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三つのオレンジの恋

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第二幕その三


第二幕その三

 彼が消えてから王子は。道化師に顔を向けて言うのだった。
「これでオレンジは手に入ったな」
「そうですね。ですが王子」
「何だ?」
「若しもあの魔法使いが出て来なかったらどうされてました?」
「その時はそのままだよ」
 毅然とした声で答える王子だった。
「僕の力でね」
「オレンジを手に入れておられたんですね」
「そうだよ。そのつもりだったけれど」
「その場合は物凄いことになっていたでしょうね」
 道化師はそれを聞いて唸るようにして言った。
「それこそ。魔女と死闘で」
「それを覚悟していたけれど」
「いえいえ、とんでもありませんよ」
 道化師はここでも平然として言う主に対して驚いて告げたのだった。
「若しそんなことをすればですね」
「どうしたっていうんだい?」
「竜やグリフォンなんてものじゃないですから、魔女は」
 そうしたとてつもなく強い魔獣達より遥かに強いというのである。
「それこそ命が幾つあったってですね」
「じゃあこのリボンを使えば」
「はい、もう大丈夫です」
 この幸運に心から喜んでいる道化師である。
「ですから行きましょう」
「うん、いざ最後の難関へ」
 こうして二人は砂漠の向こうにあるその城に辿り着くのだった。城はまるで蜃気楼の中にあるかの様だった。砂漠の果てに赤い煉瓦の城が建っていた。
 二人は早速城壁に縄をかけそれで城壁をよじ登る。そのうえで中に忍び込み忽ちのうちに台所に入り込んだ。台所はかなり清潔で整然と鍋やフライパンが置かれている。火は今はなく所々に食材が置かれている。そうした台所であった。
「奇麗なものだな」
「そうですね」
 二人はその台所を見回しながら話す。
「思っていた以上に」
「これならオレンジは簡単に見つかりますかね」
「そうかも知れないな。果物は」
「ああ、ここですね」
 道化師が見つけた。丁度目の前にバナナやら桃やら林檎やらがありその中にオレンジが三個あったのである。みずみずしい実に美味そうなオレンジ達であった。
「このオレンジですね」
「そうか、これなんだね」
「はい。それじゃあ」
 道化師達はそのオレンジを手に取った。そしてそのまま台所を去ろうとする。しかしここで赤い髪と目をした奇麗な女が台所にやって来たのだった。
「さて、今日の夕食は」
 赤く長い髪は後ろに伸ばしている。それは腰まである。白い顔は顎の先が少し尖っていて全体的に整っている。鼻の形も高めでいい。目は丸く大きい。何処かアジア系の面持ちである。
 彼女も黒い服を着ている。あのファタ=モルガーナが着ていた服と同じである。その格好で今一人で台所にやって来たのである。
「あの魔女は」
「あれがクレオンタか」
「さてと、昨日は子羊のステーキだったから」
 クレオンタはまだ二人に気付かず一人であれこれと考えながら述べていた。
「今夜はお野菜を使ってあっさりしたものにしようかしら。お魚も一緒に」
「早く出るとしよう」
「そうですね」
 二人は彼女の姿を認めてそそくさと台所から消えようとした。ところが。
「あっ、あんた達は」
「むっ、しまった」
「見つかったか!」
 その通りだった。クレオンタに見つかってしまったのだ。魔女は彼等の姿を認めるとすぐにその手に大きな柄杓を出してきたのであった。
 そうしてその柄杓で。二人を殴らんとしてくる。
「私の御馳走を取ろうなんていい度胸ね!許さないわよ!」
「王子、あれを」
「あのリボンをか」
「はい、投げればいいかと」
「よし、それなら!」 
 王子は道化師の言葉を受けて早速懐からそのピンクのリボンを出して魔女に向かって投げる。魔女はリボンを見るとすぐに柄杓を放り出してそれを手に取ったのだった。
「リボンじゃない、それもピンクの」
 リボンを手に取って喜色満面であった。
「これなら丁度いいわ。こうして」
 早速そのリボンで髪を括りだす。そしてツインテールにしてみて。
 
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