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遊戯王GX-音速の機械戦士-

作者:蓮夜
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−学園祭−

 
前書き
暁にて初投稿。 

 
 全く、病弱でも無いのにすっかり保健室に慣れてしまった……
なんとなく嫌な気分になり、つい肩を落としてため息をついた。

 ――高田との闇のデュエルから1日がたった今日。
高田が闇のデュエルで敗れた影響により、デュエルアカデミアを襲った人形が消え去ったのか、高田とのデュエルで気絶していた俺は駆けつけた十代や万丈目、クロノス教諭に救助された。

 高田に敗れ人質になっていた明日香、三沢、翔、亮は目立った外傷も無く、体に異常も無いとのことで、もうすでに保健室からは解放されていた。
喜ばしい限りだ。

 次は高田だが……もう、このデュエルアカデミアにはいない。
俺と同じく、気絶していたところを駆けつけた十代たちに保護された高田は、
またも俺と同じく保健室に運び込まれたのだが……闇のデュエルの影響だろうか、傷だらけの身体といいやせ細った身体といい、このデュエルアカデミアの医療技術では治しようが無かったため、本土に強制送還されたのだ。
……別に、ここの医療技術が悪いわけじゃない。
ここの医療技術が悪いならば、俺はとっくの昔に死んでいるか、高田と同じく本土へ強制送還されているだろう。
……つまり、高田の怪我はそれほどの怪我だったということだ。

 ――思えば、高田もただの被害者だったのかもしれない。
廃寮から離れた時、制服は元々の青色に戻り、デッキも【インフェルニティ】から俺との昇格デュエルにて使った【カオス・ネクロマンサー】に戻っていたという。
廃寮に潜む黒い泡に操られ、過酷な闇のデュエルに身を投じられながらも、最後には自らの手で地縛神を操って、黒い泡の温床たる廃寮を破壊した……というのは考えすぎか。
とにかく、今度会った時には、俺はあいつに謝らなければならない……原因は、俺なのだから。

 そして、高田がセブンスターズとして現れたことで、また一つ疑問が生まれた。
すなわち、『何故高田はセブンスターズとなったのか』
昇格デュエルで高田が島を出て行った(と、思われた)時、目撃者であるオシリス・レッドの寮長、大徳寺先生は、『万丈目とは別の方向に船で向かっていった』と言ったらしい。
だが、肝心の万丈目は「知らん」とのことだったので、これは妙だと、十代たちは大徳寺先生の部屋に行ったのだが……部屋は、もぬけの空だったそうだ。
大徳寺先生の失踪。
これが何を意味するかは、まだ分からなかった。


 最後になってしまったが、俺――黒崎遊矢のことも話そうか。
結論から言うと、無事だ。
もう何度目かに渡る闇のデュエルにて、すっかり耐性がついてしまったのか、もちろん五体満足とはいかないものの、松葉杖を使えば歩けるようにはなっていた。
鮎川先生が言うには、まだ休んでいて欲しいらしいが、今日は許してくれた。

なんて言ったって今日は――学園祭なのだから。



「あ、遊矢様!」

 保健室から出て来た俺を元気良く出迎えてくれた声は、幼なじみ――早乙女レイのものだった。
どうやら、俺を驚かそうと学園祭の前日に来ていたようだったが、高田の来襲によりそのドッキリは失敗したようだ。

「……様は止めろ、レイ」

 いつだったからかは忘れたが、すっかり恒例の挨拶を交えて俺たちは歩きだした。
それとなく、俺の身体を支えてくれるのがありがたい。

 七星門の鍵の守護者、加えて松葉杖の俺がオベリスク・ブルーの喫茶店を手伝えるはずも無く、とりあえず俺たちはオシリス・レッドの出し物に向かった。

「コスプレデュエル大会って、どんなことやるのかな?」


「……まったく予想がつかないな」

 何故かと言われれば、なんて事はない。
ただ、どんなことをやっているのか予想がつかないからだ。
慣れぬ松葉杖での、学園から遠いオシリス・レッドへの移動は大変だったが、レイのおかげでなんとかたどり着くことが出来た。

「……っと。ありがとな、レイ」

「これぐらい、何ともないよ! ……それよりさ、やってるみたいだよ、コスプレデュエル!」

 朗らかに笑うレイが指差す先には、多種多様なデュエルモンスターズのモンスターたちがいた。
正確には、デュエルモンスターズのモンスターたちの格好をした生徒、だが、皆楽しそうだ。
中央のデュエル場では、何故かコスプレをしていない十代と、モンスターそっくりのブラック・マジシャン・ガールがデュエルをしていた。

 ……あんなそっくりな生徒、このアカデミアにいたかな……?

「……まあ良いか。レイ、俺たちもせっかくだからコスプレしようぜ?」

「うん!」


 コスプレ用の衣装は寮にあるらしいので、(若干の殺気を感じながら)俺たちはオシリス・レッド寮に行くと、コスプレせずに壁に寄りかかっている明日香がいた。

「よ、明日香」

「遊矢!? 体は大丈夫なの?」

 俺の姿を見るなり、明日香は俺の元に駆け寄りつつ、身を案じてくれた。
その後に俺の身体を支えるレイを見て、若干眉をひそめたものの、すぐに心配そうな表情に戻った。

「見ての通りさ。……明日香は、コスプレしないのか?」

松葉杖を指して、『見ての通り』だということを示し、気になることを聞いた。

「わ、私はこういうのは……その……恥ずかしくて……」

「じゃ、二人でコスプレして来よ、遊矢様!」

 レイが明日香と火花を散らしながらも俺の腕をとり、向かおうとするが……

「様は止めろ……じゃなくて、やっぱ無理だ、レイ。松葉杖をついたモンスターなんていないっての」

 失念していたが、俺は今日松葉杖。
どうやってもコスプレなどは出来はしなかった。
それはレイにもすぐ分かったようで、(こう見えて頭は良い)少し残念そうな表情をしたが、すぐにいつもの明るい表情に戻って笑った。

「じゃ、私だけでも着替えて来るね!」

そう言い残し、レイがオシリス・レッド寮の階段を登って行くと……

「……ま、待ちなさい!」

……明日香が追いかけていった。
コスプレしないんじゃ無かったのか?……まあ、良いけどさ。


それからしばらく十代VSブラック・マジシャン・ガールを眺めていると、階段を降りてくる音が響いた。

「遊矢様!」

……察するに、先に来たのはレイのようだ。

「様は止めろ……って、やっぱりお前はそれか」

「うん! このカードは私自身みたいなものだからね!」

レイがコスプレをする事にしたモンスターは、当然、《恋する乙女》だった。
白いレースのドレスが、普段ボーイッシュなレイにはいつもと違う雰囲気を醸し出している。

「似合ってるな、レイ」

「えへへ……」

 ……はて、そういや何か忘れているような……?

「ゆ、ゆう……」

 消え入るような声に反応して横を見ると……明日香が、いた。
当然コスプレしているのだが、そのコスプレは明日香の主力モンスター、《サイバー・エンジェル―弁天―》だった。
和服と全身タイツを一体化させたような、いつもの制服とは違う服に身を包み、恥ずかしそうに体を隠す明日香は、その……可愛

「ねえ遊矢様! 一緒にデュエルしよ!」

 明日香に対する俺の思考を中断させ、レイが俺の手を引っ張って来た。

「お、おい! ちょっと待てレイ! 俺は今デュエルは……」

「大丈夫大丈夫! 私がドローするからさ!」

 松葉杖である俺は、引っ張ってくるレイに抵抗出来ずにデュエル場に入ってしまった。
ちょうど十代とブラック・マジシャン・ガールのデュエルが終わり、次の対戦相手を探している時に、だ。

『デュエル場に現れたのは、オベリスク・ブルーの黒崎遊矢率いる三人組ッス! 誰かあのリア充を爆発させるデュエリストはいないッスかーッ!』

 すっかり司会者役が板についた翔が、マイクパフォーマンスで生徒たちに呼びかけ、その横でXYZ―ドラゴンキャノンに扮した万丈目がこちらを睨んでいるのを見て、もう逃げられないのだと悟る。
……ん? 三人?

「ドローは私がするわ……別にレイちゃんに対抗してるわけじゃないけど!」

 横を見れば、サイバー・エンジェル―弁天―……もとい、明日香がデュエルディスクを俺の腕に付けていた。
確かに、レイじゃ身長のぶんドローするのは難しいかも知れないな……

「よし、頼んだ」

「ええ、任せて」

 明日香はいつも通り、力強く頷いてくれた。
レイは明日香とは逆の位置につき、変わらず俺を支えてくれる。


 ……たまには、こんなのも良いかも知れないな。
俺がそう思い始めた時、一人のモンスターが俺たちの前へと現れた。
確か、あのモンスターは……

「僕の名前は《魔法剣士ネオ》! 僕がお相手しよう!」

 そうそう、魔法剣士ネオだ。

『《魔法剣士ネオ》って何スか? XYZ―ドラゴンキャノンさん』

『魔法剣士ネオというのは、最初期の通常モンスターだ。
攻撃力は1700とまあまあだから、充分現役でも使えるがな』
翔と万丈目の会話が終わる頃には、俺たちと向こうの魔法剣士ネオの準備が完了していた。

「さて、黒崎遊矢くん! このデュエルで君が明日香に相応しいか確かめてあげよう!」

「……なんだそりゃ?」

 明日香に相応しいか確かめる?
俺が首を捻っている間に、横の明日香がハッとした表情となり、弱々しく問いかけた。

「まさか……兄さ……」

「おおっと! それ以上はデュエルで聞き出してみたまえ!」

 明日香の声を、魔法剣士ネオは剣を振り回しながら遮った。
……なんだか良く分からないが……

「「デュエル!」」

遊矢+明日香+レイ
LP4000

魔法剣士ネオ
LP4000


俺のデュエルディスクに『先攻』と表示された。
おお、これは幸先が……

『先攻は、僕の独断で魔法剣士ネオ!』

「ちょっと待てぇッ!」

 俺が先攻って珍しいんだよ!
先攻とるときって大概相手が亮の時だけなんだよ!
あいつが相手の場合後攻の方が良いんだよ!

『黙れッス』

 ……翔が怖い……

「それではお言葉に甘えて、僕のターン、ドロー!」

 俺の必死の抵抗も虚しく、魔法剣士ネオが先攻をとった。

「僕は、僕自身を召喚!」

魔法剣士ネオ
ATK1700
DFF1000

僕自身、ねぇ……

「カードを一枚伏せ、ターンエンドだ」

「楽しんで……「楽しんで勝たせてもらうわ!」……先に言うな、レイ。俺のターン、ドロー!」

 代わりに明日香が引き、引いたカードを手札に加える。

「俺は《ガントレット・ウォリアー》を守備表示で召喚!」


ガントレット・ウォリアー
ATK500
DFF1600

 明日香がデュエルディスクにセットしたことで現れる、大きなガントレットをつけた機械戦士が守備の態勢をとる。

「更に、カードを一枚伏せてターンエンド!」

「僕のターン、ドロー!」

魔法剣士ネオは、ドローしたカードを引き、ニヤリと笑って懐から何かを取り出した。

「とうっ!」

そしてそのまま地面に叩きつけ、叩きつけられたところからもうもうと煙が上がる。

「――煙幕か!?」

外と言えども、一瞬視界が真っ白に染まってしまう。
何考えてるんだ……!?

「異空間の旅から帰還した僕は、新たな力を手に入れた! ……その名は……」

魔法剣士ネオの声が響くと共に、風が吹いて煙がはれる。
そして、俺たちの前にいたのは。

「……《魔法剣士トランス》ッ!」

魔法剣士トランス
ATK2600
DFF200

二体の魔法剣士トランスだった。
煙が上がった瞬間に、着替えとアドバンス召喚を同時に行ったようだ。

「す、凄い……」

うん、確かにレイの言う通り凄い。
が。
何の意味があるんだ……!?

「進化した僕の力を見せよう! 魔法剣士トランスで、ガントレット・ウォリアーに攻撃! マジェスティ・スラッシュ!」


魔法剣士トランスの魔法を纏った剣には、ガントレット・ウォリアーの守備力では遠く及ばない。

「やらせはしない! リバースカード、オープン! 《くず鉄のかかし》!」

久々に現れたくず鉄のかかしがガントレット・ウォリアーを守り、再びセットされる。

「くっ……ターンエンドだ」

「俺たちのターン、ドロー!」

明日香が引いたカードを確認し、高々とカード名を宣言する。

「俺は《ハイパー・シンクロン》を召喚!」


青色のボディを持ち、1600というまあまあの攻撃力を持ったシンクロンが現れる。
……まあ、デメリット効果付きだが……

「レベル3のガントレット・ウォリアーに、レベル4のハイパー・シンクロンをチューニング!」

《シンクロ召喚》
先日、テレビにて大々的に発表され、次なるパックにて既に発売が決定したようだ。
だが、テスターとして頼まれた一人の筈の俺は、セブンスターズやら入院やらでイマイチ宣伝出来ていなかったので、若干の心苦しさがあった。
だが、ここにはデュエルアカデミアの生徒や外来の人もいる。
つまり、チャンスだ……!

「集いし願いが、新たに輝く星となる。光差す道となれ! シンクロ召喚! 現れろ! 《パワーツール・ドラゴン》!」

パワーツール・ドラゴン
ATK2300
DFF2500

出したのは、俺が始めて見た黄色い機械龍。
狙い通りと言ったところか、観客から「これがシンクロ召喚……」という声が聞こえてくる。

「……シンクロ召喚……話には聞いていたけれど、僕が倒れている間にこんなものが……だけど、シンクロ召喚をしても攻撃力は2300。僕には適わないよ!」

念のため、僕=魔法剣士トランスだろう。多分……

「パワーツール・ドラゴンの効果を発動! デッキから装備魔法を三枚選び、相手がその中からランダムに選択したカードを手札に加える。俺が選択するのは、《ダブルツールD&C》、《デーモンの斧》、《団結の力》。パワー・サーチ!」


「……真ん中にしておくよ」

魔法剣士トランスが選んだ装備魔法カードを手札に加え、そのままセットした。

「手札に加えた《ダブルツールD&C》を、パワーツール・ドラゴンに装備する!」

パワーツール・ドラゴン
ATK2300→3300

ダブルツールD&C。
自分のターンと相手のターンで効果が変わるという扱いにくさがあるものの、どちらも充分に強力だ。

「パワーツール・ドラゴンで、魔法剣士トランスを攻撃! クラフティ・ブレイク!」

パワーツール・ドラゴンのドリルが魔法剣士トランスを貫く。

「くっ……まだまだ!」

魔法剣士トランス
LP4000→3300

「これで俺はターンエンド」

「僕のターン、ドロー!
……リバースカード、オープン! 《凡人の施し》! 手札の《エルフの剣士》を除外し、二枚ドローする!」

凡人の施しと聞いて、つい身構えてしまった俺は悪くない。

「……よし。《大嵐》を発動し、君のカードを破壊する!」

サイクロンより遥かに強力な竜巻が、俺のダブルツールD&Cとくず鉄のかかしを破壊した。

「そして、永続魔法《絶対魔法禁止区域》を発動し、通常魔法《思い出のブランコ》を発動! 魔法剣士トランスを蘇生する!」

魔法剣士トランス
ATK2600
DEF200

通常モンスターの専用蘇生カード、《思い出のブランコ》により、魔法剣士トランスが再び現れる。


「更に魔法剣士ネオを召喚するよ!」

魔法剣士ネオ
ATK1700
DEF1000

魔法剣士トランスのフィールドに、魔法剣士が二体並び立ち、こちらに向かって剣を向けた。
……これはまずい。

「バトル! 魔法剣士トランスでパワーツール・ドラゴンを攻撃! マジェスティ・スラッシュ!」

くず鉄のかかしとダブルツールD&Cが破壊されてしまった今、防ぐ手段は無く、パワーツール・ドラゴンは呆気なく破壊されてしまった。

遊矢LP4000→3700

「続いて、魔法剣士ネオでダイレクトアタック! マジェスタ・スラッシュ!」

「ぐああっ!」

遊矢LP3700→2000

あっという間に逆転されるライフポイント。
この魔法剣士トランス、強い……!

「僕はこれでターンエンド。本来、思い出のブランコの効果で魔法剣士トランスは破壊されるけど、絶対魔法禁止区域の効果により破壊されない」

絶対魔法禁止区域は、フィールドにいる通常モンスターに魔法の効果を受けさせなくするカード。
よって、思い出のブランコの自壊効果が適用されず、完全蘇生となる厄介なコンボだ。

「俺たちのターン、ドロー!」

相手がいくら強くても、これは闇のデュエルではない。
ならば、楽しんで勝たせてもらうだけだ。

「俺は速攻魔法《手札断殺》を発動! お互いに手札を二枚捨て、二枚ドローする!」

さあて、この後はもちろん……

「墓地に送った二枚の《リミッター・ブレイク》の効果を発動! デッキから守備表示で現れろ! マイフェイバリットカード、《スピード・ウォリアー》!」

スピード・ウォリアー
ATK900
DEF400


「そして、自分のフィールドに二体の守備表示モンスターがいるため、《バックアップ・ウォリアー》を特殊召喚!」

バックアップ・ウォリアー
ATK2100
DEF0

重火器を持った機械戦士が現れる。
シンクロ召喚が出たことで、このバックアップ・ウォリアーが特殊召喚されたターンはシンクロ召喚が出来ない、という効果が追加されてしまったが、まだまだ俺のデッキには必要なカードだ。

「更に《団結の力》をバックアップ・ウォリアーに装備する!」

バックアップ・ウォリアー
ATK2100→4500
DEF0→2100

機械戦士、バックアップ・ウォリアーの召喚方法により、俺のフィールドのモンスターは三体。
団結の力の効果を最大限に生かせる!

「バトル! バックアップ・ウォリアーで、魔法剣士トランスに攻撃! サポート・アタック!」

バックアップ・ウォリアーの両手に持った銃による攻撃に、魔法剣士トランスは撃ち抜かれた。

「ぐうっ!」

魔法剣士トランスLP3300→1400

「カードを二枚伏せ、ターンエンドだ!」

「くっ……僕のターン、ドロー!」

団結の力を使った攻撃により大幅にライフを削られた魔法剣士トランスは、それでも笑みを崩さずにカードを引いた。

「僕は《チェイン・スラッシャー》を召喚!」

チェイン・スラッシャー
ATK1000
DEF600

チェイン・スラッシャー……確か、墓地に同名カードがある時、同名カードの数だけ連続攻撃ができるカード……だったか。
相性が良いとは言えないが、何で入ってるんだ?
……魔法剣士ネオに似てるからか?

「墓地にチェイン・スラッシャーは二枚。よって、三回の攻撃が可能となる……手札断殺、使わせてもらったよ」

「くっ……だが、バックアップ・ウォリアーは突破されない!」

ああ、これ凄いフラグ……

「もちろんさ。チェイン・スラッシャーを対象に、《渾身の一撃》を発動! チェイン・スラッシャーはこのターン戦闘では破壊されず、チェイン・スラッシャーと戦闘した相手モンスターは破壊される!」


……つまり、俺のフィールドは全滅する。

「更に二枚目の《思い出のブランコ》を発動! 蘇れ、我が分身!」

魔法剣士トランス
ATK2600
DEF200

またも厄介な完全蘇生により、再び魔法剣士トランスが現れる。

「さあ行くよ! チェイン・スラッシャーで、バックアップ・ウォリアーにスピード・ウォリアー二体に攻撃! 
マジェスティック・スラッシャー!」

チェイン・スラッシャーが放つ鎖に、スピード・ウォリアー二体は呆気なく破壊され、バックアップ・ウォリアーは耐えたものの、楔のように打ち込まれたのか、すぐに倒れ伏した。

「フィニッシュだ! 魔法剣士トランスで、遊矢くんにダイレクトアタック! マジェスティ・スラッシュ!」

「手札から《速攻のかかし》を捨て、バトルフェイズを終了させる!」

手札から機械で出来たかかしが飛び出て、魔法剣士トランスの前に出て俺を守った。
……あ、斬られた。

「危ない危ない……」

「フフ、そうでなくてはね……これで僕はターンエンドだ!」

先程も言ったが、思い出のブランコで蘇生した魔法剣士トランスは、絶対魔法禁止区域の為に破壊されない。

「ふふ……」

なんだか、久しぶりに普通のデュエルをした気がするが……やはり、デュエルというのは元来楽しいもの。
どんな時でも、楽しまなくちゃな……!

「俺たちのターン、ドロー!」


……良し、行ける!

「俺は《ラピッド・ウォリアー》を召喚!」

ラピッド・ウォリアー
ATK1200
DEF200

「俺が通常召喚に成功したことにより、《ワンショット・ブースター》を特殊召喚!」

ワンショット・ブースター
ATK0
DEF0

「フッ。何を考えているかは知らないけど、その二体じゃ僕らには適わないよ!」

「そりゃ、まだまだこれからだからな! リバースカード、オープン! 《リビングデットの呼び声》を発動! 蘇れ、《ハイパー・シンクロン》!」

ハイパー・シンクロン
ATK1600
DEF800

「パワーツール・ドラゴンじゃない……!?」

「今回のキーカードはこいつだからな……リバースカード、オープン! 《デシーブ・シンクロ》!」

効果処理はややこしいが、一度しか言わないから良く聞いておくように!


「デシーブ・シンクロの効果は、自分のエクストラデッキに存在するシンクロモンスター1体を選択し墓地へ送り、選択したモンスターのシンクロ素材が自分フィールド上に揃っている場合、それらのモンスター以外のモンスター1体の攻撃力をこのターンのエンドフェイズ時まで、選択し墓地へ送ったシンクロモンスター1体の攻撃力の半分の数値分アップする!
俺は、レベル4のハイパー・シンクロンとレベル1のワンショット・ブースターがいることにより、レベル5の《スカー・ウォリアー》を捨て、スカー・ウォリアーの攻撃力の半分、ラピッド・ウォリアーの攻撃力をアップさせる!」

ラピッド・ウォリアー
ATK1200→2250

代わりにデメリットとして、攻撃力をアップさせたモンスターしか攻撃出来ない欠点を持つ。
……効果、わかったか?

「攻撃力、2250……それじゃあ僕にトドメはさせないよ!」

「それはどうかな……ラピッド・ウォリアーの効果を発動! このカード以外の攻撃を封じることで、このカードはダイレクトアタックが出来る!」

「な、何だって!?」

元々、デシーブ・シンクロの効果で他のモンスターは攻撃出来ないけどな。
魔法剣士トランスの驚きの声を前に、ラピッド・ウォリアーは攻撃準備が出来上がる。

「バトル! ラピッド・ウォリアーで、魔法剣士トランスにダイレクトアタック! ウィップラッシュ・ワロップ・ビーン!」

「うわあああっ!」

魔法剣士トランス
LP1400→0

三人の魔法剣士をすり抜け、本体たる魔法剣士トランスにラピッド・ウォリアーが攻撃を決めたことで、デュエルは決着した。

「よっしゃああああッ!
楽しいデュエルだったぜ……って、あれ?」

デュエルの決着時の影響か、魔法剣士トランスのウィッグが外れていた。
そこにいた人物は、既に魔法剣士トランスではなく。

「天上院……吹雪さん……?」

行方不明であり、またセブンスターズの一人でもあった、保健室で倒れていた明日香の兄、天上院吹雪がそこにはいた。
思えば、さっき保健室にいなかったような気がするが……起きていたのか。


「やっぱり……兄さん……」

行方不明になった兄を目の前にして、目に涙を浮かべる明日香。
遂に、兄妹の感動の対面が……

「とうっ!」

……そんなことはなく、再び魔法剣士トランス……ではなく、吹雪さんが煙幕を地上に投げつけ、視界を一瞬真っ白にした後に逃げていった。

「ちょ、ちょっと! 何で逃げるのよ兄さん!」

明日香がそれを追い、なんとも微妙な空気で俺たちのコスプレデュエルは終わった。



俺たちのコスプレデュエルからしばらく経ったオシリス・レッド寮。
俺は、独りで未だに続くコスプレデュエルを眺めていた。
レイは、休憩時間となった十代たちに任せて先にラー・イエローの屋台に行ってもらった。
松葉杖である俺は、一人でゆっくりと行くことにしたのだ。

天上院兄妹は……未だに追いかけっこを続けているのだろうか。

「さて、行くか……」

「残念だが、貴様はどこにも行くことは出来ない」

目の前に突如として現れる、灰色のコートの男。
コスプレではなく、こいつはおそらく……

「セブンスターズ……ッ!」

セブンスターズだと思われる目の前の男は、突然本を取り出した。
あれは確か、大徳寺先生が良く持っていた、錬金術の……!

「フッ……狙い通り、高田とのデュエルで貴様はまだデュエルが出来ぬ身……今の内に捕らえさせてもらう!」

突然本が発光し、俺の身体がセブンスターズの男の背後に引き寄せられる。
男の背後には……赤色の……何かが広がっている。

「七星門の鍵を持つ者がデュエルが出来ない時……不戦敗だ。おとなしく捕まれ、黒崎遊矢」

不戦敗……!?
そんなルール聞いてッ……!

「う、うわあああッ!」

俺は、そのまま抗えずに赤色の空間に引きずり込まれていった…… 
 

 
後書き
なんか久しぶりで、デュエルを書くのが一段と難しくなった…… 
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