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三つのオレンジの恋

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第一幕その一


第一幕その一

                      三つのオレンジの恋
                     第一幕  沈んだ王子
「いや、あれだよ」
「違うって」
「そうじゃないんだ」
 舞台の上で何人かが議論をしていた。
 やたらと悲しい顔をした人間もいれば笑っている顔の人間もいる。着飾った男もいれば呆けた顔の人間もいる。どれも老若男女揃っていて誰が誰なのかもわからない程だ。
 その彼等が銘々口を開いて言い合っている。議論の内容は。
「この話はどうなるかはだな」
「悲劇にすべきだ」
 悲しい顔の連中はこう主張するのだった。
「絶対にそうするべきだ」
「いいや、喜劇だ」
 笑っている顔の連中がそれに反論する。
「笑えるものでないと」
「詩が一番ではないのか?」
 着飾った者達の主張も出て来た。
「叙情というものが欲しいのだが」
「いやいや。そんなものはいらない」
 呆けた連中まで言い出した。
「やはり馬鹿げた話にしてな」
「いいや、やはり悲劇だ」
「喜劇でないと駄目だよ」
「詩人こそが素晴らしい」
「芝居は面白くなくて何が芝居なんだ?」
 最早混沌としていた。だがそれでも彼等は言い合い続ける。
「悲劇だ」
「喜劇だ」
「詩だ」
「馬鹿げたものにしてだ」
 そうした言い争いは何時果てることなく続こうとしていた。しかしここで。
「ああ、もうそれ位にして」
「止めましょうね」
「むっ、あんた達は」
「ピエロじゃないか」
 今度出て来たのはピエロ達だった。彼等が出て来てそのうえで一同に告げるのだった。
 そうしてそのうえで。そのピエロ達が言うのであった。
「では皆さん」
「今回の舞台はです」
「今回は何をするんだ?」
「それがわからないのだが」
 他の者達はピエロ達の後ろから問うた。
「一体何を」
「それで作品は」
「三つのオレンジの恋」
「それだよ」
 ピエロ達はその作品が何かも話した。
「それを今上演するから」
「楽しみに待っていてくれ」
「いいな」
「わかった。それじゃあ」
「楽しみにさせてもらおうかな」
「いやいや」
 ピエロ達は去ろうとする彼等を呼び止めるのだった。そうしてそのうえでさらに告げる。
「あんた達にも仕事はあるんだよ」
「当然わし等も」
「まさかその三つのオレンジの恋に」
「我々も出るのか」
「如何にも」
「その通りだよ」
 ピエロ達は得意げに笑いながら彼等に話す。話しながらひょうきんな動作をしてみせるのが如何にもピエロらしい行動だった。
「さあ。だから」
「早く用意しよう」
「早速な」
 こう口々に話していくのだった。
「もうすぐ舞台もはじまるし」
「それじゃあ行くか」
「まあ仕事ならな」
「やるか」
 こう彼等の言葉に頷いてそのうえで舞台を後にする。そうして今舞台がはじまった。
 その国が何処にあるのか誰も知らない。何時何処にこの国があったのかはわからない。しかしその国の王宮は実に見事なものだった。
 みらびやかな装飾で飾られた赤い宮殿だった。丸いアーチ型の屋根に所々に黄金が見える。高い塔が幾つもあり重厚な趣である。
 
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