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ジークフリート

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第三幕その四


第三幕その四

「小鳥は行った。その小鳥に導かれて来たが」
「若者よ」
 さすらい人はその彼に声をかけた。
「何処に行くのか」
「んっ、あんたは」
「何処に行くのか」
「炎に囲まれた岩を探している」 
 こうその彼に答えるジークフリートだった。
「僕はその中にいる乙女を探し出して」
「何をするというのだ?」
「彼女を目覚めさせようと思っている」
 宝を足元に置いてからまた答えたのだった。
「そうしようと考えている」
「それは誰に言われてだ」
 さらに彼に問うさすらい人だった。左手に持つ槍を動かしながら問う。
「誰に言われてそれを決めた」
「森の小鳥の声を聞いてだ」
 ありのまま答える彼だった。
「それでだ」
「それでだというのか」
「小鳥が僕に知恵を授けてくれた」
 彼は言う。
「それによってここに来たのだ」
「そう言うのだな」
「何がおかしい」
「小鳥は色々と話すが」
 さすらい人が言った。
「それでも人には分からないものだ」
「僕にはわかることだ」
「それは何故だ?」
 さすらい人の問いは続く。
「何故それがわかった。
「欲望の洞穴で竜を倒した」
「竜をか」
「そうだ、僕は竜を倒した」
 また答える彼だった。
「そいつの血を舐めたからだ」
「竜の血をか」
「燃える熱さがこの舌を濡らすや否や」
 ジークフリートの言葉が続く。
「僕には小鳥の声がわかったのだ」
「貴様がその竜を倒したのか」
「ファフナーといった」
 その名前も告げるジークフリートだった。
「その巨人は」
「巨人が竜にその身を変えていた」
 さすらい人は知っていた。しかし知らないふりをして話を聞くのだった。
「それではだ」
「今度は何だ?」
「誰が貴様をそそのかした」
 また問うさすらい人だった。
「その竜を倒せと告げたのだ」
「忌々しい小人のミーメがだ」
 彼がだというのであった。
「僕に恐れを教え込もうとしたが」
「恐れをか」
「そうだ。それで倒した」
 このことも話したのである。
「そのせいでだ」
「その腰にある剣でだな」
「それもわかるんだな」
「当然だ」
 さすらい人はその槍で彼の腰にある剣を指差した。
「その剣だが」
「この剣がどうしたんだ?」
「それで竜を倒したのだな」
 またしても問うた。するとだった。
「巨人ファフナーを」
「そうだ」
「その剣は誰が作った」
「誰がだって?」
「今度はそれを答えるのだ」
 問いは続く。
「剣は誰が作ったのだ」
「作ったのは誰かか」
「そうだ。誰なのだ」
 そしてこう問うたのである。
 
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