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恐怖の重石

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第2部
プロローグ
  第4話、0093、No.2

「艦長、ご無事で何よりです」

 ムサカ級巡洋艦ベルデンの艦長席に歩むオドネルに、副長のマラードが安堵の表情を浮かべて出迎える。ギラ・ドーガで総帥の行方を探しに行く前、ケネスは副長のマラードに今後の方針をいくつか相談して賛同を得ていた。

「ありがとうマラード副長。艦に問題はないかね?」
「別の艦に所属するギラ・ドーガ4機が本艦に着艦を求めたため、許可を出しました」

「今後を考えれば貴重な兵力だな。適切な判断だと思う」
「はっ。それから旗艦レウルーラから集結信号が届いています」

 ケネスは総帥の安否を何故か絶望的と肌で感じていた。そして、旗艦レウルーラが総帥の無事を喧伝していないことは、それを完全に裏打ちしていると判断した。

「集結信号だけか。総帥の行方はいまだに不明のようだな」
「では?」

「ああ、作戦を実行する。周囲の行方不明者の捜索を打ち切り、まずは僚艦のマッザウに合流しよう」
「了解です……」

 副長は歯切れの悪い話し方で答えた。ムサカ級巡洋艦マッザウとの合流に乗り気ではなさそうな副長に、ケネスは理由を尋ねた。

「何か心配でもあるのかね?副長」
「どうも、マッザウの被害が最初に旗艦へ送った発光信号の報告より大きいように思えるのです」
「言われてみればそうだな。本艦のように目的があるならともかく、集結信号に従わないことは変だ」
「はっ」
「だが、大した問題ではない。損傷によっては作戦に不参加の意志を持つ将兵を預かってもらえば良い」

 ケネスはそう副長に告げると、今後の方針の一端を直属の部下達や拾った僚艦の将兵達に告げることにした。

「艦長より全将兵に告ぐ。諸君も承知の通り、地球の寒冷化して重力に魂を縛られた連中を粛清する作戦は失敗に終わった。しかも、総帥の安否は未だ不明である。この難局を、ネオ・ジオンは偉大な指導者抜きで乗り切れるかわからない」

「このような時、我々ジオンの理想を担う軍人たちは常に再興に必要な兵力の温存を図ってきた。今後のスペースノイドの自立のためにも、本職は新たな道を諸君に提示する。それは危険な任務であり、命をかける覚悟と無償の忠誠心が求められる。私は諸君の自発的意志を尊重するつもりだ。考える時間はあまりない。すぐに決断して上官に去就を申告して貰いたい」

 ムサカ級巡洋艦ベルデンの将兵達に敗北感や絶望感はない。それどころかこの空域を覆う不思議な感覚が彼らの心を満たしていた。

「艦長、旗艦レウルーラより集結を急げと再び信号が届いています。いかがなさいますか?」

「旗艦には、艦の補修と周囲で行方不明者を捜索してから合流すると伝えよ」

 旗艦レウルーラの士官達に疑問を抱れないよう、ケネスは当たり障りのない返信を送った。
 
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