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めだかボックス 〜From despair to hope 〜

作者:じーくw
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第3箱 「この世に意味は…どうなんだろう?…けど、僕は救われたんだ。」






























女の子と男の子…

めだかちゃんとみそぎくんがいなくなって。

正直寂しかった。

めだかちゃんとは特にお友達になれるかも……って想っていたんだけど……。


そして、暫くして。




「劉一くーん! 三番検査室に入ってくれるかな?」




ナースのお姉さんの声が聞こえてきた。

どうやら、自分の番が来たようだ。



「……はい。わかりました。」



そう言い、検査室へと入っていった。




僕の診察の相手は、瞳先生じゃなかったが、とりあえず。

いろいろと問診をしたりテストをしたり。

それは何時間にも及んだ。









その事自体には疲れてはいないが……。

劉一は待たせている善吉君の事だけが気がかりだった。


「ふぅ……善吉君、待たせちゃったな……急がないと……。」


劉一は足早に急いで託児室の方へと向かった。










【託児所】





検査室から何棟か離れている託児所に漸くついた劉一は、託児所の中に入ると…

善吉は何やら座り込んで考え事をしていた。


「善吉君ゴメンね!その……遅くなって」


善吉に後ろから声を掛ける。


「あっ!りゅうくん!んーん!大丈夫だよっ!」


こっちを向くと笑顔で答えてくれた。

「ん?何をしてるの?」

善吉に近付き問いかけると……。

「えーっとね……これがどうやっても解けなくて………。」

善吉はすこし残念そうな顔をする。

それは知恵の輪だった。

聊か2歳児には、いやそもそも、幼児向けの知育玩具とはいえないと思った。

「ああ……確かにそれは難しそうだね。よっし!善吉君は解いてあげたら嬉しい?それとも最後まで自分の力で最後までやり遂げたい?」

その劉一の言葉。

およそ幼児に言う幼児の言葉ではなかったが……。

劉一は善吉にそう聞いてみた。

「えーっ!?僕どうやっても解けないんだ!解いてくれた方がうれしいよ!」

善吉は笑顔で迷わずそう答える。

「そっか、わかったっ!じゃあ貸してごらん。」

そうやって知恵の輪を受け取る。

初めて友達になってくれた善吉君の為に……。

その難解の知恵の輪を解こうとした時の事だ。



ふと……劉一は、テレビに目を向けてしまった。



託児室にはあまり似合わない内容。



劉一は……それを見てしまった……。





“カシャンッ…………”





知恵の輪を落としてしまったのだ。



「りゅっ……りゅうくん?どうしたの??」



驚いて善吉も近付いてくる。

「あ……あれ? おかしいね。僕どうしたんだろう………僕………。」

劉一の目から涙が……次々出てきたのだ。

目からあふれ…流れ落ちる…。

それは止まる事はなかった。

……その涙の理由は、テレビの内容のせいだろう。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


その家族はとても幸せだった。

毎日が楽しくて仕方がない程に。

良い友人にも囲まれて……子供にも恵まれて……。

そんな幸せの家族が突然不幸な事故にあってしまった。

そし/・・・…て夫のみを残し、皆他界してしてしまって……。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




なぜ……このような内容の話が流されているのかは理解できない。

幼児には難しすぎる内容だろう。



だけど……劉一の心には深く突き刺さった。

似たような事が……あったからだ。

前世で……。







「りゅうくんっっ!どこか痛いのっ?大丈夫なのっ??」

善吉も泣き続ける劉一を見て、目に涙を浮かべながら心配してくれていた、

劉一は……涙を流し続けていたが……

漸く口を開く事が出来た。


「ぜんきちくん……ぼく……ぼく……とっても悲しい事があったんだ………。」


幼児に話すことではない。そして幼児が話すような内容ではない。

明らかに傍から見れば異常だったが、そんなのは関係なく話す。

誰かに……聞いて欲しかったんだ。

自分の悲しみを……。



「大切な……ものをなくしちゃってね………。 もう戻ってこないんだ…… もう……何もかも……終わりのような感じがするん……だ……。 」


再び涙を流していた。



「りゅう…くん……」

善吉も幼いなりに必死に慰めようとしてくれていた。


|なくしてしまった(・・・・・・・・)それが何なのか、よくわからないけど……。

お友達が泣いているなら、と劉一の頭を撫でた。

とても……楽になったけれど、

劉一の涙は止まらない…。


「彼がいったこと……やっぱり正しかったの……かな……? この世に意味なんてないんだ…… こんなに悲しいんだから……悲しみしか生まないなんて………。」


みそぎの言葉。

それを賛同してしまうかのように…劉一はそう呟く。



その時だ。




「まってよ!意味なんてないことないさっっ!」





それを聞いた善吉が叫ぶ。


「…え?」

 
さっきまでと違う声量に驚いて善吉の方を向く。




「確かに……りゅうくんはつらい事があったんだよ……ね? でも……それでも意味ないなんてことないよっ!」




善吉はきっぱりそう言い切る。


「なら……なんで僕はこんなに悲しい気持ちになるのかな…… 苦しい気持ちに………。」


劉一は顔を俯いた。

意味があって、こんな気持ちになるならそんな意味はいらないって思えるほどだったんだ……。


だけど 善吉は真剣な顔をしてこう答えた。



「僕はりゅうくんに≪会えて≫とても嬉しかったよ!だって……お友達が増えたんだから!意味がないなんて事は無いよ! りゅうくんが……辛いのは僕には分からないけど。 それは、君はこれからきっと幸せになる為に!今があるんだと思うよ!そうだよ!きっと!きっと!今のことが吹き飛んじゃうような幸せがりゅうくんをきっと待ってるからだよっ!」




善吉の言葉。

そして、その屈託のない笑顔。

それを目の当たりにした劉一は目を見開く。


……善吉の明るい無邪気な笑顔は。

劉一の降り積もった悲しみの心を溶かしてくれるようだ。

そっと……優しく包み込むように。





「ぜんきち……くん。ありがとう………。」


劉一は涙でぼやけてしまった瞳で、善吉を見た。



「僕は…君に出会えたことが…一番幸せだよ…ほんとだ…よ…。 ありがとう…」



心からそう思えたのだ。

そして再び善吉が頭を撫でてくれた。

不思議とさっきよりも心が落ち着くような。

そんな感じがしていた。








その後も劉一はたくさん泣いた……。

泣いて、泣いて、泣いて……。

それ以上に慰めてもらった。

涙……もうかれちゃったと思っていたのに…

そして、慰めると同時に……たくさん撫でてもらった…。

人と人の温かさを再び改めて教えてもらった…。

初めての友達に…………











劉一の涙も止まり……。


さらに暫くしての事。





「さー!仕事終わったわ。善吉くーん!りゅーくーん!帰るよー!」





善吉と遊んでいると。

瞳さんが帰ってきた。




「お疲れ様です!」「おかえりー!!」




善吉と劉一がそれぞれ言う。

もう劉一の瞳からは涙はなく、すっかりと元気になっていたようだ。





「うん!ただいまぁー!じゃあ 帰ろっか。」




瞳先生はそう言うと、そのまま2人と手を繋ぐ。



「え……っと 僕は??」



劉一は、手を摑まれたこと。


その事に少し戸惑っていたんだ。



「ん?りゅーくんも一緒にね。」


笑顔でそう答えた。



その言葉を聞いて善吉は喜ぶ。

だけど、劉一は素直に喜べない。

だって……。


「僕が……ご迷惑……じゃないですか?」



申し訳なさそうな表情で……そう聞いた。



すると……。



「こぉーら!」





“コツン……!”

「あうっ……」



瞳さんが軽く拳を作り頭を小突いた。



「子どもがなーに遠慮してるのよ!大丈夫!ぜぇ〜たい 1人になんてさせるわけないでしょ? 一緒に帰りましょ?今日から、私達は家族(・・)なんだからね?」



瞳先生はそう言う。 とても優しい笑顔で。

「そーだよ!!りゅーくん!」

善吉も同様に優しい笑顔だった。

2人の笑顔はとても似ていて……。

本当に温かいもの、だった。




「…………あ……ありがとうございま………す……。」




それは本日の……、

本日の3度目の涙。




「ははは… 我慢なんかしなくていいんだよ?≪劉一≫、私は、私たちはどこにも行かないから…一緒にいるからね…」





“ギュッ………”



見ていられなくなった瞳は、劉一のことを抱きしめてくれた…。




「あ…う… お…かあ……さん……おかあ……さんっ………。」



劉一は…うまく言葉が出ない…。

だけど、心のそこから嬉しかった。



そして、ある事を認識したんだ。




涙は嫌なものだとずっと思っていた。



けれど……認識を改めようと、そう感じた。







この涙はそう、≪幸せの証≫なのだと。






その日の夕刻、3人は善吉 瞳 劉一の順で

仲良く手を繋ぎ帰宅した。




・・・・・・・・・・・・・







でもこれだけは思う!

……外から見ると

ほんとに親子にはみえないだろうな…… 苦笑







 
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