばかりに、手柄を取らせるな。我々も進むぞ」
官軍の将は曹操に手柄を独占される事を恐れ、急いで進軍した。
その動きを見た黄巾党は一気に崩れ始め、陣形が崩壊し始めた。
それを機と思い、華琳は声を張り上げた
「敵は崩れたぞ、あと一息だ。皆、残りの敵を一掃せよ」
「「「「「「「おー!!」」」」」」」
華琳の命の下、曹操軍は更に士気を高め、果敢に討ちかかった。
その後、黄巾党は総崩れとなり、逃げて行く者も処断されて行った。

戦闘が終わった曹操軍は砦近くで陣を張りそこで休息した。

如水は負傷者の治療に凪達に自分の教えた治療を施すよう指示し、自身は今回の戦闘の行賞を決めるための草案を考えた。
如水は草案を纏めた終えた所、凪の報告を聞いた、負傷者の治療が終わり後は回復を待つだけだと事だった。

如水は華琳に報告すべく、華琳のいる天蓋に入った。

だが、中では華琳が苛立ちを顕にしており、春蘭、秋蘭、桂花らは怯えたように黙っていた。如水はおそらく先ほど来たと言う官軍の使者のせいだろうと察したが、報告するべき事は伝えた。
「華琳、負傷者の治療は終わった、後は休息すれば回復するだろう、それと行賞についても纏めておいた、目を通してくれ」
「わかったわ、ありがとう」
「後、官軍の使者の言葉だが、そこまで気にする必要は無いだろう」
その言葉にを聞き、その場に居た華琳以外の全員が驚き、その事を言われた華琳は怒鳴った。
「うるさいわね!。私、あんな屈辱受けたの生まれて初めてよ、よくもあれだけ偉そうに喋れるものだわ」
「そんな奴は何処にでも居る、そういった類を気に留めるのはやめておいた方がいい、それより、張角の居場所を掴んだぞ」
「本当!」
その言葉を聞き、機嫌を戻した華琳。更に、春蘭らも気を引き締めた。
「逃げた連中の後を追わせた、どうやら今回の敗戦がよほど響いたようだな。かなりの数が散って行った様だ、それに連中の食糧は底を尽き始めた様だ、動くなら今かもしれん」
「そう…、張角を討ち取ればこの乱も終わる。いま動かせる軍は何処?」
「負傷者が一番少ないのは、私の所の凪と君の護衛軍だが」
「なら、如水、直ぐに凪を連れてそこに向かいなさい。私も直ぐそこに、向かうわ。春蘭、秋蘭、桂花ここは任せたわよ」
留守を春蘭らに任せ、華琳は如水と共に、張角の元に向かった。

張角の所に向かう最中、華琳は如水に話しかけた。
「さっきは怒鳴ってわるかったわ」
「別に、私は気にしていない」
「そう、ありがとう」
「それより、張角についてだが、君は、張角をどうするつもりだ」
「どういう事」
「この人数では、連中を取り逃がすぞ」
「わかっているわ、これ以上連中を刺激させたくないの」
「仲間に加える気か」
「使えそうならね。だって、これだけの組織を短時間で作ったのよ。殺すよりこちら側に懐柔した方がいいわ」
「それは、確かにそうだが。そう、上手くいくかな」
「張角にもう逃げ場はないわ、でも、今なら私が救ってあげれらる。それを教えれば、張角はこちらの意のままになるわ」
「そうか、君がそこまで考えていえうなら、私も異論は無い。ただ、張角の首を見せなければ、世間は収まらんし、なにより、君の功績が霞む。その点は如何する気だ」
「その点は抜かりないわ、なにせ張角の顔を知るのは黄巾党の中でも一部だけ、貴方の情報網でも人相を掴めていないなら、殆どの者が知らないわよ」
「そこまで言ってくれるのは嬉しいが、替え玉でも使うのか」
「そんなところ、素性が定かでなくて、足がつかない、人相が悪いのが一番いいのだけど」
「なら、五胡が一番いいだろう。丁度、捕虜の中に羌族が四、五人混じっている」
「なら、そいつらを張角と黄巾党の首謀者って事にして、晒せばいいわ」
「わかった、真桜と沙和に連絡してそれらしい格好に着替えさよう。良いか」
「ええ、これだけの乱を起こした者がみすぼらしい格好だと、示しがつかないわ、上手くやるように指示しなさい」
「了解した」
そう言って、如水は真桜と沙和に対し捕虜の羌族を張角に仕立てるよう書をしたためた。更に、この事は自分達が戻るまで誰にも口外するなとも書き、書を送らせた。
「これで、帰陣する頃には、張角の替りが出来るだろう。急いで、本物を捕まえよう」
「そうね、向こうを逃がしたら、元も子も無くなるわ」

その後、張角ら捕らえたとの凪からの報せを受けた。二人は張角、張宝、張梁と対面し、命を助ける代わり自分の為に働くよう命じた。殺されると思っていた三人は意外な救いに感謝し、ぜひ、役に立ちたいと申し出てきた。

帰陣した曹操は、如水の指示通りに真桜と沙和が用意した替え玉を、張角と名乗らせ朝廷に差し出した。

朝廷は曹操の功を称え、曹操を西園八校尉の一つ典軍校尉に任じた。

これで黄巾の乱は終わったが、朝廷の権威は落ち、対して諸侯は力を付けた。如水は曹操の文官と武官としての仕事、更に、凪、真桜、沙和の指導に忙殺されながら、これからの動きに注意を払っていた。権威が衰えたとはいえ、まだ、利用価値のある漢王朝を誰が如何、利用するのか。
如水は次の動乱を予想しながら、それを統べる力を曹操に持たせる準備を行っていった。

 
 

 
後書き
最後の方ぐだぐだ… 
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