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インフィニット・ア・ライブ

作者:雪風冬人
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第一話「日常 ~day~」

『と、いうわけでIS学園に入学することになったんだが、どうする?』
「起承転結が分かんないんですけど」

 突然掛かってきた電話の内容に、顔をしかめながら『一夏・ウェストコット』は返事をする。

『実は、かくかくしかじかなんだよ』
「はあ、日本語って便利ですね。その織斑千夏って奴、神童って言われながらも、バカですかね」
『全くだ。ISと藍越、名前は似てるが、それで受験会場を間違えるなんてね。それで、行くのかい?行かないのかい?』

 一夏を試すような電話の主の言葉に、一夏は不敵に笑う。

「もちろん、行きます。ケリを着けるには、いい頃合いですからね」
『復讐するのかい?』
「どうでしょうね。まあ、それ以前にあそこに行ったアイツらが、どれだけ強くなったかの方が興味ありますよ」

 一夏の言葉に、電話の向こうで苦笑する気配が伝わる。

『全く、二年前には想像できない性格になってしまったな』
「兄さん達のおかげですよ」
『ハハハ。これは参ったね。では、休日にわざわざ悪かったね。詳しい説明はまた後日』
「了解です」

 一夏は相手が切ったのを確認し、自分も通話を切って携帯をポケットにしまい込む。

「待たせたな」
「それほどでもありませんわ」

 一夏が話し掛けたのは、傍らに立つ絶世の美女とも言える少女、狂三であった。

「それじゃ、やろうか」
「きひひひ。こちらも準備万端でしてよ」

 一夏の言葉に、狂三は美貌を嗜虐的に歪める。
 お互いに獲物を構え、二人は向き合う。

―――チャキッ
―――カチャッ

「宣戦。始めましょう」
「クックック。では、奏ででもらおうか!冥府へ誘う旋律を!!」

 二人の背後に立つ、狂三に負けず劣らずの美少女である、『八舞夕弦』と『八舞耶倶矢』の双子の姉妹が、二人を促す。

「では…」

 狂三が、スッと息を吸う。

「オメーら!準備はいいかぁー!!」
「「「「「オオオオオ!!」」」」」

 狂三の手に持ったマイクに向けた叫びに、熱狂が返ってくる。

「声が小せえぞ!!テメーらそれでも、バンドやってんのかぁー!?」
「「「「「イエェェェエエエエ!!」」」」」

 先程よりも大きな反響が来たことに満足したのか、狂三は頷く。
 それを見た夕弦は、両手に握ったスティックを掲げる。
 狂三はエレキギターに、一夏はベースギターに、それぞれの得物に手を掛ける。そして、耶倶矢はキーボードに手を添える。

カチッ!カチッ!カチカチカチ!!

 スティックを打ち鳴らし終わると同時に、演奏が始まった。


―――???side


『こちら〈フラクシナス〉の琴里よ。現在のそちらの状況は?』
「こちら、四糸乃です。……えと、問題ないです」

 四糸乃の視線の先には、肩からギターをかけた『夜神十香』と、同じくベースギターをかけた『鳶一折紙』、ドラムに腰掛ける『園神凜弥』、そしてキーボードをいじる『マドカ・ウェストコット』の四人の姿があった。
 それを確認し、今度は演奏している一夏達、特に狂三の背後を注視する。

「イチカ、やるではないか」
「しかし、勝つのは私達」
「その通り!負けないよ」
「ああ!兄様、今日もカッコイイです!濡れる!!」

 意気込んでいる四人を無視して、いや、若干一名だけ後でシメようと決意して、四糸乃は再び無線機に向き合う。

「問題はないのですけど、……狂三さんの背後に軽音部の顧問の姿が見えるんですが」
「幻覚よ」
「え、でも」
「幻覚よ。四糸乃、貴女は何も見えていないわ。さわ子先生なんて見えない。そうよね、そうだって言いなさい」
「……エエ、ワタシハナニモミテマセン」

 これ以上の追及はマズイと判断した四糸乃は、大人しく琴里の言葉に従う。

『そう言えば、何で亡国の連中が来てるのよ。まさか、今度こそお兄ちゃんを連れ去るために!?』
「……えと、違います。今日はオフだからそんなことしないそうです。むしろ、一夏さんに攫われたい、とは言ってましたが」
『ざっけんなぁぁあああ!!神無月ィイ!それに、令音も!そこをどけえ!!私はぁ!私はァア!!』

ブツッ

 何やら無線の向こう側がうるさくなってきたので、四糸乃は一切の躊躇もなく無線を切った。

『ありがとうございます!謎の覆面バンド、〈サマーナイトテンペスト〉の皆さんに盛大な拍手を!!』

 いつの間にか、演奏が終わっていたらしく、ステージから一夏達が降りてくるのと入れ違いに、十香達がステージに上がる。
 すれ違う際に、少女達の間で火花が散り、一夏が顔をしかめて腹を押さえた。
 その理由を思い当った四糸乃は、ご愁傷様です、と心の中で合掌しておく。助けはしない。火の粉が降りかかるのはゴメンだからだ。

『やあやあ、イッチーお疲れ~。すごく良かったよ。特に最後のクルミンの歯ギターなんか、あれは鬼気迫るものがあったねえ』
「あらあら、お上手ですわね、よしのんさん」

 このこの~、と四糸乃の右手にはめたウサギのパペットである『よしのん』を、狂三は小突く。
 傍から見たら、仲の良い姉妹のようで、その光景に癒されたのか一夏の顔に微笑みが戻る。

『続きましては、これまた謎の仮面バンド、〈ユートピアプリンセス〉の演奏です!』

 そんなこんなで、《精霊王》と称される少年と、《精霊》と呼ばれる少女の日常は流れていく。



 ―――数週間後

 世界は再び、驚嘆の渦が巻き起こった。
 その発生の原因は、とある企業の発表であった。

『我々、DEMインダストリーの社員でISに乗れる男性を確認した。依って、来年度からIS学園に入学する事となった』

 《王》の凱旋の日は近い。 
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