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ジークフリート

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第一幕その十六


第一幕その十六

「全くな」
「ううむ。しかしじゃ」 
 この辺りは鍛冶屋であり科学者でもあるから見てわかった。
「これは上手くいきそうじゃな。そして」
 彼はあることに気付いた。
「剣を鍛え上げてそれで竜を倒すか」
 その未来に気付いたのだ。
「このままではじゃ。すると」
 そしてまた別のことにも気付いたのだった。
「わしの首はどうなるのじゃ」
 このことであった。
「それではわしの首は。どうなるのじゃ」  
 言いながら焦りはじめていた。
「このままではこいつの気紛れのままで。大変なことになったぞ」
「おいミーメ」
 ここでジークフリートが激しく動き回りながらミーメに問うてきた。
「聞きたいことがある」
「何じゃ?」
「何て名前なんだ?」
 こう聞いてきたのである。
「この剣の名前は」
「それか」
「そうだ。何という名前なんだ?」
 また彼に問うのであった。
「この剣の名前は」
「ノートゥングじゃ」
「ノートゥングというんだな」
「そうじゃ」
 まさにそうだと教えるミーメだった。
「前にも言ったと思うがのう」
「そういえばそうだったか」
 ジークフリートも言われてそうかもと思った。
「とにかくだ。これは僕が鍛える」
「どうしてもそうするのじゃな」
「止めても無駄だ。いいか」
 早速剣を鍛えながら叫びはじめた。
「ノートゥング!ノートゥング!宿望の剣!」
「御前の剣だというのじゃな」
「そうだ。何故御前は折れたんだ」
 そのノートゥングに対して問い掛ける。
「その鋭い剣をまず粉々にし溶かし」
 さらに叫ぶ。
「ホーホー!ホーホー!ホーハイ!」
「何を叫んでいるのじゃ」
「炎よ吹け!無限の炎で剣を溶かしそしてそこからまた剣を生まれさせるのだ」
 言いながら剣を作り上げていく。ミーメはそれを見ているだけではなかった。
「あいつは作り上げるのう」
 それをもう読んでいたミーメだった。
「そしてファフナーを倒すじゃろうな」
「ホーホー!ホーハイ!」
 ジークフリートの叫びは続く。
「そして宝も指輪も手に入れる。それをわしのものにするにはじゃ」
「さあ、出て来いノートゥング!」
「そしてそれと一緒にわしの首を保つにはじゃ」
 どうしようかと考えているのだった。
「竜と闘い疲れた時に」
「さあもうすぐだ」
 彼は剣を作り続けている。
「ノートゥング、火の流れが氷の中に流れ込んで」
「飲み物を出してやればいいな」
 ミーメは考え続ける。
「毒を入れてそれでじゃ。よし、それでいい」
「ノートゥング、ノートゥング!」
 ジークフリートはミーメの邪な考えには気付かない。
「炎と氷の中で生まれろ!その中から!」
「さて、それではじゃ」
 ミーメはこれで考えを確かなものにした。
「あ奴は剣を作りわしは毒を作る。そうしよう」
「ノートゥング、今こそ!」
「兄貴の作ったあのこの世を支配する黄金の指輪がわしのものになる」
 彼は今はその指輪のことを考えていた。
「あいつもこき使ってやろう。あらゆるものがわしのものになるのじゃな」
「さあ、僕の手に戻るんだ!」
「神々も巨人も人間もわしにかしづく。いよいよわしの時代じゃな」
 最早自分の手の中にあると思っている。ジークフリートはそんな彼なぞ意に介さず剣を作り続けている。少なくとも何かが起ころうとはしていた。
 
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