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めだかボックス 〜From despair to hope 〜

作者:じーくw
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第6箱 「えっと… 説明会があるんじゃ……?」

































それは、帰宅途中。




「今日託児室にめだかちゃんが来ていたってホントなの??」

瞳さんが2人に聞いていた。


「うん!ほんとだよ!」
「はい。」


2人同時に答える。

「そっか… いい友達ができたんだね。」

瞳さんは笑っていた。

善吉も笑顔だった。

それに凄くご機嫌なのか、辺りを走り回ったり飛び跳ねたりしていた。

「あははは……。 まだあんなに元気だ、善吉君。 そっか、善吉君眠ってたんだったね。 僕とめだかちゃんと勝負してた時にさ。」

僕は笑いながら善吉を見ていた。

生憎ちょっと疲れているため 善吉のようにはしゃいだりするのは 今はちょっとねぇ。


「え??劉君!ちょっとまって、貴方めだかちゃんと何かしてたの?」


瞳さんが驚きながら聞いてきた。


「え?あ……はい。めだかちゃんとずっとオセロゲームをしてましたよ。」


ちょっと驚いたが、直ぐに素の表情に戻り話した。


「へ……へぇー でさ!結果はどうだったのかしら??」


なんだか瞳さんの笑顔がぎこちないな……。


「えーっと…… 僕の4勝3敗だったかな??あ…… 最後のはめだかちゃんがどう思ってるか分からないけど…… ちょっと僕仕掛けをしたから!」


笑いながらそう答えた。















瞳 side



仕掛けをした……?それに……あの、めだかちゃんに……勝った!?

瞳さんはめだかの状態がすっかり最初の頃と変わってしまったことが不審に思っていたが……。

何故変わったのかは 劉一の言葉ではっきりとした。



めだかはこの病院に来る前………。

異常な程の成長スピード、そして知識の量………。

もはや博士号を持つ科学者でさえ凌駕するほどの知識をもっていたのだ。

当然周りの大人たちは天才だともてはやした。

そして何人もめだかの知識を頼り……そして、頼った者の殆どがが挫折していたのだ。

当然だろう。

自分のたゆまぬ努力の末に培ってきた結晶……。

それが生まれて僅か1年やそこらの幼い子どもに遅れをとってしまったのだから・・・

築き上げ来た物が足元から崩れていくような感覚になったのだろう……。

そんな|彼女(めだか)を見た時。

言っていたのが。



≪人間は無意味に生まれて無関係に生きて無価値に死ぬ 世界には目標なんか無い人生に目的なんて無いそうであろう………?≫



冷めたような目でそういい続けるのだった。

何日間か瞳が問診したが、それが変わる事はなかった。

それが今日まさに変わったのだ。

笑顔が…年相応のものになったのだ。


そのきっかけは…なんだったのかが分からなかった。

それは…今はっきりとわかった。






side out






今…はっきりとわかった…


「君だったんだね………。」


瞳さんがそう悟ったように言う。


「え??何がですか??」


当然何のことか分かってない劉一はキョトンとしていた。


「いーえ!なーんでもないわよん♪ これからも善吉君をよろしくね!」


最後には瞳さんは弾けんばかりの笑顔だった。


「??? もちろんですよ! 大切な友達なんですから!」


劉一はよく分かってなかったが。

最後の部分はよく分かった。

だからもちろんだと言った。

…瞳さんはその話の間ずっと…笑顔だった。



ただ………。


何かぎこちない感じがしていたのだけど。

それは、めだかちゃんと勝負をしたと言う前から感じていた。


(何かあったのかと思ったけど 大丈夫だよね??)


その表情に少し不安を覚えていたのだけど。

とりあえず、ひとまず安心をし、家へと向かっていった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





数日して……場所は。





【箱庭幼稚園】





そして今日は箱庭幼稚園入園式!

とりあえず僕には親はもういない為、瞳さんが親代わりとして出席してくれていた。

案の定めだかも行っていた通り、同じ幼稚園だった。

そして園長先生の話しも終わり。

入園式は何事もなく終わった。




……が。 その後大変だったんだよね。

「ふむ、やっと来たか、」

教室に入ると……めだかちゃんがいた。

「あ!めだかちゃん!!おはよー!」

善吉は走ってめだかの下へと向かう。

「やあ!めだかちゃん。おはよう。」

少し遅れて劉一もめだかの元へと向かった。

「ふむ。おはよう2人とも。以前は世話になったな。」

めだかがそう言うけど……。

世話?

「えっ??あ!病院の託児室でのことだね?いいよそんなの!僕だって楽しかったし!ねえ 善吉君。」

笑いながら答えた。

「うん!僕も楽しかったよ!!」

善吉も同様のようだった。

「それについて劉一!貴様に話がある。」

めだかは劉一にビシッ!! 凛ッ っと指を突きつけた。

「え……っと…… 何かな??」

恐る恐る聞き返すと……。

めだかが何やら取り出した。

「貴様にオセロゲームは完全に完敗してしまったからな、次はこれで勝負だ!!」

そう言って取り出したのは将棋盤。

それもかなり立派な……。


「ええっと……… もーちょっとで 幼稚園の説明会………始まるよ??めだかちゃん、その後に……「ダメだ!!」はい……。」


どうやらあの日以来、

僕はめだかにターゲットにされたみたいだ。

とりあえず。

一度言い出したらめだかはぜんっぜん曲げないから。

「では私が玉将だ。貴様より下だからな。」

そう言って将棋の準備をしていった。

僕がルール知ってるかどうかって分かってるのかな??

「ええっと…… ルール「はもちろん知っておるな?」うん…… 知ってる。」

それは絶対事項だったようだ。

後で聞いたんだけど……。

「私に勝っているのだから私が知っていて貴様が知らない事などないであろう?」という理由みたいなんだ……



いや……勝ったのってオセロなんだけど?

知識はちょっと関係ないって思ってた……。

これはちょっとだけ後の話である。




で……とりあえず……

平手戦配置をして、玉であるめだか側からスタートした。

「ではゆくぞ!以前のように情けはかけるなよ?」

言われなくても。

何やら殺気みたいなのが発してるし。

クラスのみんなも最初はバラバラで遊んでいたのだが。

尋常じゃない気配をさっちし、皆消極的になっていた、苦笑

流石に泣き出したりするコはいなかったけどね。

「うん。お手柔らかに頼むよ。」

そう言い。

序盤戦がスタートした。



・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・




そして対局98手目……。

「王手……詰みだね?」

そう静かに宣言したのは……。

劉一だ。

「くっ……」

めだかは暫く答えなかったが……。

「ふっ……あははははは! そのようだな。ここからの反撃はもう不可能だな。私の負けだ。」

負けたのに何か清々しいといった様子だね……。


「あ……はははは……… 僕も楽しかったよ。接戦だったしね。」

そう2人で笑い合ってた。

他の園児達はと言うと……。

善吉以外は外で遊んでいた。

教室の雰囲気がピリピリしてたせいだろう。

そして幼稚園の先生達、保護者達は固唾を呑んで対局を見守っていた。

それはまるで、名人戦を見るかのように……。

今日は確か説明会があって いろいろと話をしてくれるんじゃなかったっけ??

って言ってみたかったけど。

こんな雰囲気を作った張本人だからそれはやめた。



そして。



長い長い入園式の日の幼稚園は終わりを告げ……。



なかった!!



「では、もう一局だな!」

めだかちゃんののこの一言で……。


「………え?まだ……だったの?」

「当然だ!」 凛ッ!



一回じゃなかったんだ……って思ってたけど。

諦めて、もう一度打つ事になった。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




戦績で言うと……。

その日の勝負は劉一の5勝4敗だった。



「はぁ……そろそろ帰るわよ?りゅうくん、めだかちゃん?」



瞳さんがそう声を掛けてくれなかったらどこまで続いた事やら、

「むぅ……そうか もうこんな時間か、ふむ 楽しかったぞ。ではまたな。」

めだかちゃんはかなり名残惜しそうにしていたけれど……。

顔をニヤつかせながら立ち上がる。



(やはり……私の目に狂いは無いな。奴こそ私の目標……。 超えるべき男だ!私は……見知らぬ誰かを幸せにする為に生まれてきた……だけじゃない。奴と……劉一と会うために生まれてきたんだ!)



めだかちゃんは、凄く笑顔で振り返っていた。

そう、対局を振り返ると。

徐々にではあるがめだかが勝っていった。

……が。

結局は劉一の後塵を拝してしまう。

最終的に見ると 私が負けてしまう結果になる。


(いつ私は奴を超えられるのか……?)


それが楽しみでしかたないのだ。







そう言ってめだかは立ち上がり父親らしき人に連れられ……。

リムジンで帰っていった。



「リムジンだ……。僕、初めて生で見たかも。」



と言って苦笑いする。


「やっぱり りゅうくんとめだかちゃんはすっごいや!どういう遊びかわかんないけど、伝わってくるよ!!」


善吉は笑顔だった。

でも善吉には悪いけど……。

「あははは…・・・僕は結構疲れたりしてるけどね……?」

っと歯切れの悪い言葉を残す。

「そりゃあね、あのめだかちゃんとあそこまでやっちゃうんだから。」

瞳さんも感心を通り超して半ば呆れてるって感じだった。

「やっぱりりゅうくんは凄いね、善吉君の言ってる通り。」

瞳さんまで褒め倒してくるっ!!

流石に照れそうになっちゃったよ……。

「でも めだかちゃんも凄いですよ。一度見せた戦法は全く通じないんですから…… 僕、あのまま続けてたら……。最終的に僕が負けていたと思いますね。今日は勝ち逃げできたってとこですね?」


そう言ってウインクした。

(確かにめだかちゃんの観察力ならば即座に順応していくんだけど…… そのめだかちゃんに負けないほど能力が向上していくんだもの。 貴方の方がめだかちゃんより何枚か上手ってことは間違いないと思うわよ?こう言っても多分はぐらかすと思うけどね♪)

瞳は笑っていた。

これほどの|異常者(アブノーマル)は今だ見た事が無い。



―――いや……1人例外がいたわね。でも……|異常(アブノーマル)、 いやそれ以上のそれ以下の……わからない何かだ。そう……私の初めての挫折を味わせてくれた……コ。


瞳は直ぐに頭を振った。

今は過去の事より |現在(いま)を見つめなければならないからだ。


それにしても。




今日は驚いてばかりだ。




それにめだかを見ても十分驚いたのにそれ以上だということも今日改めて分かった。

私に特に深く関わってるこのコとめだかちゃんを……ちゃんと見守らなきゃね。

それが私の心療外科医としての≪最後の仕事≫

……だから。


 
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