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魔法少女リリカルなのはViVid~英雄の意思を継ぎし子達

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五話~ヴィヴィオの思い

 
前書き
フェイト「思いの力、それは心の強さ」

ランス「誰を思い、何を思うか。それだけのことで人は強くなれる」

フェイト「言葉にしなければ伝わらない。だけど言葉だけでは伝わらないこともある」

ランス「だから少女たちは己の拳で語り合う」

フェイト「第五話、ヴィヴィオの思い、始まります」 

 
side ヴィヴィオ


「待ってください!……次は、本気でやりますから」


この一言で動きを止めたアインハルトさんを見てから鞄のところにあるエクスを取りに行こうとするが、それはかなわなかった。


「ヴィヴィオ」


なぜならば私はティアナさんに肩を掴まれ、動きを止められてしまったから。


「あなたは今、本気ではなくとも全力だったでしょう?」


本気ではなくとも全力………。確かにそう。あれが私のストライクアーツでの本気。
それは間違いない。


「だったら今回はあなたの負けよ。奥の手があろうとも、ね。分かった?」
「はい……」
「………どういう意味ですか」


ティアナさんの言う通り、私は確かに負けた。そこに別の手段ならば勝てる、と言う言い訳を持ち込もうとしていたのだ。分かり易く言えばティアナさんはちゃんと負けを受け入れろ、と言っているのだ。
しかし、ここでアインハルトさんが食いついてきた。


「そのままの意味よ。格闘技ではあなたの方が強かった。という事よ」
「彼女には格闘よりも優れた技術を持つものがある、と……?」
「そうね。その通りよ。でも今日はお預け。そんなに勝負したかったらまた今度、ね」


ティアナさんがそう言って場を締める。
しかし、アインハルトさんは納得のいかない顔をしている。無論私も理解はしていても納得はできていない。
そんな私達を見てか、ノーヴェがある提案をした。


「ならよ、一週間後にどうだ?今度はスパーじゃなくて試合で、さ」
「わかりました。お受けいたします」


アインハルトさんは即答だった。
私は………許可して貰えるだろうか。誰かの為でなく私自身の為に剣を振ることを。
守る為では無い、ただ戦う為だけに剣を振ることを。


(両親の説得ならあたしも手伝ってやるよ。お前の意思をぶつけてみれば大丈夫だ)


返事を躊躇っていたらノーヴェが念話で後押ししてくれた。


「そんじゃ、詳しいことは追々連絡するよ」


それで今日は解散になった。





side ノーヴェ


ティアナがアインハルトを連れて行った後、スバルが話しかけてきた。


「それにしても、珍しいね。ヴィヴィオが剣を使おうとするなんて」


スバルはそう言うが、意外とそうでもないのだ。


「あたしと修行するときもたまに使ってたぞ」
「そうなの?」
「エクスが来る前は自前の木刀持ち歩いてたからな」


まあ人前ではあまり出したがらなかったが。
それに、格闘家に対しての立ち回りの確認程度のものだったしな。


「ただよ、ヴィヴィオはさ、すげー負けず嫌いなとこあるだろ?」
「……うん。そうだね」
「悔しかったんだろうな。格闘とは言え負けちまったのがよ」
「だから何としてでも勝ちたいんだね」



ヴィヴィオの目標たる人物。父である衛宮士郎。
父のように大切な人を守り通せる強さが欲しい、とヴィヴィオ本人から聞いたことがある。


(負けんなよ、ヴィヴィオ。お前らしく、真っ直ぐに挑めよな)


お前の思いを知ってもらえ。両親にも、アインハルトにも。
そのために、ちょっとした後押しくらいはしてやるからさ。





side なのは


夕食の時、ヴィヴィオがずーっと上の空なのが気になる。
帰って来てからずっとこの調子なのだ。


「ヴィヴィオ、どうしたの?元気ないみたいだけど」
「う、ううん。そんなことないよ。……あのね、後でお話があるの」


聞いてみると、なにか悩んだ後、強い意思の宿った目を向けてきた。


「そっか。じゃあ優が寝たら聞くよ」
「えー。僕も聞きたい~」
「早く寝ない子は大きくならないよ?」
「はぁい……」


会話の中、終止士郎君は黙っていた。その様子に私は士郎君はヴィヴィオの悩みの内容を知っているかのように感じた。





……………………………………………………………………


「で、ヴィヴィオ。お話って何かな」


結局優はすぐに寝てしまい、思っていたよりも早くヴィヴィオの話を聞いてあげることが出来た。


「本気でぶつかり合いたい人がいるの。だから………」
「剣を使ってもいいか、か?」
「………!?パパ、どうして……」


やはり士郎君は見抜いていたみたいだ。


「ノーヴェがな、そう言いだすだろうから許可してやってくれないか、と連絡を取ってきたんだ」


と、思ったらノーヴェから聞いていただけだった。


「ノーヴェ……」
「ヴィヴィオ。お前にとって力とはなんだ?」
「私にとって力は大事な人たちを守るためのもの。傷つけたり、奪ったり。そんなことのために振るっていいものじゃない。パパの教えだよ」


ヴィヴィオが言ったのは優が生まれた直後、初めて自分から強くなりたい、と言った時に士郎君がヴィヴィオに言っていたこと。しっかり覚えてたみたい。


「それがわかっているのになぜ剣で戦いたがる?おまえの歳ならば格闘戦技(ストライクアーツ)でも十分な実力のはずだろう?」
「それは……知りたいから。あの人が何を思っているのか。それに、伝えたいんだ。私が何を思っているのか。そのためには手加減なし、全力全開でぶつからなきゃわからないからだよ」


その答えを聞いた士郎君は大きく息を吐くと、私の方を見た。


「全く、ヴィヴィオは本当にママそっくりになってしまったな」


士郎君の言い方は私をからかっているような含みのある物だった。


「ちょっと、どういう意味?」
「覚えがあるだろう?」


言われてみると、覚えは……ありました。


「常に全力全開?」
「やっぱり自覚はあったか」
「やっぱりって何!」
「今のヴィヴィオくらいの時からそうだったらしいじゃないか。この間フェイトに聞いたぞ。スターライトブレイカーを両手足を封じて……」
「もー!!昔の事は今はいいでしょ!パパの意地悪!!」
「あのー?パパ?ママ?」


と、置いてきぼりにされたヴィヴィオがおずおずと私たちを呼ぶ。


「なんだ?」
「結局私の話はどうなったの?」
「ああ。それならばもう大丈夫だ。ヴィヴィオがちゃんとわかっていることもわかったし……なによりもママと同じ頑固者だからダメだと言っても何度でも話に来ただろう?」
「ちょっと!?」


私そこまで頑固じゃないもん!………たぶん。


「ありがとうパパ!それじゃあ早速トレーニングしてきます!!」
「ああ。いってらっしゃい」


ヴィヴィオは仕度をするために自分の部屋に戻っていった。
それを見送ると士郎君はゆっくりと話し出した。


「……ヴィヴィオも成長したな」
「そうだね。ついこの間まで甘えん坊だったのに」
「今ではなのはの方が甘えん坊、か?」
「むー……最近私の扱いひどくない?」
「まさか。そんなわけないだろう」


なんか手玉に取られてる気がして悔しい。
そんなわけで仕返しをすることにした。


「……今夜は寝かせてあげないからね」
「言う様になったな。だが明日は仕事じゃあないのか?」
「明日は午後からだし平気だもん。士郎君こそお料理教室の方は大丈夫なの?」
「だったら試してみるか?」


そう言うと、士郎君に少々強引に抱き寄せられた。
そのまま見つめ合う。そして……ゆっくりと顔を近づけていく。
そのまま唇を触れ合わせようとして………


「い、行ってきま~す………」


そんな姿をヴィヴィオに見られた。


「いい歳していちゃついてるところを娘に見られたとか死にたい……」
「まあ、気にするな。それに見せられない様なことをしてたわけじゃなかっただろう?朝はいつも見られてるじゃないか」
「朝のとは意味が違うもん……」
「ほう?どう違うと言うんだ?」


やけに落ち着いてる。おまけに清々しいまでの煽り方。間違いなくこれは確信犯だ。ヴィヴィオが下りてくるタイミングでやったよこの人。


「もういいもん。後で覚えててね……?」


―――翌日、あんなにいっぱい出したのにやけに元気な士郎君に理不尽を感じずにはいられなかった私であった。
……私は遅刻ギリギリだったのに。




side ノーヴェ


アインハルトとヴィヴィオのスパーの翌日。
ヴィヴィオと一緒に朝のランニングに来ている。
折り返し地点の公園まで来たところで一端休憩する。
そこで昨日言えなかったアインハルトのことを言う。


「アインハルトのこと、ちゃんと説明しなくて悪かった」
「ううん。ノーヴェにもちゃんと考えがあったんでしょ?」
「……あいつさ、お前と同じなんだよ。『覇王』インクヴァルトの直系」
「………そうなんだ」


あたしにはアインハルトの悩みはわかってはやれない。
でも、ヴィヴィオならきっとわかってやれる。


「あいつも色々あんだよ。自分の生まれとか、数百年前の記憶を受け継いでるだとかさ」


ここまで聞いたところでヴィヴィオが難しい顔をする。


「でも、救ってやれとかそんなんじゃねーんだよ。ましてや聖王や覇王がどうのって訳でもねー」
「わかってるよ。大丈夫。自分の生まれとか引き継いでる記憶とか、そんなものを伝えようとしたって難しいし、上手くなんて伝わらない。だから全力でぶつかってみるだけだよ。そうすれば色々見えてくるものはあるはずだからね」


ヴィヴィオも何だかんだで両親の影響をしっかり受けている。
全力でぶつかる、ってのはなのはさんのスタイルだし、士郎さんの様に色々と他の人のことも見ている。


「それに、仲良くなったら教会の庭とかも案内したいし」
「ああ、あそこか。いいな」
「でしょ!」


しかし、こいつにばっか負担掛けさせてあたしはなんもしてやれてねーな。


「悪いな。お前にばっか負担掛けてよ」
「そんなことないよ。友達として信頼してくれてるし、格闘技の師匠として期待してくれてる。全然迷惑じゃないし、すごくうれしいもん」
「そうか」


そう言ってくれるとこちらとしてはありがたかった。
願わくばこいつの思いがアインハルトにも届いてくれれば……そう思った。




side ヴィヴィオ


ノーヴェからアインハルトさんの事情を聞いた数日後。
遂に手合わせの日がやってきた。
場所は救助隊の訓練施設としても使われている廃棄工場区画。


「アインハルト・ストラトス、参りました」
「来てくださってありがとうございます。アインハルトさん」


今回は私が目指す強さをぶつける。
それで解る事がある。伝わることがある。


「ルールは拘束(バインド)、魔法はなし。純粋な打撃のみでいいな?」
「OK」
「構いません」
「それじゃあ準備してくれ」


ノーヴェに言われ、私はデバイスを展開する。


「行くよ、クリス。エクス。セットアップ!」


私の本気、手加減なし。青いドレスに白銀の鎧のバリアジャケット姿になり、手に持つエクスは最初からツヴァイフォルム。
初めて見るリオは驚いているようでコロナとノーヴェに説明されている姿がちらりと見えた。


「………武装形態」


アインハルトさんがそう呟くと、大人の姿になったアインハルトさんが構えていた。
見るからに隙がない。だとしても、私にはこれがある。
不完全だが、パパの剣技が。シグナムさんも認める至高の剣技が。


「準備は出来たな?それじゃ、試合開始だ!」


ノーヴェの宣言で、私とアインハルトさんの試合の火蓋は切って落とされた。 
 

 
後書き
今回はここまでになります。

ヴィヴィオVS.アインハルトは次回になります。第六話、対決、そして。お楽しみに。

それではまた来週~ 
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