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なのは一途のはずがどうしてこうなった?

作者:葛根
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第十九章 失態と功績



「騎士ゼスト。彼はどうだったかね?」

ジェイル・スカリエッティの問に答えるのはゼストである。

「うむ。同士かと思ったのだが、自覚は無いようだった。天然物だな」
「ほう、それは良かった。少なくともロリコンではない、か。ならば私が彼を手に入れられる可能性は大だね」

ゼストは頷く。

「ああ、彼は天然物だ。男に好かれる可能性もあるだろうし、男を好きになる可能性もあるだろう。最も俺には関係のない話だ」
「それは良いことを聞いた」

ジェイル・スカリエッティは嗤う。限りの無い無限の欲望を持って。



「とんだ失態だった。申し開きは無い。みすみす逃すとは……」

現場検証後に然るべき謝罪をした。
しかし、相対して分かったこともあった。
ゼストと言う名前と、経験則からかなりの手練の騎士であること。
おそらく、シグナムと同等かそれ以上の潜在能力を持つ相手であると言う事。
そして、ガジェットいきなり手ごわくなった理由も、予測で答えた。

「幼女の方、恐らく彼女が何かしらエンチャントしたんだろう。キャロと似た能力だと思う」

どちらも高ランクであるのは既に伝えておいた。
高ランク特有の気配というか、オーラを感じたのだ。
それは口では説明しづらい感覚的なものであるが、その感覚で何度も助けられた事もあるので間違っていないと確信している。
その話を報告している相手。
八神はやてが何も咎めてこないのが心苦しい。



ミウラ・ケイタの未だあずかり知らぬ所で八神はやては各方面から報告を受けていた。
召喚士の存在。
ガジェットの有人操作からの警護達成。
新人の動き、ティアナの失態など。
色々とあったが、人的な被害はないので良しとしようと考えている。
だが、ミウラ・ケイタの失態は如何せん隊全体に影響を与える可能性が高い。
今のところ、ミウラ・ケイタの失態を知るのが自分とリインだけである。
接敵による斥候。
結果だけ見ればむしろ褒められる武勲であるが。
ミウラ・ケイタの反省具合からその身で失態の対価を支払わせる事が可能である。
弱っている所につけ込むのが必勝法の一つでもあるのだ。

「卿の働き、見事である。敵に会って、百戦して百勝など人のみに余る所業だ。一つの負けには一つの勝利で償えば良い。今回は敵の仔細が分かっただけでも重畳としようではないか」

いい女を知らしめる為の布石として、今回は見逃そうではないか。



銀河を彩る英雄達の伝説を見た影響がモロに出ている八神はやてだった。しかし、接敵による斥候は確かに局地的勝利とも言え無くは無いのだ。
相手の戦力がわかっていれば、それなりの対策が取れやすい。
今回の件は言わば、戦術的には勝利を収めたと言って良い功績である。
それが意味する所は、不敗のミウラ・ケイタは相変わらず不敗である、ということであった。



八神はやての言を真摯に受け止めたミウラ・ケイタの悲運はその言の出所を知らなかったことにある。
その為、ミウラ・ケイタは八神はやてに対して、長たる風格が出てきたと知らしめる勘違いをさせていたのだ。

「有り難い言葉、しかと受け止めよう。今後も微力を尽くす所存です……」

かくも、恭しく頭を垂れるミウラ・ケイタであった。
それこそ、八神はやての策であり、思惑通りの展開でもあった。
見といて良かったわ。
機動六課の忙しい中プライベート時間を潰してまで、全100話を超えるアニメを見て良かった。
これは、以前ミウラ・ケイタ達含め、地球に戻った際に月村すずかから宇宙での戦いの参考として渡されたものであったが、早くも役にたった。
友人として、相変わらず良い働きをすると思う。

「良い。今後もその手腕に期待している」

問題は、ティアナだ。
ミウラっちの働きは言い訳次第で功績になる。
しかし、ティアナの凡ミスはどうにもならない。
無理な高等技術に伴った失敗。
味方であるスバルに攻撃が当たりそうになったらしい。
なのはちゃんがフォローに回ったらしいが、落ち込んでいるだろう。
落ち込んだ女を慰めるのは男の甲斐性の見せ所だ。

「ミウラ・ケイタ教導官。ティアナ・ランスター二等陸士を慰めて欲しい。勿論、身体を使った慰めもこの際目を瞑ります。一刻も早い措置を取るように」
「身体を使うかはこちらの判断ですが、立ち直らせる為に微力を尽くしましょう」

ソコは使うって言えや。
甲斐性無し。
私は女の一人や二人、はたまた、何十人も種付けしようが黙認する覚悟はあるで!



「よう。ティアナ。同じ失敗者同士、仲良くしよーぜ」
「ミウラさん……」

明らかに落ち込んでいるな。

「俺は敵の逃亡を許す始末。ティアナは誤射だって?」
「ええ……、少し無理して高等技術を使った代償です……」

最近の訓練でもどうも様子のおかしかったティアナ。
どうしたものだろうか。

「何があった? 最近のお前は鬼気迫る感じだったけどそれが何か関係しているのか?」
「私はっ……。私だけが……。この隊で凡人なんです!」

何を悩んでいるかと思えば。
そういう事か。

「グズッ……、今だけ……。泣かせて下さい……」

俺の胸に顔を埋めて泣くティアナ。
しょうが無いな。
しかし、ミウラ・ケイタの見えぬ所でティアナ・ランスターの口は笑みに歪んでいた。



失敗と失態。
取り戻すのは誰か。
配点:(嘘泣き)





 
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