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ファイアーエムブレム~ユグドラル動乱時代に転生~

作者:脳貧
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第五十六話

 

 シグルド公子の軍勢は一度ダーナを離れ、レックスとアゼル護衛に付いてもらう運びとなった。
 砂漠を横断しての道のりは危険だろうとダーナからはずっと南西、ミレトス地方とグランベルとの間の内海、海岸線を伝いエッダ領から北上し、バーハラへ向かうルートだ。
 彼自身は、もしランゴバルトやアルヴィスが乗り込んできたら説得に該たるからダーナに残ると申し出てくれた。
 しかし、ダーナの事情を良く知る上級貴族の証言は多いほうがいいだろうし、もし、公子が残るとなったら全軍挙げて護衛に向かってはくれないだろうという思いもあったので、無理を押して頼み込んだ。
 これにはイザークからマリクル王子が援軍を率いて合流してきた事と、メルゲン城塞から使者があり、兄上が城塞に詰め、いつでも出撃できる用意が整っていると知ることが出来たので戦力の見通しが明るくなったからなのもある。
 ………それというのも隕石(メティオ)での焼き討ちを生き残った商人の多くを北トラキア諸国に送り出し、被害のありさまの噂を流させたり、直接各王家に陳情や庇護を願わせる工作を行ったからだと思っている。
 シグルドさんの軍勢がダーナを離れるのは戦力的に痛いが、場合によってはドズルやヴェルトマーの本領を衝くとオイフェから申し出があったので乗ってみた。
 もっとも、彼ならばそんなことはせず、堂々と主戦場へ乗り込んで来そうな気がするのだが!






 「じゃあミュアハ君、ご武運……というのは辞めておくよ、元気でね」
「お前は殺しても死なないだろうから心配はしないでおく」
「ありがとな。 道中、くれぐれも用心してくれ。 それと、王太子にもよろしく」

 いつぞやのように互いに拳を軽く打ち合わせ、別れの挨拶とした。
 
「そうそう、レイミアさんを大事にしてよ」
「だな、泣かすなよ!」
「……アタシはもぅ、すっごく大事にしてもらってるから、心配ないよ!」
 

 彼女は俺たちのやりとりに割って入ると

「アタシの価値なんて剣振ってナンボだと思ってたけど、こんなんなっちまってもアタシがいいって言ってくれてるんだ。 家事どころじゃ無い、自分の身の回りのことすらろくすっぽできないってのにさ………アンタ達ならそんな女、哀れに思ったりはしても、どうこうしようって思うかい?」
「いや、レイミア、こいつらも社交辞令みたいなもんだから、すまん」
「わかってる。 ……ほんとはお前に聞いて欲しかったんだ」


 照れくさそうにしている彼女(レイミア)の腰に手を回して身を寄せて

「すこし時間はかかるかもしれないけど、腕は必ず良くなるさ。 名誉の負傷を卑下しないようにね」
「ああ、そだね……」

 本当は気休めな言葉だけれど……

「じゃあボク達は行くね」
「お二人さん、続きはあとにしてくれよ!」

 苦笑いと共に二人を送り出し、俺と彼女は寄り添いながら城門に向かって歩みを向けた。






 ……城門まで戻ると商工会の代表代行と鍛冶屋が居て、俺たちに会釈すると口を開いた。

「将軍、これをお納めください。 我々からの気持ちです」
「?」
「街の者は皆言ってますよ、ダーナ守護将軍とね」
「いや、わたしはただの重騎士に過ぎません」
「……こういうのはね、自分で思うんじゃくて周りがどう思うかで決まるのさ」

 レイミアはそう言うと我が事でもあるかのように嬉しそうな表情を浮かべた。
 面映ゆくもあるが悪い気はしない。

 
「奥方の剣の修復はとっくに済んでましたが、立て込んでおり、お届けが遅くなって申し訳ありません。 ……ささっ、閣下、こちらをどうぞ」

 鍛冶屋は使用人から受け取ると見事な盾を俺に手渡してくれた。
 思ったよりもずっと軽く、握り部分のバランスも絶妙で取り回しに不便はなさそうだ。
 続いて槍も受け取り具合を確かめる。
 こちらもバランスの良い仕上がりになっており、自ら最前線に立つことの多い俺には武骨で実用性重視なこの仕事はありがたい。

「ありがたく頂戴します。 お気持ちに応えられるよう微力を尽くします」
「胸甲と肩当は先に詰所のほうにお届けしましたので、のちほどお(あらた)めください」
「何から何まで痛み入ります」
「他にご入り用の物があればなんなりと」
「……」
「ご遠慮なく申し付けくだされ」
「でしたら………」
 
 





 アゼルとレックス、それにシグルドさんがダーナを離れて十日もしたころ、哨戒の騎兵が物凄い勢いで帰り着いてきた。
 報告を受けると、西方から軍勢が迫っているということだ。
 メルゲンへは早馬と伴に、かねてからの打合せ通りに狼煙を上げて危急の知らせを送った。
 中継点はいくつもあるが、迅速にこの知らせが伝わることだろう。
 すぐさま緊急の軍議を開き、兵達には出撃態勢を整えさせた。
 この日を迎えるまでに義勇兵も新たに募り、数だけでいえばたいしたものだが、戦闘員として実用に耐える者は十人に一人居るか居ないかである。
 だが、支援に割ける人数が多いので前々回の戦に比べればずっとやりやすくなるはずだ。
 市民にも敵軍襲来の知らせが行われ、居住域ごとのグループで設営された地下壕への避難を次々と進めて行った。
 


「では、打合せ通りにお願いします」
「承知」
「心得た」

 各自唱和し、行動に移る。
 城壁に拠ったところで無差別に隕石(メティオ)を降らされるので城外で迎え撃つと方針は決まっている。
 ……敵の動き次第ではその限りでは無いが。

 偵察の騎兵からの最初の報告とその後に続く報告により進軍ルートの予想は立ち、それを迎えるに適した兵の配置を調整する。
 なんにせよ密集隊型を組んでは隕石(メティオ)のいい的になるのは間違いなく、適度に散開させた中規模の部隊を幾つも編成してある。
 それは各個撃破の好餌となるものではあるが、一つの隊が敵と接敵した場合、すぐに他の隊が合同し充たれるように手旗による交信に重きを置き、各隊の意思疎通を円滑に行えるよう訓練をしてきた。
 さすがに敵も自分の味方ごと巻き込んで隕石(メティオ)を降らせないだろう……
 各部隊長には自由な裁量と共に負担もまた大きくなるが……やりがいはあるはずだ!




 ダーナ市街から西方で敷かれた陣で多くの兵を前に出陣前の激励を行う。
 まずはマナナン王からだ。

「……余はここに宣言する。暴虐にして無慈悲なグランベル、いやヴェルトマー公国とその走狗たるドズル公国からこの街を守るのは誰であるかと………そう、我らであると!」
「 『応ー!』 」
「不幸な行き違いがあったとは言え、否!、その汚名を返上するために、我らはここに居ると!」
「 『応ー!』 」
「………では、総大将からの訓示、皆の者心して聞くがよい!」

 ……総大将などと言われると緊張が跳ね上がるのだが!
 未だマナナン王の檄で興奮冷めやらぬイザーク、ダーナ共同軍の前で俺は深呼吸をする。
 ざわめく多くのイザーク兵、そしてずっと少ない自らの手勢であるレイミア隊、それにダーナ守備隊を見やり、気合を入れる。


「国や身分は違えど集まってくれた皆に、まずは感謝する!」

 再びの歓声に身が引き締まる思いをしながらも言葉を続けようと汗ばむ手を握りしめる。
 俺の言葉の続きを待っているかのような皆に向かって精一杯、声を張り上げた。

「まず、我々は必ず勝つ! これは揺るがしようの無い未来だ! だが、それを阻まんとする意地の悪い神、慢心って奴がいる。 こちらが勢いに乗り、押して居る時にこそ冷静になり、周囲に気を配って欲しい! ……そして、その勝利をここにいる全員、そして今は別の場所で配置に着いている多くの仲間と分かち合いたい! ゆえに、功に逸らず、仲間の、そして自分の命を惜しめ! 我々の正しさを一人でも多く語り継ぐんだ。そして、子や孫に武勲の自慢話を何遍も何遍もやってうんざりさせてやろうぜ!」 


 ……出来のいい演説じゃあ無いが、作られた雰囲気のおかげで士気は上がり、俺は三度目のダーナ防衛戦に出撃する! 
 

 
後書き
盗作問題が運営様から挙がっているのでこの物語にも無視できないものがあった場合にはお知らせいただけるとありがたいです。
特に指摘されたりは無かったのですが、自分でも怪しいかな?というのが五十二話でのマナナン王の開城勧告のあたりだったので修正しましたが、これでも駄目だとしたらお知らせいただきたく・・・
セリフ一つでも駄目なのだとしたら、せかいひろしとかトンボ取りとかも駄目になるんだろうなぁ 
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