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LIFE

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第五章

「それだけで生きていることにはならないんだよ」
「人に想われてですか」
「生きるってことなんですね」
「あんた達は大切な人が死んで思ってるね」
「はい、悲しいです」
「私もそう思っています」
「それが生きているってことなんだよ」
 思われている、このことがだというのだ。
「人に思われることが」
「それが生きていることですか」
「私はそう考えているよ」
 住職さんの考えも話してくれた。
「生きていることはね」
「生きている時も死んでいる時も他の人に思ってもらえる」
「それが生きていることですか」
「そうだよ、あんた達の大切な人達は生きているよ」
 私達が思っているから、だからだというのだ。
「それでいい生き方をその大切な人達にあげたいのなら」
「それならですね」
「その人達のことを」
「悲しまずによく思うことだよ」
 このことが大事だというのだ。
「そう思っていてね」
「はい、わかりました」
「それなら」
 私達は住職さんの言葉に頷いた、そしてだった。
 住職さんからお茶と和菓子を御馳走になってお寺を後にした、それから二人で街の道を歩きながら話をした。
 私は彼女にだ、こう行った。
「これからはね」
「そうよね、これからはね」
「私お祖父ちゃんに楽しく生きてもらいたいから」
「私も。お姉ちゃんにね」
 二人で話した、それぞれ生きている人達のことを思いながら。
「楽しい思い出を思い出そう」
「そうしないと駄目よね」
「思われてることが生きていることなら」
 それならだった、私は隣にいる彼女に話した。
「楽しい思い出を思い出してね」
「そうしたらいいわね」
「ええ、私お祖父ちゃんにいつも優しくしてもらったから」
「私もお姉ちゃんにね」
「だからね、そのことをいつも思い出そう」
「それがいいわよね」
「そうよね」
 二人で話した、そしてだった。
 私達は決めた、難しいことかも知れないけれど。
「楽しく生きてもらおうね」
「楽しかったことを思い出してね」
 それが生きるということならだった、そうしようと決めた。
 私達は生きるということは思われることだと教えてもらった、それなら楽しく思うことにした。そうしてだった。
 今度は彼女の方からだ、こう私に言って来た。
「ねえ、今からね」
「今からって?」
「そう、何処か行かない?」
 優しい微笑みで私に言って来た。
「喫茶店にでもね」
「喫茶店ね」
「そうそう、今思い出したけれど」
 話しているうちにそうなったというのだ。
「この近くにお姉ちゃんに教えてもらったお店があるのよ」
「どんなお店なの?」
「マジックっていって。ダークブラウンの木造のお店でね」
 まずは外観からだった、店の。
「イギリス風の本格的な紅茶とケーキが出てね」
「美味しいのね」
「何でもイギリス風の本格的だけれどね」
 それでもだというのだ。
「味はイギリスのよりずっと美味しいからって」
「ああ、イギリスってお料理まずいのよね」
「最悪らしいわね」
「そう、それでもそのお店は美味しいから」
 だからだというのだ。
「そのお店行かない?今から」
「そうね、じゃあね」
 私も彼女の言葉に応えた、そのうえで言った。
「行こう、今からね」
「ええ、それじゃあね」
「私紅茶とケーキ好きだし。お祖父ちゃんもそうだったのよ」
「あんたのお祖父ちゃん甘党だったの」
「お酒は飲めなかったけれど」
 これは本当のことだ、お祖父ちゃんはお酒は駄目だった、それで甘いものが大好きでよく食べていた。
「そっちは大丈夫だったから」
「それであんたもよね」
「ええ、好きだから」
 それでだった。
「一緒に行こう、それじゃあね」
 こう話してそしてだった、二人でだった。
 その喫茶店に向かった、それぞれの人との楽しい思い出はそこで話した。その中であの人達が楽しく生きていることを実感した、私達も楽しい思いをして。


LIFE   完


                   2013・6・2 
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