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僕は神を見た

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神様って誰だよ?

 4月4日、幼馴染が学校の屋上で佇んでいた。それもフェンスを越えた屋上の淵に裸足で、とても晴れやかな顔をして立っているのだ。全校生徒が見つめる中で彼女は叫んだ。

「神様が言うの。私に言うの」

 気でも触れたのかと教師達は困惑しながら、カギのかかった屋上のドアを開けようとしていた。神って誰だよ。そう思ったのもつかの間、壊れた笑顔で恐怖を滲ませながら、息も吐く暇なく彼女は校庭に落下して肉骸と化した。

 近くの生徒たちは、返り血を浴びて悲鳴を上げたりしている。死体は半分人間の形を失っていた。教師達が慌てて生徒達を教室に誘導する中、僕は立ちつくしていた。現実味のなさから、そうしていることしかできなかったのだ。

 最近の彼女は変だった。どこをどう変かと聞かれても、上手く答えることはできない。中学の頃よりも、ずっと疎遠になっていて身近にいなかったのもある。

 でも数ヶ月前、最後に会った時に彼女は今日と同じことを言っていた。僕と彼女の共通の友人である鬼守さんと三人であつまっ時から、既に気でも触れたかの様な変わりようで、まるで別人になり果ててしまっていたのだ。

 明るかった彼女からは想像を絶するほど陰気になり、お喋りだったはずの口からは、昔みたいに気さくな世間話が飛び出すことはまるでなく、ただ黙って携帯を弄っているだけだった。その時にも口にした神様って誰だよ。

「田中、お前も早く教室に戻れ!!」

 担任の強い口調が聞こえると共に、体を強引に引きずられる。僕は形を失った彼女を眺めながらも、不思議と悲しさもなく淡々としていた。幼馴染と言えど既に疎遠な分だけ他人なのだ。しかし、僕は気になる。彼女を変えてしまったものの存在が、とてつもなく気になるのだ。心当たりは何一つないが、ネットでまずは調べてみることにした。

 とりあえず教室で待機することになったので、携帯で調べてみることにした。気になるワードを片っ端から検索してみる。まずは神様が言うで検索してみるがヒットはなし。飛び降り自殺での検索もそれらしいヒットはなかった。そうこうしているうちに、担任が教室に入って来る。

「今日からしばらくは、休みになる。各自気をつけて帰宅するように」

 僕は早歩きで家に向かった。まだ朝の9時過ぎだ。両親は共働きなので家には誰もいない。自室まで駆け上がると、すぐさまパソコンを立ち上げる。この待ち時間も少し長く感じながらも、はやる気持ちを抑えて待つ。

 立ち上がると共にタイプを開始する。どれもこれもヒットなし。最後に、一番ヒットしなさそうなワードを打ち込んでみる。神様って誰だよと……。

 
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