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ジークフリート

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第一幕その十一


第一幕その十一

「そういう知識を与える為に私は首を賭けたのだ」
「必要な知識か」
「そうだ」
 そうだというのである。
「御前は何が自分の役に立つのかわかっていないな」
「わかっていないだと」
「それではだ」
 今度は彼から言ってきたのであった。
「今度は御前の首を賭けに出してもらおうか」
「何だと!?」
「御前のもてなしはよかったとは言えない」
 これは皮肉であった。
「だが炉辺の暖かさを貰う為に私は首を賭けたのだから」
「わしもだというのか」
「そうだ。次は御前だ」
 またしても有無を言わせぬ口調であった。小心なミーメはそこから逃れられなかった。
「御前が答える番だ」
「わしだというのか」
「さあ、どうなのだ」
 彼はミーメに対して問うてきた。
「三つの問いに答えられるのか」
「わしに知らないことはない」
 ミーメは怯みながらもそれでも虚勢を見せはした。
「それこそな。わしはニーベルング族で随一の賢人と言われてきたのじゃ」
「では答えられるな」
「この世にあるものならば」
「では問おう」
 こうして今度はさすらい人がミーメに問うのであった。
「ヴォータンが厳しく扱いながらも最も愛している一族は何か」
「英雄の一族については詳しくはない」
 しかし名前は出せたのだった。
「しかしその質問には答えられる」
「そうか」
「ヴェルズングの一族はヴォータンが人の女との間に作った一族であり」
 彼はそのことを知っていたのだった。
「そして彼が辛くあたってももっとも愛されている希望の一族なのだ」
「彼にとってはだな」
「そうだ。その中の兄妹であるジークムントとジークリンデは」
 先程ジークフリートに告げた名前が出されていた。
「絶望に陥れられた双子の夫婦だった」
「その者達のことを知っているのか」
「彼等はヴェルズングの中でもっとも強き英雄を生んだ」
「その名は?」
「ジークフリート」
 こう答えるのだった。
「それがその英雄の名だ」
「わかった」
「これでいいか」
 ここまで答えたうえでさすらい人に対して問い返した。
「わしは無事か」
「御前の返答は全て正しかった」
 これがさすらい人の回答だった。
「まずはいいとしよう」
「そうか」
「そしてだ」
 すぐにであった。こう彼に言ってきたのである。
「第二の質問だ」
「うむ」
「そしてそのジークフリートをだ」
「その英雄のことか」
「そうだ、彼だ」
 ジークフリートのことだというのである。
「一人の賢いニーベルングがジークフリートを育てているな」
「それがどうした」
「彼はジークフリートに竜を倒させ」
 既にそれを見抜いているのだった。
「指輪を手に入れ財宝の持ち主になろうとしている」
「忌々しい奴だ」
 ミーメは話を聞いていて舌打ちせずにはいられなかった。
「やはり全て見抜いているのか、こいつは」
「その為にだ」
 さすらい人はミーメの舌打ちをよそにまた言うのだった。
「ジークフリートはどの剣を持たなければならないのか」
「ノートゥングだ」
 それだと返すミーメだった。
「誰もが手に入れたいと望むものだ」
「そのノートゥングをだな」
「そうだ、その剣をだ」
 はっきりと答えはしたが顔は忌々しげなものであった。
 
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